名称 | シャイニング・アーク | |
ジャンル | 心をつなぐRPG | |
対応機種 | PSP | |
発売元 | セガ | |
開発元 | メディア・ビジョン | |
発売日 | 2013年02月28日 | |
価格 | UMD版6279円 | |
DL版5600円 | ||
対象年齢 | CERO:B(12歳以上対象) |
『シャイニング・アーク』はTony氏がキャラデザを勤めるシャイニングシリーズ5作目。
今回はこれまでのシリーズとは違い、登場キャラと舞台が一新(※)されている。
戦闘システムは『戦場のヴァルキュリア』シリーズの流用、及び若干発展させたSRPG「BRiTZ」。
シナリオは全九章構成(内、九章(EX章)はクリア後に行くことになる為、ゲーム本編自体は八章)。
澤田プロデューサー曰く、「ハーツとブレイドの長所を合わせたPSPシャイニングの集大成」との触れ込みだったが……。
※シナリオは2作前の『ハーツ』、システムは1作前の『ブレイド』の焼き直し(と言うか、ほぼそのもの)なのだが、
ここではそれに関しては触れないこととする。
今回はBRiTZが行動順が敵味方毎交互のターン制の形からターン制アクティブ(敵味方関係無しの素早さ順)になり、
「ガード(移動力を犠牲に防御態勢で移動し、敵の迎撃を防ぐ)」と、「ダッシュ(高速移動)」という移動時の行動が追加されている。
……が、敵が基本的に弱く、戦略性も何もあったものではない。
迎撃(こちらの移動中に敵の攻撃範囲に入ると自動的に攻撃される)のダメージも、前衛キャラならたかが知れているので、
ガードとダッシュも死にシステムとまでは言わなくとも、影を潜めている。
また、今作は戦闘の難易度選択が用意されている。
敵が手強い「スタンダード」とヌルゲーの「カジュアル」の二種類だ。これらはゲーム中なら自由に変更が出来る。
ただしスタンダードにしていても経験値増えるとかレアアイテムが入手しやすくなると言うような特典は何も無い。
そしてスタンダードだと一部のボスキャラ(ケルビムなど)がその時点では太刀打ちできないほど極端に強くなる。
しかしザコ敵の強さは言われるほど変わっていない。明らかに調整不足だ。
そういうわけで、ここでは「カジュアル」でゲームを進めた場合として話を進める。
この場合のボス敵は弱いとまでは言わなくとも、リンクアタックを繰り返し、フォース(技)をぶつけていれば簡単に落ちる。
一部、倒し方が曖昧(部位破壊後に本体を攻撃する)なボスも居るが、きちんと部分破壊していれば、いずれは倒せるだろう。
こうなると、そういう難易度に設定しているのだとは言え、もはやサクサク進むヌルゲーでしかない。
後述の問題もあり、作業感が一層強まるだろう。
他のシステムとしては、武器強化の概念やパン焼き、釣りというものがある。
どれも素材を集めてきてアイテムを生成するだけという非常に味気ないものだが。(パン焼きと釣りにミニゲームは無い)
ただしパン焼きはガラクタからパンを生成できるなど、若干カオス染みている。
一方シナリオは謎の少女が孤島に流れつき、直後に島が異形の怪物(その名も「異形」)の襲撃を受け、
島で唯一の村が壊滅状態になり、それから村を復興させていく、というのがメイン。
そのイベント以降は、
村の復興の為の「○○を持ってきてくれ」というお使いイベントをこなす→自宅に戻って寝る→お使いイベント→寝る→…
それを繰り返しているうちに、あっという間にラストイベントである……そう、誇張抜きでメインのイベントがお使いしかないのだ。
当然、その間に何度もイベントは挟まるが、その度に使える味方キャラが増えたりするだけである。
本筋がお使いイベントしか無いことは変わらない。合間のイベントも到底魅力的なものではない。
基本的に説明不足の状態が続きながら、プレイヤーそっちのけでNPCが勝手に突っ走るような展開のイベント、と例えればいいのか。
先述の戦闘システムの問題と合わせれば、プレイ中に睡魔が襲ってくることは受け合いだ。
そしてクリア後のEX章では主人公の出生の秘密が明らかになるが、そういうのは本編でやるべきではないだろうか。
ここまでの要素だけなら、ただ単に質が非常に悪いキャラゲーでしかないだろう。
しかし、このゲームにはこのゲームをクソゲーにまで押し上げている、ある強烈な要因が存在する。
それはメインヒロイン、パニスの存在である。
このパニス、島に流れ着いた時には記憶を失っていて幼児退行を起こしており(言動が完全に幼稚園児かそれ以下)、
主人公のフリードが常にパニスと共に居ることになるのだが……。
主人公が他の島民に話しかけようとする度に「パニスだよ!!」と大声で叫ぶ(明らかに他のボイスより音量が高くなっている)。
日を跨げば同じ住民にもまた叫ぶ。これを毎日、話しかける必要がある島民の数だけ繰り返させられるのだ。
そしてパニスは戦闘にも参加する。半ばSRPGの戦闘システムなのに操作不能の強制出撃で。
(ちなみにシャイニングアークの味方パーティ枠は自由枠3つ、パニス枠1つの四人までである。味方キャラは最終的にパニス除き8人加入)
パニスは自由気ままに動き、戦闘マップの宝箱を回収する前に最後の敵を撃破して戦闘を終わらせ、瀕死の味方の隣で自分一人パンを食す。
勝手に敵陣に突っ込んで敵の範囲攻撃に味方を巻き込み、味方を窮地に立たせる。レアなパンも勝手に食う。なんなんだこの女は。
それに耐えた中盤以降でようやく攻撃、支援など大まかな指示が出せるようになる……
が、事前にパンを与えてご機嫌を取らなければ「やだ」「パニスそれやらない」と拒否されてしまう。
そういうわけなので、パニスにパンを与えてご機嫌をとった後に行動を指示する→「うん、わかった」→明後日の方向へ。ふざけてんのか。
しかも指示を了解した上での勝手な行動は頻繁に発生する。まともに動いたところでAIはアホなので思い通りに動くとは限らない。
味方の支援を指示しても瀕死の味方を回復してくれるとも限らない(むしろ無視する傾向にある?)のだ。
終盤になるとイベントでパニスが外れるが、パニスが居たパーティ枠には他のキャラが入ることは出来ない。
味方四人目の枠はパニス様専用パーティ枠ということなのだ。終盤には三人で臨むこととなる。
シナリオ中のパニス関係のイベントもツッコミ所満載である。
序盤、のっけからフリードがパニスに惚れ込み、パニスに告白しようとする(パニスの状態を考えればロリコンを疑われても仕方ないフリード)
中盤、異形が島を襲う理由がパニスにあると発覚した際、パニスに否定的だったキャラをフリードが強引に説得する。
そしてそのキャラは「やっぱりパニスは悪くないんだあ!」と主張を180度変える。もはや洗脳にしか見えない。
とにかくパニスが関わった時のフリードの暴走には目が余るものがある。冷静に考えれば、
「自らの世界を壊滅させ(この時の動機からして単なる身内の内戦なので自業自得)、逃げた先の他の世界まで壊滅させる存在であり、
その際に仲間が死んで精神崩壊して記憶障害&幼児退行、その上で未だに世界を壊滅させかけてる上で、
『あの時のことは反省してるから助けて(意訳)』と言っているようなパニス」
だと分かってからも擁護している時点でフリードの偽善も甚だしいところで、周りの反応も含めて見ていて痛々しいレベルなのだ。
「でもパニス以外の女性キャラは魅力的なんだろう?」その通りである。
確かに、幼馴染のエルフのシャノン、良い意味での厨二病系少女のキルマリア、妖艶な女海賊ベルベットと、
Tonyデザインと声優の熱演により絶妙な魅力を醸し出している女性キャラは多数居る。
だが、どのようにゲームが進行しようと最終的にフリードはこれらのキャラを退け、パニスと結ばれるのだ。
一応味方キャラにフリードへの好感度の概念はあり、好感度により個別エンディングでそのキャラ(男性含む)の一枚絵は入るが、
フリードはパニス一筋なので、その会話内容は恋愛的なものではなく、そのキャラの告白を強制的に蹴るものとなっている。
もはやキャラゲーやギャルゲーとしても機能していない。
そもそも何故このような好みが非常に分かれるようなキャラ(そもそも分かれるのか?)をメインヒロインに据えてしまったのだろうか。
あらゆる場面でパニスが絡んでくる為、パニスが合わない場合は序盤から精神崩壊れること必須だし、
そうでなくても非常に鬱陶しい存在には変わりないのだ。そんなパニスを持ち上げる作中の登場人物たちに共感など出来まい。
余談として、戦闘中、フリードがパーティに参加していないと他の味方キャラの好感度が上がらない。
よって、個別EDを見ようとしようとするものならフリードは実質強制出撃となり、パーティの自由枠はわずか2枠となる。
また、移動力(ムーブゲージ)がギリギリの状態で宝箱を取ると、宝箱画面から抜け出せなくなりハマリとなる。
前述のパニスの仕様により、割と誘発しやすい部類のバグだ。
最後に、作中のベルベット嬢の台詞でこのゲームに対する選評を締めたいと思う。
「あんた達頭おかしいんじゃないの!?」