2015年 次点

概要

名称エアシップ Qhttp://www.amazon.co.jp/dp/B014IGIHAG/ [外部リンク]
ジャンルサンドボックス・アクションRPG
対応機種ニンテンドー3DS
発売元Cygames
開発元ミラクルポジティブ
発売日2015年11月19日
価格限定版:2500円(税込)
対象年齢CERO:A(全年齢対象)

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PV

要点

選評

選評案その1

「マインクラフト」「テラリア」といった海外産サンドボックスゲームの人気は、今や世界的なものとなっており、衰えは未だ見えない。
各々がかつて描いていた空想を実現するかのように、童心へとかえり、目を輝かせて遊ぶ…そういった魅力のあるジャンルだ。
そんな中、かつてゲーム大国と言われたこの日本から、いよいよ待ちに待った初めてのサンドボックスゲームが生まれる運びとなった。
そのタイトルの名は「エアシップQ」。
開発の㈱ミラクルポジティブ開発によりサイゲームスより発売された本作であるが、その船旅は過酷なものとなりそうだ。

大まかに言って、このゲームには二つの核がある。
一つ目はタイトルにあるように、「エアシップ」つまり空飛ぶ船だ。これを自分好みに改良し、操りながら攻略を目指す。
二つ目は「サンドボックス」。ご存知の通り、土や石などがブロック状になっており、それを用いて自由にモノづくりができる要素だ。
なんとも心躍る2枚看板ではあるが、残念なことにこの核となる部分がそっくりそのままこのゲームの致命傷となっている。

『サンドボックス』
まずサンドボックス要素だが、まずブロックを任意設置できる範囲が非常に狭く、少なくとも任意に直置きできるのは
・キャラの目の前1マス
・キャラの斜め下1マス
これだけである。例外として押しっぱなしで長く直線の足場を作ったりはできるが、自由度に乏しいのは結局同じことである。
ブロック設置のためのカーソルとキャラクターの動きが独立している一般的なサンドボックスゲームと異なり、いちいちキャラクターを動かす事でしか設置場所を決められないのだ。
 もう一つは、ブロックの物理法則の独自性に関してだ。
この手のサンドボックスゲームでは基本的に虚空にブロックをそのままおけないが、このゲームは以下の三段オチをもってこの風潮に抗い、敗れ去っているのである。
①何もない虚空にも置くことができる
②数秒するとひびが入って崩れ、アイテム化する
③それが勝手に地面と一体化する 。
…百歩譲って②までは一つの個性ととらえてもいいかもしれない。
しかし③に関しては本当に迷惑な仕様である。土やら石が勝手に地面と一体化するのだが、地面というのは船の天井や床も含まれている。
勝手にくっついてこられると邪魔でしょうがないため、これを取り除く手間が生まれるのだ。
さらに後述のエアシップに関する ある要素と合わさると、イレギュラーなストレス要素となる。

(2)

『エアシップ』
このゲーム独自の個性といえよう。
プレイヤーはチュートリアル後に空飛ぶ船を入手する。この船は見た目や性能面の強化など、自由に作る事ができる。
大砲を無数に積み、堅牢な装甲をまとった戦艦のような大型船をつくることもできるのだ。
しかしながら、そんな想像をばかばかしくさせるのがこのゲームの本領だ。
 船と物との干渉による不自由な旅が約束されているからである。
なにがどう干渉するのかというと、船につけたすべてのものが船についていないすべてのものに干渉するとしか言いようがない。
人ですら素通りできそうなものにもブレーキをかけられる。例えばこのゲームは空中大陸が舞台であるため、浮島の下部から植物のツルが生えていることがある。
それは一応船でぶつかると壊せるものの、あたる度に停止させられてしまう。
植物のツルに当たり負けする戦艦をみて、自然の力強さを感じられることだろう。
 船に関する問題はもう一つある。「なんか」船が埋まるのである。
本当に「なんか」としか言いようがない。これだけ読んでも意味が分からないだろうが、やっている人間にもよく分からない。
操作が全くきかなくなる事と、「ふねがうまっている!」というメッセージが強調するかのようなエフェクトを伴って画面に表示されることから、「なんか」船がうまっている事自体は理解できるが、どこがどう埋まっているか目を凝らしてもよくわからないことが多いのである。
冗談のような事象だが、公式に言われているのだから、バグでなく仕様として受け入れねばならないだろう。
この場合、強制的にスタート地点に戻るコマンドを選ぶ(死亡回数としてカウント)、もしくはとりあえず端の方を殴る、とりあえず爆破する等、乱暴な対処で乗り切ることとなる。
さらに、この仕様は、先述した「アイテム化したブロックが地面と一体化する仕様」と絡んで起こることもあり、うえから崩れてきたブロックがいつの間にか船と一体化してしまう段階で埋まることもあるから困りものである。
これらを考慮したうえで造船に関して言えることは、速度を上げた小舟に乗ればいいという事になるだろう。できるだけストレスを減らしたいならそれが最良となる。

(3)
以上大まかな点を挙げてきたが、さらに細かいところを見ていけばこれだけにとどまらない。
・アイテム所持枠が非常に少なく、収納アイテムもない。
→拡張はできるがそこにたどり着くまでに蓄積するストレスは計り知れない。
幾度となく持ち物の取捨を迫られ、さらにその所持品の整理・取捨といった操作のUIに非常に癖が強く、反復して行う操作としては辛いものがある。

・主人公のボイスが非常に五月蠅く感じるものの、OFFにできない。
→間違いなくゲーム開始1分以内に聞き飽きるだろう。同じく終始耳障りな鳴き声を上げて、異様なまでの執着心でこちらの船にまとわりついてくるグリフォンとタッグを組まれれば、プレイヤーの舌が軽快な音を奏でるだろう。

・×ボタン以外に、左スティック上にジャンプを設定
→誤爆は必至である。2Dアクションプレイヤーは感覚的にも誤爆しやすい。

・アイテム化したものは地面に触れて一定時間たったからしか入手できない
→空中で敵を倒してアイテムが落ちた場合、そのまま自キャラをジャンプさせてキャッチしたりはできない。地面まで取りに行くか、船を滑り込ませてわざわざキャッチしなければならないわずらわしさがある
。今の時代ではなかなかない仕様。

・クラウドファンディングを経て2年以上かけて製作されたゲームであること
→省略。


…さて本作は、国産初のサンドボックスゲームという触れ込みで登場したが、結果として砂上の楼閣にすらなれなかった。
未だ砂粒の状態であり、製品として発売を迎えるには苦しい完成度であったと断言していい。
㈱ミラクルポジティブの船出ともいえる本作ではあるが、プレイヤーからの評価を聞くと奇跡などおきなかったようで、後ろ向きなものばかりであった。
順当であろう。
メーカーとして今後どのような航海を続けるのかわからないが、船出を見送った者としては、いきなり座礁し立往生している彼らに伝えておきたいことがある。

「ふねがうまっている!」