2010年 総評

2010年総評合成案1(プーペガールDS2)

どもども 影の薄い合成1の人です ◆wF.16HeCFk

使える部分があったら適当に取ってっちゃって下さい  3月5日 7:25 
これにて編集をストップします。ありがとうございました。お疲れ様でした。 

クソゲーの祭典が今年もやって来た。熱戦を繰り広げる事となる代表選手たちを順を追って紹介していこう。

家庭用ゲーム板と携帯板の2冠を達成するという前人未踏の快挙を成し遂げたクソゲー界の風雲児と言えば
2009年「戦極姫」を発売したシステムソフトアルファー(SSα)先生である。
そのSSα先生の次回作が今年も猛威を奮うとは――誰もが期待していたに違いない。

まずは2月25日発売DS『現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜』(システムソフト・アルファー)を紹介しよう。
このゲームは戦略シミュレーションゲームであるが軍事バランス崩壊という文字に不安を覚えた方もいるだろう。
まずチュートリアルに10時間という長さがプレイヤーをお出迎え。だがこの程度で驚いてはいけない。
AIの思考時間は1ターンに最大5分間もかかり、さらには表示も操作性も褒める部分が何一つ無い劣悪なインターフェースが絶望を誘う。
あげく全く説明になっていない説明書のお陰でユニット情報・部隊の配置方法・展開方法も何もかもが理解不能なのだから手に負えない。
ゲーム進行上のメインシナリオでは普通に進めていると突然別のルートに飛ばされたあげくに初期のシナリオに逆戻りしてループしてしまう。
この無限ループから抜け出す唯一残された攻略法は降伏し続けて友好度を調節するという屈辱的な「土下座外交」しかないのだ。
他にもフリーズ等も当然の如く完備されており、もはや軍事バランスどころかゲーム内容全てが崩壊をしていた。

続いて紹介するのは6月24日発売PSP『大戦略PERFECT〜戦場の覇者〜』(システムソフト・アルファー)である
PERFECTという文字に不安を覚えた方もいるだろう。もはやデジャブであるがその不安は現実のものとなるのであった。
説明のない意味不明なインターフェースや敵の思考時間の異常な長さは悲しいかな毎度のことで驚きに値しない。
しかしステージクリア時、敵ターン終了時、戦闘終了時…など、あらゆるタイミングでフリーズが起こるので油断は禁物だ。
もちろんキーレスポンスは劣悪でカーソルを動かすだけで約1秒のローディングが入るために操作感は最悪。それだけならまだしも
何をするにしても重い処理が入るためかボタンを押しっぱなしにするだけでフリーズする危険すらある事には度肝を抜かれる。
また、味方の生産施設に突然名無しの部隊が配置される事があり、この部隊を確認した瞬間にPSPの電源が落ちてしまう。
このゲームでは愛用する機体をユニット編成できる「マイ部隊」を作って自軍として設置すると何故か敵として出てくる時があるのだ。
戦略を考えて戦術としてマイ部隊を首都に配置したら、直後に裏切られ首都陥落で負けてしまったりするのは流石に頂けない。
もはや敵と戦っているのか仕様と戦っているのか己と戦っているのか分からなくなる怪作であった。

前年度の覇者はやはり只者では無かったのだと確信させてくれる堂々たる2作品のノミネート
何故1本に絞ってゲームの完成度を上げなかったのかという疑問は最早野暮というものだろう。
そんな大物二体の砲弾が飛び交う中、夏の魔物は「おまたせ!」と手を振りながら現れた。
それが7月15日発売 PSP『ハローキティといっしょ! ブロッククラッシュ123!!』(ドラス)だ
このブロック崩しゲームにはバグも無くシステムは非常に快適。有名イラストレーターが描くキティラーも魅力である。
1キャラ12面をクリアすると特典としてそのイラストを入手出来るはずだったのだが、はたして現実はどうであったか。
幸い前半はまだ普通のブロック崩しだった。しかし後半は気が狂った難易度のブロック崩しになってしまっていたのだ。
弾を撃ちながら動きまわるターゲットに50発ボールを当てないとクリアが出来ないという面倒な面があるのに
ボールの挙動がおかしく、操作するパドルの端で打ち返そうとするとボールが上ではなく下に跳ね返える。
またパドルの操作性が悪い為にボールがブロックの角にぶつかった時の真下への反射にも対応する事が出来ない事も難点である。
また、スポットライトに照らされた部分しか目視出来ない面には丁寧にも砲台までもが設置され暗闇なのに撃ってくるのだが
誰がこの砲撃を避けられるというのでしょうか。リトライが容易といえどこのステージの理不尽さは際立っている。
極め付けはボールが当たる度に方向が変わる矢印ブロック6つを、砲撃を避けつつ一定の方向に揃えるステージである。
死んではリトライの繰り返し。プレイヤーは積み上げては崩されるその理不尽さを賽の河原のようだと例えている。
しかし、おかしな現象もあるもので、鬼畜だなんだと情報があるのにもかかわらず挑戦者が後を絶たず
変にハマってクリアする人間も登場。恨み節も少なく覇王鬼帝だと愛称まで付けられ不思議と愛されるゲームとなった。

ハローキティの衝撃が渇いたクソゲー界を潤し大いに賑わせてくれた。なんだか今年のKOTYは豊作だな
それを確信させる新たな報告が飛び込んできた。あるゲームがファミ通のレビューで計18点を叩き出したのだ。
クリスマス商戦にあわせて年末の魔物はクソゲー界の期待を背負って12月16日に現れた。
それがタイトルだけでクソゲーと分かるDS『どんだけスポーツ101』(スターフィッシュ・エスディ)だ。
世界のスポーツ101種を楽しめるという海外ゲームのローカライズ版である。しかし販売元も思い切ったものだ
ゲームのクオリティーは携帯アプリ以下であり、その上スポーツのルールが反映されていないものすらある。
ゲームは大変薄味で、塵も積もれば山というより0×101=どんだけ?と言った方が的確だから困りもの。
ボール落下地点にペンをスライドさせるだけのピーチバレー。レシーブをしなければ勝ててしまうバトミントン。
このコンセプトでクリスマス商戦へ殴りこんでしまったスターフィッシュには文字通りヒトデが足りないのだろうか?
と言いたくもなるのだが、実はこのメーカーはエルミナージュやWIZ等を作っている会社である。

同日12月16日。気温はすっかり低くなり、水蒸気が無くなった大気は透明に澄みわたる
冬は女性が煌めく季節。髪をとかして鏡を見つめ、ほっぺにチークのご褒美あげる
女の子の夢と希望がいっぱい詰まったファッションをテーマにしたゲーム「プーペガールDS」
前作ではそれほど問題にならなかったゲームがクオリティーを落とす形で帰って来たのだ。
おしゃれゲーム DS『プーペガールDS2』(アルヴィオン)が今年最後の魔物である。
SNSの本家プーペガールは可愛い洋服が気軽に着せ替えられることで高い人気がある。
センスの良い可愛い服が携帯ゲームに6000アイテムも登場するのだからガーリーな女の子は惹かれる訳だ。
本家プーペで大量課金をしなくとも沢山のアイテムを楽しめるというメリットがあるのもこのソフトの特徴である。
ピンクとミントの2バージョンあり、それぞれに違う特典を用意したと販促をかけたにも関わらず
その特典を得ようとするとDSが2台必要という事が発覚。非常に好調な出だしに期待は高まった。

ゲームは前作に続きUIが不親切で着せ替え操作も一苦労。そのうえ付けたはずのアクセサリーが付かない事すらある。
折角着せ替えてもキャラが崩れグロ画像に変異し、可愛い服を拡大しようとすると何故かフリーズが起こってしまう。
着せ替えをする事がこのゲームの通貨に当たるリボンを得る条件なのだが、服の価格がインフレを起こすので買うのも一苦労
ROMカートリッジなのに何故かロードが多発するためにリボンを貯めるための着替え作業も非常に困難なものになっている。
大きな収入源となるはずだったファッションショーは説明書に反して1度しか開催されず、そのうえ報酬も何故か0リボン。
苦労の連続ではあるが、プレイ時間が22時間に達するとご褒美報酬としてリボンが貰える。これはありがたい。
苦労の反動なのか期待に胸は膨らむけれど非情にも画面に表示される −15536リボンゲット 「はい」
なぜ選択肢に「いいえ」が無いのだろう。しかもリボンがマイナス状態で外に出るとご丁寧にもフリーズしてしまう。
発売元は、この対策という名目でリボンが獲得できる隠しパスワードを公開したが、それすら一部が無効になる始末。
Poupee (人形)を着せ替えるゲームだった筈がこれではPoopである。 Poop(糞・おなら・馬鹿・疲れる・止まる)


年末の魔物が2体も出現するという不測の事態により華やかに活気付くクソゲー界。
詳細は選評に譲るが、テストプレイをしていないと思われる『ゲームブックDS アクエリアンエイジ Perpetual Period』
フルプライスなのにキャラ9人中完結が2人で、課金が完結条件の有料体験版AVG『天下一★戦国LOVERS DS』
これらを加えた7作品が今年のノミネート作品として鎬を削った。議論は白熱し大賞を選べないまま2月を迎えてしまった。
その頃には自然と大賞候補が『大戦略PERFECT』『ブロッククラッシュ123!!』『プーペガールDS2』の3作に絞られていた。
しかしそこからが更に長かった。議論が議論を呼び、振り出しに戻る事の連続。どれも長所があまりに強く決定打が無かったのだ。
終わりの無い苛烈な議論に疲弊したものもいたことだろう。過去類を見ない熾烈な闘い。遂に議論は3月に突入した。
2か月を超える議論は密度が濃く幾星霜とも思えた。――しかし遂に大賞が決まる日が訪れたのだ。



緊張感のある議論の末に見事2010年クソゲーオブザイヤーに輝いた作品を発表しよう

大賞はおしゃれコーディネートゲーム【プーペガールDS2】である

大賞授賞理由を解説しよう
このゲーム唯一の美点はアイテムデザインが可愛い事だ。しかし、その希望のニンジンを追い求める事自体が罠なのである。
洋服自体は時間をかければ確実に手に入る為にプレイ見通しが立つ。この確信がプレイヤーの歩みを進めさせてしまう。
しかしゲームは内容が薄いにも関わらず動作は重く、リボン入手手段がバグを生み、高価な服を組み合わせても画像が乱れる。
レシピ保存機能を兼ねたスナップショットは30個まで保存出来るのだけれど、実はこれもリボン集めの手段の一つ。
新しく画像を撮ると強制的に古いものが消される為に、お気に入りの着こなしを残す事が出来ないのだ。
このようにリンクする要素が丁寧に足を引っ張る形でゲームが完成されている。まるで相克関係だが開発者は陰陽師なのだろうか?
新作を期待するファンも多かったのに問題を解消では無く追加する事で既存のユーザーをも裏切る形となった点も大変見事である。
非常にシンプルで薄いゲームなのにバグを搭載したという、おっちょこちょいな所も褒めて差し上げないといけない。
それより何よりも、仕様とバグから逃げる為の着せ替え作業へとゲーム性が変質してしまっている本作を
着せ替えゲームとして販売した事がおっちょこちょいである。操作性の良い本家プーペガールが『無料』である事がそれを際立たせる。
魅力あるプレイ動機が存在し、それに向かう快適で魅力的なサイクルが完成されているゲームは良作である。
逆に可愛い服という動機が存在するのに、無駄の無い見事な相克のゲームサイクルを完成させた点がクソゲーであるという証明なのだ。
この点こそが他の作品には無いプーペだけが持つゲームとしてクソな理由である。
前作というマシなベースがあるのに底なしのクソゲーへと変貌を遂げたプーペガールに賛辞を送りたい。おめでとう。
以上を以て2010年度携帯ゲーム板クソゲーオブザイヤー大賞授賞理由とする。

重症なユーザーは効率良くリボンを入手する為にソフトをもう1本買って通信プレイでコンテストを開くという1歩超越した状態である。
リボンの入手困難さがソフトの購入動機になるという本末転倒っぷりを引き起こさせるオシャレのパワーには脱帽するほか無い。

さて、大賞を逃したキティと大戦略も大変な大物であった。3つ巴といえど実質キティとプーペが大勢を2分する形で拮抗していた。
しかしキティは元々ゲームを購入しなくてもイラストが入手可能であった為に無理して高難易度面に挑戦し続ける必要性が薄く
さらにゲーム前半は操作性に対して割と普通のステージとなっている為にブロック崩しとしての正常さをほぼ保っていた為に遊びやすいのだ。
それらの結果ゲーム全体の問題で勝負する事が出来なかった
反対にプーペは着せ替え画像が乱れたり、アクセサリーが付かなかったりと着せ替えとしての問題が最初からある。それが勝負を分けたのだ。
このように非常に僅かなクソを細かく挙げねばならぬほどに接戦であったために、大賞決定にかつて無いほどの時間を要したのであった
もちろん、他のノミネート作もこれだけハイレベルな年にあってどれも大賞にしても惜しくない出来栄えで
正直、他の候補作を切るのは断腸の思いであった。それほどまでに今年は豊作であったのだ。
クソゲーという観測地点に立つと普段のゲームが尊く思える。ゲームを大切にしよう。そう思わずにはいられない。

最後に、プーペ(人形)ガールの謎が解けたかもしれません。
やはり開発者は陰陽師だったのではないだろうか。
即ち、これはただの着せ替えゲームなどでは無く
パッケージに反し着せ替え陰陽ゲームだったのかもしれないのだ。
実は、陰陽道では人形と書いて「ひとがた」なのである。
それは穢れを移し負わせる呪詛の対象物であり、最後は燃やして厄を払うものである。
購入者は着せ替えゲームをプレイしたつもりだっただろう。

だが、まだゲームクリアはお済みで無いのでは?

2010年度携帯ゲーム板クソゲーオブザイヤー
大賞を受賞したプーペガールDS2を購入者した方にこの言葉を送ります


―――『それ燃やしちゃえ』

2010年総評合成案2(ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!)

10(仮)◆z2q4MKnYwY

総評案3をベースとしてお借りして、色々混ぜ込みました。 ここへの上書き以外はご自由にどうぞ。

※2010年総評案10 と同じもの

2010年ワールドカップ南アフリカ大会での日本代表チームの奮闘により、列島は熱狂に包まれた。
だが光あるところに闇もまたある。
前年に修羅の国からの核爆弾『戦極姫』の炎に包まれ焦土と化した携帯クソゲー界では、それでもなお荒野に芽吹く強靭な作物の如く、
突き抜けたクソゲー達が排出されようとしていた。
携帯ゲーム板クソゲーオブザイヤー2010の開幕である。


それでは早速、厳しい選考を勝ち残ってきた代表達を紹介しよう。
まず選評が届き大賞候補に躍り出たのは既に毎年恒例となった「夏の怪物」、ドラスから発売された『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』だ。
ハローキティというタイトルから女児向けのゲームと勘違いしてしまいそうだが、「ハローキティといっしょ!」とはサンリオ公式の企画で、
キティちゃんを愛する超キティラーと呼ばれるキャラクターを、大きいお友達に人気のイラストレーターに描いてもらうという趣旨のものである。
つまりこのゲームは、古豪の安牌ジャンル「ブロック崩し」と萌え絵を抱き合わせた、どちらかと言えば大人向けのゲームだ。
しかし、ただ萌え絵を見てもらうだけで良かったはずのこのゲームは、「安牌」など死語と言わんばかりに突き抜けていた。

ブロック崩しとしての挙動の問題点から見ていこう。
まずこのゲームはボールがブロックの角に当たった場合に様々な角度へ反射する、という仕様になっている。
これは物理的に異常な動きではないのだが、結果としてボールの挙動が予測困難となるため、プレーヤーは終始ボールに振り回されることになる。
またプレーヤーがゲーム内で唯一干渉できるパドルは、ボールとほぼ同速でしか操作できないばかりか慣性を持ってヌルヌル動くため、
機敏な反応やボールを追い抜き落下予測地点で止まるなど、ごく基本的な操作もなかなか思った通りにできない。
さらにはこのパドル自身も物理法則に忠実であり、パドルの端でボールを拾おうなどしようものなら容赦なく下へ弾かれミスとなる。
これらに合わせステージが原則として横長でブロックが近いため、シンプルで簡単そうなステージでさえ一瞬の油断が命取りという、シビアなゲームバランスとなる。
果たしてブロック崩しの基礎となる各要素全てがブロックを崩させまいと働く、異様な世界がここに顕現した。
…これでは「ブロック崩し」どころか「ブロック崩させない」である。

勿論この場で紹介されるからには、ブロック崩しとしての基本仕様だけでなく、特殊ブロックやステージ構成もかなり力が入った意匠となっている。
例えば、常人では反応しきれない速度でボールを跳ね返す「反射ブロック」というものが存在する。
これをただ配置するのは初歩の初歩で、パドルの至近距離に設置するなどのさりげない気遣いも忘れない。
他にも、パドルに1発当たるだけで即1ミスになる弾幕を直下に張る「攻撃ブロック」なるものも、後半のステージでは濫用されている。
ボールとパドル周辺以外が暗闇で隠され、その暗闇で砲台自身やそれが放つ弾まで隠されようものなら、もはや弾幕シューティングどころの騒ぎではない。
兎にも角にもこのような理不尽なギミックが盛り沢山で、プレイヤーを殺す気に満ち満ちている。
そして、類稀なる才能と弛まぬ努力とそれ以上の幸運を得て、数々の理不尽ギミックを掻い潜ってきた歴戦の兵は、
自分で積み上げた石を自ら崩す「セルフ賽の河原」と例えられる、地獄の最難関のステージへと辿り着く。
そのステージを制覇せんと欲するプレーヤーは、破壊できない位置にある攻撃ブロックからの一方的な砲撃を受けながら、
ボールが当たるたび回転する「矢印ブロック」6つを既定の方向に揃えるという、単純計算で1/4096の確率を引き当てるまで、延々とリトライを繰り返さねばならない。
…このゲームの趣旨はどうやら「ブロック崩し」ではなく「パドル崩し」だったようだ。

なおこのゲームは、苦しい道程を乗り越えれば萌えの楽園に辿り着けるなどという安易な妄想さえ許してはくれない。
まず、抱き合わせられた大友向けイラストは既出の物の寄せ集めで、そればかりかテキストすら一切存在しない。
ゲーム内で貰える各キャラクターのカスタムテーマも、より汎用性の高いものがPSストアにて1つ50円と絶妙な価格で、しかも本ソフトと同時にひっそり配信開始。
このように負のサポート体制のみ厚く迅速で、「ブロック崩させない」「パドル崩し」から逃れ「キャラゲー」としての価値を見出し生きる道は、周到に絶たれている。
購入してしまったプレーヤーには、ただもがき苦しみ死ぬ運命しか残されていないのだ。
…もはや笑うしかない。

一通り述べた理不尽さの一方で、本編以外のシステムの快適さやバグの無さに関しては近年KOTY稀に見る良好さを見せている。
しかしこの作り込みこそが、逆に理不尽全てが見逃しやミスではない「公認の仕様」であるという観測の裏打ちとなり、このゲームの救いのなさをより一層際立たせ、
また怖い物見たさで手を出した被害者を蟻地獄に引きずり込む一つの要因になっている、と言ってしまっても過言ではないだろう。
このような、公式サイトの謳い文句通りに非情にハードなゲーム性は多くの支持を集め、KOTYスレでは「覇王鬼帝」や「鬼帝」など素敵な愛称で呼び親しまれる事となった。


続いて届いた選評は、昨年の王者システムソフト・アルファーが放つ爆弾『現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜』。
発売自体は鬼帝よりも半年近く早いにも関わらず、バグによりシナリオが無限ループしクリア不能なため選評が遅れたという曰く付きの作品の実体は、
現代どころか云十年前で時が止まったかのような代物だった。
実際にプレイしてみると、ユニットを全く動かさなくてもクリアが可能なステージが存在する一方で、
上記無限ループバグを回避しクリアするために戦闘開始直後に即降伏する「土下座外交」が事実上必要不可欠など、
SLGの根幹を成す「戦略」がメタ的に要求されることにより、本作が軍事バランスよりもゲームとして崩壊していることが実感できる。
上記バグのみでもノミネートに足る逸材であるが、それだけでなく進行を妨げるバグを数多く搭載し、
インターフェースも劣悪で敵の思考時間がやたら長いと隙はなく、前年王者の貫禄を遺憾なく見せ付けた。


そのシステムソフト・アルファーの追撃『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』の選評が、間髪入れずKOTYスレへと届く。
この二度目のパーフェクトな爆撃は前回のそれを越える勢いの突き抜けっぷりであり、さしものKOTYスレ住人も俄かに沸き立った。
もはやお馴染みとなった泥沼のような操作性、説明も碌にない不親切なインターフェース、CPUの1勢力数分という長考は当たり前。
デバッグもまともに出来ないとあれば実機テストなどされるはずもなく、何をするにもロードが挟まる。
端的に言えば「ただプレイする」だけでストレスが募る仕様となっており、これだけでも嘆息に値する。
しかしご存知の通り、SSα波を浴びるにあたって「ただプレイしたら」などありえない仮定であり、全き杞憂である。

では当然のように存在するバグ達を、簡単にだが紹介していこう。
まずはステージをクリアしたらフリーズ。他にも敵ターンが終わったらフリーズ。部隊の戦闘が終わったらフリーズ。
果てはただボタンを押しっぱなしにしたらフリーズ。つまり、ありとあらゆる場面でフリーズする危険性がある。
また、この作品にはマイ部隊というプレイヤーオリジナル部隊を編成する機能があるのだが、
部隊が損耗したままクリアーすると現在値が最大値に上書きされたり、別の時には自国内で敵となってみたり、
そのままセーブすると取り返しが付かなかったりと、ひたすらバグの温床となっており運用するだけでトラブル続きである。
他にも自国生産設備に無名ユニットが発生してスペースを圧迫し、ましてやその無名ユニットに触れようものならPSP本体を巻き込み電源が落ちてしまう。
とにかく些細な物から進行に関わる物、心臓に悪い物までバグのオンパレードで、「ただプレイする」ことすらままならない。
そんなパーフェクトなクソが、三度同社から排泄され産声を上げたのだ。

再びKOTYの覇者となるべくシステムソフト・アルファーが送り込んで来た両大戦略は、自身のみならずプレーヤーまでパーフェクトに崩壊せしめ、
「冗談の通じないクソ」というスタイルで携帯クソゲー界の雄としての自社の座を確固たるものにした。


年末の魔物は今年もやってくる、悲しみを売り付けて儲けるために。
クリスマスも迫った12月下旬、ファミ通クロスレビューにて18点という低得点を叩き出した『どんだけスポーツ101』の選評が届いた。
海外ゲームのローカライズ版であるこの作品、テニスからカニ釣りまで101種類のスポーツを網羅したとんでもゲーム、とのことだ。
コンセプトを聞いただけで脱力してしまうが、言ってしまえば単なるミニゲームの寄せ集めである。
問題は101種類の何れも携帯アプリゲームの出来損ないレベルで、その全てが例外なく面白みに欠けるという事であった。
もちろん出来損ないであるため、スポーツの本来のルールをブン投げたり物理法則を無視してみたりなどは平然と行われ、
無理に数を押し込んだ弊害か、はたまたそれ以前の問題か、ゲーム性の欠如は当然として事実上の重複さえ目立つ。
さらには種目を選ぶインターフェースが壊滅的、ゲームルールの説明まで投げやりと来れば、全てを通り越し再び脱力させられる。
ただただつまらないだけのミニクソゲー。それがこんだけ揃ったことで、遂には大きなクソの塊となり聳え立った。


しかしその巨大なクソと同日に、それすら翳むほどの突き抜ける臭気を纏った二匹目の年末の魔物が、この世に生れ落ちていた。
女性向け着せ替えSNSの大手である「プーペガール」のDS化第二弾となる、着せ替えゲーム『プーペガールDS2』である。
前作は名前すら挙がらなかったが、今作では一気にノミネート作として名を連ね、携帯KOTY2010の大トリを飾る運びとなった。
SNSをゲーム化とは言っても、これはただ可愛い服の着せ換えで自己主張ができれば一定の評価が得られる普通の「着せ替えゲーム」としてであり、その順当な2作目…
そうなるはずだったのだが、いざ蓋を開けてみると2種類存在するバージョンの差別化不備から始まり、ROMカートリッジにも関わらずロードが頻発しもっさり感全開。
さらにはSSαにも匹敵する潤沢なバグを引っ提げ、年端も行かぬ子供から大きな女の子まで全ての購入者を纏めて無間地獄に蹴落とす、
魔物は魔物でも大魔王さながらの凶悪バグゲーへと、それは深化を遂げていた。

順を追って説明していくと、まずゲームの一種の特典とも言うべき、本家プーペガールでアイテムを入手できるパスコード。
各バージョンで異なるはずだったこれが、実はDS本体依存の共通コードであることが発覚し、両バージョン大人買いしたヘビーユーザーから最初に悲鳴が上がった。
また本作の肝である着せ替え部分は、インターフェースが不親切であるばかりでなく頻繁に画質が乱れ、
場合によっては拡大するだけでフリーズを起こすなど、不吉な気配を漂わせる。
プレイを進めると徐々にバグが頭角を顕し、ゲーム内通貨である「リボン」の主な収入源の一つであるはずのファッションショーが一度で途絶えたり、
細かいものではゲーム内時間がすっ飛ばされたり停止したり、時にはゲーム内の友達に約束をすっぽかされ進行不能に陥ることすらある。
それら多数のバグや困難を乗り越えた先に、22時間プレイのご褒美が大きな「リボンのマイナス収入」に設定されているという、極めつけの時限爆弾がある。
これで運悪く手持ちリボンが負数となってしまうと事実上の「詰み」となり、新たな服飾品を入手するなどの殆どの行動は禁じられ、
手持ちのアイテムを着せ替えすることで得るスズメの涙ほどの収入で、莫大な借金を返していかなければならなくなる。
メーカー側も重大な負数バグなどには一応の反応を見せ、機を見て公開する予定だったであろうリボンを大量に貰えるパスワードを一挙公開した。
だが、そのパスワードが環境によっては「入力済み」となってしまうという新たな不具合が露呈するなど、サポートは悉くお粗末なものと終わっている。

結局後に残されたのは、救われないクソゲーの被害者と、対応含め大きく評判を落とした開発元アルヴィオン、
そのとばっちりを喰らった本家プーペガールと、あとは不幸な生まれのこのゲーム自身のみ。
この中に真に得をしたものは一人もおらず、このゲームが阿鼻叫喚の地獄を作り出す一際凶悪なクソであったことに、もはや疑う余地もないだろう。


以上5本の作品、『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』、『現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜』、
『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』、『どんだけスポーツ101』、『プーペガールDS2』らがクソゲー頂上決戦へ出場する代表選手に選ばれた。
最後まで名前が挙がりつつ、惜しくも選考から漏れた『ゲームブックDS アクエリアンエイジ Perpetual Period』、
『天下一★戦国LOVERS DS』の両者らも、子細は省くがこの年に生まれなければ大賞を狙えたかもしれない力を持っていた。
ここで大賞を決定する前に、彼らを含む全七候補に惜しみない賛辞と罵声を送りたいと思う。

さて本年はどの作品も、それぞれが違うベクトルに突き抜けているため丙丁付け難く、大賞選出は非常に混迷を極めた。
中でも、
一切のバグなしに存在価値全てをクラッシュたらしめることに成功した『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』、
数多のバグと救いようのないUIでプレーヤーを打ち破り君臨した『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』、
2つあるバージョンに避け難いバグと粗末な対応を以ってこの世の地獄を顕現させた『プーペガールDS2』、
これらスリートップは最後の最後、それすら超えて延長戦の中でも互角と言える戦いを繰り広げた。
果たして、度重なる議論の末に大賞へ選ばれたのは『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』である。

ブロック崩しは、ビデオゲーム黎明期から既に確立されている有数の歴史を持つ定番ジャンルと言え、今やフリーゲームとしてすら飽和状態である。
高度な設計やプログラムを要求せず、更には制作のノウハウも蓄積されているため、ただ調整さえ間違わなければそれなりの形になるという、
まさに王道の「安牌」ジャンルである。
その「安牌」を、バグの一つもなしに「究極のテクニック」と「至高の幸運」を同時に要求する凶悪無比なクソゲーへと転落させた点が、
まず他作品よりも頭一つ抜けていると判断された。
それと合わせて評価され大賞に選ばれる決め手となったのは、この作品が持つどうしようもない「無価値、負価値性」だ。
「ブロック崩しのような何か」、「メタ戦略ゲーム」、「着せ替えゲームもどき」とでも言うべき、一見全て無価値どころか浪費する時間の分だけ負価値な各候補だが、
『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』は、実在兵器による「燃え」やマップエディタ&兵器エディタを用いた箱庭ゲームに、
『プーペガールDS2』は、「本家SNS用アイテム」のオマケや僅かな手持ちアイテム内での着せ替えツールとして、
様々な事象を諦めることにより、それぞれ僅かながら存在価値を見出すことができる。
しかし『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』については、先述のように「ブロック崩し」として、そして「キャラゲー」としてすら、
ブロックの代わりとばかりに破壊しつくされており、他を暗黒星雲と例えるなら、さながら光すら飲み込むブラックホールのような有様である。
またこれだけの惨状を呈していながら、他の候補と違い見るものに後味の悪さどころかある種の爽やかな笑いすら提供できる、という点も無視できない。
こうして、僅差の中の延長戦にてまさかのハットトリックを決めた『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』が年間MVP…もとい、大賞へと選定された。

振り返ってみれば、実力伯仲でハイレベルであった本年のクソゲーオブザイヤー。
ゲーム市場の主流が携帯ゲーム機に移ったと言われるようになって久しいが、それを象徴するような百火繚乱の様相を呈した。
最後に、長く続くブロック崩しゲームの歴史に「ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!」というひときわ突き抜けた金字糞を打ち立てたドラスへ、
この言葉を贈ってクソゲーオブイヤー2010を締め括りたい。

"Hello!KOTY!"

2010年総評合成案3(ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!)

合成宣言1号 ◆/b0/O7.WTE

クソゲーオブザイヤー(KOTY)……
それは、不幸にもこの世に生まれてしまったクソゲーの頂点を決める悪夢の祭典である。
2009年、新鋭フリューの「三銃士」と、修羅の国からの黒船『戦極姫』によって蹂躙された携帯ゲーム機版KOTYスレであったが、
2010年もまた、荒野に芽吹く強靭な作物のように、彩り豊かなクソゲーが跳梁跋扈することと相成った。
今ここに、史上稀に見る熱戦となった2010年携帯ゲーム機版KOTYのあらましを著すこととする。

まず先鋒をつとめたのは、ブロッコリーの『ゲームブックDS アクエリアンエイジ Perpetual Period』(「アクエリ」)であった。
アクエリアンエイジとは古参の萌え系トレーディングカードゲームであり、本作は同社の「ゲームブックDS」シリーズの第三弾であるが、
ゲームブックと自称しているにも関わらず実際は単なるADVであり、このご時世に『頭脳戦艦ガル』顔負けのジャンル詐欺を敢行している。
いないはずのキャラの立ち絵が表示されたり、立ち絵同士干渉して表示がおかしくなるなど、一目見ればわかるバグが放置されており、
ヒロイン6人中3人は最後まで声と文章の同期が取れていないという点からも製作者が本当にテストプレイしたのかを疑わせる内容となっている。
果てにはCGモードを閲覧するだけでメニュー画面が消滅しセーブ&ロード不能になることが露見し、疑惑は確信へと変わった。
なお、唯一の存在意義であった特典のカードについても後に一般販売が決定し、購入者の心にもピリオドが打たれてしまった。

それに続いたのは、前年王者システムソフトアルファー(SSα)による『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』(「大戦略PSP」)である。
本作は前年の『戦極姫』同様、PCゲームで出ていたシリーズを移植したものであるが、悲しいことに崩壊ぶりまでもが全く同様であった。
説明不足で意味不明なインターフェースや、敵AIの思考時間の異常な長さは、もはや「SSαではよくあること」なのでさておき、
よもやカーソルを動かすだけでローディングが入り、キーレスポンスにすらラグが発生するという追加サービスを誰が予想できたであろうか。
このように「ただプレイする」だけでストレスが募る本作であるが、もっと恐ろしいことに、そもそもバグのせいでまともにプレイすることができない。
ステージクリア時、敵ターン終了時、戦闘終了時、ボタン押しっぱなし時など、ありとあらゆるタイミングでフリーズが発生。
自国生産設備に突然名無しのユニットが現れることもあるが、うっかりこれを選択すると問答無用でPSPの電源が落ちてしまう。
あのSSαが「PERFECT」という名を与えただけのことはあり、実際の戦争さながらのスリルを演出することに見事成功した怪作であった。

この『大戦略PSP』に触発される形で、3月時点で発見されていた不発弾にようやく解体班が着手する運びとなった。
同じくSSαから発売された『現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜』(「大戦略DS」)。
「シナリオが無限ループしてクリア不能」というバグによりスレ住人が一人もクリアできず、選評が遅れたという曰く付きの作品である。
なお、これを避けるために他国との友好度を保つことが不可欠であるが、その手段は開戦後即降伏という「土下座外交」しか存在しない。
この他、ユニットを全く動かさなくてもクリアできるステージの存在や、数ターン経過すると敵が動かなくなる現象も報告されており、
これらの無気力仕様に加えてDSのスペックを限界まで酷使するCPUの長考がプレイヤーの虚脱感に拍車をかける。
「一触即発」なのは購入者の心理状態であり、「軍事バランス」以前にゲームそのものが完全に崩壊していたのは言うに及ぶまい。

2010年も終盤に差し掛かった10月。前年の「修羅の国」に触発されたのか、今年は「乙女の国」からの刺客が現れた。
ロケットカンパニーによる女性向け恋愛AVG『天下一★戦国LOVERS DS』(「戦国」)である。
本作は人気携帯アプリを原作に持つ女性向け恋愛AVGであり、その名の示す通り、昨今女性人気の高い歴史要素を足した「乙女ゲーム」である。
シナリオは「主人公を家臣に与えて抱かせた後いきなり略奪愛に走る主君と、それにあっさり応じる主人公」といった物議を醸すものであり、
過激な性描写が売りの「少女コミック」的要素に、昨今一部で流行中の「寝取られ」属性を織り混ぜた高次元の不快感を産み出すことに成功している。
セーブはキャラごとに1つのみで、なおかつ一章ごとに勝手にオートセーブするという鬼畜仕様も携帯アプリ原作ならではの斬新な仕様と言える。
だが、特筆すべきは、かの国の過酷なゲーム業界事情を雄弁に物語る驚愕の販売戦略であろう。
なんと本作には攻略キャラ9人の内わずか2人分しか完全なシナリオが収録されておらず、残りは携帯で一から課金しなければならない。
「5000円の有料体験版」、「続きは携帯で!」などと揶揄されたその逞しすぎる商魂は、携帯機KOTYスレの想像を遥かに超えており、
据置機の『ラブルートゼロ』と合わせて、この一年で「乙女の国」の威光を知らしめるに十分なものであった。

そうこうしているうちにスレに12月が訪れる。
「年末には魔物が潜む」と言うが、今年も現れるのだろうか……
そんな不安を抱く住人たちの前に現れたのが、スターフィッシュ・エスディによる『どんだけスポーツ101』(「どんだけ」)である。
本作は、低得点ほど信頼と実績のあるファミ通のクロスレビューにおいて5・6・4・3の合計18点を叩きだし、発売前から刺激臭を発していた。
スポーツゲームが101種類楽しめるという触れ込みであったが、いざ蓋を開けてみると詰まっていたのはスポーツではなくクソ的な何かであり、
槍を水平に飛ばして競う「槍投げ」や、飛び込む前に出てきたマークを覚えるという謎のゲームと化した「アクロバットダイビング」など、
製作者は各スポーツのルールだけでなく地球上の物理法則すら全く知らないのではないかという異常な仕上がりになっている。
何よりも、北米で発売された本作をわざわざ選んでローカライズしたスターフィッシュの判断に「どんだけだよ!」とツッコまざるを得ない。
なお、本作を制覇した勇者による「102種目めの『どんだけスポーツ101壁投げ』は神ゲーだった」という報告もあるが、真偽は定かではない。

しかし、真の恐怖はここからであった。「年末の魔物」は全く別の場所に生まれていたのである。
アルヴィオン発売の『プーペガールDS2』(「プーペ」)。
女性向けファッションSNSの最大手「プーペガール」のDSゲーム化第二弾である。
元がSNSであるという特色はあるが、基本的にはただの「着せ替えゲーム」……本作は本来、そうなるはずであった。
だが、蓋を開けてみるといきなり、2種類のバージョン違いに応じた購入特典は実はROMではなくDS本体に依存していることが判明。
そのことを詰め寄られたメーカー側は「DS本体を2台以上用意しろ(要約)」と釈明し、不信感が広がることとなる。
肝である着せ替え部分についても、画面が乱れてグロ画像と化したり、時には拡大するだけで暗転フリーズを引き起こす有様であり、
ゲーム内の主な収入源であるはずの「ファッションショー」で報酬をもらえない、一度出場すると二度とお呼びがかからないなどという報告も噴出。
極めつけに、健気に耐えてゲームを続けたプレイヤーのソフトでも発現率100%の「時限爆弾」が爆発し、スレは阿鼻叫喚の地獄絵図となった。
そのバグとは、本作にはゲーム開始から22時間経過後のサプライズイベントとして設定されている「ボーナス」であり、
プレイヤーに対して突然、ゲーム内通貨である「リボン」が何故か「マイナス」15536個プレゼントされるのである。
この際に足りない分のリボンは強制徴収されるが、所持リボンがマイナスになるとバグで全く外出できなくなり、
自分の部屋の写真を撮ることで稼げる雀の涙ほどの収入で返済し尽くすまでほとんど何も行動できない。
これらに対する購入者の怒号は凄まじいものがあり、当初無視を決め込んでいたメーカー側も一応の対応を見せたが、
「22時間バグ」の対処として公開されたコードについては、
「入力済みですとしかでない。。入力したことねーよ」といった不具合報告が多発。
各バージョンの特典アイテムを配布する共通コードも公開したが、購入者以外も普通に入手できるようになってしまい、火に油を注いでしまった。
本スレを中心にどれほどの怒りがあったかは、有志のタレコミによって本作がネットニュースに取り上げられたことからも察することができるだろう。

さて、以上6本の入選作を発表し終えたところで2010年の大賞を発表しよう。

携帯機KOTYには「年末の魔物」と並び称されるものがある。
「夏の怪物」……日々の生活に疲れた人々が長期休暇に沸き立つ時期、その幸福を掠め取るが如く蔓延する悪夢が存在するのである。
2008年には据置機KOTYが「年末の魔物」同士で紛糾するのを尻目に、携帯機KOTYは「夏の怪物」が圧倒的な実力で大賞を奪っていった。
そして、今年もそんな運命のもとに産み落とされた一本のゲームがあった。

2010年ワールドカップ南アフリカ大会、日本代表チームの奮闘により、列島が熱狂に包まれる中、ひっそりと発売されたゲーム……
それがドラスによるPSP専用ソフト『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』(通称「鬼帝」)だ。
本作は「ハローキティといっしょ!」というのメディアミックス企画の一貫として発売された「ブロック崩し」のゲームであり、
著名な萌系イラストレーター陣が描く「キティラー(キティ好きの女の子)」達がパッケージを華やかに飾っている。
しかしながら、その内容は、とある勇者をして「まさかHELLOではなくHELL(地獄)だったとは」とまで言わしめるほど凄絶なものであった。
元来、「ブロック崩し」と言えば、誕生から30余年愛され続けている究極の「安牌」ジャンルである。
だが、本作の場合は、今までに見たことのない前衛的な解釈と、個性的過ぎるバランス調整によって「全く別の何か」へと変貌を遂げていた。
まずボールに関してだが、「ブロックに斜めにぶつかった後、垂直に落ちてくる」、「バーの端に当たると下方向に落ちる」など、
一体どのブロック崩しを参考にしたのか不明な謎の挙動がプレイヤーを苦しめる。
このため、反射のたびに超反応を要求されるが、自機であるバーの移動が異常に遅く、慣性も異様に大きいため、
「見てから」では間に合わず、経験によって体得した「予知能力」が攻略に不可欠となる。
だが、これらの挙動に加えて、「ボールを加速して反射するブロック」や「復活するブロック」などが自機の真上に設置してあることが多く、
どれだけ練習してもプレイヤーの腕だけではどうにもならない局面が多発する。
こうして最初の10分で判明する鬼畜な難度に、キティちゃんを基調としたイラストに釣られて買ったプレイヤーは大きく戸惑うこととなるが、
「HELL」は決してそこでは終わらない。
各ルートでネタ切れを起こす後半では、大量に置かれた砲台による防御不能の弾丸の雨がプレイヤーの命を狙い撃つという構成が基本となり、
「一気に壊した時の爽快感がヤミツキに!」などと謳うルートに「3回ぶつけないと壊せないブロックをガン並べしただけ」の面が鎮座する始末。
10キャラ分用意された各ルートの上級ステージに進むたび、製作者の「悪意」が徐々に顕在化していくのである。

もし本作が一般的な「難ゲー」であれば、それは練習に裏打ちされた達成感を提供するものであり、必ずしもクソゲーとは呼べないはずである。
だが、本作の異常な難度の本質は、製作者がゲームを面白くするために知恵を絞った結果のものではなく、
往々にして「プレイヤーを死なせること」だけを主眼にした、思いつきや手抜きによる《無理難題》であるのだ。
「不規則に動き回り、不規則な方向にボールを跳ね返すボスに対してボールを『50回』当てる」という要求にプレイヤーの目の前は真っ暗になるが、
一方で「バーとボールとアイテムの周囲以外見えない暗闇の中で、敵から砲撃され続ける」という、実際に目の前が真っ暗になるステージも存在する。
そして、極限状況に耐えて勝ち残ってきたプレイヤーを最後に待ち構えているのは、それまでの努力の成果を真っ向から叩き潰す「運ゲー」である。
悪名高いそのステージは「壊せない位置からの一方的な砲撃を避けながら、回転式の矢印ブロックを6つ指定された方向に揃える」というものであり、
それまで培ってきた超人的な操作に加えて、気の遠くなる回数の再試行によって幸運を掴むことでしかクリアすることができない。
その苦行の様子は、「石を積み上げては鬼に崩される作業を永遠に繰り返す」という三途の川の伝承になぞらえて「セルフ賽の河原」と称された。
あまりの暴虐ぶりから、誰ともなく本作を「ハローキティ」になぞらえて「覇王鬼帝」などと呼ぶようになったのもごく自然の流れであろう。

年末の魔物『プーペ』と、夏の怪物『鬼帝』の真っ向勝負となった今回……議論は例年になく過熱し、決着は3月まで持ち越された。
最終的に『鬼帝』を勝者たらしめたのは、クソゲーとして他に類を見ない「負の吸引力」である。
『プーペ』は凄まじいバグによってプレイヤーを苦悶させたが、それは言わば「門前払い」のような性質を持っていた。
その低すぎる完成度はゲームの進行を不可能にする類のものであり、プレイした内容よりもメーカー対応や購入者の怒りが話題の中心であった。
また、本家SNSと同じイラストレーターの手がけたアイテムは評価が高く、本作の不出来にも関わらず決して貶められてはいない。
それに対して『鬼帝』は、まず、どこまで行ってもどうしようもない「無価値」である。
苦難の末に各ルートを全面クリアすると「イラストをゲット!」などと大きく表示されるが、描き下ろしのイラストなどは一切無く、
全てが各種媒体で既に使い回されているものであり、とどめとばかりに高画質版がPlaystation Networkで50円で購入できる。
多くのクソゲーで唯一の救いとされる「BGM」でさえ、ゲーム中はたった二種類の単調なものしか聞くことが出来ない。
超絶な「難度」、製作者の「悪意」、乱数調整の「運ゲー」という、地獄の三段構えを乗り越えた先に待っているのは「虚無」なのである。
このように最初から結果が分かっているにも関わらず、本作はなぜか「やってみたい」とさえ思わせる不思議な魅力を持っており、
「どんな挑戦も受ける」と息巻いて突撃した歴戦の猛者達を拷問に引きずり込むことに成功した。
「バグ」は確かにクソ要素として重視されるべきでものはあるが、「バグがないこと」はゲームとしての長所などではなく当然の「前提」であり、
さらに言えば、『鬼帝』のように苦行を強要するゲームについては「ゲームとして問題なくプレイできること」そのものがクソ要素と成り得るのである。

以上の理由をもって、『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』を2010年携帯機版KOTYの大賞とする。
『アクエリ』、『大戦略PSP』、『大戦略DS』、『戦国』、『どんだけ』、そして『プーペ』に『鬼帝』……
奇しくも、盛況で知られる2008年据置機KOTYと同じ7作のノミネートに恵まれた年となったが、審議の混迷ぶりはそれ以上のものとなった。
これら多彩な作品の中でも、『大戦略PSP』はフリーズを超える「電源落とし」の実装によってSSαバグゲーの神髄を見せつけるものであり、
また、『プーペ』を巡る顛末は、DSの普及によって増えた女性ゲーマーの怒りと悲しみがクソゲー界に鳴り響いた象徴的な事件であった。
そして、『鬼帝』は未来永劫続く「ブロック崩し」のゲーム史において、「クソの記念碑」としていつまでも語り継がれていくことであろう。

最後に、『鬼帝』をリリースした「ドラス」と、不幸にも本作に巻き込まれたイラストレーターの方々に向けて、
次の言葉を贈ることで2010年携帯機版KOTY総評の結びとする。

「H E L L O ! K O T Y !!」

2010年総評合成案4(プーペガールDS2)

総評4の人 ◆dybIMvianSX1

総評案4をベースに他評からいくつかの文章をお借りしました。シェイプアップ中。

今となっては考えづらいことだが、2010年のクソゲーは不作となるのではないかと予測されていた時期があった。
その結果がどうであったか。驚愕すべき死屍累々たる地獄絵図を見よ。
詳細は選評に譲るとして、ここでは大まかな流れのみを記述することとしたい。


昨年のW受賞の衝撃も未だ覚めぬ2月25日、思えばこの時点で波乱の一端が既に始まっていたのだった。
その昨年の覇者たるSSαは早くも第二の刺客を放っていたのだ
(1月21日に発売された先の刺客「真・戦国天下統一〜群雄たちの争乱〜」は駄作どまりであり、ここではとりあげない)。
DS「現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜」(システムソフト・アルファー)である。
なるほど適切なサブタイトルであると言わねばならぬ。
10ターンもすれば敵はもはや動かない。番狂わせの余地はもはやなく、プレイヤーの介在すら必要とせず
決着が着くまでにこの世界における軍事バランスは崩壊しきっているのだから。
だが崩壊していたのはそれだけではなかった。
何が、と仔細にリストアップする必要があるだろうか?たった一言で済む。すなわち”全て”と。
バグによりシナリオが無限ループし、クリア不能なため選評が遅れたという曰く付きの作品であり、
深淵に沈むその実体は現代どころか云十年前で時が止まったかのような代物なのだった。

同日には、同じくDSの
「ゲームブックDS アクエリアンエイジ Perpetual Period」(ブロッコリー)もまた姿を現していた。
往年の人気TCGシリーズに材をとったメディアミックス作品であるが、やはりというか連綿と連なる黒歴史に新たな頁を記す結果に終わった。
ゲームブックを標榜しつつ中身はノベルゲームであるが、”大戦略”という名の戦術級シミュレーションが名作だった時代もあり、
その点は問題ではないだろう。
もっともそれは、その大きな構成要素であるところの立ち絵、声をバグが彩っていなければの話である。タイトルを冠した
メインテーマからしてクラシック曲の引用ときては、最初から力の入れようは知れているというものではあったのだが。
とはいえ、購入者の関心は主に同梱カードに向けられており、”ゲーム”それ自体は付属品に過ぎないのである。
むしろゲームとしてというより、かの邪神モッコスの系譜に連なるものとして解釈されるべきなのかもしれぬ。
ところで同梱カードであるが、あまりの強力さに原作カードゲームのバランスを破壊せしめ、一般発売されるに至ったことを付記する。
危うく原作までクソゲー化させるところだったという点でも注目しておきたい。

6月24にはSSαが新たな刺客を繰り出した。
PSP「大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜(システムソフト・アルファー)」である。
彼らの目指す戦場がどこか、言わねばわからぬスレ民がいようか?総じて劣悪なシステム周りに鬼ロード・思考時間、
売りとされた新要素「マイ部隊」は仕様とバグの両面で使い物にならないとくる。
さらには現実とも違えばゲーム的な嘘としてもおかしい各兵器の仕様。歴戦の勇士たちでさえ一部操作法の解明に
数ヶ月を要したというから相当なものだ。
何をするにも入るローディングはドライブの寿命とプレイヤーの忍耐を容赦なく削ってゆく。さらにはステージをクリア、
敵ターン終了。果てはボタン押下。ありとあらゆる場面でフリーズし、ハードとハートに止めを刺すに至るのである。
些細な物から進行に関わる物までバグのオンパレードであり、「ただプレイする」ことすらままならない逸品であった。


上半期にして既にこれだけの暴風雨が吹き荒れていたのであるが、これら水面下の地獄絵図は長い間広く知られる
ことがなくスレ民は、台風の目の中3月11日発売のDS「RPGツクールDS」(エンターブレイン)がノミネートに
相応しいか否かの議論を続けていたのである。
ツクールについてだが、ジャンルの特異性もあって結論は出ず、当時募集されていた作品コンテストの結果を待って
判定を下すこととなったのであるが、コンテストの成否が議論の俎上に上がることはついになかった。
来るべき地獄の使者がすべてを吹き飛ばしたのだから。

そう7月15日、今年も恐怖の帝王が降臨されたのである。上記作品たちの選評が次々届き始めたのも同時期であり、
2010年クソゲーオブザイヤー真の始まりを告げるかのごとく、候補作のプログラマーたちが
ハローワールドを学ぶ際に誤って打ったであろうフレーズが高らかに響き渡った瞬間であった。

”Hello!KOTY!”!!

恐怖の帝王、すなわちPSP「ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!!」(ドラス)陛下である。
人気イラストレーターたちの手になる美少女キティラーを擁する企画「ハローキティといっしょ!」の第一弾であり……
そして、仔猫の皮を被った鬼帝というほかない存在であらせられた。
覇王鬼帝、地獄王鬼帝の異名をとる帝王に相応しく、その得物はただの一点。即ち”理不尽”。
ブロック崩しという、古典的なゲームでありながら基本的な挙動がまず異様な振る舞いをお見せであった。
根幹たる反射からしておかしい。パドルの端に当たると下に跳ね返っていくボール、ブロックに斜めにぶつかると
真下に下りてゆくボール。
パドルの操作性の悪さ、終盤に登場する弾幕・凶悪なクリア条件も相まって不快指数は最初からクライマックス、
終盤に至っては常人のロースペックで対処できる領域を軽々と逸脱した超難度ステージの数々がプレイヤーを待ち受ける。
詳しくは選評を見ていただきたいが、その難度の上げ方たるや、”〇〇ブロックをひたすら敷き詰める”といった稚拙な物ばかり。
諸氏の中にステージエディット機能のあるゲームで自分の作ったステージを友人に遊ばせた経験が
おありの方はいるだろうか。どんなステージを作ったか覚えておいでか?陛下が提示されたのはまさにそれなのだ。
よもや「ぼくのかんがえたむずかしいすてーじ」にまともな解法があるとは読者諸氏もお思いではないだろう。
高確率で詰みシチュエーションが発生し、無間地獄を楽しめと言わんばかりにリトライ等のシステム周りばかりは快適だ。
スタッフロールもなく、あとはただエンドレスモードだけが待つ鬼帝陛下に終わりはない。
FC時代にはよくあったことだが、ただ絶望だけが臣下のゴールなのだ。
そのFC時代から進歩した点といえばキャラ毎のステージコンプリート時に下賜されるご褒美CGの存在が挙げられようが、
その内訳はといえば、既に公開済みのものが各キャラに一枚づつ。
さらには同じものが一枚50円の良心価格でPSP用の壁紙として販売されているとくる。
だが狂気とは時に人を強くひきつけるもの。多くのスレ民が憑かれたように
何の見返りもないことを十分に知りながら自ら閣下に膝を折ったことを付記しておく。


鬼帝閣下の話題に沸きつつも埋もれたクソゲーたちが続々発掘される中、新たなクソゲーの報がもたらされたのは10月7日。
DS「天下一★戦国LOVERS DS」(ロケットカンパニー)である。
女性向け恋愛ゲームの「忠実な」移植である本作で問題となるのは二点・インターフェイスの劣悪さと商法の悪質さである。
加えてシナリオ自体も褒められたものではない。
9人の攻略キャラのうち最終シナリオまで収録されているのが二人だけであり、事実上の体験版。
価格はといえば通常版5,040円(税込)、限定版7,140円(税込)。本編である携帯版にて続きをプレイするためには
既読部分をも課金された上で読み直すことになる。
シナリオが完全でないのなら、では何が忠実なのか?いうまでもなくシステム周りである。
携帯ゲーム本編へ誘導する意図がある都合、変に快適にするわけにはいかなかったのであろうことは推察できるが、
わざわざDSで携帯電話並みのインターフェイスを体験する苦痛はいかばかりか。
完全オートセーブの選択肢ありノベルゲーというだけでもその凶悪さはご理解いただけるだろう。


そして12月16日……この日こそを運命の日と言わねばならぬ。
恐怖の帝王の存在が予言した火星の王子、年末の魔物がとうとうやってきたのだ。それも二体。

まずDS「どんだけスポーツ101」(スターフィッシュ・エスディ)。
改変の必要すらなく蔑称として機能するタイトルもどうかと思うが、実に的確なのだから仕方ない。
マイナースポーツを取り入れるのはいいが、再現する意思すら感じられない携帯アプリゲームの出来損ないレベル、
物理法則はおろかスポーツのルールも雰囲気すらもどこ吹く風といった具合だ。
ひとつはボール落下地点にペンをスライドさせるだけのピーチバレー。べつのひとつはレシーブしなければ勝てるバトミントン。
想像してみていただきたい。それが101種。
塵も積もればとはよくも言ったもの、101本のクソゲーで苦痛も百倍いやそれ以上の無間地獄がここにあった。
なにより恐ろしいのは、本作が既発売海外作品のローカライズであるということである。
いったい発売元は何を思ってクソゲーであるとわかっている(わからないはずがあろうか?)これを輸入したのだ?


そしてDS「プーペガールDS2」(アルヴィオン)である。
アバターの着せ替えを売りとした同名SNSに材を取り、衣服の収集・着せ替えに特化したDS版であったのだが、さて実態はどうか。
本作の内容を的確にそれを説明した一節があったので最初にこれを紹介しよう。

   ファッションショーに一度参加して有頂天になったものの、その後オファーは来ず
   それでもモデルの夢を諦めきれず、服飾に収入の全てを捧げ
   その収入も徐々に減り、ブランドショップでウインドウショッピングする毎日
   気付けば莫大な借金を背負い、時間感覚すらなくなるタコ部屋に缶詰で内職の日々
   失意の中で、それでもいつかはあのブランドショップの商品を買い、
   再びあの頃のように、それ以上に輝くことを夢見る…

序盤こそ何をしてもお金がもらえはするがそこから先は餓鬼道だ。
初物特典はやがて尽き、連動するような服のお値段の急激なインフレ。ゲーム要素かつ収入源となるファッションショーは
バグで機能しない。バグが発生しないワイヤレス通信プレイではそれなりの収入を確保できるのだが、よもやそれが
SNSの再現というわけではあるまい。
実際のところ可能なプレイ内容である収入源はただ既所有服の着せ替えのみだ。
雀の涙の収入を得るために撮らねばならないスナップショットは最新30件のみが保存される。すなわち気に入った写真を残しておくことも出来ない。

そうして泥水を啜るような苦労の末には、プレイ時間ボーナスと称した大金の搾取(公式の表記に依る)が待っている。
本来ボーナスであったものがオーバーフローバグで大幅なマイナスに変貌した結果であるが、報奨欄にはマイナスボーナスが
最初から記載されているため仕様というべきかもしれない。
さて苦界を抜けてようやく集めたお洋服を着れば着せ替えアバターそのものまでがバグり、ホラーゲームさながらの様相を呈する始末。
プーペというよりはプー屁、もしくはPoopの名こそ相応しい内容であった。

ところで、2バージョン発売された本作であるが、バージョンによって初回特典および連動特典として配布される
原作用衣装が異なるとされている。そして、ここへきて本体ともいえる特典にも問題が発生した。
品質は別として、初回特典の入手については問題ない。だが作中でコードを入手できる連動特典についてはそうでなかった。
なにしろ入手条件自体が不明確である。5種類あるそれらを満たすための労力についてはもはや記述する必要を感じない。
そうしてようやく入手したコードを使用すると、同時に購入したバージョンの記入を要求される。
そう、発行されるコードは完全に本体のみに依存しており、すなわちバージョンの情報を含んでいないのだ。
意味するところについて言及の必要はあるまい。
この問題に対し、”双方の特典が欲しければ(ソフトではなく)ハードを二つ買え”等の迷言を経てメーカーサイドは
全コードの配布に踏み切ったのであるが、それを救済と取るか購入者に唾する行為と取るかは各人に任せたい。


以上が今年の候補作となる。
ノベルゲーム、さらに遡ってブロック崩しといわば枯れたジャンルにもかかわらず
システムレヴェルで破綻を見せるアクエリアンエイジ、鬼帝閣下、戦国LOVERS。
バグこそないもののひたすら物量と内容そのものの稚拙さで押すどんだけスポーツ。
バグの乱れ撃ちがコンセプトの中心を見事に射抜くプーペ。
お馴染みと化してインパクトこそは薄いが、覚悟完了した人間さえあっさりと下す両大戦略も見逃せない。
”例年なら文句なく大賞”とはここ数年毎年のようにいくつものクソゲーに対して言われることではあるが、
やはり今年も――いや、今年こそはと言わねばならぬ。素人裸足の完成度を誇るクソゲーが熾烈な底辺争いを
繰り広げ、選考は困難を極めたのである。激しい議論の末に最後に残ったのは以下の四本。

まず注目が集まったのは鬼帝陛下であった。バグは特になく、インターフェイス面も良好と言っていい。
にもかかわらずあの完成度である。悪意ある調整といった評価も多く見られたが悪ノリといった方が正確だろう。
敷き詰め、弾幕、暗闇その他もろもろ、難度の上げ方の発想自体が素人のそれなのだ。
調整の壊れようではプーペも負けてはいない。ソロプレイで収入がほとんど得られないのはメーカー発表に
よると”仕様”とのことだがどう見ても(一部については原因まで推測できるのだから)バグとしか
思われないため一旦除外しよう。だがそれでもなお収支バランスは崩壊しきっているという
ほかないのである。件のマイナスボーナスにしてもそもそもは、一律ボーナスで物価高騰に対処しようと
いう安易な姿勢ゆえのものだ。
豊富なバグが主に取り沙汰されるプーペであるが、バグ抜きでもバランスの崩壊という観点で十分鬼帝陛下と
戦える素材であると判定して差し支えあるまい。
そこへ先程は保留したバグが加点される。数少ない収入源をことごとく潰し、ようやく買った衣装を着れば
立ち絵が崩壊。収集・着せ替えというメインコンセプト二点を見事に破壊せしめているのだ。良作ならざるもの、
商品ならざるものであったプーペは今こそ言われなければならないだろう。ゲームならざるものともなった、と。
前半は普通の駄作程度に遊べるとの意見もあり、異様な反射角を擁すれどもブロック崩しを全否定するには
かろうじて至らず、ゲームの枠内に踏みとどまることに成功した陛下と比較してよりクソゲーであるといえよう。

では、もはや無双の必要すらない低難度とユニットの機能不全を擁する両大戦略と比べてはどうなのか。
確かにゲームと呼ぶのはいささか憚られるまでに崩壊したこの二作もまた、最後のステージに上がるに相応しい。
であればその問には次の点をもって答えよう。すなわち、プーペにおいて唯一の評価点とも言える洋服デザインである。
本来ならクソゲー度を低からしめるそれは、しかし本作においてはそうでない。
いかにも物欲をそそるそれらがどれほどの高嶺にあるか、これ以上繰り返すこともないだろう。
誰がゲームの中でまでウインドウショッピングを楽しみたいものか。全てが見た目通りのクソである大戦略に対し
美点こそがクソ要素と呼ぶほかないこのことをもって、プーペの勝ちと判断するものである。

理由は以上だ。バグ・バランス・コンセプト・企業態度。全てにおいて崩壊を見せ、
さらには評価点すらも自ら破壊してしまった「プーペガールDS2」に2010年の大賞を贈りたい。
魅力のあるプレイ動機がしっかりあり、快適なゲームサイクルが存在するゲームは良作であろう。
だが逆転してみればどうか。
一分の隙も無く完成されているゲームサイクルが快適の対極にあれば、可愛い服であったり連動特典コードであったりする
プレイ動機が存在することこそがクソゲーである証左であり、他候補を大きく引き離す根拠なのだ。

最後にナーサリーライムの替え歌を添えて2010年のクソゲーオブザイヤーを締め括ることとしよう。

クリスマスの八日目に
あのひとが私にくれたのは
八本のクソゲーと
七回のループ
六枚の同じ立ち絵に
五度のフリーズ
四基の砲台
三通の請求書
二つの塵の山
それと一度ではとても済まない数々の怒号

2010年総評合成案5(プーペガールDS2)

総評2の人 ◆ij4W6jf8pvAY

2009年に訪れたエロゲーからの黒船「戦極姫(システムソフト・アルファー(以下SSα))」
によって持たされた混乱も冷めやまぬ2010年はまさに幕末の様相を呈していた。
今年もSSαの作品ラッシュが予定されているため、
普段は前年ほどのクソゲーが出るかどうかが問題になるスレが、
今年もSSαに席巻されてしまうのではないかという不安からスタートすると言う異常事態で始まった。
それはまるで、約束されたペリー再来に怯える日本のようであった。

そして、それはすぐにやってきた。
ペリー再来とばかりに昨年黒船を送りだしたSSαから、新たな刺客が送り込まれる。
「現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜(SSα)」である。
大戦略シリーズと言えば古参ゲーマーの間では知らぬ者はいないほど有名な
冷戦時代〜現代を題材としたウォーシミュレーションゲームなのだが、その辺は前年覇者。
抜かりはなかった。
本作は何もかもが説明不足で不親切だ。
まずマップ画面は一番上の部隊しか表示されず、カーソルを合わせないと
下にどんな部隊がいるのか分からない。
それどころか、全く説明になっていない説明書のお陰でユニット情報、部隊の配置方法、
展開方法、武器の相性も分からない。
ソートしても選択するとソート前にそこにあった部隊が選択され、特定条件の補充でフリーズする。
更に、本作は「揚陸艦から部隊を揚陸方法が分からない」
「港以外の場所で空母から艦載機が発進する方法も分からない」
という兵種の存在価値そのものを崩壊させる情報不足っぷり。
例えるなら、「モビルスーツを発進できないホワイトベース」
「バルキリーが飛び立たないマクロス」と言ったところだろう。
更に「シナリオが何故かループして延々終わらない」というエンドレスエイト並みの問題も抱え、
発売日が2月にも関わらず、クリアして選評が上がってきたのは9月という大記録を打ち立てた。
そのクリア方法も驚愕の二文字だ。
なんと、戦ってはいけないのだ。本作は戦うことで友好度を得るシステムなのだが、
友好度が上がると分岐シナリオが発生する。
問題は、分岐シナリオ発生後にも分岐シナリオが発生するため、
永遠に終わらないということである。
そこから抜け出すには戦闘開始したらすぐさま降伏するしかない。
その新しすぎる戦略は当然のごとく「土下座外交」と名付けられたのだが、
なんと降伏しても面が進みクリアボーナスが得られるため、デメリットが全くない。
もしかしたら本作は「戦っていては戦争は永遠に続く、平和が一番なんだ」
と言う大事なことを教えてくれるゲームなのかも知れない。
僕の知っているウォーシミュレーションゲームとは違うのだが……。
なお、後に非常にめんどくさい方法で揚陸艦から部隊を揚陸する方法は見つかったが、
海上の空母から艦載機が飛び立つことはなかった。

そして、その現代大戦略と時を同じくして発売されたのが、
ブロッコリーの『ゲームブックDS アクエリアンエイジ Perpetual Period』
(以下「アクエリ」)だ。
SSαの猛攻を防ごうとしたのか迎合したのか、
はたまた他のクソゲーにかぶせて販売すれば叩かれないで済むと思ったのか、
出来あがったのは明らかにデバッグしていない代物だった。
本作は第一作目「ソードワールド2.0」二作目「鋼殻のレギオス」に続き、
二番目くらい長い歴史を持つ萌え系のトレーディングカードゲーム
「アクエリアンエイジ」を題材にしたAVGである。
原作の共通点を探すほうが難しいセレクションと、まともに動かないことで有名な本シリーズだが、
やはり今回も酷いものだった。
セーブヶ所が三つしかなかったりくらいの仕様の不備は当たり前。
立ち絵が絵が残り、居ない筈の場面でもそのままイベントCGに切り替わっても居座り続ける。
また、音声ファイルのナンバリングを間違えたのか、
半数のキャラクターはひとつ前の台詞やひとつ後のセリフを読み上げる同期ズレが発生。
延々「あれ? 声が遅れて届くよ」といっこく堂ネタをやられては、
盛り上がるものも盛り上がらない。
そんなこんなで、ただでさえ盛り上がらないのに人気キャラを一切出さず、
購入特典のTCGカードも後日通常販売されると言うファンアイテムとしても問題あるシナリオで、
スレ住人を驚かせたが、もっと驚かせたのは、本スレの住人の態度だった。
なんと、アクエリファンたちは「いつものこと」と受け流したのだ。
ブロッコリー商法に鍛えられ過ぎたファンたちの強さを改めて思い知ることができる一本である。

続いて6月。奴が再びやってくる。
そう。またもや大戦略シリーズの新作、「大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜(SSα)」だ。
小窓を開くだけでなくカーソル移動ですら約一秒のローディングが入るシステム。使いにくいUI。
思考時間1勢力数分というSSαの「悪いところ」をパーフェクトに進化させた作品だ。
この作品は何もかもが信用できない。
マニュアルが説明不足で不親切で信用できないのはいつも通り。
ありとあらゆるタイミングでフリーズが起こり、ボタンを押しっぱなしにするのも危険。
また、本作の特徴に自分でユニット編成できる「マイ部隊」というものがあるが、
彼らは自軍として設置したはずなのに敵として出てくる時があり、占領可能なマイ部隊を
首都に設置した瞬間も裏切られ、首都陥落で負けたりする。
PSP本体の動作も信用できず、味方の生産施設に何故か出現する名無しの部隊を確認しようとした瞬間、
100%電源が落ちるバグまで完備している。
更に、クリア時一部隊内の残ユニット数が次のユニット上限になるというバグも存在し、
敵首都目前で回復タイムに入らなければならない。
もちろん回復して首都を落としても安心できない。
ステージクリア時に持ち越せる部隊は100部隊までだが、ソート機能は搭載されていないうえ、
一度選ぶとキャンセルもできないのだ。
そのため、後半育てた部隊が十分数に達すると、操作を一回間違えるだけで
育てに育てた精鋭部隊を前のマップに置き去りにしなければならない事態が発生する。
愛着ある味方を見殺しにしなければならない司令官の気持ちは味わえるかもしれないが、
不親切なUIのせいで見殺しにしなければならなくなったとなれば怒りしかわかない。

加えてゲームは基本的に高難易度だが、クリアは簡単である。
何を言っているか分からないかもしれないが、理由は簡単だ。
ズルがシステムに組み込まれているのだ。
ミニマップでは兵器カスタムでゲームバランス無視の超兵器を生産でき、
キャンペーンではプレイヤー変更で敵側の操作も可能。
そのためプライドさえ捨てれば、比較的簡単にゲームをクリアする事はできる。
こうなると、もはや敵と戦っているのか仕様と戦っているのか己と戦っているのか
分からなくなる怪作と言うしかないだろう。

このSSαの猛攻に、今年のKOTYもSSαに奪われるのではないか、
という危惧がスレ内に漂っていたその時、坂本竜馬のごとく一人の英雄が登場する。
パチンコシミュレーターの名家ドラスによって生みだされた
『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』(通称「鬼帝」)である。
キティと聞いて女児向けかと思いきや、大きなお友達向けのイラストレーターに
キティラー(キティグッズコレクター)の絵を描かせた、
どちらかといえばオタク向け作品で、ジャンルとしてはブロック崩しに分類される。
この作品の恐ろしいところは、その難易度である。
プレイしてまず気になるのが不自然な挙動をするボールとパドルの動きである。
ブロックの角に丸みがついているらしく、ボールが角に当たると予測もつかない角度で落ちてくる。
もちろん即座に対応できればいいのだが、パドルは遅く慣性が働いているため
普通のブロック崩しのつもりで操作するとミスを連発してしまう。
用意されたステージも『指定されたコンボを決めろ』『ボールとパドルの周囲以外真っ暗
(時々全体が明るくなるが一瞬)』『画面を動き回るボスに50発当てろ』
『ボールが当たる毎に90度回転する矢印を揃えろ』等
ブロック崩しのセオリーを根底から覆すステージばかり。
その上、各ステージの後半には当たるとワンミスの弾を撃ってくるブロックが
幾つも配置されており、プレーヤーの集中力を削っていく。
こんな斜め下の発想を実現させたステージ設計に
『ブロック崩しをしていたらいつの間にか弾幕シューティングをプレイしていた』
という証言まで出ていて、中には有名な無理ゲーにちなんで、
「ブロック崩し大往生」や「I WANNA BE THE ブロック崩し」と呼ばれるほどだ。
それほどまでに鬼畜ゲーだが、時にはデレるときがある。
良くも悪くもアイテムが強力すぎるのだ。
うまいタイミングで貫通アイテムが出たり1UPが出れば、とたんに難易度が下がり、
自機のサイズダウンやスピードダウンに当たってしまうと、ほぼワンミスが確定する。
普通は「運の要素があってもテクニックがあればクリアできる」ようになっているのが
ゲームのはずだが、これは「運とテクニックの両方がないとクリアできない」
ようになっているのがこの本作なのだ。
この鬼畜さゆえに、スレ内では「覇王鬼帝」や「HELL o' 鬼帝」と呼ばれ恐れられることとなる。

また手軽にクソゲーを楽しめるということもあって一部で妙な流行があったことも特筆すべきだろう。
プレイした誰もがクソゲーと認識しているのに、なぜか購入していく様は、
一種のカルト宗教のようであり、
まさに帝王の名にふさわしいとしか言いようがない。

そんなキティvsSSα勢という争いを見せる中、10月、日米和親条約締結直後に
日露和親条約を求めるロシア艦隊のごとく、「乙女の国」から新たなる使者が登場する。
それがロケットカンパニーが作り上げた女性向け恋愛AVG『天下一★戦国LOVERS DS』
(通称「戦国」)である。
本作は、歴史上の人物といちゃいちゃ出来る、いわゆる「乙女ゲーム」であり、
携帯アプリで人気のあった同名タイトルをDSへと移植したものである。
そう。このソフトは携帯アプリの移植なのだ。
文字送りは遅く、ちょっと速いオートレベル。
分岐前にセーブしたいというプレイヤーの希望を無視するように一章ごとにオートセーブが
セーブデータを上書きしてしまう携帯仕様を完全移植。
立ち絵のクオリティも酷く、携帯素材をそのままもってきたのではないかと思わせる。
シナリオは従者ルートのあとに君主ルートが発生するという、
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」な話なのだが、従者ルートでは
「褒美にヒロインと契るが良い」と主君が言ったかと思えば、
主君ルートに入るやいなや「やっぱり俺もヒロインのことが好きだから、さっきの無しね」
と掌を返される超シナリオ。
従者もヒロインも最初は気まずく思っているが、比較的アッサリと乗り換える尻の軽さを
安心の「CERO D(17歳以上対象)犯罪、セクシャル」な文章で展開される。
だが、本作最大の特徴はシステムやシナリオではなくその商法にある。
先ほど「このソフトは携帯アプリの移植」と言ったな。あれは嘘だ。
なんと本作で携帯アプリのシナリオが完全に入っているのは9キャラ中2人だけだ。
残りのシナリオは一応エンディングまで入っているが、真のエンディングを見たければ
携帯アプリで課金して読み直さなければならない。
前代未聞の「続きは携帯で」商法にスレ住人は驚愕の声を上げることとなった。

そうこうしているうちにスレにいつもの季節がやってくる。
「年末には魔物が潜む」と言うが、今年も現れるのだろうか……。
期待と不安が入り混じる12月も半ばを過ぎた12月16日。
薩長連合のごとく二本のゲームが立たなくてもいいのに立ち上がった。

その一本がスターフィッシュ・エスディによる『どんだけスポーツ101』
(通称「どんだけ」)である。
低い時だけ信頼できることで定評のあるファミ通クロスレビュアーのひとりが3点(計18点)を
付けたことで注目を集めた。
101種類のスポーツが遊べるという謳い文句だが、その実態は一本の低予算ゲームを
101倍に薄めたミニゲーム集である。
1年プロジェクトでも、1本3日しかかけられない本作はその通りの仕上がりで、
その中には日本に競技人口がいるのかすら分からないマイナースポーツが含まれているにも
関わらず、ろくなルール説明は無し。
メジャースポーツにしても、敵も味方もいない「カーリング」、トスだけで成立する「バレーボール」、
ひび割れを避ける「スケルトン」等ミニゲームに落とし込むにしても
もう少しやりようがあっただろうと思うものばかりである。
難易度調整がおかしいものが多く、「操作性が悪いのに相手が弱くて勝てた」という
間違った方向でゲームバランスがとられていて、やりがいとは無縁の存在になっている。
またシステム周りも不親切で、いざ遊ぼうと思っても101種類のスポーツが横一直線に並んでいて、
スキップ機能も無いので延々と探していかなければならない。

101個もゲームがあるので「次こそは遊べるゲームかもしれない」とついやってしまうが、
その全ては裏切られる。
アカギという漫画で「焼かれながらも人は、そこに希望があればついてくる」という台詞があるが、
このゲームはまさにそれで、プレイした人間は次もたぶんダメだろうと思いながらも、
「もしかしたら」という希望で身を焼き続けた。
もちろん、全てのゲームをクリアしたところで、このゲームに希望なんてない。

しかし、どんだけは囮だったと言わんばかりに真の「年末の魔物」は
全く別の方向から襲いかかってきた。
その名はアルヴィオン発売の『プーペガールDS2』(通称「プーペ」)。
同名のアバター着せ替え機能を売りにしたSNSを原作として着せ替えゲームの第二弾である。
昨年同時期に発売された前作はせいぜいが駄作どまりだったが、
今年もやってきたそれは遥かに進化を遂げていた。

本来着せ替えゲームというものは、貯めたお金で衣装を購入し、
コーディネイトやミニゲームで入ってくるお金でさらに高価くて可愛いお洋服を買う。
そうして物欲とおしゃれ欲を満足させるゲームである。
その服さえ可愛く、着替えという名の画像重ね合わせさえ動けば文句が出ない、
俗に言うクソゲーになりにくいジャンルである。
実際序盤は何をしてもお金がもらえる。服も安くてかわいい。これなら楽しめると思い、
進めていると、それは徐々に口を開く。
まず、マニュアルには一定期間ごとに行われると書かれているファッションショーが
一度に無数に行われる。
そのファッションショーの一つへ行き、いい成績を残しても、何故か報酬が0なのだ。
何かの間違いかと思うと、二度とファッションショーは行われなくなる。
そして、気がつくとお金が入らなくなると同時にインフレが始まる。
本作は着替えをして街を歩き、すれ違った人に「ステキ」と言ってもらえれば、
後でゲーム内通貨であるリボンがもらえるというシステムなのだが、
何と後半のアイテムを1個買うためには1000回近く「ステキ」と言ってもらわなくてはならない。
回数制限はあるが自分の部屋で写真を撮ってもステキ5つほど収入を得られるが、
これはレシピ保存も兼ねているうえ古いものは自動的に消されるので、お気に入りの
コーディネートも残しておけない。
また、本作はROMカートリッジにも関わらず何故かロードが多発するうえ、
お着替え画面は「どんだけ」ライクに横一直線に並んだアイテムから選んでいかねばならない。
簡単なジャンル分けがあるものの、これで4000以上のアイテムの中から自分のお気に入りを
探し出して思った通りのコーディネートができる人間がどれほどいるだろうか。
更に、顔などの画像が乱れてグロ画像と化したり、拡大するだけでフリーズし、
つけたはずのアクセサリーが消えるのだからやってられない。
この悪条件の中、地下王国かと思わんばかりの低賃金制にプレイヤーは
ファッションを楽しむ余裕などあるはずもなく、「延々ステキを求めて街を徘徊する」
というプレイスタイルを強要される。
しかし、恐怖はそれだけではない。
マイルームでプレイ報酬と条件を確認できるのだが、そこには恐ろしい文言が書かれている。
「実績/プレイ時間が22時間経過/獲得/-15536リボン」
目を疑うのも無理はない。前代未聞のマイナスのプレイ報酬が襲いかかるのだ。
どうせこれも表示ミスか何かだろうと思ったら甘い。
その時が来た瞬間、確実に15536リボン奪われ、所有リボン数がマイナスの時外出すると
フリーズを起こす。
低賃金労働に耐えていたプレイヤーもこの法外な搾取には悲鳴と怒声をもって抗議した。
当初無視を決め込んでいたメーカー側は「おとしだま」「まいぞうきん」等、
明らかに後日公開する予定だったコードを先行公開することで対応しようとするが、
「入力済みです」と表示され入力できないバグが多発。
結局、何処に逃げてもバグに捕まると言うオチをつける結果となった。

ここでメーカー対応の話が出たので、ついでに記するがこのメーカーの対応は素晴らしかった。
本作は本家SNSにコードを入力すると特別な服がもらえる特典があり、
某ポケモンのように2種類のバージョンがあり、特典もそれぞれの本体用のものが用意されていた。
ならば当然2本とも買って両方の特典を得ようとする人間のいたわけだが、
なんとこのコード生成ルーチンは同じDSならどのROMでも同じコードを吐くという問題が発覚。
2本買っても片方分の特典しかもらえないと判明した。
当然怒りだすユーザーにメーカーは「もう一台DSを買ってください」とサポート。
本スレは怒りの声で埋め尽くされた。
続いて、その怒りがおさまらないと見るや、今度は「メールを出せばコードを提供する」と発表。
てっきりメールを出した後、購入を証明する手続きがあるのかと思えば、
そのままコードが送られてくる。
そのため本作を購入していないユーザーまで特典の服を手に入れてしまい、
購入者の怒りの炎に油を注いだ。
また、前記のファッションショー問題に「マニュアルの印刷ミス」とメールで告知し、
これらの対応が行われている間も、開発者ブログは「可愛いおしゃれの組み合わせ」の
話題だけで終始すると言う、ユーザーの神経を逆なでする行動を続けた。
前記の22時間バグの対応も含め、メーカーがサポートするたびに、
本スレでは罵声と怨嗟の声が響き渡る様子を見ると、
アルヴィオンはゲームを作るセンスは恵まれなかったが、
ユーザーを怒らせるセンスだけは素晴らしかったと言わざるを得ないだろう。
そもそもSNSのゲームバランスをコミュニケーション能力に乏しいDSへ
そのまま持ってこようという基本コンセプトの時点から間違っている。
その点は前作から指摘されていたにも関わらず、売れたという一点を持ってそのまま進み、
アイテムを増やしていいUIではなかったにもかかわらずアイテムを増やし、
機能追加でバグも増やし、崩壊してしまったのが本作である。
こんなセンスで作っていては、
「poupee(人形)girlが、poop(糞・おなら・馬鹿・疲れる・止まる)girlになってしまった」
と言われても止むなしと言ったところであろう。

以上が本年のノミネート作である。
「前年の覇者」に続き、「夏の怪物」、そして「年末の魔物(真)」が暴れまわり、
いつまでたっても選考が終わらないという異常事態に突入した。
その中で、「ファンは納得しているアクエリ」「大戦略Pという上位の存在がある現代大戦略」
「携帯アプリの存在を知らなければ携帯アプリ程度には楽しめる戦国」
「選外にという声はないが、大賞にという声もないどんだけ」の4本が絞られ、
残る3本で争われる結果となった。
幕末の動乱を支配するのは一体誰か。
終わりなき激論の末、この戦いを制し、最後に選ばれた作品は、『プーペガールDS2』である。

このゲームが選ばれた最大の理由は、製品レベルでは大戦略P戦え、
ゲームバランスの悪さでは鬼帝と戦えるという、非常に高レベルかつ広範囲にクソという点である。
まず、製品レベルから見てみよう。
本来お着替えゲームというのは、可愛い服を重ね合わせさえ出来れば、
一定の評価が得られるジャンルなのだが、それすらできていないというのは驚愕に値する。
数々の問題は、プログラミング中の仮組段階のような挙動で、
実は対戦成績のカウンターすらまともに動かず、意味不明の数字へ突然変異する。
さすがに、バグが多い大戦略Pでも、そこまでは酷くなく、
悪く見積もってもα版レベルには仕上がっている。
また、大戦略Pはフリーズやバグが酷いものの、危険な操作というのが分かっていて、
慣れればその辺を回避することが可能だ。
難易度調整がプレイヤーに任されている問題はあるが、逆を言えば無双ゲーも高難度ゲーも
楽しめると言う点で、ひたすらつまらない作業を続けなければならないプーペを
クソ度で上回っていると言えるか疑問がある。
ゲームバランスについても、鬼帝とプーペは同じくプレイヤーの時間を非常に長く拘束するデザインだが、
片方は難度で拘束し、片方はただただ低賃金で拘束している。
鬼帝の面構成もセンスがないが、それでも難易度が高い分、かなりのテクニックが必須で、
クリアできれば自慢でき、実際、鬼帝のプレイ動画ではクリアすると絶賛のコメントが流れる。
対して、プーペはただ低賃金なだけで難易度はなくプレイヤーの腕が介在する余地がない。
単なるステキを集める作業でしかなく、そこにプレイヤーの腕が介在する余地がない。
いくら進めても暇だったことしか誇れないプーペのほうが一歩劣ると判断された。
また、鬼帝は運ゲーゆえ、射幸心を得られる。
あるユーザーによると鬼帝のクリア時間は12時間程度であり、
同じ長時間拘束ゲーとしてみても22時間が地獄の一丁目であるプーペを超えているとは
言い難い。
また、プーペに収録されている服が可愛いくて多いことを持って、
着替えゲームとして価値があると評する意見もあったが、
プーペはそのUIに対してアイテム数が多すぎ、破綻しているのは誰の目にも明らかで、
そのアイテム数すらクソ要素になってしまっている。
更に究極のクソゲーとは何かと考えてみよう。本当にやるのも辛いのがクソゲーである。
しかしやるのも辛いならやらなければいい。
それでは究極のクソとは言えない。
究極のクソとはクソの中に「やらなければ」と思わせる何かを持っているのも
条件ではないだろうか?
可愛い服や購入特典のコードなど、ゲームバランスとは関係ないところに餌があり、
それに釣られた者はクソの海をひたすら進まなければならない。
それこそが真のクソと言えるのではないだろうか。

もっと細かく見れば、鬼帝にも大戦略Pにもプーペを超えている部分はある。
特に鬼帝には「リプレイしやすいUI」や「クリアすれば絶賛される」等の餌がある。
更に古き良きファミコン時代のクソゲーという意味では鬼帝のほうが近いだろう。
なので、納得できない人もいるだろうし、だからこそ、決定がここまでこじれる結果となった。
しかし、プーペは「相手が得意とする土俵で戦えるオールラウンドなクソさを持っていること」
「購入にかかった金額以上に「やらなければ」と思わせる何かを持っていたこと」
「それがゲームの面白さとは別のところにあったこと」の全てを持っているのはプーペだけで、
これにより一歩、ほんの一歩だけ他作品の先を行くと判断された。

以上をもって、プーペガールDS2が2010年のクソゲーオブザイヤーを獲得するに至った。

振り返ってみれば、今年はどこかゲームを出し急いだ一年だったのではないかと思う。
アクエリは一週間、いや二、三日あれば、かなりの問題点を解決できたはずだ。
鬼帝はちょっと冷静になれば、自分たちが作ったバランスがおかしいことに気付いただろう。
大賞作プーペだって画面を一通りチェックしてみる暇くらいできただろうし、
もしかしたらファッションショーをマニュアル通りにしたほうがいいと気づけたかもしれない。
システムが難しい大戦略や移植・ローカライズの戦国&どんだけはともかく、
他のソフトはたった一歩発売前に立ち止まって冷静になる時間があれば、
ここのお世話にはならなかったものばかりだ。

しかし、どこもそれができなかった。
不況と言われる昨今、立ち止まったら倒れてしまう恐怖心と戦ってゲームを作っているのかもしれない。
しかし、企業はそんなときほど誰かが立ち止まり、冷静に周りを見る勇気が求められているのではないだろうか。

最後に、今年発売されたクソゲーを生みだしたメーカー諸氏へ日本で一番有名な先生、
金八先生の言葉を送り、総評を締めくくりたい。
「正しいという字は「一つ」「止まる」と書きます。
どうか一つ止まって判断できる人になって下さい」