概要

名称UNKNOWN SOLDIER ~木馬の咆哮~http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001DLUQZE [外部リンク]
ジャンルアクションシューティング
対応機種ニンテンドーDS
発売元D3パブリッシャー
企画・開発タムソフト
発売日2008年10月2日
価格5,040円(税込)
対象年齢CERO:C(15才以上対象)

要点

選評

その1

本作は「THE 歩兵」や「THE 最後の日本兵」のようなTPSである。
世界観は第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を題材にしており、
プレイヤーは大規模上陸作戦の後方支援である「トロイの木馬作戦」の実行部隊の隊長として、
3名の仲間を率いて様々な任務を実行することになる。

ちなみに、3名の仲間と言っても操作するのは部隊長だけである。
仲間にできる事は作戦前に装備を持たせるのみで、その効果もあまり実感が感じられない。
あとは作戦中に武器を変えるか無線で聞いてくるが、テンポが悪くなってウザいだけだ。


まず、ゲームを始めて感じるのは操作性の悪さだ。
照準はタッチペンをスライド、移動は方向キーというDSのFPSでは基本的なスタイル。
しかし、照準の微調整がしづらい上にカクカクしててとても気持ち悪い。
少しスライドさせればその分照準が動くまでは普通だが、画面端までスライドすると高速で視点が横に移動する。
これのお陰で、前方やや横の敵を撃とうと思い切りスライドしたら照準が行き過ぎることがある。
スタッフは何を思ってこんな高速スライドを導入したんだろうか?
90度のクイックターンもあるが、これも同じように実用性は皆無だ。

遮蔽物に隠れる、乗り越える。壁やジープに張り付くというアクションはいかにも戦場ものらしい。
曲がり角では壁に張り付いて敵を警戒し、敵の動きを確認しながら身を乗り出して撃つ。
遮蔽物に隠れて弾を防ぎ、機を見て反撃する…地味ながらも銃撃戦らしいカッコいいアクションだ。
特に後半ではこのアクションを積極的に使わないとあっという間に蜂の巣にされてしまうため、
攻略面でも使えるアクションだと言えるだろう。

敵陣に突っ込んで撃ちまくるランボースタイルではすぐ蜂の巣になって死ぬため、
遮蔽物を探してうまく利用し、慎重に、時には大胆に歩を進めていく。
悪く言えばチマチマしていると取れるし、良く言えば戦場を進む緊迫感があるとも取れる。

しかし、遮蔽物に隠れるつもりが乗り越えたり、張り付こうとしても張り付けなかったりすることもある。
せっかく発想は良いのに、操作にやり辛さを感じてしまうのがとても勿体無い。

おまけにレーダーの類がないので、高速でスクロールすると自分がどこを向いているかわからなくなる。
敵に撃たれたときのマーカーは出ても、操作がこれではパニックを起こすだけだ。
急襲されてパニックになり、照準もロクにおぼつかない…というのを狙ったのならとてもリアルではあるが、
そういう所をリアルに再現しなくてもという気がするのは私だけだろうか。

次のチェックポイントを示すアイコンも出るが、レーダーマップの類がないので
途中に地形や障害物があった場合、どういうルートを迂回してそこに進めばいいのかわかり辛い。
下画面に周囲のマップを少し映しておくだけでも大分変わるはずなのに。
プレイヤーが遊びたいのは漢の怒りが爆発する戦場アクションであり、
俺の怒りが爆発するイライラ戦場迷路ゲーではないはずだ。

武器の切り替えも微妙に使い辛い。
武器アイコンをタッチでリストがスライドして出てくるけど、リストが出る前にタッチすると切り替わらない。
つまり、リストが完全に出るまで武器切り替えができない。
これならパネルじゃなくてボタンに武器切り替えを割り当てたほうがスムーズに切り替えられるんじゃなかろうか。
あとリロードが途中で攻撃喰らって怯むと中断するんだが、そういうところはリアルにするなと言いたい。

しかし、オプションで右利きと左利き用に設定できるのは嬉しい仕様ではある。
あって当然の仕様なものの、用意されているのはやはりありがたい。
そういう心遣いができるなら、もっと照準の感度調整とか改善すべき点があるだろとツッコミたいところだが。

ゲームバランスも良いとは言い難い。というか最悪だ。

時間で体力が回復するのは親切だが、いかんせん回復が早すぎて不自然に感じる。
敵陣に突っ込んで撃たれたとしても、立ち止まりさえすれば数秒ですぐに全回復してしまう。
プレーヤーは名も無き兵士じゃなくて名も無き超人の間違いじゃないのか。
リアルを追求したいのかそうでないのかどっちなんだよ。

で、その釣り合いを取るためなのか敵の攻撃によるダメージがデカい。
マシンガン兵3人くらいに集中砲火されたら難易度ノーマルの体力満タンでも瀕死になる。
ライフル、ランチャーを喰らえば1発で瀕死。体力によっては即死する。

そしてチェックポイントに到達した瞬間に、突然敵兵がテレポートしてくるので不意打ちを喰らう。
ひどい時には前方だけでなく、とっくに制圧したはずの後方にも敵が湧く。
自分は超人兵士で、敵は超技術によって生み出されたエスパー兵士だとでも言うんだろうか?
ますますリアル思考なのかそうでないのかわからなくなってきた。

チェックポイントと言えば、仕様と配置場所もまた問題だ。

通常、チェックポイントを置くならその地点の周囲には敵は配置しない。
チェックポイントから復活したら、そこから少し歩くと敵が登場する…というのが普通だ。
そうでないと、復活した直後に敵に撃たれるハメになる。

しかし、本作ではチェックポイントから復活したら平気で敵に囲まれてたりする。
酷いのは後半面で、ボサっとしてるとマシンガンやらライフルやらを浴びせられて即死する。
その間、およそ2秒。

さらに最悪な事に、チェック通過時点で装填されている弾薬の量まで記録されてしまう。
つまり、マガジン内に弾が残ってないと、復活時にまずリロードしないといけない。
最悪、復活時に敵のど真ん中で弾切れ状態になるのだ。なんという理不尽。

明らかにチェックポイントの配置のミスである。
うっかり飛び出して蜂の巣にされて死ぬのはまだ百歩譲って自分のミスだから納得できる。
しかし、復活直後に心の準備もなしに蜂の巣にされて死ぬのは納得しろと言われても無理だ。

チェックの仕様もおかしいが、拍車をかけているのは調整の甘さであろう。
死んでも再開場所が近いのはいいが、それはバランスの悪さを埋める要因にはならない。
それどころか、「すぐ復活できるんだからいいだろ?」と調整を投げた様に思えてならない。
クリアできるのと、難易度のバランスがとれているのは全く別の話だ。
理不尽に死にながらクリアしたって嬉しくともなんともない。

なぜ敵のど真ん中にチェックポイントを作る?復活直後に死ぬような調整を疑問に思わなかったか?
もうツッコみたくないが、中途半端にゲームに戦場の厳しさを盛り込むのはやめてください。

敵の思考も非常にいいかげんだ。
立ち止まって弾を撃つだけ。物陰に隠れたら手榴弾を投げたり、射撃位置を変えるいやらしさもない。
そのくせ急に現れたかと思ったら一目散に駆け出して、射撃位置に着いてから撃ち始める。
途中でプレイヤーに撃たれようが射撃位置に着くまで走るのはやめない。
敵軍に洗脳されているのか、超能力実験の副作用で思考能力がメタクソになっているのか。
それとも思考能力がメタクソになっているのは開発者のほうなのだろうか。

武器はマシンガンにハンドガン、ライフルにロケット砲といくつか用意されている。
が、マシンガンやハンドガンは精度があまりよろしくない。
精密射撃モードにすれば多少は精度がよくなるが、焼け石に水くらいの効果しかない。
手榴弾は投げる力の調整ができないし、投擲位置も微妙にわかり辛いのでやっぱり使い辛い。

この使い辛い武器どもの中で、唯一使いやすく便利な武器がライフル系だったりする。
1撃当たれば即死、精度も抜群。加えて動かない敵のお陰でもはやカモ撃ち状態。
基本的に敵の弾が届かないくらいの距離でライフル撃ってれば殲滅できてしまうため、
ムリヤリ使ってやろうと思わなければ他の武器を使うメリットがあまりないのが辛い。

ミッションは全12面で、基本的には歩兵による地上戦を中心に進行する。
画面上部のマーカーを見ながらチェックポイントまで進み、破壊工作や殲滅、回収などと言った
任務を遂行していくが、どのミッションも敵を倒しながら目的地まで進めばいい。
付け加えるならマップは原野、市街地、基地の3種類しか用意されていない。
マップ自体はかなりの広さがあるのだが…。

たまに戦車やジープに乗って進むシーンがあるが、戦車は乗れと指示が出されても、
その戦車がどこにあるかがすごくわかり辛い。もっと言えば乗らなくてもクリアできたりもする。
乗ったら乗ったで挙動が軽く、まるでペーパークラフトだ。

ジープは自動操縦で進み、自分は銃座のマシンガンで敵兵やジープをぶっ壊しまくるアグレッシブな内容。
敵は1撃だし、普段無音状態のBGMもここぞとばかりにハードロック風になる。
爽快感を重視した内容…のように見えるが、これも通常ミッションと同様に展開に起伏がなく、
適当に出てくる敵とジープを撃ちまくるだけだ。

加えて、効果音やエフェクトがショボ…おとなしめなのが残念すぎる。
せっかく先に出てきたジープ移動ミッション時ではバリバリ破壊しまくれるのに、
地味な効果音とエフェクトのせいで爽快感が全くない。
どうせなら、派手なエフェクトと爆発と射撃音が掻き消えるくらいズドーンと
ウソ100%なくらいにフィクション全快な方が気持ちよかったのではないだろうか。
何より、ド派手な大爆発は漢のロマンだろうがッ!
…おおっと、取り乱した。

おまけにこの面でも先ほど挙げた理不尽な死に方をすることがある。
この面では敵を撃ちもらすとランチャーで撃たれ、2発喰らうと死亡するのだが、
場所によっては復活して5秒もしないうちから前方に4体も敵兵が出てくる。
距離も2秒後には攻撃されるくらい近い。どうしろと?

大抵は前方に適当に出現するのだが、タチの悪い事に相当近づいてから出現するものもいる。
普通にやってたらまず出現したことにすら気づかず、いつの間にか1発ドテッ腹に喰らっていることも。
しかも正面ではなく、やや斜めに差し掛かったあたりで出現するために反応が困難だ。

追い討ちをかけるように、このシーンは全体で4回も出てくる。
こういうシーンは気分転換のような「操作できるイベントシーン」的な役割でいい。
こんな理不尽仕様のシーンが4回も出てくるのは明らかに蛇足だ。

このように、挙げればキリがないほど足りない点が見つかる。

とはいえ、まったく遊べない出来ではなく遮蔽物を使った銃撃戦はそれなりに楽しい。
全体的な雰囲気も統一されており、暗く、重く、先の見えない戦争という感もよく出ている。
なにより、DSでTPSを作ろうという発想は評価できるのではないだろうか。
海外では「ブラザー・イン・アームズ」というTPSがDSで出ているが、こちらは国内メーカー産だ。

しかし、だからと言ってこれまで挙げた点が帳消しになるわけではない。
安価であれば許せる訳ではない、フルプライスのゲームとして出すには調整不足な点が多すぎる。
こんなに荒が見つかるのは開発期間不足だろうか?それとも技術不足からだろうか?
咆哮するのは木馬じゃなくてプレイヤーの方であろう。

上の選評を短くしたテンプレ用選評案

D3パブリッシャーから10月に「UNKNOWN SOLDIER ~木馬の咆哮~」が発売された。

このゲームはTPSでプレイヤーは大規模上陸作戦の後方支援である「トロイの木馬作戦」の実行部隊の隊長として、
3名の仲間を率いて様々な任務を実行することになる。

照準調整がしにくいなんて些細なこと、
レーダーが無く敵と地形がわからない、
全12ミッションなのにステージは3つしかない、
武器はたくさんあるのに使える武器が限られている。

極めつけは突然ワープしたかのように現れるサイキック兵士。
これがチェックポイントでおこるためそこで死んでしまう。
チェックポイントで死んだためそこから始まるのだが、復活直後蜂の巣にされてしまう。
気を抜いたら死ぬという戦場の厳しさを身をもって教わることになる。
その代わり無限に復活できる親切設計のため何回かやってればそのうちクリアできるが。
それ以外にも弾を喰らってない時じっとしているとすごい早さで体力回復するため、
強引に突っ込めばクリアすることもできる親切設計まである。

この通り同社発売の好評だった「THE 歩兵」に比べ勝る点が値段の高さしかないため、
木馬ではなく購入者が咆哮することとなった。

リンク

公式サイト [外部リンク]
ラー油氏のブログより 『最悪だっただわ!「アンノウンソルジャー」』  [外部リンク]