2010年 総評

2010年総評合成案1(プーペガールDS2)

使える部分があったら適当に取っていっちゃって下さい

2010年ワールドカップ南アフリカ大会で日本代表チームの奮闘により列島が熱狂と笑顔に包まれた。
だが光あるところに闇もまたある。クソゲーのチャンピオンを決定する戦いが、ひっそりと世間の片隅で行われていた。
その詳細は選評に譲るとして、ここでは主要作品のみを紹介する事と致します。

2009年「戦極姫」を発売したシステムソフトアルファー(SSα)
据え置き版と携帯版の2冠を達成するという前人未踏の快挙を成し遂げたクソゲー界の風雲児
SSα先生の次回作が今年も猛威を奮うとは―――誰もが期待していたに違いない。

2月25日発売 DS【現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜】(システムソフト・アルファー)
戦略シミュレーションゲームなのだが、なるほど非常に適切なサブタイトルであると言わねばならぬ。
本編は問題だらけで、チュートリアルに10時間という長さがお出迎え。1ターンに最大5分かかるAIの思考時間は流石と言う他ない。
システムは不親切で説明書も説明になっていない。表示も操作性も褒める部分が何一つ無い劣悪なインターフェース。
戦闘画面が意味不明な上にユニット情報が理解不能で配置方法が分からない。空母や揚陸艦が港以外の場所で部隊を展開する方法も分からない。
ゲーム進行上のメインシナリオでは、普通に進めていると突然別のルートに飛ばされ、あげくそのまま初期のシナリオに逆戻りして無限ループになってしまう。
ループから抜ける唯一残された攻略法が降伏し続け友好度を調節する「土下座外交」という嘆かわしいものである。
もはや軍事バランスどころか、ゲーム内容全てが崩壊していた。

続いて紹介するのは6月24日発売 PSP【大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜】(システムソフト・アルファー)である
PERFECTに問題を抱えた本作は、またもタイトルに偽り無し。鮮やかなもので清々しささえ漂う。
説明のない意味不明なインターフェースや敵の思考時間の異常な長さは、悲しいかな毎度のことで驚きに値せず
カーソルを動かすだけで約1秒のローディングが入り、ラグで非常に操作しにくいという劣悪なキーレスポンスが光る。
何をするにしても重い処理が入るためか、ボタン押をしっぱなしにするだけでフリーズする危険すらある。
ステージクリア時、敵ターン終了時、戦闘終了時…など、あらゆるタイミングでフリーズが起こるので油断ならない。
また、味方の生産施設に突然名無しの部隊が配置されるがあり、この部隊を確認した瞬間にPSPの電源が落ちる。
愛用する機体をユニット編成できる「マイ部隊」は自軍として設置したはずなのに敵として出てくる時があり、
占領可能なマイ部隊を首都に置いた直後に裏切られ首都陥落で負けたりする。
もはや敵と戦っているのか仕様と戦っているのか己と戦っているのか分からなくなる怪作だ。

昨年度の活躍はまぐれでは無かったのだと確信させる2作品のノミネート
何故1本に絞ってゲームの完成度を上げなかったのかという疑問は最早野暮というものであろう。
そんな大物二体の砲弾荒れ狂う中、夏の魔物は「おまたせ!」と言わんばかりに
大物2体と対等に戦う力を貯え戦場に降り立った。それは魔物…いや、覇王の降臨であった
7月15日発売 PSP【ハローキティといっしょ! ブロッククラッシュ123!!】(ドラス)だ
このブロック崩しゲームにはバグがある訳でも無い。有名イラストレーターが描くキティラーはこのゲームの魅力の一つである
1キャラ12面をクリアすると特典としてそのイラストを入手出来るはずだったのだが、現実はどうか。
前半はまだ普通のブロック崩しだが後半は気が狂ったブロック崩しになってしまっているのだ。
ボールは挙動がおかしく、操作するパドルの端で打ち返そうとするとボールが上ではなく下に跳ね返っていく
ブロックの角にボールがぶつかると真下に反射するのだが、パドルの操作性が悪い為に操作がこの現象に追い付かない。
さらには弾を撃ちながら動きまわるターゲットに50発ボールを当てて撃破するとクリアという面などではボールの軌道と敵の弾が重なるとミス確定。
暗闇の中スポットライトに照らされたボールとパドル部分しか見えない面があるのだが、丁寧にも砲台までもが設置され、暗闇なのに撃ってくるのだ。
極め付けはボールが当たる度に方向が変わる矢印ブロック6つをすべて一定の方向に揃えるという終わりの来ない賽の河原の如きステージ。
しかし、これだけ理不尽なのにリトライの容易さから変に嵌りクリアする人間も現れ、更にはネタとしても優秀だった為か覇王だ鬼帝だと愛称まで付けられ愛された。

年末12月16日
今年の大賞は何になるのだろうかと議論が進んでいた頃、その議論を振り出しに戻す怪物が現れた
DS【どんだけスポーツ101】(スターフィッシュ・エスディ)
ファミ通クロスレビューにて5・6・4・3計18点を叩き出し俄然注目された本作は、世界のスポーツ101種を楽しめるという海外ゲームのローカライズ版である。
しかし、このゲームのクオリティーは携帯アプリ以下であり、スポーツのルールが反映されていないものすらあるのだ
ボール落下地点にペンをスライドさせるだけのピーチバレー。 レシーブしなければ勝てるバトミントン。
大変薄味なゲームで、どれだけスポーツを集めてもクオリティに繋がっていなかったのだ。塵も積もれば山となるという諺があるが、悲しいかなこの山は塵なのである。
それぞれのルールも遊び方も違うので、やりごたえたっぷりと!クリスマス商戦にこのコンセプトで殴りこんだ事には、率直に讃辞を送りたい。

実は12月16日に発売されたのはそれだけではない
DS【プーペガールDS2】(アルヴィオン)である
ピンクとミントの2バージョンあり、それぞれに違う特典があるよ、と販促をかけたにも関わらず
その特典を得ようとするとDSが2台必要という事が発覚する等、最初から怪物っぷりを見せつけた。
着せ替えゲームなのだがUIが不親切で着せ替え操作も一苦労。着替え画面で拡大するとフリーズ。拡大しなくてもキャラが崩れグロ画像と化し、
付けたはずのアクセサリーが付かなかったりする。通貨に当たるリボンを得るには着せ替えないといけないのだが、
服を買うにしてもリボンがインフレ化し高価な服を買うには何度も只管着替える作業に。しかもそれを邪魔する形でロードが多発する。ROMカートリッジであるのにだ。
大きな収入源となるファッションショーは定期的に発生すると説明書に書いてあるが1度しか開催されず、得られる報酬も0リボン。
しかし、プレイ時間が22時間に達するとご褒美報酬としてリボンが貰える。苦労するだけにこれは嬉しい。
画面に表示される -15536リボンゲット 「はい」  
まさかのマイナスである。なぜ選択肢に「いいえ」が無いのか。しかもリボンがマイナスになった状態で外に出るとご丁寧にもフリーズ。
深刻な問題であると捉えた発売元は、この対策としてリボンが獲得できる隠しパスワードを先行公開したが、それすら一部が入力済みとして無効になる始末。
Poupee (人形)を着せ替えるゲームであった筈がこれではPoopである。 Poop(糞・おなら・馬鹿・疲れる・止まる)意味を着せ替えてみてね!

最後まで一切気が抜けなかったクソゲーラッシュ
戦いは白熱したが議論を経て行くうちに、自然と収斂、淘汰され
『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』『プーペガールDS2』の三つ巴となっていった

しかし誰が予想しただろう。バグの無いストロングスタイルで他のゲームをなぎ倒してきたキティの評価が、なんと最後の最後に見直されたのだ。
ボールの挙動や暗闇の面等もゲーム発売前にゲーム情報として公開されていた点。高難易度の面が一部に止まっているいる点。
セーブとリトライが優秀で一面単位でプレイ可能であり、1面クリアに要する時間はそれ程長い訳でも無い為リトライ労力も小さい点。
短時間で全クリを目指すと地獄を見るが、反射が急なブロックやアイテム入手、砲台の問題などもリトライが前提にあるならばゲーム性の崩壊に繋がらない点。
残る問題は、キャライラストの入手条件が12面クリアである為に後半の難易度を無視出来ない点であるが
どうしてもイラストが欲しいのであればゲーム発売と同日から親切にもPSストアにて1枚50円で販売されているので
わざわざゲームを買わずともイラストの入手手段は最初から存在するという点。
これらによりゲームの一部では無くゲーム全体の糞さで勝負する他作品に対し、惜しくも鬼帝は一歩後退する形となったのである。

緊張感のある議論の末に見事2010年クソゲーオブザイヤーに輝いた作品は、
【プーペガールDS2】であった。

授賞理由はゲーム性を満たすサイクルが丁寧に邪魔されているという、ゲームとしておっちょこちょいな点にある。
服が可愛いのはこのゲーム唯一の美点である。しかし、そのニンジンを追い求める事自体が罠なのだ。
リボン入手手段がバグを生み、服を手に入れてもグラがグロ画像に。挙句-15536リボンのご褒美。
レシピ保存機能を兼ねたスナップショットは30個まで保存出来るのだが、実はこれもリボン集めの手段の一つ。
新しいスナップショットを撮ると強制的に古いものが消される為に、お気に入りの着こなしを残せない。
このようにリンクする要素が丁寧に足を引っ張る形で完成されているのだ。
楽しい着せ替えゲームの筈が、問題点から逃げる為の着せ替え作業へと変質し、本来のゲームの楽しみ方全てを邪魔している点は驚愕に値した。
前作に満足し、続編を安心して購入したユーザーすらてんこ盛りのバグで裏切る形となったのは実に見事であった。
また、バグの質に関しても非常にシンプルな部分でずっこけているという、おっちょこちょいな所も流石と言わねばなるまい。
それより何よりもプレイヤーが仕様とバグから逃げ回る行為がゲームの中心となってしまった本作品を
着せ替えゲームとして売った事が何よりもおっちょこちょいなポイントである。本家プーペガールが『無料』である事がそれを際立たせる。

もちろん、今年のノミネート作はこのハイレベルな年にあってどれも大賞にしても惜しくない出来栄えで
正直、他の候補作を切るのは断腸の思いであった。それほどまでに今年は豊作であったのだ。
振り返ってみれば、今年はどこかゲームを出し急いだ一年だったのではないかと思う。
大戦略ももう少し待てば、戦極姫2程度には動いたかもしれない。マニュアルをちゃんと充実できたかもしれない。
ハローキティもゲームバランスを調整することもできただろうし、新しいイラストを描くくらいできたかもしれない。
どんだけスポーツは作りこむ時間は増やせただろうし、
大賞作プーペガールは一通りチェックしてみる暇くらいできただろう。
しかし、どこもそれができなかった。
不況と言われる昨今、立ち止まったら倒れてしまう恐怖心と戦ってゲームを作っているのかもしれない。
しかし、企業はそんなときほど誰かが立ち止まり、時には冷静に周りを見る姿勢が求められているのではないだろうか。

最後になりますが、日本で一番有名な先生
金八先生の言葉を送り、総評を締めくくる事とします。

「正しいという字は「一つ」「止まる」と書きます。どうか一つ、止まって判断できる人になって下さい」

2010年総評合成案2(ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!)

10(仮)◆z2q4MKnYwY

総評案3をベースとしてお借りして、色々混ぜ込みました。 ここへの上書き以外はご自由にどうぞ。

※2010年総評案10 と同じもの

2010年ワールドカップ南アフリカ大会で日本代表チームの奮闘により、列島は熱狂に包まれた。
だが光あるところに闇もまたある。
栄光の裏で、前年に修羅の国からの核爆弾『戦極姫』の炎に包まれ焦土と化した携帯クソゲー界では、それでもなお、
荒野に芽吹く強靭な作物のように、多くの突き抜けたクソゲー達が排出されようとしていた。
携帯ゲーム板クソゲーオブザイヤー2010の開幕である。


それでは早速、厳しい選考を勝ち残ってきた代表達を紹介しよう。
まず選評が届き大賞候補に躍り出たのは、恒例となった夏の怪物、
ドラスが販売した『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』である。
一見女児向けのゲームと勘違いしてしまいそうだが、キティちゃんを愛する超キティラーと呼ばれる女性キャラクターを、
人気イラストレーター達に描いてもらう「ハローキティといっしょ!」という企画の一環で、
どちらかと言えば大きいお友達向けの萌え絵と、古豪の安牌ジャンルと言えるブロック崩しとを抱き合わせたゲームである。
しかし、ただ萌え絵を見てもらうだけで良かったはずのこのゲームは、「安牌」など死語と言わんばかりに突き抜けていた。

では早速、ブロック崩しとしての挙動の問題点から見ていこう。
まず、ボールがブロックの角に斜めに当たった場合に、元来た方向や垂直方向に反射するという、
物理法則的には間違っていないが、ブロック崩しでは起きて欲しくない反射が頻繁に発生し、
プレーヤーは終始ボールの挙動に振り回されることになる。
また、プレーヤーが唯一操作できるパドルも、ボールと共に物理法則に忠実なため、
パドルの端でボールを拾おうとすれば容赦なく下へ弾かれミスとなる。
さらにこのパドル、移動速度がボールとほぼ同じと妙に遅く慣性まで付いており、
機敏な反応はおろか、ボールを追い抜き落下地点で止まるという基本的なことすらままならない。
果たして、ブロック崩しの基礎となる要素が、揃いも揃ってブロックを崩させまいと働くという、異様な世界がここに顕現した。
…これは本当に「ブロック崩し」なのだろうか。

勿論そればかりではなく、ステージもかなり力が入った意匠となっている。
常人では反応できない速度でボールを跳ね返す反射ブロックがただ配置されるのは初歩の初歩で、
その反射ブロックをパドルの至近距離に設置するなど、さりげない気遣いも忘れない。
不自由なパドルに1発当たると即1ミスとなる弾幕を張る砲台ブロックも濫用されており、ボールとパドル周辺以外が暗闇で隠され、
その暗闇で砲台が放つ敵弾まで隠されようものなら、もはや弾幕シューティングどころの騒ぎではない。
兎にも角にも、各ステージに理不尽とさえ言えるギミックが盛り沢山で、プレイヤーを殺す気に満ち満ちている。
類稀なる才能と弛まぬ努力、そしてそれを超える幸運を引き当て、理不尽ギミックのほとんどを生き延びた歴戦の兵でさえ、
無尽蔵の弾幕を回避しながら、ボールが当たるたび方向が変わる矢印ブロック、それら6つの向きを既定の方向に揃えてクリアー、
という最難関のステージに辿り着き、自ら積んでは自ら崩す「セルフ賽の河原」と喩えられるほどの鬼畜ステージを以ってしては、
終に幾多ある先人たちの屍への仲間入りを果たすしかないであろう。
…再度問おう、これは本当に「ブロック崩し」なのか。

なおこのゲームは、苦しい道程を乗り越えれば萌えの楽園に辿り着ける、などという安易な妄想も許してはくれない。
抱き合わせられた大友向けイラストは既出の物の寄せ集めで、そればかりかテキストすら一切存在せず、
ゲーム内で貰える各キャラクターのカスタムテーマも、より汎用性の高いものがPSストアにて1つ50円と絶妙な価格で、
しかも本ソフトと同時にひっそり配信開始、と、負のサポート体制のみ厚く迅速で、
「ブロック崩し」から逃れ「キャラゲー」として価値を見出し生きる道すら、予め周到に絶たれている。
購入してしまったプレーヤーには、ただもがき苦しみ死ぬ運命しか残されていない。

一通り述べた理不尽さの一方で、本編以外のシステムの快適さやバグの無さに関しては、近年KOTY稀に見る良好さを見せている。
しかしこの作り込みこそが、逆に、理不尽全てが見逃しやミスではない「公認の仕様」であるという観測の裏打ちとなり、
このゲームの救いのなさをより一層際立たせている、と言ってしまっても過言ではないだろう。
これらの、公式サイトにある謳い文句通りの非情にハードなゲーム性は多くの支持を集め、
KOTYスレでは「覇王鬼帝」や「鬼帝」など、素敵な愛称で呼び親しまれる事となった。


続いて届いた選評は、昨年の王者システムソフト・アルファーが放つ爆弾『現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜』。
発売自体は鬼帝よりも半年近く早かったのだが、バグによりシナリオが無限ループし、
クリア不能なため選評が遅れたという曰く付きの作品であり、その実体は現代どころか云十年前で時が止まったかのような代物だった。
実際にプレイしてみると、ユニットを全く動かさなくてもクリアが可能なステージが存在する一方で、
無限ループバグを回避しクリアするためには、戦闘開始直後に即降伏する「土下座外交」が事実上必要不可欠など、
SLGの根幹を成す「戦略」がメタ的に要求されるため、本作が軍事バランスよりもゲームとして崩壊していることがよく分かる。
上記バグのみでもノミネートに足る逸材であるが、もちろん他にも進行を妨げるバグを数多く搭載し、
インターフェースも劣悪で敵の思考時間がやたら長いと隙はなく、前年王者の貫禄を見せ付けた。


そのシステムソフト・アルファーの追撃『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』の選評が、間髪入れずKOTYスレへと届く。
この二度目のパーフェクトな爆撃は、前回のそれを越える勢いの突き抜けっぷりであり、さしものKOTYスレ住人も俄かに沸き立った。
もはやお馴染みとなった泥沼のような操作性、説明も碌にない不親切なインターフェース、CPUの1勢力数分という長考は当たり前。
デバッグもまともに出来ないとあれば、実機テストなどされるはずもなく、何をするにもロードが挟まる。
端的に言えば「ただプレイする」だけでストレスが募る仕様となっており、これだけでも嘆息に値する。
しかしご存知の通り、SSα波を浴びるにあたって「ただプレイしたら」などありえない仮定であり、全き杞憂である。

では当然のように存在するバグ達を、簡単にだが紹介していこう。
まずは、ステージをクリアしたらフリーズ、他にも敵ターンが終わったらフリーズ、部隊の戦闘が終わったらフリーズ、
果てはただボタンを押しっぱなしにしたらフリーズ、つまりありとあらゆる場面でフリーズする危険性がある。
また、この作品にはマイ部隊というプレイヤーオリジナル部隊を編成する機能があるのだが、
部隊が損耗したままクリアすると現在値が最大値に上書きされたり、別の時には自国内で敵となってみたり、
そのままセーブすると取り返しが付かなかったりと、ひたすらバグの温床となっており、運用するだけでトラブル続きである。
他にも、自国生産設備に無名ユニットが発生してスペースを圧迫することがあり、
ましてやその無名ユニットに触れようものなら、PSP本体を巻き込み電源が落ちてしまう。
とにかく些細な物から進行に関わる物、心臓に悪い物までバグのオンパレードで、「ただプレイする」ことすらままならない。
そんなパーフェクトなクソが、三度同社から排泄され、産声を上げたのだ。

再びKOTYの覇者となるべくシステムソフト・アルファーが送り込んで来た両大戦略は、自身のみならずプレーヤーまでパーフェクトに崩壊せしめ、
「冗談の通じないクソ」というスタイルで、自社の携帯クソゲー界の雄としての座を確固たるものにした。


年末の魔物は今年もやってくる、悲しみを売り付けて儲けるために。
クリスマスも迫った12月下旬、ファミ通クロスレビューにて18点という低得点を叩き出した『どんだけスポーツ101』の選評が届く。
海外ゲームのローカライズ版であるこの作品、テニスからカニ釣りまで、101種類のスポーツを網羅したとんでもゲーム、とのことだ。
コンセプトを聞いただけで脱力してしまうが、言ってしまえば単なるミニゲームの寄せ集めである。
問題は、101種類の何れも携帯アプリゲームの出来損ないレベルで、その全てが例外なく面白みに欠ける、という事であった。
もちろん出来損ないであるため、スポーツの本来のルールをブン投げたり、物理法則を無視してみたりなどは平然と行われ、
無理に数を押し込んだ弊害か、はたまたそれ以前の問題か、ゲーム性の欠如は当然として事実上の重複さえ目立つ。
さらには種目を選ぶインターフェースが壊滅的、ゲームルールの説明まで投げやりと来れば、全てを通り越し再び脱力させられる。
ただただつまらないだけのミニクソゲー、それがこんだけ揃ったことで、遂には大きなクソの塊となり聳え立った。


しかしその巨大なクソと同日に、それすら翳む、突き抜ける臭気を纏った二匹目の年末の魔物が、この世に生れ落ちていた。
女性向け着せ替えSNSの大手であるプーペガールの、DS化第二弾となる着せ替えゲーム『プーペガールDS2』である。
前作は名前すら挙がらなかったが、今作では一気にノミネート作として名を連ね、携帯KOTY2010の大トリを飾る運びとなった。
SNSをゲーム化するとはいえ、ただ可愛い服を着せ換えることができ、その衣装で自己主張できるだけで一定の評価が得られる、
ただの「着せ替えゲーム」の順当な2作目…このゲームはそうなるはずだった。
しかしいざ蓋を開けてみると、2種類存在するバージョンの差別化不備から始まり、
ROMカートリッジにも関わらずロードが頻発しもっさり感全開、さらにはSSαにも匹敵する潤沢なバグを引っ提げ、
年端も行かぬ子供から大きな女の子まで、全ての購入者を纏めて無間地獄に蹴落とす、
魔物は魔物でも大魔王さながらの凶悪バグゲーへと、それは深化を遂げていた。

順を追って説明していくと、まずゲームの一種の特典ともいえる、本家プーペガールでアイテムを入手できるパスコード。
各バージョンで異なるはずだったこれが、実はDS本体依存の共通コードであることが発覚し、
まず両バージョン大人買いしたヘビーユーザーから悲鳴が上がった。
また本作の肝である着せ替え部分は、インターフェースが不親切であるばかりでなく、頻繁に画質が乱れたり、
場合によっては拡大するだけでフリーズを起こし、不吉な気配を漂わせる。
プレイを進めると徐々にバグが頭角を顕し、細かいものではゲーム内時間がすっ飛ばされたり停止したり
他にもゲーム内通貨であるリボンの主な収入源の一つであるファッションショーが一度で途絶えたり、
時にはキャラクターに約束をすっぽかされ、進行不能に陥ることすらある。
それら多数のバグや困難を乗り越えた先に、22時間プレイのご褒美が大きな「リボンのマイナス収入」に設定されている、
という極めつけの時限爆弾がある。
これで手持ちリボンが負数となってしまうと事実上の「詰み」となり、新たな服飾品を入手するなどの、殆どの行動は禁じられ、
それまで入手できたアイテムのみで着せ替えで得る、スズメの涙ほどの収入で莫大な借金を返すことしかできなくなる。
メーカー側も上記22時間バグなどには一応の反応を見せ、機を見て公開する予定だったであろうリボンを大量に貰えるパスワードを、
一気に公開するなどの対応をしてみせた。
だが、一部ユーザーは正しく入力してもエラーとなってリボンを全て獲得しきれないなど、結果として対応は悉くお粗末なものと終わった。

結局、後に残されたのは、救われないクソゲーの被害者と、対応含め大きく評判を落とした開発元アルヴィオン、
そのとばっちりを喰らった本家プーペガールの三者と、あとは不幸な生まれのこのゲーム自身のみ。
この中に真に得をしたものは一人もおらず、このゲームが阿鼻叫喚の地獄を作り出す一際凶悪なクソであったことに、もはや疑う余地もないだろう。


以上5本の作品、『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』、『現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜』、
『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』、『どんだけスポーツ101』、『プーペガールDS2』らが、クソゲー頂上決戦へ出場する代表選手に選ばれた。
最後まで名前が挙がりつつ、惜しくも選考から漏れた『ゲームブックDS アクエリアンエイジ Perpetual Period』、
『天下一★戦国LOVERS DS』の両者らも、子細は省くが、この年に生まれなければ大賞を狙えたかもしれない力を持っていた。
ここで大賞を決定する前に、彼らを含む全七候補に惜しみない賛辞と罵声を送りたいと思う。

さて、本年はどの作品もそれぞれが違うベクトルに突き抜けているため丙丁付け難く、大賞選出は非常に混迷を極めた。
中でも、一切のバグなしに、全てをクラッシュたらしめることに成功した『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』、
数多のバグと救いようのないUIで、プレーヤーを打ち破り君臨した『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』、
2つあるバージョンに避け難いバグと粗末な対応を以って、この世の地獄を顕現させた『プーペガールDS2』、
これらスリートップは最後の最後、それすら超えて延長戦の中でも互角と言える戦いを繰り広げた。
果たして、度重なる議論の末に大賞へ選ばれたのは、『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』である。

ブロック崩しは、ビデオゲーム黎明期から既に確立されている、有数の歴史を持つ定番ジャンルと言え、今やフリーゲームとしてすら飽和状態である。
昨今のゲームはMB〜GBの容量を扱うのに対して、ブロック崩しは単純なものならソースにして数行から作成可能であり、
それほど高度な設計やプログラムを要求されるものでもない。
更には制作のノウハウも蓄積されているため、ただ調整さえ間違わなければそれなりの形になるという、まさに「安牌ジャンル」である。
それを、「究極のテクニック」と「至高の幸運」を同時に要求される、もはや笑うしかないほどの凶悪無比なクソゲーへと、
バグの一つもなしに転落させてしまった点が、まず他作品よりも頭一つ抜けていると判断された。
それと合わせて評価され、大賞に選ばれる決め手となったのは、この作品が持つどうしようもない「無価値、負価値性」だ。
「ブロック崩しのような何か」、「メタ戦略ゲーム」、「着せ替えゲームもどき」とでも言うべき、一見全て負価値な各候補だが、
『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』は、実在兵器による「燃え」や、マップエディタや兵器エディタを用いた箱庭ゲームに、
『プーペガールDS2』は「本家SNS用アイテム」のオマケや、僅かな手持ちアイテム内での着せ替えツールとして、
それぞれ僅かながら価値を見出すことができる。
しかし『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』については先述のように、「ブロック崩し」として、また「キャラゲー」として、
ブロックの代わりとばかりに破壊しつくされており、他を暗黒星雲と例えるなら、さながら光すら飲み込むブラックホールのようである。
また、これだけの惨状を呈していながら、他の候補と違い見るものに後味の悪さどころか、ある種の爽やかな笑いすら提供できるという点も無視できない。
こうして僅差の中、延長戦にてまさかのハットトリックを決めた『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』が、年間MVP…もとい、大賞へと選定された。

振り返ってみれば、実力伯仲でハイレベルであった本年のクソゲーオブザイヤー。
ゲーム市場の主流が携帯ゲーム機に移ったと言われるようになって久しいが、それを象徴するような百火繚乱の様相を呈した。
最後に、長く続くブロック崩しゲームの歴史に「ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!」という
ひときわ突き抜けた金字糞を打ち立てたドラスへこの言葉を贈って、クソゲーオブイヤー2010を締め括りたい。

"Hello!KOTY!"

2010年総評合成案3(ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!)

合成宣言1号 ◆/b0/O7.WTE

クソゲーオブザイヤー(KOTY)……
それは、不幸にもこの世に生まれてしまったクソゲーの頂点を決める悪夢の祭典である。
2009年、新鋭フリューの「三銃士」と、修羅の国からの黒船『戦極姫』によって蹂躙された携帯ゲーム機版KOTYスレであったが、
2010年もまた、荒野に芽吹く強靭な作物のように、彩り豊かなクソゲーが跳梁跋扈することと相成った。
今ここに、史上稀に見る熱戦となった2010年携帯ゲーム機版KOTYのあらましを著すこととする。

まず先鋒をつとめたのは、ブロッコリーの『ゲームブックDS アクエリアンエイジ Perpetual Period』(「アクエリ」)であった。
アクエリアンエイジとは古参の萌え系トレーディングカードゲームであり、本作は同社の「ゲームブックDS」シリーズの第三弾であるが、
ゲームブックと自称しているにも関わらず実際は単なるADVであり、このご時世に『頭脳戦艦ガル』顔負けのジャンル詐欺を敢行している。
いないはずのキャラの立ち絵が表示されたり、立ち絵同士干渉して表示がおかしくなるなど、一目見ればわかるバグが放置されており、
ヒロイン6人中3人は最後まで声と文章の同期が取れていないという点からも製作者が本当にテストプレイしたのかを疑わせる内容となっている。
果てにはCGモードを閲覧するだけでメニュー画面が消滅しセーブ&ロード不能になることが露見し、疑惑は確信へと変わった。
なお、唯一の存在意義であった特典のカードについても後に一般販売が決定し、購入者の心にもピリオドが打たれてしまった。

それに続いたのは、前年王者システムソフトアルファー(SSα)による『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』(「大戦略PSP」)である。
本作は前年の『戦極姫』同様、PCゲームで出ていたシリーズを移植したものであるが、悲しいことに崩壊ぶりまでもが全く同様であった。
説明不足で意味不明なインターフェースや、敵AIの思考時間の異常な長さは、もはや「SSαではよくあること」なのでさておき、
よもやカーソルを動かすだけでローディングが入り、キーレスポンスにすらラグが発生するという追加サービスを誰が予想できたであろうか。
このように「ただプレイする」だけでストレスが募る本作であるが、もっと恐ろしいことに、そもそもバグのせいでまともにプレイすることができない。
ステージクリア時、敵ターン終了時、戦闘終了時、ボタン押しっぱなし時など、ありとあらゆるタイミングでフリーズが発生。
自国生産設備に突然名無しのユニットが現れることもあるが、うっかりこれを選択すると問答無用でPSPの電源が落ちてしまう。
あのSSαが「PERFECT」という名を与えただけのことはあり、実際の戦争さながらのスリルを演出することに見事成功した怪作であった。

この『大戦略PSP』に触発される形で、3月時点で発見されていた不発弾にようやく解体班が着手する運びとなった。
同じくSSαから発売された『現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜』(「大戦略DS」)。
「シナリオが無限ループしてクリア不能」というバグによりスレ住人が一人もクリアできず、選評が遅れたという曰く付きの作品である。
なお、これを避けるために他国との友好度を保つことが不可欠であるが、その手段は開戦後即降伏という「土下座外交」しか存在しない。
この他、ユニットを全く動かさなくてもクリアできるステージの存在や、数ターン経過すると敵が動かなくなる現象も報告されており、
これらの無気力仕様に加えてDSのスペックを限界まで酷使するCPUの長考がプレイヤーの虚脱感に拍車をかける。
「一触即発」なのは購入者の心理状態であり、「軍事バランス」以前にゲームそのものが完全に崩壊していたのは言うに及ぶまい。

2010年も終盤に差し掛かった10月。前年の「修羅の国」に触発されたのか、今年は「乙女の国」からの刺客が現れた。
ロケットカンパニーによる女性向け恋愛AVG『天下一★戦国LOVERS DS』(「戦国」)である。
本作は人気携帯アプリを原作に持つ女性向け恋愛AVGであり、その名の示す通り、昨今女性人気の高い歴史要素を足した「乙女ゲーム」である。
シナリオは「主人公を家臣に与えて抱かせた後いきなり略奪愛に走る主君と、それにあっさり応じる主人公」といった物議を醸すものであり、
過激な性描写が売りの「少女コミック」的要素に、昨今一部で流行中の「寝取られ」属性を織り混ぜた高次元の不快感を産み出すことに成功している。
セーブはキャラごとに1つのみで、なおかつ一章ごとに勝手にオートセーブするという鬼畜仕様も携帯アプリ原作ならではの斬新な仕様と言える。
だが、特筆すべきは、かの国の過酷なゲーム業界事情を雄弁に物語る驚愕の販売戦略であろう。
なんと本作には攻略キャラ9人の内わずか2人分しか完全なシナリオが収録されておらず、残りは携帯で一から課金しなければならない。
「5000円の有料体験版」、「続きは携帯で!」などと揶揄されたその逞しすぎる商魂は、携帯機KOTYスレの想像を遥かに超えており、
据置機の『ラブルートゼロ』と合わせて、この一年で「乙女の国」の威光を知らしめるに十分なものであった。

そうこうしているうちにスレに12月が訪れる。
「年末には魔物が潜む」と言うが、今年も現れるのだろうか……
そんな不安を抱く住人たちの前に現れたのが、スターフィッシュ・エスディによる『どんだけスポーツ101』(「どんだけ」)である。
本作は、低得点ほど信頼と実績のあるファミ通のクロスレビューにおいて5・6・4・3の合計18点を叩きだし、発売前から刺激臭を発していた。
スポーツゲームが101種類楽しめるという触れ込みであったが、いざ蓋を開けてみると詰まっていたのはスポーツではなくクソ的な何かであり、
槍を水平に飛ばして競う「槍投げ」や、飛び込む前に出てきたマークを覚えるという謎のゲームと化した「アクロバットダイビング」など、
製作者は各スポーツのルールだけでなく地球上の物理法則すら全く知らないのではないかという異常な仕上がりになっている。
何よりも、北米で発売された本作をわざわざ選んでローカライズしたスターフィッシュの判断に「どんだけだよ!」とツッコまざるを得ない。
なお、本作を制覇した勇者による「102種目めの『どんだけスポーツ101壁投げ』は神ゲーだった」という報告もあるが、真偽は定かではない。

しかし、真の恐怖はここからであった。「年末の魔物」は全く別の場所に生まれていたのである。
アルヴィオン発売の『プーペガールDS2』(「プーペ」)。
女性向けファッションSNSの最大手「プーペガール」のDSゲーム化第二弾である。
元がSNSであるという特色はあるが、基本的にはただの「着せ替えゲーム」……本作は本来、そうなるはずであった。
だが、蓋を開けてみるといきなり、2種類のバージョン違いに応じた購入特典は実はROMではなくDS本体に依存していることが判明。
そのことを詰め寄られたメーカー側は「DS本体を2台以上用意しろ(要約)」と釈明し、不信感が広がることとなる。
肝である着せ替え部分についても、画面が乱れてグロ画像と化したり、時には拡大するだけで暗転フリーズを引き起こす有様であり、
ゲーム内の主な収入源であるはずの「ファッションショー」で報酬をもらえない、一度出場すると二度とお呼びがかからないなどという報告も噴出。
極めつけに、健気に耐えてゲームを続けたプレイヤーのソフトでも発現率100%の「時限爆弾」が爆発し、スレは阿鼻叫喚の地獄絵図となった。
そのバグとは、本作にはゲーム開始から22時間経過後のサプライズイベントとして設定されている「ボーナス」であり、
プレイヤーに対して突然、ゲーム内通貨である「リボン」が何故か「マイナス」15536個プレゼントされるのである。
この際に足りない分のリボンは強制徴収されるが、所持リボンがマイナスになるとバグで全く外出できなくなり、
自分の部屋の写真を撮ることで稼げる雀の涙ほどの収入で返済し尽くすまでほとんど何も行動できない。
これらに対する購入者の怒号は凄まじいものがあり、当初無視を決め込んでいたメーカー側も一応の対応を見せたが、
「22時間バグ」の対処として公開されたコードについては、
「入力済みですとしかでない。。入力したことねーよ」といった不具合報告が多発。
各バージョンの特典アイテムを配布する共通コードも公開したが、購入者以外も普通に入手できるようになってしまい、火に油を注いでしまった。
本スレを中心にどれほどの怒りがあったかは、有志のタレコミによって本作がネットニュースに取り上げられたことからも察することができるだろう。

さて、以上6本の入選作を発表し終えたところで2010年の大賞を発表しよう。

携帯機KOTYには「年末の魔物」と並び称されるものがある。
「夏の怪物」……日々の生活に疲れた人々が長期休暇に沸き立つ時期、その幸福を掠め取るが如く蔓延する悪夢が存在するのである。
2008年には据置機KOTYが「年末の魔物」同士で紛糾するのを尻目に、携帯機KOTYは「夏の怪物」が圧倒的な実力で大賞を奪っていった。
そして、今年もそんな運命のもとに産み落とされた一本のゲームがあった。

2010年ワールドカップ南アフリカ大会、日本代表チームの奮闘により、列島が熱狂に包まれる中、ひっそりと発売されたゲーム……
それがドラスによるPSP専用ソフト『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』(通称「鬼帝」)だ。
本作は「ハローキティといっしょ!」というのメディアミックス企画の一貫として発売された「ブロック崩し」のゲームであり、
著名な萌系イラストレーター陣が描く「キティラー(キティ好きの女の子)」達がパッケージを華やかに飾っている。
しかしながら、その内容は、とある勇者をして「まさかHELLOではなくHELL(地獄)だったとは」とまで言わしめるほど凄絶なものであった。
元来、「ブロック崩し」と言えば、誕生から30余年愛され続けている究極の「安牌」ジャンルである。
だが、本作の場合は、今までに見たことのない前衛的な解釈と、個性的過ぎるバランス調整によって「全く別の何か」へと変貌を遂げていた。
まずボールに関してだが、「ブロックに斜めにぶつかった後、垂直に落ちてくる」、「バーの端に当たると下方向に落ちる」など、
一体どのブロック崩しを参考にしたのか不明な謎の挙動がプレイヤーを苦しめる。
このため、反射のたびに超反応を要求されるが、自機であるバーの移動が異常に遅く、慣性も異様に大きいため、
「見てから」では間に合わず、経験によって体得した「予知能力」が攻略に不可欠となる。
だが、これらの挙動に加えて、「ボールを加速して反射するブロック」や「復活するブロック」などが自機の真上に設置してあることが多く、
どれだけ練習してもプレイヤーの腕だけではどうにもならない局面が多発する。
こうして最初の10分で判明する鬼畜な難度に、キティちゃんを基調としたイラストに釣られて買ったプレイヤーは大きく戸惑うこととなるが、
「HELL」は決してそこでは終わらない。
各ルートでネタ切れを起こす後半では、大量に置かれた砲台による防御不能の弾丸の雨がプレイヤーの命を狙い撃つという構成が基本となり、
「一気に壊した時の爽快感がヤミツキに!」などと謳うルートに「3回ぶつけないと壊せないブロックをガン並べしただけ」の面が鎮座する始末。
10キャラ分用意された各ルートの上級ステージに進むたび、製作者の「悪意」が徐々に顕在化していくのである。

もし本作が一般的な「難ゲー」であれば、それは練習に裏打ちされた達成感を提供するものであり、必ずしもクソゲーとは呼べないはずである。
だが、本作の異常な難度の本質は、製作者がゲームを面白くするために知恵を絞った結果のものではなく、
往々にして「プレイヤーを死なせること」だけを主眼にした、思いつきや手抜きによる《無理難題》であるのだ。
「不規則に動き回り、不規則な方向にボールを跳ね返すボスに対してボールを『50回』当てる」という要求にプレイヤーの目の前は真っ暗になるが、
一方で「バーとボールとアイテムの周囲以外見えない暗闇の中で、敵から砲撃され続ける」という、実際に目の前が真っ暗になるステージも存在する。
そして、極限状況に耐えて勝ち残ってきたプレイヤーを最後に待ち構えているのは、それまでの努力の成果を真っ向から叩き潰す「運ゲー」である。
悪名高いそのステージは「壊せない位置からの一方的な砲撃を避けながら、回転式の矢印ブロックを6つ指定された方向に揃える」というものであり、
それまで培ってきた超人的な操作に加えて、気の遠くなる回数の再試行によって幸運を掴むことでしかクリアすることができない。
その苦行の様子は、「石を積み上げては鬼に崩される作業を永遠に繰り返す」という三途の川の伝承になぞらえて「セルフ賽の河原」と称された。
あまりの暴虐ぶりから、誰ともなく本作を「ハローキティ」になぞらえて「覇王鬼帝」などと呼ぶようになったのもごく自然の流れであろう。

年末の魔物『プーペ』と、夏の怪物『鬼帝』の真っ向勝負となった今回……議論は例年になく過熱し、決着は3月まで持ち越された。
最終的に『鬼帝』を勝者たらしめたのは、クソゲーとして他に類を見ない「負の吸引力」である。
『プーペ』は凄まじいバグによってプレイヤーを苦悶させたが、それは言わば「門前払い」のような性質を持っていた。
その低すぎる完成度はゲームの進行を不可能にする類のものであり、プレイした内容よりもメーカー対応や購入者の怒りが話題の中心であった。
また、本家SNSと同じイラストレーターの手がけたアイテムは評価が高く、本作の不出来にも関わらず決して貶められてはいない。
それに対して『鬼帝』は、まず、どこまで行ってもどうしようもない「無価値」である。
苦難の末に各ルートを全面クリアすると「イラストをゲット!」などと大きく表示されるが、描き下ろしのイラストなどは一切無く、
全てが各種媒体で既に使い回されているものであり、とどめとばかりに高画質版がPlaystation Networkで50円で購入できる。
多くのクソゲーで唯一の救いとされる「BGM」でさえ、ゲーム中はたった二種類の単調なものしか聞くことが出来ない。
超絶な「難度」、製作者の「悪意」、乱数調整の「運ゲー」という、地獄の三段構えを乗り越えた先に待っているのは「虚無」なのである。
このように最初から結果が分かっているにも関わらず、本作はなぜか「やってみたい」とさえ思わせる不思議な魅力を持っており、
「どんな挑戦も受ける」と息巻いて突撃した歴戦の猛者達を拷問に引きずり込むことに成功した。
「バグ」は確かにクソ要素として重視されるべきでものはあるが、「バグがないこと」はゲームとしての長所などではなく当然の「前提」であり、
さらに言えば、『鬼帝』のように苦行を強要するゲームについては「ゲームとして問題なくプレイできること」そのものがクソ要素と成り得るのである。

以上の理由をもって、『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』を2010年携帯機版KOTYの大賞とする。
『アクエリ』、『大戦略PSP』、『大戦略DS』、『戦国』、『どんだけ』、そして『プーペ』に『鬼帝』……
奇しくも、盛況で知られる2008年据置機KOTYと同じ7作のノミネートに恵まれた年となったが、審議の混迷ぶりはそれ以上のものとなった。
これら多彩な作品の中でも、『大戦略PSP』はフリーズを超える「電源落とし」の実装によってSSαバグゲーの神髄を見せつけるものであり、
また、『プーペ』を巡る顛末は、DSの普及によって増えた女性ゲーマーの怒りと悲しみがクソゲー界に鳴り響いた象徴的な事件であった。
そして、『鬼帝』は未来永劫続く「ブロック崩し」のゲーム史において、「クソの記念碑」としていつまでも語り継がれていくことであろう。

最後に、『鬼帝』をリリースした「ドラス」と、不幸にも本作に巻き込まれたイラストレーターの方々に向けて、
次の言葉を贈ることで2010年携帯機版KOTY総評の結びとする。

「H E L L O ! K O T Y !!」