2012年 次点

概要

名称シャイニングブレイドhttp://ecx.images-amazon.com/images/I/519eb8adUFL._AA160_.jpg
ジャンルRPG
対応機種PSP
発売元セガ
開発元メディアビジョン
発売日2012年3月15日
価格UMD版6279円
DL版5600円
対象年齢CERO:B(12歳以上対象)

ティアーズ、ウィンド、ハーツから続く、TONYシャイニングシリーズ4作目。

ドラゴニア帝国によって大地から精霊の力が奪われ、混沌に包まれた世界。
ドラゴニアの目論みに気づいたクラントール王国に召喚された主人公レイジは、
霊的な力を刃に変えて戦う霊刃使い(ソウルブレイダー)として
、エルフの王女アルティナと共にドラゴンとの戦いに立ち上がる。

要点

選評

選評案その1

シャイニングシリーズ最新作として発売された「シャイニング・ブレイド」
キャラクターデザインにTony、音楽に菊田裕樹、
ボーカル曲(フォースソング)にElementsGardenを迎え、
さらに声優陣も水樹奈々、田村ゆかり、堀江由衣、白石涼子、
保志総一朗、神谷浩史とかなり豪華な布陣である。
しかしこの厚いスタッフに対してゲームそのものは非常に薄いものだった。

崩壊間際の世界を現代(に似た世界)から呼び出された男子高校生レイジが、
特殊な刀を握り仲間とともに救うという王道RPG。
複数の女性キャラクターとのEDが用意されているため、
軽いギャルゲー要素も含まれている。

主人公を呼び出した巫女ローゼリンデや国はすでに敵の手に落ち、
主人公が敗走しているところからゲームスタート。
しかし稀に挟まれる回想は呼び出された瞬間と敗走に追い込まれる場面ばかりのため、
レイジとローゼリンデが仲良くなるまでの話は3ヶ月先の小説版まで描かれることはない。
だがレイジは彼女のことで何度も悩み思い入れが強いこともわかるのだが、
プレイヤーはローゼリンデってどんな娘なの?と思い続けてストーリーを追う羽目になる。

またメインストーリーに絡む男性キャラ全員に、強く執着している敵キャラがいる。
レイジは先に上げたローゼリンデ、
ライバル?リックには幼馴染を殺したアルベリッヒ、
副隊長フェンリルには元同胞スルトといったところなのだが、
全員がその相手に関してのみ暴走する。
結果、1人が熱くなり残り2人がそれを諌めるという図が何度も繰り返されるのだ。
各敵キャラとの戦闘は3回ずつあり、3人分で計9回も見ることになる。
全10章(1章はプロローグ、10章はクリア後)のストーリーを考えると
この回数の多さは異常である。
しかも直接戦闘になる敵幹部キャラは4名なので、
敵との戦いは必ずといっていいほど
「(宿敵の名前)!!!!」「落ち着け(味方の名前)」
という流れになってしまう。
ちなみに「お前が言うな」というツッコミはプレイヤーに丸投げ。
こういう時くらい大勢いる女性キャラを使えばいいのに…。

そしてこの敵も敵で、昭和の悪役かと言いたくなるくらい仲が悪い。
しかも互いに面と向かって皮肉を言い合うコントを繰り広げているのである。
こんな連中に滅ぼされかける世界というのはあんまりではないだろうか。

この作品ではローゼリンデも含め使用出来るキャラが22名、
そして武器となるキャラが4名の26名が味方として存在しているが、
内新キャラはわずかレイジ、フェンリル、ローゼリンデ、アルティナの4名しか居ない。
女性18名にもかかわらずレイジの明確な攻略対象となるのは5名。
メインヒロインの1人であるはずのトウカはすでに過去作で攻略されているためか、
個別EDはあるものの「あなたは俺の初恋でした」で終わってしまう。
満を持しての登場となったサクヤには、
ギャグ調でほっぺにチューされただけでおしまいだ。
一応前作主人公にあたるリックにもヒロインたちと同段階の好感度はあるので、
個別EDだけで言えば合計8名になる。
しかしこの好感度も「一緒に戦闘に出て、一緒に攻撃する」だけでグングン上昇する。
仕様通りと言えばそれまでのことではあるのだが、
リックはおろかフェンリルよりも
メインストーリーに絡まない攻略対象が半数になるという大事故。
またそれ以外の過去作キャラに至っては
今回メインキャラに縁者がいる数名を除いてただ仲間にいるだけという扱い。
にも関わらず、過去作のキャラや出来事、単語は解説も説明もなしに登場し、
新規プレイヤーはおきざりにしていく。
とはいえ過去作からのプレイヤーには、
キャラの改悪や抹殺・抹消という攻撃が待ち構えているという隙を生じぬ二段構え。
キャラクターゲームに有るまじき、キャラの使い捨てである。

またシナリオにおいて一際香ばしさを発揮するのが、サクヤというキャラクターである。
キャラデザも声優も人気なこのキャラだが、
前作ハーツではメインキャラ詐欺をかましていたため、
今回では「第二の主人公」ということでファンは彼女の活躍を楽しみに待っていた。
しかし彼女は、まさかのメアリー・スーキャラクターだったのである。
古代人の末裔であり特殊な力がある彼女は、それ故に特有の知識や悩みを持つのだが、
それがあることを匂わせるだけで何なのかは教えてはくれない。
選択肢で「教えてください」や「頼ってください」を選べば好感度が下がる有様である。
またシナリオにおいても、
ローゼリンデが敵の手から逃れることが出来たのはレイジの力ではなく
サクヤが前々から仕組んでいたからというオチを持って来たり、
死んだ幼馴染の結晶化した魂をぞんざいに扱われ怒りに燃えるリックの前で
他の幼馴染と同様にあっけなく蘇生したりと、
ことごとく燃える場面でプレイヤーを萎えさせていった。

そして戦闘だが、これがなんともヌルい。
システムが似ているとされる「戦場のヴァルキュリア」とは似ても似つかぬレベルである。
キャラクターの性能調整も悪く、
中射程で複数回攻撃できるケルベロスが頭ひとつ抜けて強く、
防御・魔防が低かったり、回復メインのキャラは非常に使いづらい。
またサクヤとリックが使える「フォームチェンジ」も各フォームの性能差がひどく、
リックに至っては3つの内2つは他キャラの下位互換である。
しかしながらどのキャラクターを使っても
ライトユーザーがクリア出来るほどにヌルいバランスになっている。
1戦闘限りの増強アイテムである「パン」や属性毎装備である「アーキテクト」、
必殺技「フォース」の強化というバリエーション豊かなシステムも
この低いハードルでは死んだも同然である。
さらに戦闘において重要とされる「フォースソング」の存在。
フォースソング自体の性能もマチマチで、
毎ターン回復の歌、敵命中率低下の歌が強い一方、
敵防御・魔防低下の歌は効果をあまり実感できない。
しかしこれもまた、バランス上どの歌を使ってもクリアできるようになっている。
ライトユーザー向けとして正しいのかもしれないが、
使うキャラクターを固め、行動のパターン化を行えば、
戦闘はただの作業になること請け合いである。
そしてこのフォースソング、先に上げた通り、ElementsGardenによるものである。
キャラクターソングとしては及第点以上の出来だが、
仮にも「古代より伝わる歌」であるため雰囲気に合わないと感じる人もいる。
確かにエルフに伝わる子守唄が明るいJ-POPだったり、
地中から見つかった楽譜が萌えソングだったりするので致し方ないだろう。
裏設定的に舞台エンディアスは「end earth」が語源なため
現代=古代という解釈もできなくもないが、
そもそもその語源もゲーム本編中で明かされることはないので
プレイヤーにその解釈を求めるのも無茶な話である。
またラスボス戦後のイベント戦闘ではレイジの持つ刀に力を与える歌を歌うのだが、
こちらも女性アイドルグループのような曲で間違っても燃える曲ではない。
更にレイジが決起する場面で声優の歌う挿入歌が入るのだが、
こちらはあまりにも唐突すぎて熱くなるべきところで笑いがこみ上げる始末。
歌自体の出来は悪くないはずなのに、お寒い演出になってしまう場面が数多くあった。

良く言えば対象層に合わせた、悪く言えば歯ごたえのない戦闘、
新規にも継続にも優しくない上にコントのようなシナリオ、
使い所を誤っているといいたくなる曲たち…。
クリア後の達成感も薄く、
フィギュアやキャラソンのために「キャラ」と「ストーリー」を知るためだけのものと言えよう。

終盤、ラスボスがこんな台詞を言う。
「……「シャイニング・ブレイド」か。それなりに楽しませてくれたな。
 だが、そろそろ飽きた。」
…ここまで進めたプレイヤーの心境を代弁しているのかもしれない。