名称 | ヘビーファイア・ザ・チョーズン・フュー | |
ジャンル | レールシューティング | |
対応機種 | ニンテンドー3DS | |
発売元 | ハムスター | |
開発元 | TEYON | |
発売日 | 2012年6月14日 | |
価格 | 4,980円(税込) | |
対象年齢 | CERO:C(15歳以上対象) |
北米WiiwareDLソフトランキング1位の日本向けローカライズ作品。プレイヤーは米兵となり、様々なミッションへと挑むレールシューティング。
レールシューティングはFPSとは異なり、移動は全て自動で行われ、要所要所で画面が固定され射撃を行うゲーム。
同ジャンルでは『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド』や『タイムクライシス』などの名作があるが、これらとは明らかに別次元の出来。
元々低価格で手軽に遊べるDLソフトだった物をフルプライス化した結果、ありとあらゆる点で粗が表面化しシューティングとしてのありえない仕様が露呈する。
6月14日。それは突然、海の向こうからやって来た。
「HEAVY FIRE The Chosen Few」(ヘビーファイア・ザ・チョーズン・フュー) 3DS 開発:TEYON 販売:ハムスター
北米WiiwareDL数No1という、KOTYにとってはフラグでしかない功績を誇る「ヘビーファイア」シリーズをニンテンドー3DSに移植した当作品は、
日本という新たな戦場でその勢力を広めようとしていた。
だが、あろうことか殴り込んだその地は、ほかならぬクソゲーのナンバーワンを決める戦場であった。
その戦地へと赴く姿は、まさにクソゲーの申し子と呼ぶにふさわしいものであった。
まず最初にセッティングがある。
このゲームにはセーブスロットが3つあり、それぞれに自分の顔写真を意味もなく登録できるのである(しかも強制)。
その際、プレイヤーは3人の兵士からプロローグでプレイするキャラを選ぶのだが、この選択自体に意味がほとんどない。
3人の違いは弾薬の数、リロードの速さと武器が故障する確率なのだが、プロローグ終了後から武器の購入が可能となり、
これらの差が実質全くなくなるため、何のために最初に選択させるのかはなはだ疑問である。
また、最初のステージとあってそれほど難易度も高いわけではなく、3人の差もほとんど感じられないため、
この選択肢の存在意義がセーブスロットを全て使わさせる事以外に何もないのではないかと勘ぐってしまう。
だがそのような事も、グラフィックを語ればあっさり忘れてしまうだろう。
公式HPやパッケージ、ゲームトップ画面に描かれる雄々しき兵士の姿が印象的なイラストは、シューティングという人気のジャンルと相まってプレイヤーを鼓舞させるのに十分なクォリティーである。
気持ちが高ぶる中さっそく任務を開始すると、一気にプレイヤーの気持ちを萎えさせる紙芝居が始まる。
美しいイラストはどこへやら、まるで中学生が描いたようならくがきが表示される。
低クォリティーな一枚絵とともに、フォントが細すぎて読みにくい文章で大まかなストーリーが説明されるも、毎回任務の内容が大雑把すぎるので早々にやる気が低下する。
なお、この紙芝居は一切飛ばせず、一回見た場合は画面下の「次へ」ボタンを連打する事になる(ムービーの方はスキップ不可)
そしてローディング後には、初代バーチャファイターもびっくりなぐらいのローポリな世界が待ち受けているのである。
加えて敵のモーションもお世辞にもいいとは言えず、初代バーチャコップもびっくりなくらいにもっさりとした不自然な動きをする。
あさっての方向に銃を乱射しては、いかれたマリオネットのような動きで移動し、あげくに欽ちゃん走りで登場するものまで出てくる始末。
しかも、相当遠方に登場するものもおり、照準が合わせづらい場面にも多々遭遇する事になる。
頭を撃ったのに腹を抱えてダウン、室外のドラム缶を爆発させて室内の敵が吹っ飛ぶ等、演出へのつっこみも枚挙にいとまがない。
あまりもの低質なグラフィックのせいで敵と味方の見分けがつかず、フレンドリーファイアを誘発してしまう事もままある。
レールシューティングというジャンルの性質上、ゲーム進行は移動シーケンスと射撃、移動射撃の3パターンに分かれることになる。
移動は全て自動であり、プレイヤーは射撃を行う事に集中する事になる。
移動中のカメラワークはなかなかのものだが、射撃場面になると急にぴたっと止まるため、臨場感が一気に消え失せる。
そしてカメラワーク自体もステージによっては息切れでもしたのかと思うぐらいに、急に手抜きになることもある。
加えてゲームを盛り上げるはずの演出もことごとくチープである。たとえばヘリの爆撃によって木が倒れてくるシーンがあるが、
そもそもヘリがどこにいるかわからず爆風自体も起きていないため、勝手に木が次々と倒れてくるというシュールな光景が広がる。
ここまででも十分プレイヤーの気力を削るだけの要素が満載ではあるが、このゲームの恐ろしい所はそのシューティングとしての劣悪さにある。
まず操作性がひどい。射撃はLRのどちらかで行う点はシューティングらしいが、
リロードがBボタンもしくはスティックあるいは特定箇所へのペンタッチ、照準がタッチ画面という仕様である。
照準の移動が全てタッチペンでのスライドのみで行われるため、絶えず画面にペンを押し付けていなければならない。
画面両端から敵が出てくる場面も決して少なくはないため、何度もペンを画面にこすりつける結果となり、クリア後の摩耗がやや気になることに。
照準移動ぐらいスティックで出来そうなものだが、そもそも操作設定をするための「オプション画面」すら存在しないのである。
選択できるのはストーリーを進める「キャンペーン」、一度やったステージをもう一度プレイする「ミッション」、
セーブデータを管理する「プロフィール」と得点を確認する「スコア」のみである。そして「キャンペーン」は、一度クリアすると二度とプレイする事が出来ないのである。
セーブは完全にオートで行われるので、ストーリーをもう一度見るためには一度データをリセットしてまた一から再スタートする必要がある。
わざわざ「キャンペーン」と「ミッション」を分ける必要は一体どこにあったのだろうか。
つぎに被弾時についてである。敵は常時乱射しまくっている状態だが、
時折頭上に「!マーク」が表示され、直後にライフを減らす致命弾を撃ってくる(ライフは5つなくなるとゲームオーバー)。
ただし、表示後とヒットまでの時間にばらつきがあり、出た瞬間にヒットさせるものもいれば、「!」を出したままどこかへと走り去るものまでいる。
中には画面上部で頭が見切れ、肝心の「!マーク」が表示されないにもかかわらず致命傷を負わせてくる猛者もいる。
しかもヒットしたときに現れる弾痕が中々消えず、同じ位置に出現した別の敵を隠して見えなくするという有様である。
ひどい場合は、画面の右、真ん中、左にそれぞれ「!」マークを表示する敵が同時出現する場面さえあり、
さっそく対処のしようがなくなる(グレネードなんて便利なものがあるはずもなく)。
加えて敵がいっきに10体同時に出てくる事さえある(稀ではあるが)。最終ステージでならある程度のラッシュは覚悟できるものの、
突如として敵の命中率が向上したり配置が一気に厳しくなったりと、難易度のバランス調整に疑問を感じざるを得ない。
少なくとも、「隠れることができない」シューティングにおいて、この配置はあまりにも厳しすぎるのではないだろうか。
ステージの長さのばらつきにも問題がある。プロローグもそこそこ長いステージとなっているが、
それよりも遥かに短いステージが後半に登場したり、無限弾が使える場面が異様に長かったりと急に難易度が下がるのである。
そもそもこれはある程度仕方ないと思われるかもしれないが、ある要素と組合わさる事によって事情ががらっと変わる。
それは、「回復アイテムが全くない」ことと、「チェックポイントがない」こと。
つまりどんなに長いステージでも、最後の最後でライフが0になれば最初からやり直しという鬼畜仕様なのである。
そしてステージが長くなれば長くなるほどに、難易度が跳ね上がるのである。
上記のタッチ操作での照準、敵の見えにくさ、ラッシュと隠れる事が出来ない事により、終盤は異様な難易度となっている。
これだけプレイヤーの心をへし折る数々の要素がある中、なぜだか気力を維持するために必要なBGMはプレイ中に一切流れない。(1ステージのみ、メイン画面の使い回しありとのこと)
一方でイヤホンからは常時、不快なノイズが流れてくる。
一応銃撃のSEだけはPS3版のヘビーファイアよりもややがんばってはいるものの、
BGM無しのローポリなビジュアルの中ではむなしく響くだけである。
よもや、これが本格的な戦場の演出とでも言うのであろうか?
その他にも細かい不満点にも事欠かさない:
・3DS専用で出しておきながら、3D表示の意味が余りない(個人差があるため、断言はできないが)
・武器が故障した時の演出が酷い:ある程度武器を使い続けると、ジャム(弾詰まり)を起こすので、
3DSを左右に振って解除する必要がある。その際画面に大文字で「弾詰まりを解消するため両手で持ち水平に動かしてください」と指示がでかでかと出る。
そもそも照準をタッチ操作でするため、敵に撃たれるかもしれない状況下でわざわざ3DSを持ち替えて振らなければならない。
ジャムを起こさないためには修理をしなければいけないが、毎回コストがかかる。
・武器の切り替えがなく、毎ステージ持てるのは1つだけ。
例外的に銃座やスナイパーライフルも登場するが、あくまでも限定的で任意に使えるわけではない
・時折入るボーナスポイントの基準が不明:ドラム缶や車の破壊はわかりやすいが、敵兵撃破時のボーナスが不明瞭。
遠距離で撃破時にボーナスが入るが、なぜかさらに後ろにいる敵を倒してもノーボーナスのパターンも。
他にも条件不明のもの多数。説明書には「特定のアクションを起こす事で獲得」としか書かれていない
・そもそも説明書が紙一枚+カートリッジ内説明書7Pのみ(うち1枚が断りと警告文章、1枚が企業案内)
・公式HPのやる気の無さ:たった1ページ。しかも比較的出来のいいスクリーンショットのみ掲載。
PS3版のも同じく1ページだけだが、動画へのリンクはある。
・ストーリーがあってないようなもの:とってつけたような薄っぺらい内容。
プロローグはあるテロリストを確保するという内容。
その後、何かの理由で編成されたエリートチーム「The Chosen Few」が南米のゲリラから核弾頭を確保する、
アフリカから化学兵器の研究者を救出するというだけ。しかもプロロいれて、たったの13ステージで終了。
紙芝居も相まって、とてつもなくチープな茶番を見せられている感じがする。
突っ込みどころも満載で、核兵器があるかもしれないポイントに爆弾仕掛けて爆破、謎の宮殿に謎の研究施設(しかも内部に入る事はない)などなど
数々の不満、数々の理不尽さをそろえ、それらを緩慢強く耐え忍んだとしても、全く達成感を抱かせない陳腐なストーリー。
何とか一周クリアしたとしても、残された武器をコンプし更なるスコアアップを目指す戦士は、果たしているだろうか。
それほどまでにこのゲームは、戦争のむなしさをマジマジと体験させてくれるのである。
そんな理不尽さに満ちあふれたゲームを、わざわざ10倍の価格で販売したハムスターに最後に一言送りたい:
「ふぅあー!がないじゃないかー!!」