2010年 総評

2010年合成総評案1(プーペガールDS2)

2010年ワールドカップ南アフリカ大会で日本代表チームの奮闘により、列島が熱狂と笑顔に包まれた。
だが光あるところに闇もまたある。クソゲーのチャンピオンを決定する戦いが、ひっそりと世間の片隅で行われていた。
詳細は選評に譲るとして、ここでは主要作品のみを記述する事とする。

前年度の覇者、「戦極姫」を発売したシスシステムソフトアルファーより発売された大戦略シリーズの2作品である
大戦略シリーズと言えば古参ゲーマーの間では知らぬ者はいないほど有名な
冷戦時代〜現代を題材とした戦略シミュレーションゲームなのだが、その辺は信頼と実績の前年度覇者。抜かりはなかった。

まずは
DS【現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜】(システムソフト・アルファー)だ
なるほど適切なサブタイトルであると言わねばならぬ。
本編は問題だらけで、チュートリアルに10時間という長さがお出迎え。
不親切な説明書やシステム、表示も操作性も褒める部分が何一つ無い劣悪なインターフェース
1ターンに最大5分かかるAIの思考時間。
戦闘画面が意味不明だがそれ以前にユニット情報が理解不能で配置方法が分からない。
加えて空母や揚陸艦が港以外の場所で部隊を展開する方法が分からない。マジで分からない…
『数ヵ月後』に揚陸艦から部隊を揚陸させる方法が判明したが、結局、港以外の場所から空母の艦載機が飛び立つことはなかった。
メインシナリオでは、普通に進めていると突然別のルートに飛ばされ、あげくそのまま初期のシナリオに逆戻りして無限ループになってしまう。
ループから抜ける唯一残された攻略法が降伏し続け友好度を調節する「土下座外交」という嘆かわしいものである。
もはや軍事バランスどころか、ゲーム内容全てが崩壊していた。

続いて
PSP【大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜】(システムソフト・アルファー)である
またもタイトルに偽り無しである。PERFECTに問題を抱えた本作がクソゲーという戦場の覇者として名を挙げた。
実績のある説明のない意味不明なインターフェースや敵の思考時間の異常な長さは、悲しいかな毎度のことで驚きに値せず、
カーソルを動かすだけで約1秒のローディングが入り、ラグで非常に操作しにくいという劣悪なキーレスポンスが光る。
そんな事あるごとに重い処理が入るためか、ボタン押しっぱなしだけでフリーズする危険すらある。
さらに別にステージクリア時、敵ターン終了時、戦闘終了時…など、あらゆるタイミングでフリーズが起こるので油断ならない。
PSP本体の動作も信用できず、味方の生産施設に突然名無しの部隊が配置されるがあり、この部隊を確認した瞬間にPSPの電源が落ちる。
愛用する機体をユニット編成できる「マイ部隊」は自軍として設置したはずなのに敵として出てくる時があり、
占領可能なマイ部隊を首都に置いた直後に裏切られ首都陥落で負けたりする。
もはや敵と戦っているのか仕様と戦っているのか己と戦っているのか分からなくなる怪作だ。

そんな大物二体が暴れまわる中、夏の魔物は「おまたせ!」と言わんばかりに
大物2体と対等に戦う力を持った魔物、いや、覇王が降臨したのであった。
PSP【ハローキティといっしょ! ブロッククラッシュ123!!】(ドラス)である
ちなみに「ハローキティといっしょ」とは、“「超キティラー」と呼ばれるキティを愛してやまない女の子たち”を
様々なイラストレーターが描いていくというサンリオウェーブの新プロジェクトであり、あくまでもメインはキティちゃんでは無い。
どうかキティちゃんを嫌いにならないで欲しい。キティちゃんは仕事を選ばないだけなのだから

このブロック崩しゲームには目立ったバグがある訳でも無くキャラクターも可愛い。…しかし綺麗な薔薇には棘がある。
この作品の恐ろしいところはその難易度と理不尽さに集約される。
まずブロック崩しとしてのボールの挙動がおかしい。操作するパドルの端で打ち返そうとするとボールが下に跳ね返っていく
ブロックの角にボールがぶつかると真下に反射する。ゲームによっては同様の挙動は存在するが
このゲームはこれに加えてパドルの操作性が悪い為その予想した反射角との差に操作が追い付かない。
また画面手前に勢いよく反射するブロックが設置されている面もある。この理不尽さをボーリングで例えると
1m先にあるピンに球を当てた瞬間ガーターしている。ありのまま今起こった(ryと気が付くとジョジョで例えている程である。
前半はまだ普通のブロック崩し。後半は気が狂ったブロック崩し(なのかどうかも甚だ疑問だが)になっている。
このゲームは最高のテクニックと最高の運を持ったものにしかクリア出来ない。
アイテム入手により難易度が極端に変わるため良いアイテムを引く事が出来ないとクリアが困難な面もある。
射撃系アイテムが存在すればゲームとしてもっと快適な物となったであろう。しかし射撃をゲットしているのは敵の方であった。
ブロック崩しなのだが砲台や敵が弾を撃ってくる。敵が撃ってくるブロック崩しは存在するが、このゲームは一味違う。
弾を撃ちながら動きまわるターゲットに50発ボールを当てて撃破するとクリアという面。ボールの軌道と敵の弾が重なるとミス確定。
暗闇の中スポットライトに照らされたボールとパドル部分しか見えない面。この面は目視確認出来ないブロックが配置されているだけでなく
砲台までもが設置されいて暗闇なのに撃ってくる。その中で見えない球を避けなければいけない理不尽さはさながら心眼育成ギブスである。
極め付けは当たると方向が変わる矢印ブロック6つをすべて一定の方向に揃えるというもの。操作性も相まってクリアは困難を極める。
しかも矢印はボールが当たる度に方向が変わってしまう。結果の出ないその様は積み上げてもすぐ崩される「賽の河原」に例えられた。

このゲームは1キャラ12面をクリアすると特典としてキャラクターイラストを入手する事が出来る。
思い出して欲しい。このゲームは後半の難易度がおかしいのだ
そのためそのクリア特典を楽しむ事は困難を極める。エベレストの頂上に給水ポイントがあっても理不尽でしか無いのである。
しかしこのゲームはネタとしても優秀だった為、覇王だ鬼帝だと持て囃されハローキティをもじってHello!KOTY!と明るく迎え入れられた

鬼帝の話題に湧いていた頃、次第に選評が充実し始め
今年はなかなか豊作なのではないか?そのような実感が生まれつつあった。
それを確信させるかのように新たな武将が携帯アプリからの移植される形で現れた
DS【天下一★戦国LOVERS DS】(ロケットカンパニー)CERO:D(17歳以上対象)である。
ジャンルは大河系恋愛アドベンチャー。プレイヤー視点は女性で登場する数々の歴史上の偉人がその恋愛対象のゲームである。
こちらは携帯ゲームからの移植であるが、なんとこのソフトは5040円のフルプライスでありながら携帯版の体験版とも言える内容であったのだ。
本作は攻略キャラ9人の内2人までしか完結編は入っておらず、残りの武将7人の結末は「続きは携帯版で!(有料)」となる。
ストーリーも全10章あるが1章辺り5分で読み終えることができ、プレイヤー置いてきぼりでストーリーが進んでいく。
特定のキャラを攻略するにはあるキャラを踏み台にして寝取られENDを狙うしかない。
章の終了時にシナリオの進行状態を評価して教えてくれるが、オートセーブされてしまい章セレクトもないのでほとんど意味がない。
操作性や仕様はDSの利点を捨ててまで移植前の携帯アプリ版を再現すると言う無駄な移植度の高さには感心するしかない。
フルプライスで携帯アプリ版の有料体験版とは「薄い」の一言で済まされる問題ではないだろう。

年末12月16日
今年の大賞は何になるのだろうかと議論が進んでいた頃、その議論を振り出しに戻す怪物が現れた
DS【どんだけスポーツ101】(スターフィッシュ・エスディ)である
ファミ通クロスレビューにて5・6・4・3計18点を叩き出し俄然注目された本作は
世界のスポーツ101種を楽しめるという海外ゲームのローカライズ版である。
しかし、このゲームのクオリティーは携帯アプリ以下でありスポーツのルールが反映されていないものもある
敵も味方もいない孤独な「カーリング」、トスだけの「バレーボール」
塵も積もれば山となるという諺があるが、その山は塵なのだという事をこの作品では無視できなかった

実は12月16日発売されたのはそれだけではない
DS【プーペガールDS2】(アルヴィオン)
このゲームこそが議論を振り出しに戻した怪物である
着せ替えゲームというジャンルで前作は問題にならなかった本作であるが
続編であるにもかかわらずゲーム内容を破綻させて帰ってきた
ピンクとミントの2バージョンあり、それぞれに違う特典がある、と販促をかけたにも関わらず
その特典を得ようとするとDSが2台必要という事が発覚する等、最初から怪物っぷりを見せつけた。

このゲームはお金の代わりにリボンを貯めて→服を買い→着せ替えて→街に出るとステキと評価されそれがリボンになる。
これが主なゲームのサイクルとなる。
ショップの服は可愛いため購入意欲が湧き、着せ替えたいと思わせる魅力がある。しかし現実はどうであったか…
UIが不親切で着せ替えるのも一苦労。着替え画面で拡大するとフリーズ。アイテムを身に付けると他のアイテムが消える
拡大しなくてもキャラが崩れグロ画像と化し、付けたはずのアクセサリーが付かなかったりする。
服を買うにしてもレートがインフレ化し後半の高価な服を買うには1000回近くステキと言ってもらわなくてはならない。
ROMカートリッジにも関わらず何故かロードが多発し、ステキを集めるために数をこなさなくてはならない様は
「スライムしか出ないドラクエ」に例えられ、本スレでは「ステキ集めの苦行」と恐れられた。
大きな収入源となるファッションショーは定期的に発生すると説明書に書いてあるが1度しか開催されず、得られる報酬も0リボン。
このゲームはプレイ時間が22時間に達するとリボンをご褒美報酬として貰える。苦労するだけにこれは嬉しい。
画面に表示される-15536リボンゲット 「はい」  
まさかのマイナスである。なぜ選択肢に「いいえ」が無いのか…
理不尽にも受け入れるしかないのだが、これによりリボンがマイナスになった状態で外に出るとしっかりフリーズ。
発売元は、この対策としてリボンが獲得できる隠しパスワードを先行公開したが、それすら一部が入力済みとして無効になる始末。
Poupee (人形)を着せ替えるゲームであったがこれではPoopである。 Poop(糞・おなら・馬鹿・疲れる・止まる)意味を着せ替えてね☆

最後まで一切気が抜けなかったクソゲーラッシュ
戦いは白熱し議論を経て行くうちに、自然と
『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』『プーペガールDS2』の三つ巴となっていった

しかし誰が予想しただろう。キティの評価が見直されたのだ
全123ステージというボリュームと多様なステージ構成。
短期間で全クリを目指すと地獄を見るが、セーブとリトライが優秀で快適なため
数々の難易度や運もリトライで引き寄せ不思議のダンジョンと同様に突破出来る。
1面に要する時間は3分程度。その為ちょっとした空き時間に挑戦する事も出来る。
前半は簡単で後半が高難易度というある種普通の設定。これが逆なら大賞だっただろう。
問題は、高難易度の為キャライラストが入手出来ないという理不尽な点だが、どうしても欲しいのであれば
ゲーム発売と同時にPSストアにて1枚50円で購入可能である。
これらにより鬼帝は一歩後退する形となった。

結果最終的に大戦略とプーペガールの一騎打ちとなった

緊張感のある議論の末に見事2010年クソゲーオブザイヤーに輝いた作品は、
【プーペガールDS2】である。

授賞理由はゲーム全体が裏切りで構成されていた点にある
リボン入手手段がバグを生み、頑張って可愛い服を手に入れてもグラがバグる。挙句-15536リボン
着せ替えゲームの筈が、ゲームサイクル全てにその行為を裏切る要素が盛り込まれる始末
例えるなら子育てをしたいのに出産を繰り返させられるような苦行である
前作にある程度満足し安心して続編を買ったユーザーすら裏切る形となったのは見事である

一方惜しくも敗れた大戦略であるが
こちらもとんでもない量のバグを搭載した化け物であった。バグだけならこちらに軍配があがるだろう。
しかしプーペよりも遥かに複雑であるシミュレーションゲームというプログラムの結果生まれたバグである
そのためバグの質としてプーペの方が劣悪であるという点が勝敗を分けた。
ましてプーペはゲーム性の全てにバグを挟み込んできている。
大戦略は前作もバグが多かったが、プーペは続編だが何故かバグを山盛りに搭載して帰って来た点
それより何よりも本家プーペガールは『無料』である事も見逃せなかった。

もちろん、今年のノミネート作はこのハイレベルな年にあってどれも大賞にしても惜しくない
出来栄えで正直、他の候補作を切るのは断腸の思いであった。それほどまでに今年は豊作であったのだ。

振り返ってみれば、今年はどこかゲームを出し急いだ一年だったのではないかと思う。
大戦略ももう少し待てば、戦極姫2程度には動いたかもしれない。マニュアルをちゃんと充実できたかもしれない。
ハローキティもゲームバランスを調整することもできただろうし、新しいイラストを描くくらいできたかもしれない。
どんだけスポーツは作りこむ時間は増やせただろうし、
大賞作プーペガールは画面を一通りチェックしてみる暇くらいできただろう。

しかし、どこもそれができなかった。
不況と言われる昨今、立ち止まったら倒れてしまう恐怖心と戦ってゲームを作っているのかも
しれない。しかし、企業はそんなときほど誰かが立ち止まり、時には冷静に周りを見る姿勢が
求められているのではないだろうか。

あまりに豊作であった今年のKOTY
最後に、日本で一番有名な先生、金八先生の言葉を送り、総評を締めくくりたい。
「正しいという字は「一つ」「止まる」と書きます。どうか一つ止まって判断できる人になって下さい」