2011年 次点
概要
名称 | ナナミの教えてEnglish DS ~めざせTOEIC TESTマスター~ | |
ジャンル | 英語学習ソフト(TOEICテスト対策ソフト) |
対応機種 | ニンテンドーDS |
発売元 | メディア・ファイブ |
開発元 | メディア・ファイブ |
発売日 | 2011年3月24日 |
価格 | 3,800円(税込) |
対象年齢 | CERO:B(12歳以上対象) |
資格習得などを目標とした、お堅い学習ソフトを数多く出している「メディア5」の初となる萌え系学習ソフト。
PC用に展開していた「教えてシリーズ」を家庭用にて新たに展開したもので、TOEICテストに向けた勉強ができる。
PC版には無かったゲーム性を持たせたストーリーを追加し、同じくPC版には存在自体なかったイベント・イベントCGを追加。
人気声優(ヒロイン・ナナミの声に竹達彩菜、サブヒロインのレイナの声に中原麻衣)も起用し、知育ソフトとしても恋愛シミュレーションとしても遊べる内容。
抽選で声優のサイン色紙プレゼントもあり。
要点
- 問題数が公式サイトでは全576問となっているが、実際は全499問(現在も修正なし、パッケージには499問と記載されている)。
- 問題は4択または3択で出題される(実際のTOEICもそんな感じ)が、選択肢が表示される順番がランダムではなく常に固定。
- タッチペンでスペルを書く単語学習で、スペルの誤認識が多い。
- 「l」(小文字のエル)と「I」(大文字のアイ)が特に多い。しかも小文字で書いたスペルしか正解と認識しないので、「L」では不正解。同様に「t」を「T」と認識してしまう事があり、丁寧に書かないとダメ。
- ちなみに他のゲームソフト等の文字認識機能では、候補を複数表示することで対策をとっている場合が多い。
例を出すと、「l」と書いた場合、「l」(小文字のエル)、「I」(大文字のアイ)、「1」(数字の一)が候補欄に表示される、といった感じ。
- 獲得できるスキルポイントの量は、ナナミのコンディションによって左右され、ナナミのコンディションが悪いと、スキルポイントがあまり獲得できない 。いい時と悪い時とでは最大で倍近く差が出る。
- コンディションを維持するにはどうすれば良いかと言うと、特に方法は無い。ランダムで変化する。
- 収録単語数は4,005問と凄く多い。単語帳替わりに使える『見る学習』は全部で223ページ。Aから始まる単語だけで、16ページ(1ページ18語)近く載っている。
- 知りたい単語があったら、その単語が出てくるまで、ずっと十字キーの右を押し続けるか、タッチペンで画面の矢印をひたすらつつけば、そのうち出てくる。
(最終ページに載っているZまで十字キー右押しっぱなしで34秒、画面に表示された矢印をつつき続けて1分6秒かかる)
- 検索機能などない。インデックスなどない。さらにAから直接Z に行く様な、アルファベットの最後から探す機能も無いなど、単語帳として使おうとすると紙の辞書にも劣っている。
- 主人公達を妨害する為に登場するレイナを、一体誰が送り込んできたのかクリアしてもわからない。
- 単語学習内の学習内容(コース)を選んだだけで経験値が入ってしまう。繰り返し行えばほとんど勉強せずにクリア可能。
- 例1・リスニング用CDをCDデッキに入れただけで、再生しなくても経験値ゲット。
- 例2・スペルを書いて覚えるために紙を用意したら、実際に書かなくても経験値ゲット。
- そもそも学習目的で購入したプレイヤーは、故意に"選択→キャンセル→選択→キャンセル→…"なんて行動をとらない。
「勉強機能に興味がないキャラや声優目当ての人」「英語が苦手な人」のために用意された裏技と、好意的に解釈することもできる。
- ストーリーは2~3週間で終わるのに、イベント回収に1年かかる。
- DSの時計機能と連動し発生するイベントが8個あるが、うち5個は平日開催なので毎日電源を入れるハメになる。
さらにレベル・相性がある程度上がっていないと、対象の日に起動してもイベントは発生しない。
- イベント同士の間隔が空いているので、始めた日が悪ければ2ヶ月やり続けてもイベントが発生しない事もある。
- 毎日学習させる為の仕様だとも思えるが、その一方で繰り返し学習する事を促すのにもっと効果的なはずの「トータル●問解いた」のアイテムプレゼントが、序盤から気前よく発生していたのに1,500問で何故かピタっと止まる。
選評
選評案その1
3月下旬、一つのソフトが世に送り出された。
「ナナミの教えてEnglish DS ~めざせTOEICマスター~」
発売元は、数々の知育ソフト・資格対策ソフトを世に送り出してきた、この道の老舗とも言えるメディア5。
本作はメディア5がPC用ソフトとして展開してきた『教えてシリーズ』を初めて携帯ゲームにて展開するもので、
同社でも携帯ゲーム用としては初となる、『萌え』を全面に出したものだ。
TOEICテストに向けた学習をしながら、アンドロイドの少女・ナナミとの交流が楽しめる内容で、
PC版には無かったゲーム性を持たせたストーリーを追加し、同じくPC版には存在自体なかったイベント・イベントCGを追加。
知育ソフトとしても恋愛シミュレーションとしても遊べる内容で、
年齢レートとは無縁な学習ソフトとしては異色とも言える『CEROB』と認定されている事にも納得がいくだろう。
さらにヒロイン・ナナミの声に竹達彩菜(けいおん!の梓、俺妹の桐乃など)、
主人公とナナミの邪魔をする謎のアンドロイド・レイナの声に中原麻衣(ひぐらしのレナなど)を起用。
声優の人気も後押しして(抽選で竹達・中原のサイン色紙プレゼントもあって)、
発売初日にはAmazonのゲームベストセラー部門・DS・ホビー実用部門で第1位を獲得した。
以上の様に一つで二度おいしいゲームのはずだったが、いざフタを開けてみると、
学習ゲーとしてもギャルゲーとしてもクソさや手抜きがボロボロと出てくるクソゲーである事が判明した。
まずは学習面から。
TOEICに出題される問題と同じ全7項目の問題が4択または3択で出題されるのだが、
問題数が全部で499問と少なく、ひたすら問題を解いていけば5日で終わってしまう。
(しかも発売から4ヶ月近く経つのに、公式では未だ全576問と紹介されている)。
しかも全26問と最も問題数が少ない『説明問題』では、問題が2問ダブって収録されているため、実際には24問しかない。
正解とされる選択肢の内容が間違っているという、問題の誤りも見つかっている。
さらに理解しやすい様にスラッシュリーディングを用いている和訳もあるのだが、
肝心の和訳の出来が悪く、意味がわかりにくい。
問題数が少なくても、繰り返し学習する事に意味があるので問題はないはずだが、
困ったことに選択肢の表示される順番が常に固定。
答えがBの『did I』ならば、次回以降も『did I』は必ずBの欄に表示されるため、
英語を覚えるよりも先に問題の位置を覚えてしまう。
問題文や選択肢だけ見て、反射的に答えがわかるひどさだ。
またTOEICテスト対策ソフトでありながら、PC版では搭載されていた、
実際の試験と同じ時間・問題数で本番に向けた学習ができる「模擬問題モード」を削除。
代わりに「レベル診断」という機能があるのだが、たった8問しか出題されない。
しかもレベル診断専用の問題ではなく、トレーニングで出た問題がそっくり出題される。
PC版と同じは無理としても、8問はあまりにも少ない。
実際のTOEICテストに挑めるだけの力を身につける事は難しく、対策ソフトとしてはあまりにお粗末な作りである。
また操作性にも難があり、文字が1行ずつしかスクロールできず、
スクロール速度もやや遅いため、長文や和訳・解説を読むのに一苦労。
特に長文を読んで答える『読解問題』では、問題が長文の最後に出てくるので
長文を読み返したり問題内容を再確認するのがとにかく面倒くさい。
下画面にはスクロールバーがあるのだが、画面端ギリギリにあり、幅もタッチペンよりもわずかに細いので
操作するには画面の縁にペンをすりつけながらではないと操作できない。
一方、少ない問題数とは対照的に、収録単語数は4,005語、熟語数も999語とボリュームがある。
これらを集中的に学習できる「単語学習」コースでは、
『見る学習』『聞く学習』『書く学習』『(クイズ形式の)選ぶ学習』と、様々な面から単語を学習できる。
しかし単語帳として使えるはずの『見る学習』は全223ページもあるのに
検索機能が搭載されてなく、最初の一文字から探し出すインデックス機能もない。
さらには最後のページから見ていく機能も搭載されていないので、Zから始まる単語を見たい時は苦痛でしかない。
また『書く問題』は一文字ずつスペルを書いていくのだが、誤認識が激しい。
丁寧に書かないとtと書いてもTやfなどと誤認識してしまう。
特にl(小文字のエル)とI(大文字のアイ)がひどく、小文字で書かないと正解と判定されないので、
excellentなどlが続く単語はもれなく苦戦を強いられる。
続いてもう一つのポイントとなるギャルゲーとして、ナナミの育成に関することについて。
ナナミは問題に正解すると経験値が入り、ゲージがいっぱいになるとレベルアップし、
イベント発生、アイテムがもらえる仕組み。
英語が苦手だけど声優目当て、ギャルゲーのつもりで購入した人の救済策としてか、
単語学習を使用しても経験値が入るようになっているのだか、
これが選んだだけで入ってしまう。
学習内容を選ぶだけで入るので、学習をしたかどうか判定し難い『見る学習』はともかく、
『選ぶ学習』では一問も選択することなく、『書く学習』では一文字も書くことなく、
『聞く学習』では音声を流すために再生ボタンを押さなくても、
大量の経験値が入ってしまうのだ。
つまり学習をしたつもりで経験値が入ってしまう。
入る量が多い分エネルギーの消耗も激しいが、入る経験値とエネルギー消費量の比率は問題に正解した場合とほぼ同じなので、こちらの方がてっとり早い。
これだけだとナナミから告白されないが、好感度を最高まで上げておいて(比較的簡単に上がる)
後は単語学習のお世話になれば、どれだけ正解率が低くても問題なく告白される。
そんなこんなで進めていくとレベル11でレベルMAXとなり、あっさりとストーリーモード終了。
ここまで一日30分程度やってもわずか2週間程度。英語が苦手でも3週間あれば到達できる短さだ。
本作から初登場となるサブヒロイン・レイナについても、誰が彼女を未来から送り込んだのか、
裏切って主人公達の仲間になったのに何故追っ手が来ないのかなど、謎が何一つ解明されていない。
さて、ストーリーモード終了後も引き続き学習はできる。
イベントもこの時点で半分くらいは埋まっていない。
「なんか呆気なく終わったけど、まだ続けられるみたいだし、残りのイベントとアイテム回収してくるか」
多くの人がそんな風に軽く考えてゲームを続けるだろう。
しかしこれからが、特に購入者の大半を占めるであろう萌え目的で遊んでいる人にとって、
1年にも及ぶ苦行の始まりである。
ストーリーは2~3週間で終わるのに、イベント回収に1年かかるなんて、誰が予測できただろうか。
25あるイベントのうち8個がDSの時計機能と連動し発生するのだが、
その発生する期間は1~12月と長々と1年間にも及ぶ。
さらに8個中5個は、祝祭日とは全く関係のない平日に開催されるので、いつ発生するのか特定するのはまず不可能。
いつ発生するかわからないイベントを求めて、プレイヤーは毎日電源を入れ続けるハメになるのだ。
さらにレベル・相性がある程度上がっていないと、対象の日に起動してもイベントは発生せず、
イベント同士の間隔が空いているので、始めた日が悪ければ2ヶ月やり続けてもイベントが発生しない事もある。
毎日学習させる為の魂胆だろうと思うだろうが、その一方で
繰り返し学習する事を促すのにもっと効果的なはずの「トータル●問解いた」のご褒美アイテムが、
序盤から気前よく発生していたのに、1,500問で何故かピタっと止まり、それ以降もらえなくなる。
プレゼントするアイテムが足りないなら、時折2個上げているのをバラして振り分ければいいだけの話。
また未来のリーダー以降はレベルがMAXなので、モチベーションは著しく低下。
開始時にナナミが話しかけてくることもあるが、日常会話は種類が少ないので、
同じ事を何度も言われる事もある(ちなみにボイス無し)。
たまに出題してくるクイズも(問題文・解説はボイス無し)、やはり種類が少なく、
同じ問題を2日続けて出題される事もある。
声優目当てで購入したのに、下手すると起動時しか声を聞く機会が無くなり、
毎日やり続けるのはただただ作業であり、苦行でしかない。
なお、こんなものを作っておきながら、スタッフロール及び取説には、
「声の出演」「イラスト」「BGM & SE」(あと主題歌)しか名前が出てこない。