2010年ワールドカップ南アフリカ大会で日本代表チームの奮闘により列島が熱狂と笑顔に包まれた。
だが光あるところに闇もまたある。クソゲーのチャンピオンを決定する戦いが、ひっそりと世間の片隅で行われていた。
その詳細は選評に譲るとして、ここでは主要作品のみを記述する事としよう。
前年度の覇者、「戦極姫」を発売したシスシステムソフトアルファーより発売された大戦略シリーズがこんにちは
大戦略シリーズと言えば古参ゲーマーの間では知らぬ者はいないほど有名な
冷戦時代〜現代を題材とした戦略シミュレーションゲームなのだが、その辺は信頼と実績の前年度覇者。抜かりはなかった。
まずはDS【現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜】(システムソフト・アルファー)だ
なるほど適切なサブタイトルであると言わねばならぬ。
本編は問題だらけで、チュートリアルに10時間という長さがお出迎え。
不親切な説明書やシステム、表示も操作性も褒める部分が何一つ無い劣悪なインターフェース。
1ターンに最大5分かかるAIの思考時間。
戦闘画面が意味不明だがそれ以前にユニット情報が理解不能で配置方法が分からない。
加えて空母や揚陸艦が港以外の場所で部隊を展開する方法が分からない。マジで分からない…
『数ヵ月後』に揚陸艦から部隊を揚陸させる方法が判明したが、結局、港以外の場所から空母の艦載機が飛び立つことはなかった。
メインシナリオでは、普通に進めていると突然別のルートに飛ばされ、あげくそのまま初期のシナリオに逆戻りして無限ループになってしまう。
ループから抜ける唯一残された攻略法が降伏し続け友好度を調節する「土下座外交」という嘆かわしいものである。
もはや軍事バランスどころか、ゲーム内容全てが崩壊していた。
続いてPSP【大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜】(システムソフト・アルファー)である
またもタイトルに偽り無しである。PERFECTに問題を抱えた本作がクソゲーという戦場の覇者として名乗りを挙げた。
説明のない意味不明なインターフェースや敵の思考時間の異常な長さは、悲しいかな毎度のことで驚きに値せず
カーソルを動かすだけで約1秒のローディングが入り、ラグで非常に操作しにくいという劣悪なキーレスポンスが光る。
何をするにしても重い処理が入るためか、ボタン押をしっぱなしにするだけでフリーズする危険すらある。
さらに別にステージクリア時、敵ターン終了時、戦闘終了時…など、あらゆるタイミングでフリーズが起こるので油断ならない。
PSP本体の動作も信用できず、味方の生産施設に突然名無しの部隊が配置されるがあり、この部隊を確認した瞬間にPSPの電源が落ちる。
愛用する機体をユニット編成できる「マイ部隊」は自軍として設置したはずなのに敵として出てくる時があり、
占領可能なマイ部隊を首都に置いた直後に裏切られ首都陥落で負けたりする。
もはや敵と戦っているのか仕様と戦っているのか己と戦っているのか分からなくなる怪作だ。
そんな大物二体の砲弾荒れ狂う中、夏の魔物は「おまたせ!」と言わんばかりに
大物2体と対等に戦う力を貯え戦場に降り立った。それは魔物…いや、覇王の降臨であった
PSP【ハローキティといっしょ! ブロッククラッシュ123!!】(ドラス)
ちなみに「ハローキティといっしょ」とは、“「超キティラー」と呼ばれるキティを愛してやまない女の子たち”を
様々なイラストレーターが描いていくというサンリオウェーブの新プロジェクトであり、あくまでもメインはキティちゃんでは無い。
どうかキティちゃんを嫌いにならないで欲しい。キティちゃんは仕事を選ばないだけなのだから
このブロック崩しゲームにはバグがある訳でも無くキャラクターも可愛い。
この作品の恐ろしいところはその難易度と理不尽さに集約される。
まずボールの挙動がおかしい。操作するパドルの端で打ち返そうとするとボールが上ではなく下に跳ね返っていく
それ以外にもブロックの角にボールがぶつかると真下に反射する。ゲームによっては同様の挙動は存在するが
このゲームはこれに加えてパドルの操作性が悪い為その予想した反射角との差に操作が追い付かない。
また画面手前に勢いよく反射するブロックが設置されている面もある。この理不尽さをボーリングで例えると
1m先にあるピンに球を当てた瞬間ガーターしている。ありのまま今起こった(ryと気が付くとジョジョで例えている程である。
前半はまだ普通のブロック崩しだが後半は気が狂ったブロック崩しになっている。
このゲームは最高のテクニックと最高の運を持ったものにしかクリア出来ない。
アイテム入手により難易度が極端に変わるため良いアイテムを引く事が出来ないとクリアが困難な面もある。
射撃系アイテムが存在すればゲームとしてもっと快適な物となったであろう。しかし射撃をゲットしているのは敵の方であった。
ブロック崩しなのだが砲台や敵が弾を撃ってくる。敵が撃ってくるブロック崩しは存在するが、このゲームは一味違う。
弾を撃ちながら動きまわるターゲットに50発ボールを当てて撃破するとクリアという面。ボールの軌道と敵の弾が重なるとミス確定。
暗闇の中スポットライトに照らされたボールとパドル部分しか見えない面。この面は目視確認出来ないブロックが配置されているだけでなく
砲台までもが設置されいて暗闇なのに撃ってくる。その中で見えない球を避けなければいけない理不尽さはさながら心眼育成ギブスである。
極め付けは当たると方向が変わる矢印ブロック6つをすべて一定の方向に揃えるというもの。操作性も相まってクリアは困難を極める。
しかも矢印はボールが当たる度に方向が変わってしまう。結果の出ないその様は積み上げてもすぐ崩される「賽の河原」に例えられた。
このゲームは1キャラ12面をクリアすると特典としてキャラクターイラストを入手する事が出来る。
思い出して欲しい。このゲームは後半の難易度がおかしいのだ
そのためそのクリア特典を楽しむ事は困難を極める。エベレストの頂上に給水ポイントがあっても理不尽でしか無いのである。
しかしこのゲームはネタとしても優秀だった為、覇王だ鬼帝だと持て囃され愛された。
ようこそクソゲーの世界へHello!KOTY!
鬼帝の話題に湧いていた頃、次第に選評が充実し始め
今年はなかなか豊作なのではないか?そのような実感が生まれつつあった。
それを確信させるかのように新たな武将が携帯アプリからの移植される形で現れた
DS【天下一★戦国LOVERS DS】(ロケットカンパニー)CERO:D(17歳以上対象)である。
ジャンルは大河系恋愛アドベンチャー。プレイヤー視点は女性で登場する数々の歴史上の偉人がその恋愛対象のゲームである。
こちらは携帯ゲームからの移植であるが、なんとこのソフトは5040円のフルプライスでありながら携帯版の体験版とも言える内容であったのだ。
本作は攻略キャラ9人の内2人までしか完結編は入っておらず、残りの武将7人の結末は「続きは携帯版で!(有料)」となる。
ストーリーも全10章あるが1章辺り5分で読み終えることができ、プレイヤー置いてきぼりでストーリーが進んでいく。
特定のキャラを攻略するにはあるキャラを踏み台にして寝取られENDを狙うしかない。
章の終了時にシナリオの進行状態を評価して教えてくれるが、オートセーブされてしまい章セレクトもないのでほとんど意味がない。
操作性や仕様はDSの利点を捨ててまで移植前の携帯アプリ版を再現すると言う無駄な移植度の高さには感心するしかない。
フルプライスで携帯アプリ版の有料体験版とは「薄い」の一言で済まされる問題ではないだろう。
年末12月16日
今年の大賞は何になるのだろうかと議論が進んでいた頃、その議論を振り出しに戻す怪物が現れた
DS【どんだけスポーツ101】(スターフィッシュ・エスディ)
ファミ通クロスレビューにて5・6・4・3計18点を叩き出し俄然注目された本作は
世界のスポーツ101種を楽しめるという海外ゲームのローカライズ版である。
しかし、このゲームのクオリティーは携帯アプリ以下でありスポーツのルールが反映されていないものすらある
ゲームはお粗末なもので、敵も味方もいない孤独な「カーリング」、トスだけの「バレーボール」
塵も積もれば山となるという諺があるが、悲しいかなその山は塵なのである
実は12月16日発売されたのはそれだけではない
DS【プーペガールDS2】(アルヴィオン)
このゲームこそが議論を振り出しに戻した怪物である
本作は着せ替えゲームというジャンルで
前作は問題が無かったゲームの続編であるにもかかわらずゲーム内容を破綻させて帰ってきたのだ
ピンクとミントの2バージョンあり、それぞれに違う特典がある、と販促をかけたにも関わらず
その特典を得ようとするとDSが2台必要という事が発覚する等、最初から怪物っぷりを見せつけた。
このゲームはお金の代わりにリボンを貯めて→服を買い→着せ替えて→街に出るとステキと評価されそれがリボンになる。
これが主なゲームのサイクルとなる。
ショップの服は可愛いため購入意欲が湧き、着せ替えたいと思わせる魅力がある。しかし現実はどうであったか…
UIが不親切で着せ替えるのも一苦労。着替え画面で拡大するとフリーズ。アイテムを身に付けると他のアイテムが消える
拡大しなくてもキャラが崩れグロ画像と化し、付けたはずのアクセサリーが付かなかったりする。
服を買うにしてもレートがインフレ化し後半の高価な服を買うには1000回近くステキと言ってもらわなくてはならない。
それに加えROMカートリッジであるのに何故かロードが多発する。ステキを集めるために数をこなさなくてはならない様は
「スライムしか出ないドラクエ」に例えられ、本スレでは「ステキ集めの苦行」と恐れられた。
大きな収入源となるファッションショーは定期的に発生すると説明書に書いてあるが1度しか開催されず、得られる報酬も0リボン。
このゲームはプレイ時間が22時間に達するとリボンをご褒美報酬として貰える。苦労するだけにこれは嬉しい。
画面に表示される-15536リボンゲット 「はい」
まさかのマイナスである。なぜ選択肢に「いいえ」が無いのか…
理不尽にも受け入れるしかないのだが、これによりリボンがマイナスになった状態で外に出るとしっかりフリーズ。
発売元は、この対策としてリボンが獲得できる隠しパスワードを先行公開したが、それすら一部が入力済みとして無効になる始末。
Poupee (人形)を着せ替えるゲームであったがこれではPoopである。 Poop(糞・おなら・馬鹿・疲れる・止まる)意味を着せ替えてみてね!
最後まで一切気が抜けなかったクソゲーラッシュ
戦いは白熱したが議論を経て行くうちに、自然と
『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』『プーペガールDS2』の三つ巴となっていった
しかし誰が予想しただろう。なんとキティの評価が最後の最後に見直されたのだ。
全123ステージというボリュームと多様なコンセプトのステージ構成。
短期間で全クリを目指すと地獄を見るが、セーブとリトライが優秀で快適な為
反射が急なブロックやアイテム入手の問題などもリトライが前提ならそれ程理不尽でも無い
1面に要する時間は3分程度でありちょっとした空き時間に挑戦する事も出来る。
また高難易度の面がゲーム内の一部に止まっているいる点。前半が高難易度であったなら更に評価されただろうに。
残る問題は、高難易度の為キャライラストが入手出来ないという理不尽な点だが、どうしても欲しいのであれば
ゲーム発売と同時にPSストアにて1枚50円で購入可能である。
これらによりゲームの一部では無くゲーム全体の問題点で勝負する他作品に対し、鬼帝は一歩後退する形となった。
その結果最終的に大戦略とプーペガールの一騎打ちとなったのであった
緊張感のある議論の末に見事2010年クソゲーオブザイヤーに輝いた作品は、
【プーペガールDS2】である。
授賞理由はゲーム性を満たすサイクルが裏切りで構成されていた点にある
リボン入手手段がバグを生み、頑張って可愛い服を手に入れてもグラがバグる。挙句-15536リボン
着せ替えゲームの筈が、ゲームサイクル全てにその行為を阻害する要素が盛り込まれる始末
子育てをしたいのに出産を繰り返させられるような苦行である
前作にある程度満足し安心して続編を買ったユーザーすら裏切る形となったのは見事だ
何よりこれを着せ替えゲームとして売った事が一番の問題である
一方惜しくも敗れた大戦略であるが
こちらもとんでもない量のバグを搭載した化け物であった。バグだけならこちらに軍配があがるだろう。
しかしプーペよりも遥かに複雑であるシミュレーションゲームというプログラムの結果生まれたバグである
そのためバグの質としてプーペの方が劣悪であるという点が評価された。
ましてプーペはゲーム性の全てにバグを挟み込んできている。
大戦略は前作もバグが多かったが、プーペは続編だが何故かバグを山盛りに搭載して帰って来た点
それより何よりも本家プーペガールは『無料』である事も見逃せなかった。
もちろん、今年のノミネート作はこのハイレベルな年にあってどれも大賞にしても惜しくない出来栄えで
正直、他の候補作を切るのは断腸の思いであった。それほどまでに今年は豊作であったのだ。
振り返ってみれば、今年はどこかゲームを出し急いだ一年だったのではないかと思う。
大戦略ももう少し待てば、戦極姫2程度には動いたかもしれない。マニュアルをちゃんと充実できたかもしれない。
ハローキティもゲームバランスを調整することもできただろうし、新しいイラストを描くくらいできたかもしれない。
どんだけスポーツは作りこむ時間は増やせただろうし、
大賞作プーペガールは一通りチェックしてみる暇くらいできただろう。
しかし、どこもそれができなかった。
不況と言われる昨今、立ち止まったら倒れてしまう恐怖心と戦ってゲームを作っているのかもしれない。
しかし、企業はそんなときほど誰かが立ち止まり、時には冷静に周りを見る姿勢が求められているのではないだろうか。
最後に、日本で一番有名な先生
金八先生の言葉を送り、総評を締めくくりたい。
「正しいという字は「一つ」「止まる」と書きます。どうか一つ止まって判断できる人になって下さい」
2010年ワールドカップ南アフリカ大会で日本代表チームの奮闘により、列島は熱狂に包まれた。
だが光あるところに闇もまたある。
栄光の裏で、前年に修羅の国からの核爆弾『戦極姫』の炎に包まれ焦土と化した携帯クソゲー界では、それでもなお、
荒野に芽吹く強靭な作物のように、多くの突き抜けたクソゲー達が排出されようとしていた。
携帯ゲーム板クソゲーオブザイヤー2010の開幕である。
それでは早速、厳しい選考を勝ち残ってきた代表達を紹介しよう。
まず選評が届き大賞候補に躍り出たのは、恒例となった夏の怪物、
ドラスが販売した『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』である。
一見女児向けのゲームと勘違いしてしまいそうだが、キティちゃんを愛する超キティラーと呼ばれる女性キャラクターを、
人気イラストレーター達に描いてもらう「ハローキティといっしょ!」という企画の一環で、
どちらかと言えば大きいお友達向けの萌え絵と、古豪の安牌ジャンルと言えるブロック崩しとを抱き合わせたゲームである。
しかし、ただ萌え絵を見てもらうだけで良かったはずのこのゲームは、「安牌」など死語と言わんばかりに突き抜けていた。
では早速、ブロック崩しとしての挙動の問題点から見ていこう。
まず、ボールがブロックの角に斜めに当たった場合に、元来た方向や垂直方向に反射するという、
物理法則的には間違っていないが、ブロック崩しでは起きて欲しくない反射が頻繁に発生し、
プレーヤーは終始ボールの挙動に振り回されることになる。
また、プレーヤーが唯一操作できるパドルも、ボールと共に物理法則に忠実なため、
パドルの端でボールを拾おうとすれば容赦なく下へ弾かれミスとなる。
さらにこのパドル、移動速度がボールとほぼ同じと妙に遅く慣性まで付いており、
機敏な反応はおろか、ボールを追い抜き落下地点で止まるという基本的なことすらままならない。
果たして、ブロック崩しの基礎となる要素が、揃いも揃ってブロックを崩させまいと働くという、異様な世界がここに顕現した。
…これは本当に「ブロック崩し」なのだろうか。
勿論そればかりではなく、ステージもかなり力が入った意匠となっている。
常人では反応できない速度でボールを跳ね返す反射ブロックがただ配置されるのは初歩の初歩で、
その反射ブロックをパドルの至近距離に設置するなど、さりげない気遣いも忘れない。
不自由なパドルに1発当たると即1ミスとなる弾幕を張る砲台ブロックも濫用されており、ボールとパドル周辺以外が暗闇で隠され、
その暗闇で砲台が放つ敵弾まで隠されようものなら、もはや弾幕シューティングどころの騒ぎではない。
兎にも角にも、各ステージに理不尽とさえ言えるギミックが盛り沢山で、プレイヤーを殺す気に満ち満ちている。
類稀なる才能と弛まぬ努力、そしてそれを超える幸運を引き当て、理不尽ギミックのほとんどを生き延びた歴戦の兵でさえ、
無尽蔵の弾幕を回避しながら、ボールが当たるたび方向が変わる矢印ブロック、それら6つの向きを既定の方向に揃えてクリアー、
という最難関のステージに辿り着き、自ら積んでは自ら崩す「セルフ賽の河原」と喩えられるほどの鬼畜ステージを以ってしては、
終に幾多ある先人たちの屍への仲間入りを果たすしかないであろう。
…再度問おう、これは本当に「ブロック崩し」なのか。
なおこのゲームは、苦しい道程を乗り越えれば萌えの楽園に辿り着ける、などという安易な妄想も許してはくれない。
抱き合わせられた大友向けイラストは既出の物の寄せ集めで、そればかりかテキストすら一切存在せず、
ゲーム内で貰える各キャラクターのカスタムテーマも、より汎用性の高いものがPSストアにて1つ50円と絶妙な価格で、
しかも本ソフトと同時にひっそり配信開始、と、負のサポート体制のみ厚く迅速で、
「ブロック崩し」から逃れ「キャラゲー」として価値を見出し生きる道すら、予め周到に絶たれている。
購入してしまったプレーヤーには、ただもがき苦しみ死ぬ運命しか残されていない。
一通り述べた理不尽さの一方で、本編以外のシステムの快適さやバグの無さに関しては、近年KOTY稀に見る良好さを見せている。
しかしこの作り込みこそが、逆に、理不尽全てが見逃しやミスではない「公認の仕様」であるという観測の裏打ちとなり、
このゲームの救いのなさをより一層際立たせている、と言ってしまっても過言ではないだろう。
これらの、公式サイトにある謳い文句通りの非情にハードなゲーム性は多くの支持を集め、
KOTYスレでは「覇王鬼帝」や「鬼帝」など、素敵な愛称で呼び親しまれる事となった。
続いて届いた選評は、昨年の王者システムソフト・アルファーが放つ爆弾『現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜』。
発売自体は鬼帝よりも半年近く早かったのだが、バグによりシナリオが無限ループし、
クリア不能なため選評が遅れたという曰く付きの作品であり、その実体は現代どころか云十年前で時が止まったかのような代物だった。
実際にプレイしてみると、ユニットを全く動かさなくてもクリアが可能なステージが存在する一方で、
無限ループバグを回避しクリアするためには、戦闘開始直後に即降伏する「土下座外交」が事実上必要不可欠など、
SLGの根幹を成す「戦略」がメタ的に要求されるため、本作が軍事バランスよりもゲームとして崩壊していることがよく分かる。
上記バグのみでもノミネートに足る逸材であるが、もちろん他にも進行を妨げるバグを数多く搭載し、
インターフェースも劣悪で敵の思考時間がやたら長いと隙はなく、前年王者の貫禄を見せ付けた。
そのシステムソフト・アルファーの追撃『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』の選評が、間髪入れずKOTYスレへと届く。
この二度目のパーフェクトな爆撃は、前回のそれを越える勢いの突き抜けっぷりであり、さしものKOTYスレ住人も俄かに沸き立った。
もはやお馴染みとなった泥沼のような操作性、説明も碌にない不親切なインターフェース、CPUの1勢力数分という長考は当たり前。
デバッグもまともに出来ないとあれば、実機テストなどされるはずもなく、何をするにもロードが挟まる。
端的に言えば「ただプレイする」だけでストレスが募る仕様となっており、これだけでも嘆息に値する。
しかしご存知の通り、SSα波を浴びるあたって「ただプレイしたら」などありえない仮定であり、全き杞憂である。
では当然のように存在するバグ達を、簡単にだが紹介していこう。
まずは、ステージをクリアしたらフリーズ、他にも敵ターンが終わったらフリーズ、部隊の戦闘が終わったらフリーズ、
果てはただボタンを押しっぱなしにしたらフリーズ、つまりありとあらゆる場面でフリーズする危険性がある。
また、この作品にはマイ部隊というプレイヤーオリジナル部隊を編成する機能があるのだが、
部隊が損耗したままクリアすると現在値が最大値に上書きされたり、別の時には自国内で敵となってみたり、
そのままセーブすると取り返しが付かなかったりと、ひたすらバグの温床となっており、運用するだけでトラブル続きである。
他にも、自国生産設備に無名ユニットが発生してスペースを圧迫することがあり、
ましてやその無名ユニットに触れようものなら、PSP本体を巻き込み電源が落ちてしまう。
とにかく些細な物から進行に関わる物、心臓に悪い物までバグのオンパレードで、「ただプレイする」ことすらままならない。
そんなパーフェクトなクソが、三度同社から排泄され、産声を上げたのだ。
再びKOTYの覇者となるべくシステムソフト・アルファーが送り込んで来た両大戦略は、自身のみならずプレーヤーまでパーフェクトに崩壊せしめ、
「冗談の通じないクソ」というスタイルで、自社の携帯クソゲー界の雄としての座を確固たるものにした。
年末の魔物は今年もやってくる、悲しみを売り付けて儲けるために。
クリスマスも迫った12月下旬、ファミ通クロスレビューにて18点という低得点を叩き出した『どんだけスポーツ101』の選評が届く。
海外ゲームのローカライズ版であるこの作品、テニスからカニ釣りまで、101種類のスポーツを網羅したとんでもゲーム、とのことだ。
コンセプトを聞いただけで脱力してしまうが、言ってしまえば単なるミニゲームの寄せ集めである。
問題は、101種類の何れも携帯アプリゲームの出来損ないレベルで、その全てが例外なく面白みに欠ける、という事であった。
もちろん出来損ないであるため、スポーツの本来のルールをブン投げたり、物理法則を無視してみたりなどは平然と行われ、
無理に数を押し込んだ弊害か、はたまたそれ以前の問題か、ゲーム性の欠如は当然として事実上の重複さえ目立つ。
さらには種目を選ぶインターフェースが壊滅的、ゲームルールの説明まで投げやりと来れば、全てを通り越し再び脱力させられる。
ただただつまらないだけのミニクソゲー、それがこんだけ揃ったことで、遂には大きなクソの塊となり聳え立った。
しかしその巨大なクソと同日に、それすら翳む、突き抜ける臭気を纏った二匹目の年末の魔物が、この世に生れ落ちていた。
女性向け着せ替えSNSの大手であるプーペガールの、DS化第二弾となる着せ替えゲーム『プーペガールDS2』である。
前作は名前すら挙がらなかったが、今作では一気にノミネート作として名を連ね、携帯KOTY2010の大トリを飾る運びとなった。
SNSをゲーム化するとはいえ、ただ可愛い服を着せ換えることができ、その衣装で自己主張できるだけで一定の評価が得られる、
ただの「着せ替えゲーム」の順当な2作目…このゲームはそうなるはずだった。
しかしいざ蓋を開けてみると、2種類存在するバージョンの差別化不備から始まり、
ROMカートリッジにも関わらずロードが頻発しもっさり感全開、さらにはSSαにも匹敵する潤沢なバグを引っ提げ、
年端も行かぬ子供から大きな女の子まで、全ての購入者を纏めて無間地獄に蹴落とす、
魔物は魔物でも大魔王さながらの凶悪バグゲーへと、それは深化を遂げていた。
順を追って説明していくと、まずゲームの一種の特典ともいえる、本家プーペガールでアイテムを入手できるパスコード。
各バージョンで異なるはずだったこれが、実はDS本体依存の共通コードであることが発覚し、
まず両バージョン大人買いしたヘビーユーザーから悲鳴が上がった。
また本作の肝である着せ替え部分は、インターフェースが不親切であるばかりでなく、頻繁に画質が乱れたり、
場合によっては拡大するだけでフリーズを起こし、不吉な気配を漂わせる。
プレイを進めると徐々にバグが頭角を顕し、細かいものではゲーム内時間がすっ飛ばされたり停止したり
他にもゲーム内通貨であるリボンの主な収入源の一つであるファッションショーが一度で途絶えたり、
時にはキャラクターに約束をすっぽかされ、進行不能に陥ることすらある。
それら多数のバグや困難を乗り越えた先に、22時間プレイのご褒美が大きな「リボンのマイナス収入」に設定されている、
という極めつけの時限爆弾がある。
これで手持ちリボンが負数となってしまうと事実上の「積み」となり、新たな服飾品の入手するなどの、殆どの行動は禁じられ、
それまで入手できたアイテムのみで着せ替えで得る、スズメの涙ほどの収入で莫大な借金を返すことしかできなくなる。
メーカー側も上記22時間バグなどには一応の反応を見せ、機を見て公開する予定だったであろうリボンを大量に貰えるパスワードを、
一気に公開するなどの対応をしてみせた。
だが、一部ユーザーは正しく入力してもエラーとなってリボンを全て獲得しきれないなど、結果として対応は悉くお粗末なものと終わった。
結局、後に残されたのは、救われないクソゲーの被害者と、対応含め大きく評判を落とした開発元アルヴィオン、
そのとばっちりを喰らった本家プーペガールの三者と、あとは不幸な生まれのこのゲーム自身のみ。
この中に真に得をしたものは一人もおらず、このゲームが阿鼻叫喚の地獄を作り出す一際凶悪なクソであったことに、もはや疑う余地もないだろう。
以上5本の作品、『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』、『現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜』、
『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』、『どんだけスポーツ101』、『プーペガールDS2』らが、クソゲー頂上決戦へ出場する代表選手に選ばれた。
最後まで名前が挙がりつつ、惜しくも選考から漏れた『ゲームブックDS アクエリアンエイジ Perpetual Period』、
『天下一★戦国LOVERS DS』の両者らも、子細は省くが、この年に生まれなければ大賞を狙えたかもしれない力を持っていた。
ここで大賞を決定する前に、彼らを含む全七候補に惜しみない賛辞と罵声を送りたいと思う。
さて、本年はどの作品もそれぞれが違うベクトルに突き抜けているため丙丁付け難く、大賞選出は非常に混迷を極めた。
中でも、一切のバグなしに、全てをクラッシュたらしめることに成功した『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』、
数多のバグと救いようのないUIで、プレーヤーを打ち破り君臨した『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』、
2つあるバージョンに避け難いバグと粗末な対応を以って、この世の地獄を顕現させた『プーペガールDS2』、
これらスリートップは最後の最後、それすら超えて延長戦の中でも互角と言える戦いを繰り広げた。
果たして、度重なる議論の末に大賞へ選ばれたのは、『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』である。
ブロック崩しは、ビデオゲーム黎明期から既に確立されている、有数の歴史を持つ定番ジャンルと言え、今やフリーゲームとしてすら飽和状態である。
昨今のゲームはMB〜GBの容量を扱うのに対して、ブロック崩しは単純なものならソースにして数行から作成可能であり、
それほど高度な設計やプログラムを要求されるものでもない。
更には制作のノウハウも蓄積されているため、ただ調整さえ間違わなければそれなりの形になるという、まさに「安牌ジャンル」である。
それを、「究極のテクニック」と「至高の幸運」を同時に要求される、もはや笑うしかないほどの凶悪無比なクソゲーへと、
バグの一つもなしに転落させてしまった点が、まず他作品よりも頭一つ抜けていると判断された。
それと合わせて評価され、大賞に選ばれる決め手となったのは、この作品が持つどうしようもない「無価値、負価値性」だ。
「ブロック崩しのような何か」、「メタ戦略ゲーム」、「着せ替えゲームもどき」とでも言うべき、一見全て負価値な各候補だが、
『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』は、実在兵器による「燃え」や、マップエディタや兵器エディタを用いた箱庭ゲームに、
『プーペガールDS2』は「本家SNS用アイテム」のオマケや、僅かな手持ちアイテム内での着せ替えツールとして、
それぞれ僅かながら価値を見出すことができる。
しかし『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』については先述のように、「ブロック崩し」として、また「キャラゲー」として、
ブロックの代わりとばかりに破壊しつくされており、その様はさながら暗黒星雲に対するブラックホールのようである。
また、これだけの惨状を呈していながら、他の候補と違い見るものに後味の悪さどころか、ある種の爽やかな笑いすら提供できるという点も無視できない。
こうして僅差の中、延長戦にてまさかのハットトリックを決めた『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』が、年間MVP…もとい、大賞へと選定された。
振り返ってみれば、実力伯仲でハイレベルであった本年のクソゲーオブザイヤー。
ゲーム市場の主流が携帯ゲーム機に移ったと言われるようになって久しいが、それを象徴するような百火繚乱の様相を呈した。
最後に、長く続くブロック崩しゲームの歴史に「ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!」という
ひときわ突き抜けた金字糞を打ち立てたドラスへこの言葉を贈って、クソゲーオブイヤー2010を締め括りたい。
"Hello!KOTY!"