リンク
総評
2008年の携帯クソゲー界がスーパーヒーロー達の頂上大決戦、天下一武道会だったとするならば、2009年はサイヤ人襲来といったところであろうか。
未知なる世界からの刺客が乱入し、大暴れをしていった年として皆の記憶に刻まれたはずである。
まず2009年最初の号砲を撃ったのはインターチャンネルの「北斗の拳 ラオウ外伝 天の覇王」であった。
お馴染み人気コミックのスピンオフ作品のゲーム化で、前年の東京ゲームショウでの評判が悪かったのでスレでは注目されていたが、製品版でもやはり酷かった。
ダッシュ+弱攻撃でハードモードも簡単にクリア。おまけに全要素クリアするまでたったの2時間という薄さ。あまりの出来映えに「ユーザーはショック!」という名言も生まれた。
年初から素晴らしい剛掌波を我々にお見舞いしてくれるとは、今年も一筋縄ではいかないなと予感させられた。
次に登場したのはゲーム業界初参入のフリューが放った「ラストバレット」である。
3時間で終わってしまう薄い内容のテキスト、携帯アプリ以下と評される狙撃ゲームなど新規メーカーながら香ばしさが光る。
「セーブとロードだけが出来の良いゲーム」と褒め言葉なのか何なのか分からないフォローが入ったのも印象深い。
そして、「超名作推理アドベンチャーDS レイモンド・チャンドラー原作 さらば愛しき女よ」が続けざまに発射された。
あなたは知っていますか?自称「超名作」と名乗るクソゲーを・・・
あなたは知っていますか?「ちょwww名作www」とコケにされたクソゲーを・・・
あなたは知っていますか?5040円で発売されたこんなクソゲーを・・・
長ったらしいタイトルではあるが、1時間程度で終わってしまう紙の如きボリュームの薄さ。規制に引っ掛かったらしく改変を余儀なくされた原作ストーリー。どう考えても原作本を買う方が正解といった内容である。しかもあの会社製という事でスレは大いに賑わった。
あなたは知っていますか?連続でクソを排出したフリューという会社を・・・
悪夢はまだまだ続く。「世界ふしぎ発見DS ~伝説のヒトシ君人形を探せ~」が登場する。
制作はまたまたフリュー。プロ初スタメンなのに、まさかバックスクリーン3連発を打ち込んでくるとは誰が想像しただろうか。歴戦のスレ住人も呆れるばかりである。
では中身に触れよう。人気長寿クイズ番組のゲーム化なのだが番組を連想させるものは僅かで、大半は観光ガイドレベルの薄っぺらな遺跡知識が披露され、あっても無くても別に構わないミニゲームが合間に入る。その歴史知識もツッコミ所が多い上に、人物の名前まで自信満々に間違えているのだから救いようがない。
さらに特筆すべきはイラストの酷さである。塗り忘れや指の形がおかしいのはご愛嬌。ドライヤーにしか見えない銃、鉄板にしか見えないマントなど恐ろしいまでの技術の低い絵で、素人に描かせたのではないのかとの憶測まで出てしまった。
ちなみにクリアまでの所要時間は約3時間。フリューにしては頑張った方ではあるが、恐らくそういう問題ではないはずである。制作に関わったスタッフ全員にボッシュートを宣告したい。
さて賢明なる読者諸君ならお気付きかと思うが、今年のトレンドは『薄い』であった。ここで挙げられた作品はことごとく薄い内容で、スレでも「どれが一番無価値であるか」という議論が盛んに行われた。
だが、ここで違うベクトルを持ったクソゲーが投下され、これら薄い作品群を蹴散らして大賞の座を奪っていったソフトが登場する。
では、2009年クソゲーオブザイヤーの大賞を紹介しよう。システムソフト・アルファーの「戦極姫~戦乱に舞う乙女達~」である。
このゲームは発売前から、スレでは見え見えの地雷として期待されていた。理由は二つある。
一つ目はシステムソフト・アルファーが初春に発売した「戦国天下統一」が据え置き板携帯板の双方で話題になる出来だったからである。残念ながら携帯ゲー板では有力な選評が届かなかった為に・・・否、きちんと最後までプレイできた人間が現れなかった為に詳しくは紹介できないが、住人達のボルテージを上げるには充分過ぎる程であった。
二つ目は「戦極姫」そのものが元々アダルトPCゲームで、そして2008年エロゲー板クソゲーオブザイヤーにノミネートされた問題作であるという事であった。コンシュマー移植にあたり18禁版で不評だった要素は修正するとの事だが、どうせ蛙の子は蛙であろうとの予想が主流だった。
この二つの事からいやが上にもスレ住民の期待は膨らんでいった。そしてその移植の結果は、我々の予想の遥か斜め上へ突き抜けてくれた。
このゲームはダメダメなシナリオなど多くの難を抱えていたが、バグの酷さが特に際立つ。まさかコンシュマー移植でエロゲーの時以上のバグが発生するとは誰が予想できただろうか。
突然軍資金が大量に増えたり、少数の徴兵をしただけなのに住民感情が激減するなんて事はまだ序の口。
曰く、滅ぼしたはずの大名が突然出現し、自勢力城を乗っ取り操作不能になる。
曰く、死んだ仲間武将が突然敵武将として出現、その配下だった自軍武将が途端に操作不能になる。
曰く、何処の街道も敵地へ繋がってない後方の城に次元の彼方から独立勢力が攻めてきて、勝手に全滅した。
リアル戦国時代の奇襲戦の代表格である桶狭間、厳島、河越ですら裸足で逃げ出すようなトンデモバグが盛り沢山である。
ついでにSLGパートだけでなくADVパートのバグも一部お披露目しよう。
曰く、台詞がページをまたがる場合、2ページ目以降が表示されない。
曰く、イベントが発生しない女性キャラが存在。
曰く、SLGパートで切腹したヒロインがなぜかADVパートで登場する。
ここまで来ると、姫武将の代わりに制作陣が自刃して果てて欲しいものである。
このようなバグが日に日に発見され、ある者はクリア不能になり、またある者は心を折られて諦めていった。だがしかし、鍛えられた一部のプレイヤー達は黙々とプレイしていたのである。そう、その日が訪れるまでは。
発売から2週間後、このコンシュマー版の要素を全部含んだ続編PC版「戦極姫2」が発表されたのである。
「有償デバックだな」と自嘲的に嘆いていた購入者達もこれにはさすがに激怒した。なにせ本当にコンシュマー版は有料α版と変わらないと判明してしまったからだ。
ゲームデータを解析してみると、決して通常手段では聞くことの出来ないギシギシアンアンな音声データや、PC版戦極姫2で初めて実装されるはずであろう文字列が発見され、なるほど確かに未完成品のα版を売りつけられていたという疑念が生まれても仕方がない。
ひょっとしたらエロゲー界では常套手段だったのかもしれない。しかしここはコンシュマーの世界である。もし本当に未完成品を故意に販売していたとするなら、あまりにも常軌を逸した行為ではないだろうか。
振り返ってみれば、「手抜きを極めた薄さ」という最低の行為ではあるが一応コンシューマの常識内で争っていた本年のKOTYであったが、そこにエロゲー出身でエロゲーのノリをそのまま持ち込むという規格外のモンスターが出現し、やりたい放題をやり尽くして今年のクソゲー業界は幕を閉じた。フリュー三銃士の一人「ふしぎ発見」も最後まで健闘をしたが、惜しくも「戦極姫」の放つα波の前に敗れ去った。
「バグはあくまでもドラに過ぎない」とスレではよく語られていたが、「ドラも集めまくれば役満」と言う事実を住民に突きつけたという意味では大きな役割を果たしたとも言えなくもない。
なお、姉妹スレである家庭用ゲーム板クソゲーオブザイヤーでもPS2版「戦極姫」が大賞に選ばれ、栄えあるダブル受賞を見事に達成した事を付記しておく。この偉業に最大限の賛辞と侮蔑をシステムソフト・アルファーに送りたい。
最後に戦国武将豊臣秀吉の辞世の句を借りて、戦極姫に特攻して玉砕していった英霊達に哀悼の意を表するとともにこの総評を締め括ろう。
銭払い デバック頑張る 我が身かな
クリアのことは 夢のまた夢