2010年 次点

概要

名称天下一★戦国LOVERS DS
ジャンル大河系恋愛アドベンチャー
対応機種ニンテンドーDS
発売元ロケットカンパニー
開発元ロケットカンパニー
発売日2010年10月7日
価格5,040円(税込)
対象年齢CERO:D(17歳以上対象)

要点

選評

選評案その1

今年は乙女の国から戦国の猛者殿が集まった
「乙女ゲーム・オブ・ザ・イヤー2009」モバイル部門第1位作品
その実力は、やはり只者ではなかった。
「天下一★戦国Lovers DS」
携帯のアプリが元というこのゲーム
普通携帯→DSの移植ならば追加要素が増えると思うだろう
しかしこのゲーム予想の斜め上を突き進んでいた
先に言っておきたい。このゲーム完結まで入っているのは2人だけである

まずはシステムから説明しよう
セーブはキャラクターごとに一つ。上杉を進めながら、武田も同時進行ということは出来る。
どこでもセーブはできるが、ロードは存在しない。
章が終わるたびにシナリオ進行状態を評価して○・△・×と教えてくれるが
親切な事にオートセーブされるため、選択肢でセーブを残して
結果を見てやり直すということは出来ない。

スキップはRボタンを押しっぱなし。速度も遅い上速度変更もできない。
オートモードにして選択肢まで放置して他の事をしていたほうが周回プレイは楽。
回想モードでイベント回想は出来ない為、見たいイベントがある場合は
そのキャラを最初からプレイするしかない。もちろん章セレクトなどの機能はない。

OPはスチル使い回しでBGMのみ。全キャラ出たらタイトルコールのみボイス付き
メニューは「はじめる」と「記録を消去」の二つのみ
始めるとキャラが一言格言のようなものを言ってくれる。いらん。

ストーリーは三種類。ノーマル・グッド・バッド。
話も短く全10章あるが、1章あたり3分程度で読み終える事ができる
いつ主人公が好きになったかは不明。主人公の美しさに全員が惚れている
お前誰?何で好きなの?と少々頭が痛くなること数知れず。
豪華声優を唄っているが、イベントのみなのでボイスは少ない。
従者が終わらないと主君は落とせず、また何故か従者のシナリオを引き継いで主君シナリオになる
従者のノーマルかグッドで無いと、主君は解禁されない為、従者と両思い状態から主君を
落とすことになる。
従者シナリオで部下とくっ付けと言っていたはずなのに、主君シナリオになると何故か
「実は心の底では愛していた」ということになる。

全体的になんとも言えないゲームだが、絵だけは良かったと思う
ただ最初に言ったとおり、このゲーム2人しかEDがないので
「このキャラ攻略したかったら携帯版やってね!」という素晴らしい公式の宣言
つまりはこのゲームは完成品ではない。
5000円もする壮大な体験ゲームといえよう
歴史ブームに乗ったこのゲーム。
被害者がどれほど出たのか、初動が今から楽しみである。

選評案その2

無料携帯アプリの乙女ゲーが増える昨今、ついに携帯アプリからのコンシューマーへの移植作が登場した
それが「天下一★戦国LOVERS DS」である
携帯→DSという移植、「新規書き下ろしを含め、100章以上の壮大なストーリー!」の宣伝文句を謳っており
シナリオ全収録と誰もが思って購入するであろう本作品、完結編が収録されているのは9人中2人だけという意外性を持つ
そしてその事実をプレイヤーが知るのは、購入した後に読む取扱説明書である
さすが携帯アプリ。コンシューマーの常識は通用しない

またその操作性も携帯アプリの特性を生かし、DSの利便性は一切利用しない男らしさを見せる
セーブデータはキャラクターごとに一つ。シナリオもキャラクターごとに独立しているので
武田を攻略しつつ、上杉のシナリオを進めることは可能だが
章クリアをして発表されるエンディング分岐評価(◎〜XXの5段階)を見て、選択肢からのやり直しは出来ない
なぜならその評価をされた瞬間にセーブデータが自動的に上書きされるからである
アプリ時にやり直しは出来ない――――その仕様を移植先であるDSでも残しておくことで
携帯プレイ済みの人には懐かしく、未プレイの人にもアプリの感覚を教えてくれるという親切設計だ

ちなみに章セレクト等の便利機能も存在せず、イベント回想モードも無い為に
見直したいイベントがある場合は、シナリオの最初からプレイすることになる

エンディングは極楽・通常・地獄の三通りあるのだが
選択肢へのリアクションが分かり辛く、他のゲームでよくある正解選択肢を選んだら効果音が鳴るということも無いので
前述した章クリア時の評価で判定するしかない
乙女ゲーでは周回プレイが必須とはいえ、スチルでしかボイスの付かないこのゲーム
攻略キャラのリアクションが声付きで楽しめるわけでもなく、そもそもそのリアクションも
どの選択肢を選んでも大して変わらない
そのうえスキップは「スキップしているのに、普通にテキストが読める」速度のために
一章あたり5分×十章のボリュームが何倍にも感じられる仕様である
また章が終わるたびに次回予告が挟まるのだが、章がすぐに終わる為に必要性は感じられない
オートモードもあるので、周回プレイは他の事をしながら選択肢までDSを放置することをオススメする

そして9人居る攻略キャラであるが、最初にプレイできるのは3人
残りの6人は、3人は別に独立したルートのある種隠れキャラのようなものだが
残った3人は、最初にプレイできる3人の通常・極楽エンディングを引き継いでのシナリオである
最初にプレイできる従者ルートでは「褒美にヒロインと契るが良い」と主君が言い、その通り従者ルートでは
ヒロインと従者はやることやって結婚の誓いを、後に攻略できる主君の前で、主君公認でするが
主君ルートに入ると「やっぱり俺もヒロインのことが好きだから、さっきの無しね」と掌を返される
従者もヒロインも最初は気まずく思っているが、比較的アッサリと乗り換える尻の軽さ
この手軽な少コミテイストが、時間の無い現代人にはもってこいなのかもしれない

OP・EDはBGMのみで、書き下ろしのスチルというものは存在しない
スタッフロールは極楽結末でしか拝めなく、通常・地獄だと電源を入れた時に表示される
Nintendoのライセンスが目に飛び込んでくる。余韻というものは無い

完結編であるが、これは通常のストーリーからそのまま続いているわけではなく
シナリオ選択時に「完結編」を選択することで遊べるようになるため
完結編の入っていないキャラクターでも恋愛エンド自体はちゃんと存在する
本作のヒロインの当初の目的―――国を滅ぼした信長への復讐、これが果たせるのが完結編である
正直に言えば、どの攻略キャラクターでも完結編が存在しない、という作りならば
携帯アプリ未プレイの人間は完結していないとは気付かないと思われる本作
何故わざわざ2人だけ完結編を入れて、未完成品を売りつけたと思わせる商法にしたのか謎である

限定版には設定資料集が付いてくるのだが、そこに収録音声一覧と2Pで
キャラクターのボイスを書き起こしてくれている
公式サイトでサンプルボイスを公開し
「ゲーム内に収録できなかったボイス集CD」が付いてくるほど、豪華声優で宣伝をしているのに
キャラクターによっては一行しかボイスが存在しない

BGM・テキストともに哀愁漂う出来であり、大砲が打ち込まれるシーンなど
効果音無しでメッセージウィンドウに「ドドン!」と明朝体の太文字で表示される

無い無い尽くしの本作。まさに有料体験版、続きは携帯アプリで!という前衛的な作品である
クソゲーの歴史に新たな一ページを記す、大河系恋愛AVGというジャンルに恥じない出来ではないだろうか