2016年 次点
概要
名称 | Wizardry 囚われし亡霊の街 | |
ジャンル | 3DダンジョンRPG |
対応機種 | PSvita |
発売元 | アクワイア |
開発元 | アクワイア |
発売日 | 2016年2月5日 |
価格 | 通常版:3300円(税込) |
対象年齢 | CERO:B(12歳以上対象) |
関連動画
PV
選評
選評案その1
【】内は削除・変更予定
・概要
2011年に発売されたPS3ソフト「Wizardry 囚われし亡霊の街」の移植版。
本作はダンジョンに潜りひたすら敵を倒しアイテムを集める「ハック・アンド・スラッシュ」というジャンルのゲームであるが、終盤のバランスが非常に悪く、敵を倒せず結果アイテムも集められないという本末転倒な出来になっている。
問題点
・最終ダンジョン「グラハム迷宮8層」から始まるバランス崩壊。
一つ前のダンジョンでも「魔法無効エリアで前衛でも2発で倒される睡眠状態異常つき通常攻撃をしてくる雑魚敵が5匹+その他3匹」を倒さないと先に進めないということはあったが、擬似的なボスと見なせることもあり大きな問題にはならなかった。最終ダンジョンも7層まではパーティメンバーの職と装備を見直すことで厳しいながらも対応できた。
しかし、8層は次元が違う。
こちらが作成できる最速のキャラを用意しても先手を取られ、状態異常魔法でパーティ全員が行動不能にされて一人ずつ順に殺されるのはもはや当たり前。全体即死魔法1回でパーティが全滅することも珍しくない。
以前も状態異常魔法を使ってくる敵はいたが、成功率が低くたまに当たるだけであった。しかし8層からは異様とも言えるほど成功率が上昇しているのだ。
これは魔法だけでなく状態異常付与の物理攻撃も同様である。しかも物理攻撃は単発ではなく複数回ヒットするものが多いのだが、困ったことにその1回1回全てで状態異常の成功判定を行っているのかヒット数が多ければ多いほど状態異常にかかりやすくなる。レベルが上がるにつれヒット数も増える仕様のため、一部の敵は最大20回の成功判定をもつ即死攻撃というとんでもない通常攻撃をしてくることがある。もっとも、この敵は上述の状態異常魔法を頻繁に使う&後列なら通常攻撃をしてこないため、最大でも一人しか死なないこの攻撃は比較的マシな部類に入る。
こういった一匹でパーティを半壊、或いは全壊させられる敵が複数体、それも複数グループで出現するのである。
これに対し、プレイヤーが「戦闘中に」取れる手段は非常に少ない。
単体攻撃なら必ず最速で発動する盾役のスキルで庇えるが、魔法や攻撃の追加効果で行動不能系状態異常にかかると以降は庇えなくなるため機能停止する。仮に状態異常にならなくても敵の攻撃力が高いため生半可な育成では盾役が早々に倒され残りを一撃で倒されてしまう。据え置き選評の「死ぬ順番が変わるだけ」は言いえて妙である。グループ攻撃や全体攻撃などはそもそも庇えないため対策にならない。
また、必ず最速でダメージに対するバリアをはるスキル持ちの職もいるのが、このころになると敵の攻撃1発で壊れるためほとんど役に立たない。グループ/全体攻撃は最初の1~2人分しか防げず残りのメンバーはそのまま攻撃される…と、これも対策にならない。
以上、戦闘中に取れる手段はせいぜい死期を少し遅らせるほどの効果しかない。
なら戦闘外ではどうか。
例えば魔法無効化ゾーンに入るかダンジョンを脱出するまで効果が続く回避率UPの補助魔法がある。しかし、魔法に対しては無力であり物理攻撃も元々の回避率が高くないとヒット数とダメージが少しばかり減るだけで根本的な解決にはならない。
装備品の中には状態異常耐性を持つものがあるが、全身を耐性装備で固めても未装備の時と大した違いがない。
ではプレイヤーに残された手段はないのか。実は一つだけ残っている。
それはレベル上げである。
上記状態異常だが、レベルを上げることでほんの僅かだが耐性が上がる。Lv150までは目に見える違いはないが、それ以降は少しずつかかりにくくなっていく。Lv200を上回るころには効果を実感できるだろう。とはいえ、「今まで毎回のようにかかっていた」のが「半々ぐらいでかからなくなった」になるだけで状態異常が怖いことに変わりはない(とある動画にはLv290になると即死が効かなくなったという検証結果が載っている)。気絶に関してはそもそも耐性という概念が無いのか、どれだけレベルを上げても状態異常の確率はかわらない。
レベル上げの副産物としてHPも上昇する。転職を数回繰り返したキャラならばLv200前後でカンストの9999になるだろう。最大HPを増やす小技やバグもある。ただし、どれだけHPが高くても即死技には対抗できないし敵の攻撃力が高すぎるので気休め程度にしかならない。
Lv200が低すぎるんじゃね?と思われるかもしれないが、このゲームの最高Lvは299である。職にもよるが、Lv200なら3.5~4.7億、Lv299なら12億~15億もの経験値が必要になる。お金を経験値に変える「お布施」というシステムもあるが、これを使っても1戦につき手に入る最大経験値はせいぜい1人につき7万であり低レベル帯ではそのような効率は望めないため、Lv200なら約1万回、Lv299なら2万回の戦闘が必要となり時間にすれば数百時間はかかると思われる。ただし、それだけの時間を費やしても戦闘は安定しない。例え最高レベルでも気絶魔法を防ぐ手段はないため、敵が使ってこないことを祈るしかないのだ。
(なお、バグか小技か分からないがお金を増やすテクニックが存在する。これを使うことで1人につき8時間もあればLvをカンストさせることができる。…が、果てしなく虚しくなるだろう。)
結局レベル上げしても意味ないじゃん!と思われるかもしれないが、意味はある。レベルを上げれば敵の逃走率が上がるため、万が一敵に不意打ちをかけられても敵が逃げて生き残りやすくなる。また、こちらの逃走成功確率も上がるため、逃げ続ければクリア自体は出来る。そう、レベルを上げれば戦闘を回避しやすくなるのだ。また、エンカウント無効アイテムも存在するのでこれを取得できればもう敵に会うことはなくなる。DLCとして購入することも出来るため、アイテム運のない人も安心である。ラスボスは弱く少し育成すれば倒せるのでこのアイテムの入手はほぼクリアと同義である。
…しかし、何か忘れてないだろうか。このゲームの目的はシナリオクリアであったろうか。本作は一体何を楽しむゲームだったか。
・プレイの楽しみを奪うゲームの造り
本作最大の問題はこれにつきる。バランスの悪さはこの一要素に過ぎない。上記のようにレベルが低ければ問答無用で全滅させられる、逆に高ければ敵が逃げて戦闘やアイテム入手の機会が減ってしまうのだから、「戦闘やアイテム収集を楽しむゲーム」でこれは致命的ではないだろうか。そもそも終盤の敵とまともに戦うスタートラインに立つために通常で数百時間、小技を使っても50時間はかかるのため途中で目的を見失い飽きてしまう。一体このゲームはどうすれば楽しめるのか。
そうでなくとも必須職と不遇職に差がありすぎて誰でも似通った職構成になるパーティ。その一部必須職の最強候補武器が最初の街に売っているため買えばシナリオ3終盤まで楽々進めてしまうのでパーティが強くなっているか感じにくくなる。レベルを上げても主要ステータスを上げても影響は小さく、基本的に武器や防具を変えることでしか変化しない攻撃力や守備力。長いプレイ時間のわりにすぐ上限に達してしまい、その気になればLv1で完成してしまう主要ステータス。淡々とスイッチを探し進んでいくだけの退屈なダンジョン。アイテムそのものを売り、収集する楽しみを奪うDLC…と、細かい粗を挙げていけばきりがないのだ。
このゲームは一体どう楽しむべきなのだろう。本作は呪いにより霧に覆われた街やダンジョンが舞台でありその霧を祓い街を開放することが目的なのだが、是非「このゲーム自体の目的」にかかる霧も祓っていただきたいものである。
細かい不満
・説明書に記載されているのが操作方法のみで説明になっていない。職につく条件、善悪などの属性の意味、スキル効果といったキャラ作成/パーティ構成に必須の情報すら作中にないためキャラメイクですらどこかで調べるか運に頼るほかない。
・エフェクトの激しい魔法、特にグループや全体魔法を使うと処理が追いつかないのか処理落ちや一時停止する。
・処理落ちが激しく、移動に倍時間がかかってしまうダンジョンが複数ある。困ったことに、処理落ち状態で戦闘に入るとその戦闘中常に処理落ちしてしまう。セーブも同様に処理落ちする。
・毒や魔封じ以外の状態異常になったままターンが終了すると強制的に最後尾に回され隊列が崩れる。戦闘中に状態異常が回復すれば元の隊列に戻るが、状態異常のまま戦闘が終わると隊列が崩れた状態のままになる。そのため一々隊列を組み直さなければならず面倒。
・操作がワンテンポ遅れることが多い。特にアイテム整理している時に不便さを感じる。
・パーティにいない仲間は別れた街の酒場にのみいる。他の街だと呼び出せないため一々その街まで行かなくてはならない。なお、仲間が滞在している街が表示されることはないため己の記憶頼りである。
評価点
・モンスターグラフィックは素晴らしい。生理的嫌悪を煽るものからかわいいものや若干エロいものまで様々。
ただし、前半で出てきた敵が後半でLvだけ上がって出てくるということが多いため「またこいつか」となることが多い。色違いや差分レベルの差しかない敵もいる。
・モンスター図鑑で敵の説明を見ることが出来る。ステータスや耐性に加えてそのモンスターの小話まで載っていて情報は膨大。
【しかし、なぜかステータスはLv1のものしか載っていない。初めて登場するのがLv40のモンスターでも同様。そのため敵を倒すときに役立つかどうか分からない。】
また、アイテム図鑑も同様にあるが、こちらに小話はない。
・BGMも数こそ少ないが粒ぞろい。何度も、それこそ何度も聞くことになる通常戦闘BGM含めて手を止めて聞く価値あり。
・ダンジョンは基本的にBGMがない(あっても風がなるなどの環境音)が時折り犬の遠吠えや誰かが嘲笑う声が聞こえてくることもあり、どこか寂しく、また恐怖感を煽るつくりになっている。エンカウント無効アイテムを装備し、イヤホンで音を聞きながらダンジョンをただただ歩くということをしてみても面白いかもしれない。
・街でもダンジョン内でもどこでもセーブできる。…むしろできなければ投げ出すレベルの理不尽さなのだが。
・ロードは早い。
総評
【私は今回がWizardry初体験だったのだが、システム諸々を考えるとWizardryは短編或いは中編程度の長さで真価を発揮するゲームではないだろうか。】事実本作もシナリオ1までは特定の敵が強いだけでバランスの悪い凡作という印象であったし、シナリオ2も諦めつつも一応遊べる出来であった。しかし、シナリオ3まで無理矢理作った結果、敵が強いというよりもはや理不尽としか言いようがないほどバランスが崩壊し、そのゲーム性を否定するような作品となってしまった。敵を出現させなければ一応クリアはできるが、考えてみてほしい。道中に一切敵や敵弾が存在せず、ボスですら思い出したかのようにしか攻撃してこないSTGがあったとして、それが面白いだろうか。‘Wizardry Renaissance’と銘打つならせめて昔のつくりをそのまま再生すべきではなかったろうか。事実短中編として作られた前作は一定の評価をうけているのだから、本作もそれに習って作ればよかったのではないだろうか。加えて言うなら、すでにPS3版でクソであるという評価が固まっていたのになぜほぼそのまま移植したのか。せめてvita版として蘇らせることなく「過去の亡霊」としてひっそりと埋葬するべきだったのでは、と私は思う。
参考サイト
Wizardry 囚われし亡霊の街 wiki(http://www44.atwiki.jp/wizfan/pages/1.html)
KOTY Wizardry 囚われし亡霊の街ページ(http://koty.wiki/Wizardry)
参考動画
「囚われし亡霊の街」戦闘バランス検証動画(http://www.nicovideo.jp/watch/sm17210507)
図鑑のレベル1削除
どこかでレベル上げしないときつい
中編短編の推測削除
ガチプレイする気力を削ぐ