2013年 総評

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このページは、2013年度KOTY総評の案を集めるページです。総評の審議に役立てば幸いです。
書き方テンプレートは編集ページにコメントアウトで掲載します。

総評案1(ホームタウンストーリー)

2012年は2011年度の平和から一変、
度重なるクソゲー続出による情報の交差によりプレイヤーやスレ住民を谷底へと突き落としていった。
その中で海外から糞フルプライスで颯爽と登場し、
劣悪な操作でありながら理不尽な難易度を見せつけた『ヘビーファイア・ザ・チョーズン・フュー(重火)』は
2012年度KOTY大賞の名に恥じないクソゲーであったといえよう。

そんな混沌から解放されたスレ住民達に襲いかかったのは、
春に訪れた2作品によるクソゲーの竜巻であった…

1年半に渡る5回の延期を重ねついに激しいエンジン音を響かせながら登場した1本目のソフトは
3月7日発売、3DS専用ソフト『みんなでオートレース3D』(開発:インターグロー、通称:オート)
このソフトは競輪・オートレースを管轄する公益財団法人「JKA」が監修している
史上初のオートレースを題材にしたゲームであり、
当初、全国6箇所のオートレース場とオートレースモールの通販でのみの限定発売と
"オートレース初心者お断り"という男らしい販売方法でスレ住民に挑戦状を送りつけた。

画面の大部分を灰色のアスファルトを占め、レース状況を間違える実況ボイスを聞きながら
コーナーで「L」と「A」ボタンを交互に押すだけのレーサーモードは、
コーナー以外の場所はアクセル・ブレーキ等の操作ができない自動操縦であり、
プレイヤーから「レースゲームじゃなくて音ゲーではないのか」と言われる始末。
カスタマイズ機能は「高いパーツ買ってレースに勝てばいい」の一言で済むのだが、
肝心のパーツの性能が高ければ高いほど使える回数が少ないので使い勝手が非常に悪い。
単純な作業のはずなのにレーサーモードの目的である"スーパースター王座決定戦"は
その年の優秀な選手しか出場することができず、
出場するためには該当する月に開催される大会で全て優勝するか、自らのランクを上げておかなくてはならない。
それなのに敗北すると今までの成績がリセットされたかのようにもう一度全てのレースをやり直させる理不尽仕様。
敗北したら"電源消して一からやり直す"という考え方も電源を切ると強制的にリタイア扱いになるのでやり直しが一切効かない。
すべてを乗り越え頑張って優勝しても特別なエンディングはなく、
優勝賞金に"優勝おめでとう"の文字が添えられるだけのしょぼいグラフィックが表示される。
これを見たプレイヤーは今まで何のために頑張ってきたのか頭を抱えるだろう。

実際に行われているレースのデータを受信して予想してくれる予想師モードは、
同じ開発会社からでている競馬の予想ソフトのノウハウがありそこそこいい出来ではあるが、
その競馬の予想ソフトが1000円であり、
言ってしまえば1000円分しか元が取れていない。
さらに、"ネットに接続する事"と"レースの出走時間直前での予想"が条件になるので、
2つの条件が全てが満たされていないと使えない。
これの為だけにゲームを買うのであれば、
実際のオートレースでお金をかけた方がまだ有意義である。

少ない作業でセカンドインパクトレベルの苦痛を味わうオートを
スレ住民から"ゲー無の究極形態"と言われ恐れられる中、
まさか全国のゲオでの販売が開始されるとは誰も思いはしなかっただろう…

そんな中、2本目のソフトがKOTY会場に歌声を響かせた。
3月28日発売、PSP専用ソフト『Megpoid the music♯』(開発:Para Phray、通称:GIMI)
"VOCALOID"の中の一つ"Megpoid(GUMI)"を題材に、
無料動画サイト等で人気の曲を収録した音楽ゲームとして出された本作は、
GUMIや収録された曲のファンなど多くの人が楽しみに待たれていた。
…しかし、このゲームを開発した"Para Phray"の大本が、
2010年度KOTY据え置き版次点『ラブルートゼロ Kisskiss☆ラビリンス』の販売メーカーであり、
それを知っている人達の不安の声も聞こえた。

結果としては、期待よりも不安の方が現実となってしまった
このゲームには、どこをとっても”調整”や”作り込み”の跡が感じられないのである。
差分抜いて全7種類で手抜き感満載のしょぼいステージで、
画面酔いしやすいカメラワークの中、
GUMIが音楽に合わせて踊りつつ、
画面に表示される譜面を音楽に合わせて押す。のだが…
その肝心のBGMと譜面がズレていて音楽に合わせられないのだ。
ズレは千差万別であり、ズレてない譜面を見ても「ズレてるんじゃないか?」と疑心暗鬼になってしまう。
しかも難易度が上がるにつれてズレも増えていくので、
ズレを回避するには"BGMに耳を傾けない"と音ゲーを全否定しなければならない。
そんななかで頑張ってクリアーしても、
発生原因不明のフリーズにより唯一のセーブ手段である手動セーブすらさせてもらえず、
苦労が水の泡となったプレイヤーは涙目であろう…

ではキャラクターゲーム・ファンディスクとしてはどうだろうか?
ゲーム内容が酷くても、キャラクターがかわいく引き立っていればまだ救いはあるのではないだろうか?
GUMIのような"VOCALOID"はそもそもキャラクターだけではなく、
GUMIを使って作った"曲"が一番の要となってくる。
しかし、肝心の曲が"どんなに長い原曲でも90秒に雑編集"で突然打ち切られたかの様に終わるとなれば、
作詞者・作曲者の気持ちを踏みにじるものだ。
GUMIの衣装も誰が作ったのかわからない微妙なものでありほめられるものではなく、
使おうとしても、ロードする時間が長くなる上にフリーズする確率が上がるので使う気にはなれない。
唯一の救いだったかもしれない"踊ってみたで有名のダンサーによるGUMIのダンス"は、
酔いやすいカメラワークで台無しにしてしまって元も子もない。
おまけ的存在である"GUMIルーム"も、
発売前に「コミュニケーションを楽しめる」と言われていたが、
反応パターンが非常に少ない上に、会話が成り立っているのかも怪しいレベル。
プレゼントを渡しても中身は見てもらえず、日記も「音楽大好き!!」程度の内容。
これを見たプレイヤーは(♯^ω^)ビキビキと血管が浮き出てくるだろう。

また、ニコニコ生放送で行った公式生放送ではGUMIのモーションだけ1曲分見せたものの
肝心の音ゲープレイ画面は全く見せなかった点、
公式ブログでGUMIをGIMIと誤記している点は、
開発側のGUMIへの愛の無さを物語っていると言えるだろう。

開発側からもファンからも見放された"GIMI"は、
加害者でもあり被害者であったのかもしれない。

こうして春に2本のクソゲーが登場した。
しかし、そのレベルの高さから後に現れた様々なクソゲーがその姿を消していった。
住民からは「これを超えるクソゲーが来るのか?」と不安の声が上がる中、
とうとう、恒例の"年末の魔物"がスレ住民の前に店を開く。
12月12日発売、3DS専用ソフト『ホームタウンストーリー 』(開発:トイボックス、通称:ホーム)
人気シリーズ"牧場物語"の生みの親である和田康宏氏が手掛けたハートフルアドベンチャーであり、
店を経営しながら住民と過ごしていくスタイルは、
牧場物語ファンやこの手のゲームが好きだというものに大きな期待を寄せられていた。
しかし、ふたを開けたプレイヤーに待ち受けていたのは、
「この村で暮らしたくない」と言いたくなるものであった。

まず、移動面を見てみよう。
上画面が3Dマップ、下画面が上空視点の簡易マップになっているのだが、
マップが大してやれることがないのに無駄に広く、
後にでてくるワープ機能が使えるまで移動するのにすごい時間がかかってしまう。
そんな中でいざ主人公を動かしてみるとしょっちゅうカメラが切り替わる為、3D酔いが発生する。
スティックをそのままにしているとカメラが切り替わる際に変な方向に向かってしまう所もあり
否が応でも慣れないといけない。
その上さらに、歩いている住民に走って話しかけようとすると、
主人公の走る速さより少し遅いくらいの速さで歩いているので、
遠くにいる村人に話しかけるとなると道を覚えて回り込まなければならない。
3D酔いしやすいカメラワークに加えてこれではプレイヤーも報われない。

次にお店経営はどうなのだろうか?
このゲーム、当初はお店経営がメインなのかと思われていたが、
実際メインなのは"ハートフルなストーリー"であり、お店経営はイベントのきっかけにすぎないのだ。
では頑張って経営してイベントを起こそうにも、
レクチャーしてくれるキャラがあまりにも不親切な為肝心なところを何一つ教えてくれない。

では、そこを乗り越え経営をいざ始めてみよう。
プレイヤーはまずどう見てもテーブルにしか見えない棚に商品を置き、
客が商品をとってレジに向かうのを待ち、レジで会計処理をするシンプルなものなのだが、
一つの棚に商品が一つしか置けない仕様の為
プレイヤーは商品が売られる度に商品を補充しなければならない。
店を拡張して棚を増やすと、さらに補充する数が増えるため落ち着けない。
商品の価格も変えることはできるが価格を一切記憶してくれないため、商品を置く度に値段を設定しないといけない。
設定するのが面倒くさくても、設定しないと仕入れ値の一割増し程度の価格でプレイヤーの利益がほとんどなくなってしまう。
一定時間内にレジで会計処理をすると加算され、価格がアップする"コンボシステム"は
客側としてはレジで散々待たされて挙句の果てに大損するものであり、
「じゃあ、コンボシステムで稼げばいいじゃん!」と思っていざやると、
コンボ中にフリーズするバグが存在している為、失敗すると朝起きて商品を置くところからやり直しになる。
手を抜こうにも店の売り上げやコンボがイベントの発生に関係しているので真面目にやらなければならない。
どの道に行ってもプレイヤーに「俺達は辛い労働作業(お店経営)を強いられているんだ!」と言わせるお店経営を、
いったい誰が楽しめるというのだろうか…

上で触れたイベントについて詳しく延べてみよう
イベントの9割がキーアイテムを所持していることで発生するのだが、
入手可能場所が不明な上に出現がランダムであるため、
いつ村で拾えるか、店で売ってるか分からないから
今行けば落ちてる(売ってる)かもしれないと結果的に無意味に彷徨うことになる。
普通ならばプレイヤーが迷わない為にヒントやリスト等の救済策があるのだが、それが一切存在しない。
さらに、依頼された住民からも依頼した以降何一つ依頼についての発言がない。
そこからやっとキーアイテムを手に入れても次の日に何故か消えるというバグがあり、
これを見たプレイヤーはポルナレフ状態になること間違いないだろう。
そして、イベントを発生させるためにお店にキーアイテムを並べて目的の村人に売るのだが、
一部で別の村人がキーアイテムを買ってしまうという事態が発生する。
しかもキーアイテムは1回しか落ちないのでもう二度と手に入らい上に、ゲーム内での救済策が何一つない。
早めに気づいて前のセーブデータからプレイするか、データを消して最初からやり直す事態になるのだ。
つまり、攻略するにはプレイヤーの運と記憶たどりに探し、住民と商品を監視し続けなければならい。
では、それを乗り越えたらイベントが見れるのかというとそうではなく、
見たいイベントがあっても見ていないイベントがあると発生しないものもあるのだ。
これは公式側で「イベントの進行具合で矛盾が起きないように設定されている」ものであり、
その壁にぶち当たるとプレイヤーは
運頼りに目的のイベントにつながるイベントの為のキーアイテムを探さなければならない。
そうしてやっとイベントを発生させてみたものはどこまでもあっさりとした内容で、
期待して頑張って努力をしたプレイヤーの心を根こそぎ奪っていくのだった。

なお、和田康弘氏が"自分のお店に親しみを持ってもらうために採用"した耳障りで変えられない店内BGMや、
行方不明なのに放っておかれているばあば、
とあるイベントを起こすと”いつも竹馬に乗っている少年が夜中にひとりで竹馬で登山して死んでしまう"
という常識人からしたらわけのわからない出来事等、
人の心を根こそぎ奪い取っていくような要素は他にもある。
もしかしたら開発側は"Heartful Story(心温まる物語)"を
"Hurtful Story(心傷つける物語)"と間違えたのではないだろうか?

こうして、2013年度は3つの候補が上がった。
どの作品もそれぞれの糞要素を持っており、
プレイヤーに地獄を見せた作品である。
そんな中、2013年度KOTY携帯機版大賞を発表したいと思う。

それは、ホームタウンストーリーである。

前にも記しているが、2013年の3本はそれぞれの糞要素を持っている。
オートの"苦行ゲー無"、GIMIの"作りかけから生まれた何か"、ホームの"アイテム入手運ゲー"
これらはどれも許されるものではない。
では、何故"ホーム"が大賞に輝いたのか…
それは"運"だけが頼りだからこその問題点だ。

何故、我々はゲームをするのだろう?
多くのゲームには"達成感"がある。
ゲームの腕を上げたり自分なりの対策を練る事で、その過程で楽しみながらクリアーする事で達成感を味わえる。
その達成感を得る為にゲームを求め、楽しむのだろう。
今年の3作は確かにプレイする事で苦痛を味わうが、
オートとGIMIにはそのゲームの目標を目指す事により自身でクリアーした事での達成感や解放感は味わえるのだ。

では、ホームはどうだろう…
この手のゲームでは、ヒントを頼りに住人の求めるアイテムを探し出す事によって、ご褒美であるストーリーが見られるようになる。
これが達成感につながるわけだ。
しかし、ホームの場合は求めるお店経営・キーアイテム・イベントの全てが"運" であり、ヒントもなければ対応策も練ることができない。
それらをすぐに見つけられたとしても"運が良かった" だけであり、"自力でクリアーした" 気にはなれないのだ。
その上村人に聞いても依頼の話は一切無く、頑張って探しているプレイヤーは探している事が馬鹿馬鹿しくなってくる。
誰も助けてくれない中プレイヤー自身で解決する事ができない状況がどこまでも続き、目標が見えてこない為達成感を味わう事も出来ない。
この絶望感については、「古き良きゲームの手探り感を表現した」とのコメントを述べた
プロデューサーの和田康弘氏に小一時間程問い詰めたいものである。

今年の携帯機版はある意味恐ろしい年だったであろう…。
"仕様通りに作ったらできたものが虚無"であるオート。
高級食材を手抜きに手抜きをした結果劇薬物へと化したGIMI。
人の手ではどうしようもできない"運"をたたき付けたホーム。
この3本は"ブランド力"を使ったにもかかわらず、
調理した方向・目指したものがおかしくなってしまい最終的にはファンを裏切る形になってしまった。
ある意味、最悪であり最高のクソゲーである。

また、ホームは"年末の魔物"として携帯機版KOTYでは久々の勝利であったことも記しておこう。

最後にホームの開発スタッフ
検証の為に散っていった者達
そしてこれからクソゲーに触れるであろう者たちに向け、
とある偉人の言葉を拝借しこの2013年度KOTYを占めたいと思う。

「運は我々から富を奪うことはできても、 勇気を奪うことはできない。」

総評案2(みんなでオートレース3D)

2012年の携帯ゲーム版KOTY(クソゲーオブザイヤー)を制したのは、
海の向こうからの刺客『ヘビーファイア・ザ・チョーズン・フュー』であった。
1曲しかないBGM、チープな紙芝居にしょぼいグラフィック、劣悪な操作性に理不尽な難易度と、
彼の者もやはり、大賞の座に相応しいソルジャーであった。

世界にはまだまだクソゲーが跋扈している。その苦い事実を噛み締めながら、
それでも「今年こそクソゲーの無い年になりますように」と、ささやかな祈りを捧げずにはいられない。
だがしかし、その願いも春の息吹と共に呆気なく吹き飛ばされる事となった。
それでは、2013年携帯ゲーム版KOTYの先鋒を務めたそのソフトを紹介しよう。
3月7日発売、3DS専用ソフト『みんなでオートレース3D』(発売:インターグロー、通称:オート)
このソフトは、競輪・オートレースを管轄する公益財団法人「JKA」が監修している
史上初のオートレースを題材にしたゲームであり、発売当初は
全国6箇所のオートレース場とオートレースモールの通販でのみの限定販売であった。

ゲーム内容は、プレイヤーがレーサーとなり"SGスーパースター王座決定戦"の優勝を目指すレーサーモードと、
実際に行われているレースにゲーム内通貨を賭けて予想する、予想士モードの二つに分けられる。
メインとなるのはレーサーモードなのだが、この肝心のレーサーモードが大問題だった。

レース中の操作は、コーナーで「L」と「A」ボタンを交互に押す。
これによりコーナリングでの「突っ込み」と「立ち直り」をコントロールする……ただこれだけである。
コーナー以外の場所では自動操縦なので、プレイヤーは何もできない。
カメラの視点が斜め下を向いているため、画面の大半を灰色のアスファルトが占め、
天候も昼夜もレース場の様子もロクに判別できない。
アスファルトの上を走るバイクのグラフィックも、タイヤすら回らない非常に質素なものとなっている。
レース中にボイス付きの実況が流れるものの、パターンが少なくすぐに枯渇する。
たまにレース状況を間違えるおまけ付きだ。

ではレース中以外だとどうなのか?
レース前にマシンのカスタマイズができるのだが、パーツの種類は少ない上に
ポイントとなるのは「値段の高いパーツほど強い」「高いパーツは壊れやすい」の二つだけであり、
普段は安めのパーツで頑張って重要なレースでは高いパーツを使う、ぐらいしか考える事が無い。
一応タイヤだけは種類が多いのだが、天候や季節に合わせてタイヤを変える必要があるためで、
レース前の表示を見ればどのタイヤにすれば良いかはハッキリしており、
種類が多いといってもプレイヤーが自由なカスタマイズを楽しめるという代物では無い。

もう一つの予想師モードは、レースの出走時間の少し前にレースのデータを受信し、
ゲーム中の予想師キャラがレースの予想してくれるというもの。
発売元のインターグローはこれと似たような競馬の予想ソフトをDSiウェアで出しており、
そちらのノウハウがあるおかげか、こちらの方は目立った荒は無い。
だがしかし、予想ができるのはレースの出走時間の少し前だけなので、
レースの無い日はレースの日程を確認するぐらいしかやる事が無い。
一応、レーサーやコースを自由にエディットして予想が出来る"ドリームエディット予想"という
遊び方もあるのだが、肝心のレースシーンが上述の通りなので、ドリーム感を味わう事は難しい。

かくして、強力な門番の登場によりKOTYスレのボルテージも上昇したが、息つく暇も無く
新たなる刺客がスレにその旋律を響かせる。

3月28日発売、PSP専用ソフト『Megpoid the music♯』(発売:Para Phray、通称:GIMI)
キャラクター設定付きの音声合成ソフト"VOCALOID"の中の一つ"Megpoid(GUMI)"が主役を務めるゲームで、
ボーカロイドファンからの注目度は高かったのだが、実際に発売されたそれは
ファン感涙……ではなくファン血涙の1本であった。

BGMに乗りながら、譜面に合わせてボタンを押すというよくあるタイプの音ゲーなのだが、
ここに最大の問題点がある。曲と譜面がズレているのだ。
音楽を主題とした音ゲーにとって、致命的な問題である。しかもズレ方が一定では無く、
最初からずっとズレているのもあれば、最初だけ合っていたり、部分的にズレていたりと、ズレ方もバラバラ。
仕舞いには、ズレていない譜面までズレているような気になってしまう始末。
このランダム音ズレに対処する最善の方法は「ミュートにしてプレイする」という事。
まさかの音ゲー全否定である。
この他にも、全ての曲が90秒に編集されているせいで曲によってはぶつ切りに感じられたり、
譜面が妙に見辛かったりと、音ゲーとしては落第点の出来であった。

キャラゲーとして見た場合も、褒められた出来では無い。
GUMIにプレゼントを送っても中身は確認せず、反応パターンも乏しい。
GUMIとの会話もやはりパターンに乏しく、会話として成立しているのかも微妙。
音量調節のミスなのか、殆ど聞き取れない台詞もある。

トドメとばかりにシステム面でもローディングの長さが目立ち、
セーブするためには一旦メイン画面に戻らないといけないのだが、その際にもロードが発生するなど、
ここでも作りの粗さが見て取れる。

なお、公式サイトや公式ブログで名前を"GIMI"と誤記されていたため、
「これはGUMIではなくGIMIというキャラのゲームだ」「GIMIなら仕方ないな」と揶揄される有様だった。

かくして3月に2本の大賞候補が出揃い、この2作がKOTY2013の門番として立ちはだかる時期が続いた。
「今年は門番が強すぎる」「今年はオートかGIMIのどちらかだろう」という空気がスレを支配していたが、
遂にその均衡を破るソフトが現れた。
携帯版では2010年の"どんスポ"と"プーペ"以来となる"年末の魔物"の襲来である。

12月12日発売、3DS専用ソフト『ホームタウンストーリー』(発売:トイボックス、通称:ホーム)
マーベラスの人気シリーズ"牧場物語"の生みの親である和田康宏氏が手掛けた作品であり、
発売元からは"ハートフルアドベンチャー"と銘打たれている。
ゲームの内容は「お店の経営を行いつつ村の住人達と交流する」というものであり、
牧場物語のファンやこの手の箱庭ゲーが好きな層からは期待されていた。
だがその先に待ち構えていたのは、「ハートフル」の意味を考えさせられるゲーム内容であった。

まず画面だが、上画面が3Dのフィールド、下画面が上空視点の簡易マップで構成されている。
上画面では移動中頻繁に視点が切り替わり、そのたびにスティックを倒す方向を調節しないといけない。
移動し辛い上に人によっては3D酔いを誘発する。
下画面を見ながら移動しようにも、簡易マップだと何も無い場所なのに、
3Dフィールドに目を移すとそこには建物があったりと、イマイチ当てにならない。

次にお店経営はどうか?
プレイヤーはまず棚を設置してその上に商品を置くのだが、商品は一つの棚に一つしか置けない。
そのため、一つ商品が売られる度にまた一つ商品を補充しなければならない。
商品の価格を設定できるのだが、前に設定した時の額を記憶してくれないので、
希望の価格で売りたければ毎回設定し直す必要がある。
初期設定のままだと利益が殆ど出ない価格なので非常に困った仕様である。

そしてメインとなる住民との交流、イベントだがこれが輪をかけて面倒な仕様である。
イベントの9割がキーアイテムという特定のアイテムをを所持していることで発生し、
入手方法としては、行商人から買う、村の中で拾う、住民から貰うという3つの方法があるが、
行商人の品揃えはランダム、村に落ちているかどうかもランダム、住民から貰えるかどうかもランダム、
キーアイテムの入手場所についてはノーヒントで、リストも無い。
おかげでプレイヤーは、不毛のランダム砂漠を独り彷徨う事となる。
和田氏によれば「古き良きゲームの手探り感を表現した」との事だが、
残念ながらそれがゲームとしての面白さに繋がっているとは言い難い。

最後にドラとして、このゲームには再現性の高いバグがあるので紹介しておく。
キラキラ石バグと呼ばれるもので、キラキラ石というキーアイテムを店に並べた後、
カノンというキャラに買わせればイベントが進行するのだが、
カノンが買う前にハービーというキャラが買ってしまうと一部のイベントが発生しなくなり、
クリア不能になってしまう。この状態でセーブすると詰みである。

これらの面倒な仕様でプレイヤーの気力をガリガリと削っていく事から、
「Heartful(心温まる)ではなくHurtful(苦痛をもたらす)」という声も挙がるほどであった。


以上の3作が2013年度の大賞候補である。
いずれも例年の大賞に引けを取らぬ強豪揃いであった。
それでは2013年携帯ゲーム版KOTY大賞を発表しよう。

『みんなでオートレース3D』である。

このゲームはこれまでのKOTYにも幾つか存在した、所謂「ゲー無」と呼ばれるタイプのクソゲーである。
コーナーでLとAを交互に押すだけというゲーム性の欠片も無いその内容は、
「虚無度」で言えばダントツのNo.1である。
だがしかし、決してそれだけでオートが大賞になった訳では無い。
虚無と並ぶオートのもう一つの問題点、それは「虚無の筈なのに苦痛」であるという事だ。

コーナーでLとAを交互に押すだけというのは、一見簡単そうに思えるかもしれないが、実はそうでもない。
コーナリング中に表示されているメーターとカウントを目安にLとAを交互に押すのだが、
レースのランクが上がるとメーターの表示が無くなり、フェードアウトするカウントだけを頼りに
タイミングを計らなければならなくなる。ハッキリ言って勘に近い。タイミングもかなりシビアである。
メーター無しではどのくらい早すぎたり遅すぎたりしたのかが判断できず、
一度外しだすと挽回が非常に難しいため、レースの最後まで息が抜けない。
この操作が1レース中に30回縲鰀40回ほどあり、プレイヤーの神経を摩耗させていく。

カスタマイズでも、メニューを開く度に車体名の変更画面が毎回開くため、地味に億劫である。
しかし、勝つためには上述したタイヤの変更などが必要なので、やらない訳にはいかない。
楽しくも何とも無いカスタマイズのために、ここでもプレイヤーの神経は摩耗していく。

SGスーパースター王座決定戦に出場するためには、各レース(G2、G1)で好成績を出しランクを上げるか、
あるいは該当する月の各レースで優勝し続け、最終的にSGに出場する事が条件となる。
そして王座決定戦で優勝すればエンディングを迎えるのだが、このゲームは強制オートセーブなので
王座決定戦の出場を逃すか王座決定戦での優勝を逃すと、
次の機会が来るまでまた神経を摩耗させる耐久レースが続いていく。
ちなみにレース中に本体の電源を切るとリタイア扱いとなる。

これらの苦痛を乗り越えた先に待つ感動のエンディング、それは
優勝賞金と「優勝おめでとう」という文字が表示された画像1枚、その後スタッフロールが流れて終了。
高橋貢や森且行ら実在のレーサー達から祝福されるとか、そういったご褒美は一切無し。
このゲームに救いは無い。

これまでにも"ふしぎ発見"や"縁日"など、ゲーム性の薄さで大賞の座を争ったソフトは存在した。
だがしかし、それらのゲームは確かに薄味でつまらないものではあったが、
裏を返せば「ただそれだけ」と言えなくも無かった。

だがオートの場合、ただ薄いだけならまだしも申し訳程度にとってつけた要素が
ゲームとしての面白さに繋がってないばかりか、むしろ苦痛という有様であり、
最小限の内容で大きな苦痛をもたらす、ある意味コストパフォーマンスの高いクソゲーと言える。

前年度覇者"ヘビーファイア"があらゆる所にクソ要素をちりばめた絨毯爆撃のようなクソゲーだとすれば、
オートは的確にプレイヤーにダメージを与えてくる、宛らピンポイント爆撃のようなクソゲーであった。

コーナーでLとAを交互に押すだけという操作方法でレースゲームというジャンルを破壊し、
ピンポイント爆撃でゲー無の壁すらも破壊したオートは、
我々に「ゲー無の究極形態」というものを知らしめてくれた。
よって、みんなでオートレース3Dを2013年携帯ゲーム版KOTYの大賞とする。

2013年の携帯KOTYは、門番VS年末の魔物というレアケースとも言える展開であった。
「もうこれに並ぶクソゲーなんて無いだろう」と緩みきっていたところに襲来した魔物の存在は、
「ゆめゆめ油断するなかれ」という、戒めのようにも感じられた。
だがそれすらも跳ね除け、見事先行逃げ切りを果たしたオートは、
最強の門番と呼ぶに相応しいゲームであっただろう。

最後に、フランスの小説家サン=テグジュペリの名言を拝借して、
2013年携帯ゲーム版KOTY総評の結びとさせて頂く。

「オートにゲーム性なんて無い。ただ前に進んでいく作業があるばかりだ」

総評案3(仮)

part12 727
書く気はあるものの規制中っぽいので、取り急ぎ宣言だけ

総評案4

part12 820 上記総評案3とは別の人物による総評/3の人が書かない場合は番号を変更

2012年。携帯版KOTYにとってまさに波乱の一年であった。あらゆる分野からのチャレンジャーが名乗りを上げ、頂点に立ったのは海の向こうからやってきた一隻の黒船『ヘビーファイア・ザ・チョーズンフュー』。10倍の値上げ、異常な難易度、最低の操作性、最悪なグラフィック、PV詐欺と全方位にクソを乱射する勇姿は、まさにクソゲーのトップに立つにふさわしい圧倒的なものであった。シリーズを通して据置版でも猛威を振るった重火の登場した翌年、果たしてこれに並ぶクソゲーは登場するのだろうか?どれだけの猛者達が2013年の覇者に名乗りを上げるのか?その答えが開示されるまでには、3か月の時間が必要となった。

3月7日。3DSに一本のゲームが産声を上げる。『みんなでオートレース3D』(インターグロー/6,090円)、通称「オート」である。実際のオートレースを管轄する財団法人JKAが公式に監修し、曰く初のオートレースがモチーフとなるアクション・シミュレーション・レース。本作は、5回もの発売延期を繰り返した経緯があり、発売までに1年半以上もかけた難産となった。全国6カ所のオートレース場とネット販売限定(後にGEOのみで販売)でお披露目されたそのソフトは、筆舌に尽くしがたい作業ゲー無と化していた。

 まずレース中の操作性であるが、そもそも良いのか悪いのか判断がつかない。なぜならば、レース中に使用するのは「L」と「A」ボタンだけであり、それ以外は何も触らない。表示されたメーターとカウントを頼りに、タイミングよくLとAを交互に押すだけである。バイクは常に自動走行、コーナリング中に「突っ込み」と「立ち直り」のタイミングを操作する、ただそれだけである。タイミングによって結果が「Excellent」「Good」「Bad」と分かれるあたり、レースゲームではなくリズムゲームなのではと勘ぐりたくもなる。しかしこのLとAの交互表示はどのレースでも変わる事がなく、終始一貫してLとAを押し続けるのみ。
これでは難易度を上げる事はできないとでも思ったのか、あろうことか上位のレースではメーターの表示が消え、カウントダウンだけでボタンを押すタイミングを計らなければならなくなる。しかも判定はやたらとシビアであり、上位レースともなるとたとえ大きくリードを開きながら先頭を走っていようと、一度のミスであっさりと後続に抜かされる。さらにこの押すポイントは1レースに数十回あり、最終的な目標である王座決定戦まではほぼノーミスで上記のレースに十数回参加しなければならない。カンだけを頼りに何十回も正確にLとAを押し続ける様は、さながら人間メトロノームである。否応無しに胸焼けのするような緊張が高まるプレイを体験する事になるだろう。

このゲームにはカスタマイズ要素があり、搭乗するバイクを各レースに合わせて整備しなければならない。例えば雨の場合は雨天用のタイヤに変更する必要がある。レースの内容を予想し、理想のマシンを作り上げていくシミュレーション要素があるかと思えば、実態は「とりあえず一番高いパーツを買えばいい」だけである。しかも上位クラスのレースともなると、最高級パーツでなければ絶対に勝てない。もはや戦略性の欠片もない。ちなみに、高いパーツほどすぐ使用不可能になるというストレスを加速させるオマケまでついてくる。さらにはカスタマイズ画面を開く度に車名変更画面が開かれ、変更の邪魔をしてくる。また、各レースの前にマシンに合わせて3つの作戦を選択できるが、そのベストアンサーがカスタマイズ画面に書かれているので考える余地など一切無い。ただ指示に従うだけという、シミュレーションゲームにあるまじき仕様となっている。

演出面では、3Dでレースが観戦できると言えば聞こえはいいが、全バイクが色違いのただのコピペであり、カスタマイズで変えたカラーリングが反映される事は一切無い。カメラ位置も悪く、レース中は画面半分をアスファルトの灰色が支配する。排煙や火花の演出もあるが、レーサーと被ると炎上しているようにも見える。一応はレースらしく実況ボイスもついてはいるもののパターンは少なく、おまけに順位ミスや状況報告の間違いを平然と行う。
カスタマイズやメニュー画面では元SMAPの森且行などの有名レーサーのアバターも登場するものの、「雨の日のカーブは気をつけろ」などと、そもそもLとAボタン以外に操作しないゲームで何の役にも立たない情報をくれる。他にもオリジナルのNPCがレースの合間に短い会話を挟んでくるが、特殊なイベントなど発生するわけでもなく、何のために存在しているのかと問いたくなる。

しかし、このゲームの真価が発揮されるのはそのクリア条件である。上述したように、最終的な目的はオートレースの頂上決戦となる王座決定戦での優勝だが、そこに至るまでの道のりがあまりにも険しい。まず、プレイヤーにはレースへの参加拒否権がない。表示されているレースには必ず参加しなければならず、王座決定戦出場に関わるレースのみへの参加ができない。しかもセーブが毎試合ごとに自動で行われ、負けそうな試合中に電源を落とそうものなら問答無用で棄権扱いとなる。当然 決定戦への出場権も放棄とみなされ、また一から小規模な大会への強制参加が待ち受けている。仮に王座決定戦で負けでもすれば、それまでの努力が水泡に帰し最初からのやり直しとなる。そのため、LとAを交互に押すだけという単純作業に異常なまでものプレッシャーが加わり、じわじわとプレイヤーの精神を蝕んでいく。それだけの労力を割いて得られるご褒美はさぞかし立派なものかと思えば、どの大会での優勝でも「優勝おめでとう!」の文字が表示されるだけ。クリア後のEDに至っては真っ暗な背景にスタッフロールが流れるのみ、クリア特典はもちろん皆無。精神をすり減らしながら何百回と正確にLとAを押し続けたプレイヤーに向けられたとどめの一撃である。

このようにアクション・レース・シミューレーション、あるいはそもそもゲームとしてすら何もかもが失格レベルのソフトであるが、『予想師モード』というものも搭載されている。ゲーム中に登場した実在するレーサーなどを指名し、仮のレースで予想を行うことができる。開発のインターグローが競馬予想ゲームでノウハウを培っているだけに、ベースはそれなりにしっかりしている。が、演出は完全に通常のレース風景であり、スキップして結果だけ見る事もできない。
また、実際のオートレースの状況を受信し、ゲーム中に溜めた資金で実際のレース結果を予想し賭けることができるものの、レースが開催される当日しかこのモードは使えず、レースが3Dで再現されるわけでもない。他にも過去の結果を閲覧も出来るが、いちいち3DSで見るぐらいならネットで検索した方がはやいと選評者に言われる始末。解説用のアバターがいるにもかかわらず、オートレース予想の知識を教えてくれるわけでもなく、本当に何のためにあるのかわからないモードとなっている。

ひたすらLとAを交互に正確に押し続け、代わり映えのしないレースを延々と続け、思考の一切を捨てさせるカスタマイズ。ゲームとしての「楽しさ」をかなぐり捨て、残ったものはただただプレイヤーを疲労させるストレスだけ。このような作品に存在価値があるのかと問われれば、限定版についてくる公式のナンバー入り勝負パンツぐらいにしか見いだせないだろう。

オートレースというとんでもない候補により早くもハイレベルな門番登場かと騒がれる同3月、同レベルのゲームがほぼ同時に名乗りを上げるとは誰が想像しただろうか。28日、オートが猛威を振るうスレにそれは君臨した。

『Megpoid the music #』(Para Phray(株式会社アスガルド))。人気のボーカロイド(合成音声ソフト)『Megpoid』をモチーフとしたリズムゲームである。同ソフトのキャラクターである『GUMI』の3Dモデルが踊るステージを背景に、画面上に流れるボタンをタイミングよく押していく内容となっている。開発には、2010年据置版の『ラブルートゼロ』で存分にその異彩を放った開発会社のアスガルド(パッケージでは「Para Phray」のみ記載)が再登板している事から、その完成度にはリスキーな香りが既に漂っていた。そしてふたを開けてみれば、2011年のヱヴァンゲリヲンのリズムゲーム『3nd Impact』よろしく、リズムもキャラも全てが崩壊している有様であった。

根本的な問題としてまず、「キーを押すタイミングとBGMのリズムがズレている」という致命的な欠点が挙げられる。ズレ方も様々であり、曲の序盤のみ、中盤のみや終盤、曲全体など、収録曲よって千差万別である。恐らく外れていないであろう譜面でも、何が正しくて何が間違っているのか理解できない錯覚にプレイヤーは陥る。ボタンを押す際のSEまでもがリズムを狂わす要因となっており、タイミングよくボタンを押すためには「ミュートが推奨」されるという、リズムゲーム全否定なプレイが最適とされる。

これに加え、画面上に表示される譜面もとても見づらい。ボタンが流れるレーン、押すタイミングを示すマーカーは完全に固定され、頻繁にカメラが切り替わるPVを背景にボタンを目で追うのが難しくなっている。各ボタンを囲う白枠のせいでボタンの指示が判別しにくく、十字キーとボタンの同時押しでは各レーンを結ぶ白線までもが表示され、さらに画面が見づらくなる。このようにタダでさえプレイしづらいUIであるにも関わらず、音ゲーとしてはかなりの高難易度の譜面が用意されている。また、絶妙な処理落ちも随所で発生し、リズムを狂わせるリスクをさらに高めている。ズレる楽曲、見えづらい譜面と異常な難易度により、プレイヤーはゲームを楽しむ前に苦汁をなめることになる。

このようにリズムゲームとしては既に失格レベルであるが、これに拍車をかける要素が他にもいくつもある。ローディングは異様に長く、通常で1楽曲に対し20-30秒もかかる。データインストールをしても15-20秒はざらに待たされ、GUMIのコスチュームやSEを変えるとさらに数秒追加される。特に楽曲選択画面では一曲一曲にカーソルを移動させるだけでもローディンが発する上にフリーズのリスクまで存在している。その一方で、オートセーブ機能は搭載されていない。仮に高難易度のステージをクリアできたとしても、フリーズの恐れのある楽曲選択画面からメイン画面まで戻ってセーブを行わなければならない。この間にも当然のごとくローディングは挟まれるので、セーブするのにもかなりの忍耐が必要である。

それでも、仮にも『GUMI』という人気のボーカロイドを扱った作品であるためキャラゲーとしての価値は存在している・・・・はずであった。しかし実際は「収録されている楽曲が全て90秒で強制終了」「元の楽曲と関係ないコスチュームだらけ」「収録曲の一つにしか関係していないカッパを至る所で登場させる」「屋台が暗闇にぽつんと二つあるだけのステージ」など、本当にGUMIを題材としているのか疑いたくもなる。カスタマイズの幅が狭い専用のルーム内でGUMIと会話が出来るモードも用意されているが、あらかじめ用意された選択肢に対して調教不足のGUMIが噛み合ない回答を返してくる。棒立ちの彼女が「うん、うん」「んー」と延々と繰り返す様子からは、人気キャラのオーラは一切感じられず、まるで幼児プレイでも強要されているかのような感覚へと陥る。その他にも、「音楽が大好き」といった短文ぐらいしか載らない日記、あげても箱を開けないプレゼントなど、もはや何のためにあるのかよくわからない取って付けたようなオマケ要素もある。

リズムゲームとしてもキャラゲーとしても、一体何を目指して開発を進めたのかと疑いたくなる様相であった。そもそも公式がGUMIを「GIMI」と表記しているので、元々別のキャラゲーを作ろうとしていなかっただけかもしれないが。結果的に、プレイヤーからはゲームタイトルの「#(シャープ)」が怒りで浮き出た血管に見えると言われ、スレ内で当ソフトには「GIMI」の愛称で親しまれ、(♯^ω^)ビキビキのAAと共にクソゲーのアイドルとして愛されるまでに至ってしまう。

こうして2013年冒頭から強烈な門番が二人も登場し、さながら金剛力士の阿吽の如く、KOTYの門を堅固に守る事になった。その結果 様々な挑戦者が次々と弾かれ、年末までに明確な候補はオートとGIMIの二択になるのではと危惧された。恒例の魔物が目を覚ますまでは・・・・

12月12日のクリスマスシーズン、3DSに一本のゲームがひょっこりと姿を現す。かの「牧場物語」を手がけた和田康弘氏がゲームデザインをつめる『ホームタウンストーリー』(4,800円/開発トイボックス)である。
幼い頃に過ごした村のとある店を引き継ぎ、村人達と交流しながら物語を進めていく、曰く「ハートフルアドベンチャー」である。しかしその実態は、プレイヤーの心が温まるどころかその前にポッキリ折れてしまうのではないかと心配になる「Hurtful」なものであった。

まずビジュアル面であるが、3D表示のマップであるにもかかわらず、カメラがとにかくよく切り替わるためプレイヤーの視点が定まらない事が多い。人によっては激しい3D酔いを引き起こす原因にもなる。また、建物の入り口が見づらく 下画面に表示されていない建物が上画面では存在しているなど、UI部分でも視覚的にストレスを引き起こす要因が所々に散りばめられている。

次に操作性に関してだが、ゲームを進めていく上で欠かせない住人との会話にも問題がある。NPCはプレイヤーの歩行速度とほぼ同等の速さで移動するため、遠方にいるNPCに話しかけるのに手間がかかるのだ。場合によっては相手の動きを先読みし、さながらアクションゲームのようなコミュニケーション能力が要求される。上記の視覚的な問題やマップの広さと合わさることにより、ストレスも倍増しになる。

ゲームのメイン部分となるお店の営業は文字通りの作業ゲーと言えるだろう。大きな流れとしては「商品を売る棚を置く>棚に商品を置く>商品が売れる>商品をまた置く」の繰り返しで営業は進んでいく。ただし、棚に置ける商品は「一つ」だけであり、棚の数だけ商品を再配置する手間が毎回発生する。また、各商品には値段が設定できるが、売れる度に設定がリセットするためこれもまた毎回付け直す必要がある。救済措置としてレジで複数の客に連続で会計を済ませると、数に応じて1.5倍、2倍、3倍と販売価格にコンボボーナスが入るため、そもそも値段を設定するシステムが意味をなさなくなる。コンボを狙って客を待たせすぎると怒り出すが、ゲーム内時間で2時間近く待たせても特に問題がない。ただし、コンボ中にフリーズが発生するバグも確認されているため、決して油断は出来ない。

ゲームのシナリオを進行していく上では、キーアイテムを入手していく必要があるのだが、この入手条件が理不尽そのものである。条件は大きく分けて3つあり:? 特定の人物から購入する ?マップ上におちているものを拾う ?特定の人物に話しかける。ただし、これらの条件全てが「ランダム」である。?では何が売られるかはわからず、?ではいつどこで何が落ちているか不明、?では話しかけても何ももらえないことがある、といった具合に明確なフラグが存在していないのである。そのためストーリーを進めていくためには、運の要素がとてつもなく重いウェイトを占める。そればかりか、キーアイテムを使う場面でも様々な難点が散見している。キーアイテムを要求する住人からアイテム名を聞けるのがイベント発生時の一回きりのみであったり、依頼やキーアイテムについて再確認できる手段がないなど、心よりも先に血管が沸騰しそうな仕様となっている。また、とどめと言わんばかりに、あるキーアイテムをNPCが先に購入してしまいゲームが進行不能になるバグまでもが存在している。ハートフルどころか、まさにストレスフルな内容である。

ではゲームの舞台や世界観はどうなのかと言われれば、ここでもとてもハートフルとは思えない要素がある。まず、公式で謳われている「盛り沢山」のイベントもどれも内容がとても薄く、数だけ無駄に多く内容は徹底的に薄い。個性的なのは見た目だけかと問いたくなるほど存在感の薄い住人達と会話を交わせば交わすほどに、プレイヤーの心は冷めていくだろう。しかし、イベントの中には「竹馬に乗って夜中に山へ登ったら死んだ」住人のエピソードがあったりと、別の意味でヒヤっとする展開がある。このゲームはプレイヤーの心を温めたいのか凍てつかせたいのか、もはや理解に苦しむ限りである。


ゲー無としてある種の極みに到達したオート、クソゲー化が難しいとされる音ゲー・キャラゲーの両側面からクソ化したGIMI、心を温めるどころかすり潰しにかかってくるホーム。こうして2013年度の3強が出揃った。異彩を放つ門番と年末の魔物。このあまりにも濃厚すぎるメンツの頂点に立ち、見事に2013年KOTYin携帯版の栄冠を勝ち取ったのは・・・・


『みんなでオートレース3D』

今回オートが大賞として推された理由は、ゲームをプレイする上での苦痛度にある。

そもそも、ゲームの楽しさとは何か?それはスタートからクリアするまでの目的を理解し、自分なりに回答を見つけゴールに達するまでのプロセスにあるのではないだろうか。いかにすればゲームをクリアできるのかを試行錯誤する、つまりは楽しく「考える」ことにあるのではないだろうか。

ところが先述したように、オートでは「思考」する事自体が徹底的に排除されている。マシンのカスタマイズは「とにかく高いパーツを買う」、作戦は「表示されたものに従う」、固定されたタイミングにLとAボタンを交互に押し続ける・・・このあまりにも単調すぎる作業の繰り返しの末路はすなわち「思考停止」である。例えるならば、テストで答案用紙と一緒に回答を渡され、ただそれを右から左へと書き写すのみ。考える事をやめ、とにかくゲームの指示に従う様相は、某鬼畜ゲームのキャッチフレーズのように、リアルに「人間性を捧げよ」ということに尽きる。そこにゲームを楽しむ余裕はなく、ましてや達成感など介在する余地など存在しない。ただひたすら正確にタイミングよくボタンを押し続けなければならないプレッシャーに延々と苛まされる「苦痛」しかない。

これ以外にもオートが他の候補をリードする要素はある。まず演出面であるが、果たして開発者は努力しようとしたのかと首を傾げたくなる点だ。SEやBGMの少なさ、絵的に反映される事のないカスタマイズ要素、バリエーションのないステージなど、元々演出に問題のあるGIMIと比較してもそれを下回る内容の薄さと言える。意味のない会話しかしない登場キャラクターは、ホームの住人達でさえも言葉を失うくらいに個性がない。曲がりなりにもボーカロイド「GUMI」のキャラクターや和やかなキャラデザでその世界観を構築しようとするホームに対し、よくあるSNSのアバター程度にしか見えないオートのデザインからは、溢れんばかりの手抜きが感じられる。操作性に関しても、レース以外の画面でのタッチスクリーン限定の操作にも難があり、UIの操作のし辛さも1ランク上の印象を受ける。

理不尽なゲーム内容で言えば、ミュートでプレイすればそれなりプレイが可能になるGIMIにはやや不利な点であったと言える。運任せな要素があまりにも強すぎるホームは、さながらかの四八(仮)のランダムイベントのせいでストーリーのコンプリートがなかなか出来ない記憶を呼び覚ましてくれる。しかしながら、逆に言えば運さえ良ければ、それなりにさくさくとクリアできてしまうという点が挙げられる。一方オートでは、どうあがいても同じ局面に全プレイヤーが遭遇する理不尽さがある。上述したように、決まったタイミング、決まった最強パーツ、そして同じ勝利条件でしかクリアが出来ないので、万人が万人同じ条件下で同じ作業を味わう事になるのである。運の要素が入り込む隙間すらもないのである。本来ゲームとは遊ぶ人によってそれぞれの特徴が表れるものなのだが、オートでその常識は通用しない。これまで大賞に輝いてきた作品の中でも、これほどまでにプレイヤーの個性を消しにかかってくるゲームもそうそうないだろう。「ゲー無」とは、語源となった「人生ゲーム Wiiware版」では「人生」と「ゲーム」要素が抜かれたために出来た言葉であったが、よもやプレイヤーの個性までもが消失するゲー無が登場するとは誰が思っただろうか。オートはまさしく希代の作業ゲー無であり、KOTY2013in携帯版の王者に輝くにふさわしい、絶対に他人に勧めたくないクソゲーと言えよう。

2013年を振り返れば、やや不作気味な一年であったと思われるかもしれない。しかし、選評が書かれながらも決戦まで残らなかった作品は少なからず存在した。裏を返せば、それほど前に強烈な門番としてオートとGIMIが立ちはだかり、そして見事にその門をホームがくぐり抜けたということでもある。最終候補として最後まで仁王立ちを続けたこれら作品があまりにも個性的かつ強烈だったと言えるだろう。ちっとも心温まらない自称ハートフルなゲーム、無音プレイが推奨されるリズムゲーム、そもそもゲームであるかすら怪しいレースゲーム。それぞれが自らのジャンルを否定する希有な面々であり、探せば探すほどツッコミ所が次々と発掘される様はスレ住民を退屈させる事はなかった。可能ならばゲーム内で退屈させてほしくないものだが、それをクソゲーに望むのはただの高望みか。何はともあれ、小数ながらも例年に引けを取らない見事なまでものクソっぷりを見せつけてくれたこれらの作品に、畏怖と敬意の念を送りたい。最後に、見事に大賞の座へと到達した「みんなでオートレース3D」のオープニングの言葉を一部お借りして、本総評の締めとしたい。

「くるしいことも勝負パンツもあるけど、まけないでね」