2014年 次点

概要

名称ゲームセンターCX3丁目の有野
ジャンルゲームinゲーム
対応機種ニンテンドー3DS
発売元バンダイナムコゲームス
開発元グレフ
発売日2014年3月20日
価格通常版:5480円(税込)(ダウンロード版も同価格)、限定版:7480円(税込)
対象年齢CERO:A(全年齢対象)

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PV

選評案その1

「ゲームセンターCX 3丁目の有野 選評」

ゲームセンターCX
有野課長がレトロゲームに挑戦、クリエイターへのインタビュー、ゲーセンや駄菓子屋訪問を行う、10周年を迎えたCSの人気番組である。
10周年と言う訳で武道館公演、映画化などをやっており、これまでにも『有野の挑戦状』を二作出しており、そこそこヒットしていた。

だが、本作は10周年に間に合わせたかったのか、別ゲーの開発をしていたインディーズゼロではなく、グレフ開発のゲームとなっている。
また、番組内で有野課長の無茶苦茶な要望を社員にぶつけるコーナーもなく、一方的にソフトを見せられるコーナーが続き、遂には1月から3月に延期。
そして、発売ごろには番組はシーズンの切り替わりと、GCCXファンは不安を隠せなかった。

そして蓋を開けてみれば、「バグもないし、遊べるのだが、とにかく致命的」と言うべき、有野課長も挑戦したこと無い様なとんでもないゲームとなっていた。

まずは、操作性について解説したい。
「ボタン操作とタッチ操作がごちゃごちゃ」。見ていてやる気を削がれる字面だ。
どういう事かと言えば、「3DS起動→タイトル画面、スタートボタンを押す(ボタン)→メニューを選ぶ(タッチ)→アドベンチャーパートの会話(ボタン)→マップ移動(タッチ)→自宅に入ってメニューやゲームを選択(タッチ)→ゲームをプレイ(ボタン)」
UIが悪いだけでゲームはクソゲーと言うが、タッチでもボタンでもOK、もしくはどちらかだけと言うゲームが多い中、ゲームとメニューの操作が入り混じってこうなったUIは非常に珍しい部類だろう。

本作は町を散策し、情報を集めるアドベンチャーパートと、家やゲーセンでノルマに挑戦するゲームパートに分かれている。
先にアドベンチャーパートを説明するが、たった一つの要素が命取りとなってしまっている。
それは、「どこでイベントが起きるのかをマークで説明してくれる」。
実に分かりやすくていい機能だ。だが、裏を返せばただの作業になりかねない。
そして本作では、案の定その問題点を打破出来ておらず、本当に作業なのである。
何かイベントが起きれば、適当にマークの付いた所をタッチ+ボタン連打で終了。以上。
この様な作業は序盤にしか存在せず、後半になるとこんなイベントすら起きはしない。あっても無くても嬉しくはないが。

ゲームパートでは、8本のオリジナルゲームのノルマをクリアしていき、有野少年を未来に返すのが目的だ。
下記に紹介する本作のゲーム達は、飛び抜けてクソではないものの、悪い要素が詰まっている。

ノルマがあるゲーム
ルーミーと魔法のホウキ→『マリオブラザーズ』が元ネタ。
・敵の攻撃が激しい割には、倒すのにも「下からブロックを叩く→ブロックが抜ける→抜けたブロックに敵が落ちる→B押しながら上を通過する」と、やや手間がかかる。
・硬いブロック、滑るブロック、ベルトコンベア、操作反転、飛び道具など、ルーミーの性能がマリオに毛が生えた程度の割には、いやらしい仕掛け・敵も多い。
・アイテムはランダムで一つ入手できるが、「時止め」「スロー」「全ブロック破壊」はどれもクセが強く、よく出る「スコア」は論外。アテになるのは低確率で出る「無敵」。

ウィングヒーロー→『スカイキッド』が元ネタ。横シュー。
・筆者は元ネタを未プレイだが、「本作のみが有する特筆事項は?」と問われたら、誰もが答えられないだろう。
一応、宙返りと斜め撃ちが不可能になっており、代わりに墜落中にマイクに息を吹きかけると復帰してくれる。が、この「ウイングヒーロー」はマイク機能なんて無いと思われるアーケードゲームだ。
「元ネタの要素を大きく削って、それをもっと微妙にした時代錯誤な要素をちょっとだけ追加した」と言えば分かりやすいか。
・家庭用を入手しないと、ゲーセンにあるゲームはフリーモードや自宅で遊べない。特にこれと『BREAKSHOOT』は入手条件が分からない。ってか筆者もまだ持ってない。

ソーマの秘宝→『ドルアーガ』が元ネタ。
・主人公の性能が低い割には、強化アイテム(遠距離攻撃、索敵範囲増加、スピードアップなど)を一個しか持てない。
・Bボタンを押すとハイドモードになり、『無敵状態+かくし通路が見える+面クリアに必須な、見えない宝箱が見える』と、まとめ過ぎな割には時間制限が厳しく、使いたい時に使えない。


ザウルスボーイ→『高橋名人』風『ロックマン』みたいなの。
・着ぐるみ(特殊武器)装備中は攻撃を受けても、着ぐるみを脱ぐだけで死にはしない。だが、食らった後の無敵時間が極端に少ない。結局死ぬ。
・後半ステージが鬼畜なのに、コンティニューはそのステージの頭から(1-3で死→1-1からスタイル)。
・ゲーム開始時に、飛ばせない上にちょっと長い演出が入る。『挑戦状』の『課長の名探偵』では、ディスクシステムっぽい動きを飛ばせたと言うのに……。
・岐部くん曰く、「性能の悪いマシンで制作した」との事だが、どのゲームもレゲーなのに音質・画質良好で、これの性能が悪いかはよく分からない。
・これと、『ブラドラ』は外注の作品。

BREAK SHOOT→元ネタは『フライングパワーディスク』。対戦ブロック崩し+PONGみたいな。
・アーケードモードでは、こちらが不利になる様な前哨戦をやらされる。
どういう事かと言えば、前哨戦でこちらは点数を取れないのに、相手は点数を取れる。しかも点先取制のスポーツゲーで。
・ディフェンダー(壁)を容易に復活出来るせいで、試合がダレやすい。

ゾリアテス→縦版『グラディウス』みたいな感じ。製作者自信アリらしい。
・特定の装備だと破壊できない物体があったり、それを抜きでも硬い破壊可能物がやたら多く、爽快感が薄い。
・シューティングだからかどうかは不明だが、コンティニューすると真ED見れません。
開発者曰く、「少し変化球的スパイス」もあるらしいが、↑みたいなのは嫌がらせの域ではないだろうか。

ブラッドオブドラゴン→FFっぽいRPG
・「ルーラ」も「リレミト」もないのに、大陸を駆け巡るお使いが多い。
・それでいて最初の街付近が、【港町←→迷いの森←→最初の村←→登山道←→城】と、どうもダンジョンを通らせたい構造。ダンジョンの構造も単純ではない。
・どういう訳か、テキストが読みづらい。
・中盤頃から雑魚は非常に堅くなり、火力もやたら高い。新しい地に着いたら雑魚に太刀打ちできないレベル。
・非常に攻撃が外れやすく、魔法すらよく外れる。三体に魔法を撃ったら一体にしか当たらないなんて事も。
・SFCっぽいゲーム機の、1991年発売ソフトの割に、三、四頭身の歩行グラで、殆どの名ありキャラには会話グラまで用意されている。

ネジマキングダム→元ネタは『神トラ』
・HPゲージはあるものの主人公はもろく、死体がフィールドに残るシステム。そのせいか機数を稼ぎやすく、ゴリ押しが効く。
また、死体が残るのはいいアイデアだが、ゲームデザインがそれを活かしきれていない。
・謎解き要素が非常に薄い。
・ノルマ挑戦中にADに助けて貰うと、詰んでしまう可能性アリ(後述)。

ノルマ関係なしのゲーム
DEFLINE→『BREAKSHOOT』のマイチェン版。PONGっぽくなっただけで大して変わらない。
登郎→カセットビジョンとかATARIにありそうなゲーム。
ジャンケンダーEX→ジャンケンマン。よく見ると、手首のLEDが細かくズレている。呆れるレベル。
スーパールーラー→ただのルーレット
チーズトンネル・ソードマン→ゲーム&ウォッチ風の液晶ゲーム。
10円ゲーム(3種類)→説明不要。弾いてあそぶ。
コロコロゲーム(4種類)→本体を傾けてあそぶ。
何故か、特定のゲーム挑戦中に、『ジャンケンダー』『スーパールーラー』でコインを稼がないと貰えない妙な仕様。

と、ほぼ全てにゲームデザインに微妙な点が存在する。
だが別に、ややクソ要素が強い程度なら我慢できるものだろう。
しかし、この五つの問題点がゲームのつまらなさを冗長させている。

1.「ゲーム周りのUIがひどい」
本作では『ゲーム内ゲームのリセット』『攻略法確認』『ノルマ確認』その全てが、ゲーム内ゲームプレイ中に不可能である。『挑戦状』では標準装備でした。
どういう事かと言えば、街を歩いて入手した情報をプレイ中に見たくても、ノルマの内容を確認したくても、いちいち「(ゲームを)おわる」を押してから確認する必要がある。
『挑戦状』ではリセットや電源OFFが簡単にかかる事について非難が集まっており、今作で改善されたものの、その代わりに失ったものが大きすぎた。

2.「ゲームにのめりこめない」
『挑戦状』ではすべてのゲーム内説明書が80年代特有の遊び心に富み、それっぽい事が書いてある。
また、作中のゲーム雑誌では「スタッフが編集部員に」「裏技記載」「どうでもいい記事」など、それっぽい事が書いてあった。

だが、本作のゲーム説明は味気ない。説明書はなく、簡素な操作説明で一画面分。ゲーム雑誌は存在すらしない。
登場人物が増えたのもいいが、その辺をふらついても誰もゲームの話などしてくれない。ゲームの噂で持ちきりなのはアドベンチャーパートの一部だけで、80年代の街の再現にまで至っていない。
おかげで、レトロゲームの雰囲気再現とは縁がなくなっている。

3.「友達の家感皆無」
『挑戦状』では、下画面で口うるさい有野少年と主人公を後ろから眺めながら、「友達」の目線でゲームが出来た。
だが、本作の視点はテレビ側からであり、ここから気持ち悪いグラの人間二人を見て何を思えと言うのか。
しかも、有野少年は『電源オン』『ゲームオーバー』の時くらいしか喋らない。喋って存在を思い出すレベル。
『挑戦状』では、「ありのうるさい!」とスタッフの子供の意見が『2』で反映され、更にヒートアップした有野少年の言動をON/OFFできた。
一方今作は、「ONにしても全然喋らないし、そもそもOFFにする事もできない」と駄目なところの両取りをしている。

4.「裏ワザを使わせてください」
本作では全体的にゲームの難易度が高い割に、裏ワザがあまり存在しない。
存在する裏ワザで楽に確認できるのは、『初回限定版DVD』での、『ザウルスボーイ』と『登郎』のみである。
では他の裏ワザはどうやって確認するのかと言うと、『特定のノルマ挑戦中に、ゲームオーバー連発orプレイ時間がかなり進んでいる』。
これでステージセレクトなどの特殊コマンドが攻略法リストに追加される訳だ。ここまで来ると裏ワザの入手が裏ワザである。


5.「ノルマ設定が適当」
『1』のノルマは特殊なプレイを要求され、中辛な難易度。
『2』はギブアップが出来る様になったが、挑戦もほんの序盤ステージで出来る程に簡単になり過ぎた。
本作では「一部でギブアップが出来るが、ノルマの設定がひどい」と言った感じ。

・『ソーマ』では『ステージ30到達』のノルマが存在する。ドラゴンを倒してワープすればいいのだが、狙わないと気付きにくい。
・『ザウルスボーイ』は、1ステージ3面構成のゲームだが、全てのノルマがステージ1のクリアを要求される。
ノルマはクリアするたびに、ゲームの電源がOFFになるため、最低でも1-3を四回も突破する必要がある。
・『ゾリアテス』最後のノルマは、鈴井名人(インディーズゼロの人)との対戦。その内容は、『ステージ2で約140万点以上取る』。
言うまでも無く、シューティングが下手な人には難しいノルマ。
ただし、何度も負けると鈴井名人が体調を崩し、「体調を治して再戦」か「体調不良で不戦勝。そして主人公優勝」を選べる。

他のゲームも大体こんな感じだが、特にイラつくのは上記三つだ。
一応、面倒なノルマもノルマによっては、ADに頼んで突破する事が出来る。
ただし、出来るだけ自分でクリアしようと思った自分が、面倒なので頼んだこの二つでの事例を書いておくと……
『ブラドラ・レベル13にする』→ADの協力でレベルは13になるが、金は一切入らない。
『ブラドラ・飛空艇入手』→ADの協力で飛空艇は手に入るが、「頼んだ地点」から「飛空艇入手後」に飛ぶため、一部会話が見れず、中ボスとも戦えない。
無理だから頼んだ結果、自業自得と言わんばかりに何かしらを失っていく。
個人的に、後者はルーラやリレミトを習得できるようにしておけば済む問題であり、RPGの根幹であるストーリーを少しでも飛ばせる行為は、ゲームとしてかなり致命傷だと思える。
また、『ネジマキ』で鍵を持ったままノルマをADに頼んでしまうと、セーブデータが書き換えられる関係上、鍵が消失して詰んでしまう。こんな事、このご時世ではある意味珍しいと思えるほどだ。
これら五つの問題点が、元から微妙なゲーム達を更につまらなくさせるために頑張ってくれている。

やりこみ要素も、名言リスト・攻略法リスト収集くらいだが、攻略法リストはゲームオーバーの繰り返しですぐに埋まる。
問題は名言リストにもあって、番組内の名言を使えるところに押し込んでいる感じだ。
「ヘビーなCXファン」が脚本を担当したらしいが、出て来る名言はライトなファンでも知ってるのばかり。
それならまだいいが、ダビスタ回の老人ヘボジョッキー(有「おがわ」をRPGの若い村人役にしていたり、名言もシチュ関係なしに、とりあえず言わせておこうと言う魂胆が見える。
例えば、周囲の反応にキレてカメラ阿部が吐いた「うるせいよ」が、ただの会話中に使われていたり、「ヒヨコになってんで!」もAD高橋が出れないのに、関係のない適当なところで出している。
こんなもの、事あるごとにルフィが叫んでいるワンピースの様なもので、どうも原作愛に欠けている。

『挑戦状』がヒットしたのは、シンプルに良質なレトロゲームを昔の雰囲気の中で遊べるからではないのだろうか。
それの最新作が、小粒ながらも痛い問題点を抱えまくったゲーム、作業なアドベンチャー、不便なUIや操作性、物足りない当時の再現、喋らない有野、使えない裏ワザ、ひたすらに面倒なノルマ……これらのせいで、無茶苦茶になってしまっている。
本作の街を巡って情報収集や、AD達の協力などの要素自体は悪くない。だが、それらの作り方を間違えていた。
番組10周年記念の強引な製作、それに参加できないインディーズゼロ、延期までしたのに、『挑戦状』にとにかく劣っているこれを作ったグレフ……このゲームが生まれたのは、ある意味必然だったのではないだろうか。
もしも延期されずに発売されていたら、バグも備えて年初の門番となっていた可能性が非常に高く、「遊べるがほとんどクソ」だけで済んでいてある意味幸運だ。

そして最後に、有野課長の名言を借りてこのゲームの選評を締めくくりたいと思う。
「俺、これ以上3丁目の有野やったらゲーム嫌いになるよー」