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[[2009年 次点]]

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*概要 [#s21bd2a0]
|名称|金田一少年の事件簿 悪魔の殺人航海|[[http://ecx.images-amazon.com/images/I/61X1C5SjQdL._SL160_.jpg:http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B002EL47BG/]]|
|ジャンル|推理アドベンチャー|~|
|対応機種|ニンテンドーDS|~|
|メーカー|クリエイティヴ・コア|~|
|発売日|2009年9月17日|~|
|価格|5,040円(税込)|~|
|対象年齢|CERO:B(12歳以上)|~|

*要点 [#u6c2a568]
*選評 [#n8b921c0]
**選評案1 [#kc318636]
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キャラゲーに良作無し――ゲーマー達に語り継がれる教訓である。 
原作のイメージが残っているはずが無い、キャラクター設定が活かされているはずが無い、漫画は漫画で見るから面白いのだと、先人の涙の結晶には確かにそう刻み込まれていた。 

『金田一少年の事件簿』。 
少年マガジン連載のこの漫画は、そんなキャラゲー市場の中で比較的佳作を出し続けていた奇跡のシリーズだったのだが… 

そんな金田一シリーズの通算7作品目に当たるのが、『金田一少年の事件簿 悪魔の殺人航海』である。 

原作も大概、放課後の魔術師だの地獄の傀儡師だの夢見がちなネーミングが多く登場するが、悪魔の殺人航海なんて解り易く、しかもやりすぎなタイトルだとまるでB級映画の題名だ。 
初期発表時の「客船エリス号の悲劇」からの差し替えと言う事情はあるが、“悪魔”に特別な意味合いがあるでもなく、あまりに急ごしらえ感が出てしまっている。 

まずシナリオ。 
推理アドベンチャーゲーム史上、血の付いた衣服が隠してあった部屋の持ち主が真犯人で、被害者のダイイングメッセージも犯人の名前そのものと言うゲームが存在しただろうか。 
また犯人自体、一番イベントや接触の機会が少ない人物なのが良くない。意外性を出したつもりなのかもしれないが、クライマックスを演出できるほどのエピソードや伏線を積み重ねていないのだから、結末としては非常に地味になってしまっている。 
大体ミステリの犯人は「まさかコイツが犯人だなんて……」と思わせた上で意外性が生まれるのであって、「え、お前話に参加してたの?」と言うキャラでは全く盛り上がらない。 

更に、アクロバティックな犯行をどう成し遂げたのかへのフォローは、「実は特殊な訓練を受けていました」と言うミステリとして大反則なモノだし、 
「女装した男」ネタについても劇中にそれを活かしたイベントが無いため、あっても無くても大差無い要素になっている。 

高遠が篭る部屋のドアロックも酷い。ダイヤル錠式のちょっとした暗号パズルなのに、なんと金田一と美雪が勝手に解いてしまうのだ。 
しかもそれだけでなく、暗号の答を1から10まできっちり説明してくれた後に、実際にダイヤルを回させるミニゲームが用意されているのである。 
解答を知っているダイヤル錠を回させる推理アドベンチャーがあるだろうか? 

最後にもう一つ。ミニゲーム(ミニゲームばかりな印象があるが、実際本編をストレートでクリアしても4時間程度で終わるため、半分はミニゲームみたいなものなのだ)として用意された「剣持警部と将棋対決」。 
将棋のルールを解っておられない警部が2歩を頻発するので注意されたい。 


キャラゲーがクソゲーになる要因と言えば、大抵は原作設定の軽視に拠るものだ。 
この『悪魔の殺人航海』にもその点は見られるが、それ以上にどうも、推理アドベンチャーとしてダメなのである。仮にこのゲームが金田一でないオリジナルシリーズだったとしても……やはりクソゲーであるはずだ。 

1人で済む被害者を4人にまで増やす金田一、真犯人を暴いてもみすみす逃げられる金田一、2歩も知らない金田一…… 
キャラゲーに良作無し――IQ100にも満たなそうな金田一少年は、この名言をまた一回り頑強なものとした事だろう。 

今作はタロットカードを乗員に配布すると言ういかにも不吉な場面から本編が始まるのだが、この設定は見事に中盤でフェイドアウトする。 
第一の事件こそ「愚者」のカードを手にとった人物が船の屋上から逆さ吊りで見つかるが、早々に見立てでも何でもなく「たまたま」と言うオチがつけられ、その後もせいぜいキャラクターの三人称にしか用いられない。 
一応数少ないファインプレーとして、「キャラクターをカードの絵柄で呼ぶ事で犯行予告をお告げの風合いにする」「そのお告げをターゲットに聞かせる事で神経を衰弱させる」と言うトリックもあるのだが、 
これはこれで序盤からあまりにタネ見せすぎな演出が為されるため、「金田一が大事な手掛かりを華麗にスルーしやがる」と言う別の問題が出てくる。 

そして最終盤、単なる金田一の勘の鈍さのせいで死体が増えまくった果てに、まさかの爆弾解体ミニゲームが登場する。 
元々『THE 爆弾処理班』などのSIMPLEシリーズで知名度を上げた「トムキャットシステム」が開発している事からお家芸とは言えるのだが、それまで爆弾のバの字も無く、 
真犯人にも爆弾製造技術があったというエピソードは出てこないため、腹の底から必然性が感じられない。 
ついでに音楽にも触れると、爆弾解体中にも関わらずギャグシーンを思わせるメジャーコードのおとぼけマーチが鳴り続ける。 
船が沈みかけている上に犯人に逃げられ、登場キャラの安否も気にかけて……と言う大ピンチなストーリー展開には、最も似つかわしくない曲調だ。 


さて、「船内食堂のバイトをしていたら事件に居合わせた」設定ゆえ立ち絵がメイド服のままの美雪と共に地下階を進むと、金田一シリーズのゲームでは初登場となる高遠が、非常にお粗末な役回りで出迎えてくれる。 
そもそも原作では万能すぎてマンネリ化したキャラなのだが、このゲームでは逆に大人気ないドジっ子になってしまっているのだ。 

原作での「芸術的な犯罪を完成させるため、真犯人に殺人のチャンスと舞台を与える」設定は踏襲したものの、最後の最後に真犯人に個人プレーをされた上、沈没しかけの船に篭るハメに。 
更に10歳のガキにタックルをかまされて呻き声を上げたと思えば、怒りに任せて真犯人の乗った船に大砲を発射する始末。 
少なくとも「沈着冷静なシリアルキラー」がやってはいけない行動であろう。
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**選評案2 [#s80717a9]
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キャラゲーに良作無し――ゲーマー達に語り継がれる教訓である。 
しかし『金田一少年の事件簿』は、そんなキャラゲー市場の中で比較的佳作を出し続けていた奇跡のシリーズだったのだが… 

金田一シリーズの通算7作品目に当たるのが、この『金田一少年の事件簿 悪魔の殺人航海』である。 
サブタイトルからして既にB級映画的陳腐さを大いに漂わせているが、内容も悲しいことにそれ相応の代物であった。 

まず、ADVにおいて最重要のシナリオ面。 
ミステリの面白さを担う重要ポイントといえば、まず「真犯人の正体」だが…… 

推理アドベンチャーゲーム史上、「血染めの衣服が隠された部屋の主である」上に、 
「被害者のダイイングメッセージに思いっきり名前を書かれている」などというバレバレすぎる真犯人が存在しただろうか? 
しかもこの犯人、「イベントがろくに無く、接触する機会も最少」「有っても無くても大差ない変装の伏線」など、 
素晴らしい影の薄さである。それだけならまだしも、影が薄いにも関わらず不要な伏線が張られるために、 
開始十分でこいつが真犯人だろうなと察知できてしまうあたりが辛い。 
大体ミステリの犯人は「まさかコイツが犯人だなんて……」と思わせた上で意外性が生まれるのであって、 
「え、お前話に参加してたの?」「案の定かよ……」というキャラでは全く盛り上がらない。 
加えて、アクロバティックな犯行が可能だった理由がなんと「特殊な訓練を受けていたから」 
――ミステリの常識を(駄目な方向に)覆す大技ばかりを繰り出してくるその姿勢には、もはやプレイヤーは唸るしかない。 

シナリオ自体も酷い。 
殺人を阻止できないのはじっちゃんの代からのお家芸とはいえ、始終不安を訴えてくる人物をスルーし続ける金田一少年。 
何の脈絡もなく始まる爆弾処理に挑まされる金田一少年。不気味な雰囲気だけは過剰に煽るものの中盤で 
いつの間にかフェードアウトするタロットカードの「予告」。つっこみ所満載である。 

では、ADVにつきもののミニゲームはどうか? 
なんと段位レベルの実力者・剣持警部との将棋が楽しめる――ただし、警部も天才金田一も二歩の反則には気づかない。 
ミステリらしいドアロック暗号パズルも!――ただし、遊べるのは解法と正解が説明された後だ。 

如何ともしがたい内容が続くが、このゲームはキャラゲーである。 
他の面が駄目でも、キャラクターや世界観を楽しめれば最低ラインは確保できるジャンルだ。 
だが、肝心のキャラクターたちはどうか? 前述のように間抜けすぎる金田一少年に、特技の将棋をヘボにされた剣持警部。 
極めつけは「万能の冷徹なシリアルキラー」のはずが、出し抜かれた怒りにまかせて大砲をぶっ放す「ドジっ子の切れキャラ」 
にされている高遠。ヒロインの美雪はといえば、どんなシリアス場面でもバイトの制服だという理由でメイド服のままである。 

グラフィックや仕様・挙動に取り立てておかしな点は見あたらないのに、全方向にわたって隙のないクソっぷりを見せつける 
『金田一少年の事件簿 悪魔の殺人航海』 
キャラゲー界において築いてきた希有の実績をみじんに打ち砕く孫のその偉業には、 
草葉の陰のじっちゃん・金田一耕助も涙間違い無しだろう。 
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