名称 | みんなでオートレース3D | |
ジャンル | アクションレースシミュレーション | |
対応機種 | ニンテンドー3DS | |
発売元 | インターグロー | |
開発元 | 株式会社IGプロジェクト | |
発売日 | 2013年3月7日 | |
価格 | 6,090円(税込) | |
対象年齢 | CERO:A(全年齢対象) |
競輪・オートレースを管轄する公益財団法人、JKA監修のレースゲーム。
公式サイトによれば、史上初のオートレースを題材にしたゲームソフトである。
2011年12月、PSVITAモンスターハンター3G等、注目のソフトやハードが並ぶ年末商戦にとある無名のオリジナルソフトが参戦する…はずだった。それから複数回の延期を繰り返し2013年3月、一年と数ヶ月の時を経て発売されたソフトがこの「みんなでオートレース3D」である。
発売直前に各所のオートレース場とオートレースモールの通販での限定販売という、オートレースファン以外を無視した男らしい売り方が発表され少し話題になった。
本作にはレーサーモードと予想士モードの二つがあり、レーサーモードはレーサーとしてSGレース制覇を狙い、予想士モードは実際に行われているレースにゲーム内通貨を賭けて予想するというモードである。
まずレーサーモードから解説していく。
レーサーモードで使用するのはAボタンとLボタンのみ。アナログパッドで自機操作だったりボタン押しっぱなしでアクセルをかける等、複雑な操作を必要としない単純過ぎる操作性である。
コーナーに突入した際メーターとカウントが現れ、タイミングよくボタンを押すことで有利になり、逆にタイミングがズレると不利になる。
レース中はAボタンLボタンAボタンLボタンをただひたすら繰り返すだけ。例えるならマリオカートのロケットダッシュを延々やらされる状態だ。
スリップ等のハプニング要素もないので寄せてきたライバルを避ける為のパッド操作や追い抜くのに連打といった単調さを埋めるQTEすらもない。
操作が簡潔ならば演出に期待したいものだが、オートレースという競技の都合上、画面の八割を味気ないアスファルト舗装のコースが占め、視点変更もないので非常に退屈な絵が続く。レース場による変化も乏しい。
立体視による奥行きや排煙の演出は悪くはないが、タイヤすら回らない貧弱なグラフィックはとても褒められない出来である。実況もあるが言葉のパターンが少なく何回かレースを行えばだいたいの台詞が聴ける。
イベントと呼べるものもなく、オリジナルキャラが大して役に立たない一言を呟いたり実在の選手達が一行で分かるオートレース豆知識を言うくらいで、ライバルとの決戦や友情、恋愛や日常等は一切なく、ただひたすらレースをして上位を目指すだけである。
余談だが、元SMAPであり今も第一線で活躍する森君こと森且行選手もちゃんといる。
レーサーモードには自機をカスタマイズできる要素もあるが値段が高いものほど全ての能力が高い(使用回数有り)という設定なので勝てないのならとりあえず高いパーツを付ければよく、カスタマイズの楽しみがあまりない。
そもそも中盤辺りまでは目押しに慣れれば無改造(一番弱い状態)でも簡単に一位になれる。その代わりなのか後半は強敵が増えてくるので高いパーツを買う為どれだけ資金を温存出来るかが勝負になってくる。
最初から最後、王座決定戦で優勝するまでひたすらAボタンLボタンAボタンLボタンを押すだけ…無事SGレースを制覇してもこれと言ったご褒美やイベントもなくスタッフロールに突入する。
もう一つのモードである予想士モードについて解説する。
これは先程説明した通り実際のレースのデータを受信することで本格的なギャンブルごっこを楽しめるモードだ。
仮想通貨とは言え賭け事なので熱くなるモードなのだが、それはこのゲームではなく実際のオートレースが楽しいのであって、別にこのゲームを使わなくてもいいんじゃないかという疑問もつきまとう。
しかしそうちょくちょくレース場に足を運べない人やお金を浪費したくないけど公営ギャンブルを体感したい人に取っては便利な機能なのかもしれない。恐らくこれが本作の良点と言える部分だろう。値段に見合っているモードかは微妙だが。
本作はひたすらに薄い。予想師モードも結局は現実のレースに頼っているだけで、ゲーム単体としては吹くだけで消えてしまいそうな程儚い。
いくらオートレースだからと言って開発のブレーキまで外すのはどうか、そう思えてならない。
終わり
「みんなでオートレース」は日本のオートレースを題材にした初のゲーム。
アクションレースシミレーションと謳われているが、「アクション」「レース」の二単語を入れてもよいものかと疑うほど薄い内容である。
まずボタン操作であるが、レース中は「L」と「A」ボタン以外は一切使用しない。
コーナーに突入した際に車体をコントロールするための「突っ込み」と「立ち上がり」を制御するために、
表示されたメーターとカウントに合わせてタイミング良く指示されたボタンを長押しするだけである。
ゲーム中では離すタイミングも大事と言われるがそんなことは全くなく、メーターが振り切れるまで押していても問題はない。
どのレースも全く同じようにA>L>A>Lをタイミング良く繰り返すだけなので、さっそくレース要素の欠片も感じられなくなる。
むしろリズムゲームではないかとさえ錯覚する。
当ゲームの最終目標は、年に数回開催されるSGスーパースター王座決定戦で優勝することになる。
そこに至るには、各レース(G2、G1)で好成績を出し自らのランクを上げるか、
あるいは該当する月の各レースで優勝し続け、最終的にSGに出場する事が条件となる。
大きな大会になれば当然出場するレーサーの平均ランクは上昇し、それにともなってゲームの難易度も飛躍的にアップするが、
その難易度の調整とは、言葉を失うほどの見事な手抜きである。
先ほども紹介したように、レース中はメーターとカウントに従ってALを交互に押せばよいのだが、
ランクが上がるとメーターの表示が無くなり、フェードアウトするカウントだけを頼りにタイミングを計らなければならなくなる。
つまりは「勘」で押せ、ということである。
メーターありでも判定はかなり厳しく、メモリ一つでもずれればあっさり「BAD」扱いされる
(判定は「Excellent」「Good」「BAD」のいずれか)。
メーター無しではどれぐらい早すぎたり遅すぎたりしたのかが判断できず、一度外しだすとどんなに距離を開けていようともあっさり後続に抜かされてしまう。
そして極めつけにはこのボタン入力は1レースにつき数十回も要求され、プレイヤーの神経を激しく摩耗させていく。
このような仕様はオートレースの緊張感を再現していると言えなくもないが、
あまりにも単純すぎる操作のせいでゲームとしての楽しさは微塵も感じられない。
さらにはレースの期間選択もできないので、年に一回の大会を敗退すると翌年になるまで全てのレースを消化していかなければならなくなる。
そのため重要な大会では上記の仕様と相まって、胃が痛くなるほど無駄な緊張感を味わいながらプレイするハメになる。
ちなみにレース中に本体の電源を切るとリタイア扱いになるため、救済措置なんてものは一切無いといっていい。
難易度の高いレースで少しでも勝率を上げるためには頻繁にカスタマイズ画面を開く事になる。
というのも、天候によってタイヤの種類を変更する必要があるため、レース前に車体を調整しなければならない。
しかしこのメニューを開く度に車体の名称変更ウィンドウが開かれ、いちいち閉じなければならない。
加えてメニューのボタンも小さく押しにくい上に、全てタッチペン操作で行わなければならず、
いちいちペンを取り出すという非常に煩わしい思いをさせられる(スライドパッド/十時キーでの操作は不可)。
カスタマイズ自体も上記の単純すぎる操作のせいで「とりあえず高いものを買えばいい」だけであり、資金さえ稼げていれば何の問題ない。
加えてレース前に選択できる3つの作戦もこのカスタマイズ画面でベストアンサーが表示されるので、特に悩む必要すらない。
結果的にこのカスタマイズさえただの面倒くさい作業に成り果てている。
こうしたレースを盛り上げる要素があれば幾ばくかは報われそうなものであるが、
ダッシュのエフェクトやブレーキの煙等をはじめ、どれも見栄えがいいとは言い切れない。
加えて車体のできも決していいわけではなく、カスタマイズでいくらペイントしようともレース中に反映されることはない。
男女別の実況音声も収録されて入るもののパターンは少なく、数レースで枯渇する。
しかも、目の前に先頭車両がいるにもかかわらず「引き離して独走状態」と言ったり、
背番号を間違える等の演出ミスも所々はさんでくる。
どの大会で優勝しても優勝賞金が表示されて「おめでとう」の文字が表示されるだけであり、
サブキャラの祝杯や特別なイベントも発生しない。
念願のSG杯を優勝しても、賞金表示の後に画面が真っ黒になり、そのままスタッフロールが流れてゲームが終了する。
レースで神経をすり減らしカスタマイズでストレスを溜めた上でクリアしても、この仕打ちである。
楽しむ要素が全くといっていいほどなく、ただただ苦しむためだけの要素を的確に詰めこんだ内容は脱帽ものである。
これほどの薄っぺらい内容で的確にプレイヤーの神経に攻撃を仕掛けてくるゲームもそうそうないだろう。