2013年 次点

概要

名称Megpoid the music♯
(メグッポイド ザ ミュージック シャープ)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B009P0IIU0/ [外部リンク]http://www.amazon.co.jp/gp/product/B009P0IHK6/ [外部リンク]
ジャンルリズムアクション
対応機種PSP
発売元アスガルド(Para Phray ) ※2
開発元Para Phray ※1
発売日2013年3月28日
価格通常版:6,090円(税込)
初回限定版:9,429円(税込)
対象年齢CERO:B(12才以上対象)


要点

リズムゲームとして

演出面

システム面

キャラゲーとして

選評

選評案その1

2013年3月28日

満を持して人気のボーカロイド「GUMI」を題材としたゲーム『Megpoid the music♯(メグッポイド ザ ミュージック シャープ)』が発売された。
(PSP メーカー/パラフレ、 価格/6090円(限定版9429円)
ダンスを踊り歌うGUMIを背景に、画面上に表示された譜面にそってボタンをリズミカルに入力していくリズムゲーム、いわゆる音ゲーである。
人気のゲームジャンルとボーカロイドが組み合わさり、著名な楽曲の収録やイラストレーターの参加によってこのゲームに対する期待は高まっていた。
しかしふたを開けてみれば、そこには何もかもが崩壊しているゲームしか存在していなかった。

収録された音声を自在に操作し自分好みの歌を作成する音声合成ソフト『VOCALOID』。
そのシリーズの一つである『Megpoid』のキャラ『GUMI』とそこから生まれた数々の楽曲を用いたのがこのゲームである。
人気を博した曲を3DのGUMIが歌い踊り、画面上に表示された譜面通りにボタンを操作するのがこのゲームの主目的となっている。
タイミングマーカーは画面の左側に固定され、右から左へと流れてくる表示ボタンと重なった瞬間にタイミングよく押す事で下部のゲージが溜まり、
一定量を保ったまま曲が終わればクリアとなる。(太鼓の達人と同タイプのゲーム)

ところが、この譜面と曲のタイミングがズレる現象が至る所で発生する。
具体的に言うとマーカーと曲のテンポが合わない事が多々あり、ボタンを押すタイミングがデタラメなのである。
このズレは起きる曲と起きない曲があるが、プレイを続けていくうちにどの譜面が正しいのか理解できなくなり
「BGMがプレイの邪魔になる」というとんでもない事態にまで発展する。

そこには複数の原因がある。
まずズレがある場合、曲全体と部分的に発生するケースがある。
曲によっては転調するものもあるため、その前後で派手にズれ出したり元に戻ったりさらに狂いだすこともある。
よって、どのタイミングでズレが起きるのかは実際にプレイするまでわからないのである。
これを回避するためには、正しいタイミングでボタンを押す事に専念すべく「BGMに惑わされない」という音ゲーの根幹を否定する遊び方をするしかない。
これに加えて、ボタンを押した際のSEが大きく、特に長押しを終えた後に素早く連続で鳴る効果音が見事なまでにリズムを狂わせる。
一応SEは複数用意されてはいるものの、中にはBGMが聞こえなくなるほどうるさいものもあり、上記の仕様と相まってオフにした方がマシと思える始末。
BGM、SE双方を否定しなければならない音ゲーというのも、なかなかシュールなものである。

結果的に譜面が合っている曲でさえもタイミングがズレているのではと疑心暗鬼になり、原曲のBGMを無視するプレイスタイルを強いられる。
このゲームをプレイ後に他の音ゲーで遊ぶと音感が完全に狂っている事が実感でき、音ゲーのゲシュタルト崩壊を見事に体現しているといえるだろう

このズレに追随して譜面の表記にも問題がある。
譜面も画面中央に表示され難易度によっては2〜4つのレーンが並ぶのだが、明らかに背後のPVを見づらくしている。
逆に言えば、PVによって流れてくるボタンが見えづらくもなっている。
表示されているボタンが太い白枠で囲まれているせいかかなりチカチカしており、流れてくるボタンを眺めているだけでも眼の疲労が実感できる。
さらには方向キーと○×△□ボタンとの同時押しの際は互いのレーンを跨いで太い白線が引かれ、これまたPVを潰している。
PV自体も、用意されたステージがどれも簡素すぎるためにまるで臨場感がなく、楽曲に対して種類も7つと少ないためにすぐに見飽きてしまう。
BGMで楽しませる気もなければ、画面でも魅せる気はさらさらないようである。

ゲーム自体の難易度設定にも難があり、基本的にゲームを楽しませる目的があるのか疑わしいところである。
先述したようにこのゲームは最大4つのレーンに方向キーと○×△□ボタンをそれぞれ表示され、長押しや同時押しをする場面もある。
しかし、同時押しは左右4つのボタンにそれぞれ4つのパターンがあり、全16パターンも存在している。
通常の8パターンと合わせて24種類のボタンの押し方があることになる。
しかし上記の画面の表記のせいでとても判別がしづらく、難易度が異様なほど高くなってくる。
さらにはタイミングのズレと相まって難易度が上がれば上がるほど譜面がズレる場面が増え、音ゲーとしての楽しさは微塵も感じられなくなる。
最終的にはクリアさせないために、BGMと合っていない無理難題な譜面を用意したのではと疑いたくもなる。

こうして音ゲーとしては根幹部分から崩壊している『Megpoid the music♯』だが、
ではGUMIを中心としたキャラゲーとしての評価はどうだろうか?

まず楽曲に関しては人気のある有名なものを多数採用している点は素直に評価できるだろう。
しかし、上記のズレのせいで「原曲を無視する」ことを是とする以上、すでに台無しとなっている。
これに追加して、全ての収録曲が90秒の長さに調整されているので、中にはこれから盛り上がるというところでブツ切りになるものもある。
また、キャラのモーション自体もダンサーの動きを取り入れているためダイナミックでなめらかであるが、
PVも譜面の表記で見えづらくなりプレイ中は見ている余裕もないため、これまた台無しになっている。
一応、音楽鑑賞やPV鑑賞モードはあるものの、ステージの安っぽさと曲のぶつ切りのせいでクォリティーが高いとは言い切れず、
純粋に楽曲やPVを楽しむのであるならば元の動画サイトへ足を運んだりCDを購入する方がいいだろう。

GUMIの日記と謳われているものは、ゲーム画面の切り抜き写真に数行のつぶやきを付随しているだけ。
GUMIルームも狭いスペースにただアイテムを配置するだけであり、その中をうろうろするGUMIを眺めるだけというチープなもの。
プレゼントもただ渡すだけで中身を確認するでもなく、おしゃべりにいたってはコミュニケーションが成立しているかも不明である。
一応ゲームの進行度合いや好感度によってGUMIのボーカロイドの音質が変化するのだが、
反応もボイスパターンも少なく、選択肢によっては「う〜ん」「うんうん」「うう〜ん」と繰り返したりする。
楽しく会話を交わすというよりも幼児プレイをさせられている感覚に襲われ、購入者をバカにしてるのかとさえ思えてくる。

評価点としては3Dモデル自体はそれほど悪くはなく、衣装データもそれなりに存在している(色違いでの水増し感はあるものの)
ただしゲームオリジナルものものが大半であり直接楽曲と関係ないものばかりであるため、誰得感がやや否めない。
また、パッケージをはじめとする各種イラストもどれもクォリティーは保証されており見応えは十分である。
ただし、収録枚数は決して多くなくすぐに見飽きる事になり、PSPの壁紙にする機能もない。
加えて公式サイトでほとんど見れてしまうため、これらを見るためにゲームをプレイする意味はあまりないかもしれない。


音ゲー、そしてキャラゲーとしても様々な面で破綻を見せつけた『Megpoid the music♯』。
人気のあるボーカロイドを素材とし、優秀な楽曲やダンスを取り入れながらもゲーム部分でそれらを潰すという、
キャラゲーとしてやってはいけない事を見事にやってのけているのである。
そして、楽曲を無視しながらプレイをするという、音ゲーとして斬新すぎるプレイスタイルを生み出すことにも成功している。
ボーカロイド「GUMI」の本格的なゲームを待ち望んでいたファンの期待を見事なまでに裏切ったのはもちろんのこと、
ゲームとしての楽しさえも否定していると思わしき仕様には、いささか頭が下がる。

またこのゲームはフリーズが発生することがあるが、放っておけば治る場合もあればリセットせざるを得ないこともある。
オートセーブ機能がないためセーブ前に発生するとデータが消えかねないので、タイトル画面に戻ってからのこまめなデータ保管をしなければならない。
ここぞとばかりに作業感を増すあたり、製作陣のこのゲームやGUMIに対する愛情は無かったのかとさえ問いたくもなる。


このゲームをプレイした後、『Megpoid the music♯』の「♯」が怒りで浮き出た血管に見えても仕方がないだろう
プレイしたものの心境を代弁する形で当ゲームのタイトルを『Megpoid the music 怒』に改題した方がよいのではないだろうか