2010年 総評

2010年総評合成案2(ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!)

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総評案3をベースとしてお借りして、色々混ぜ込みました。 ここへの上書き以外はご自由にどうぞ。

※元 2010年総評案10

2010年ワールドカップ南アフリカ大会での日本代表チームの奮闘により、列島は熱狂に包まれた。
だが光あるところに闇もまたある。
前年に修羅の国からの核爆弾『戦極姫』の炎に包まれ焦土と化した携帯クソゲー界では、それでもなお荒野に芽吹く強靭な作物の如く、
突き抜けたクソゲー達が排出されようとしていた。
携帯ゲーム板クソゲーオブザイヤー2010の開幕である。


それでは早速、厳しい選考を勝ち残ってきた代表達を紹介しよう。
まず選評が届き大賞候補に躍り出たのは既に毎年恒例となった「夏の怪物」、ドラスから発売された『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』だ。
ハローキティというタイトルから女児向けのゲームと勘違いしてしまいそうだが、「ハローキティといっしょ!」とはサンリオ公式の企画で、
キティちゃんを愛する超キティラーと呼ばれるキャラクターを、大きいお友達に人気のイラストレーターに描いてもらうという趣旨のものである。
つまりこのゲームは、古豪の安牌ジャンル「ブロック崩し」と萌え絵を抱き合わせた、どちらかと言えば大人向けのゲームだ。
しかし、ただ萌え絵を見てもらうだけで良かったはずのこのゲームは、「安牌」など死語と言わんばかりに突き抜けていた。

ブロック崩しとしての挙動の問題点から見ていこう。
まずこのゲームはボールがブロックの角に当たった場合に様々な角度へ反射する、という仕様になっている。
これは物理的に異常な動きではないのだが、結果としてボールの挙動が予測困難となるため、プレーヤーは終始ボールに振り回されることになる。
またプレーヤーがゲーム内で唯一干渉できるパドルは、ボールとほぼ同速でしか操作できないばかりか慣性を持ってヌルヌル動くため、
機敏な反応やボールを追い抜き落下予測地点で止まるなど、ごく基本的な操作もなかなか思った通りにできない。
さらにはこのパドル自身も物理法則に忠実であり、パドルの端でボールを拾おうなどしようものなら容赦なく下へ弾かれミスとなる。
これらに合わせステージが原則として横長でブロックが近いため、シンプルで簡単そうなステージでさえ一瞬の油断が命取りという、シビアなゲームバランスとなる。
果たしてブロック崩しの基礎となる各要素全てがブロックを崩させまいと働く、異様な世界がここに顕現した。
…これでは「ブロック崩し」どころか「ブロック崩させない」である。

勿論この場で紹介されるからには、ブロック崩しとしての基本仕様だけでなく、特殊ブロックやステージ構成もかなり力が入った意匠となっている。
例えば、常人では反応しきれない速度でボールを跳ね返す「反射ブロック」というものが存在する。
これをただ配置するのは初歩の初歩で、パドルの至近距離に設置するなどのさりげない気遣いも忘れない。
他にも、パドルに1発当たるだけで即1ミスになる弾幕を直下に張る「攻撃ブロック」なるものも、後半のステージでは濫用されている。
ボールとパドル周辺以外が暗闇で隠され、その暗闇で砲台自身やそれが放つ弾まで隠されようものなら、もはや弾幕シューティングどころの騒ぎではない。
兎にも角にもこのような理不尽なギミックが盛り沢山で、プレイヤーを殺す気に満ち満ちている。
そして、類稀なる才能と弛まぬ努力とそれ以上の幸運を得て、数々の理不尽ギミックを掻い潜ってきた歴戦の兵は、
自分で積み上げた石を自ら崩す「セルフ賽の河原」と例えられる、地獄の最難関のステージへと辿り着く。
そのステージを制覇せんと欲するプレーヤーは、破壊できない位置にある攻撃ブロックからの一方的な砲撃を受けながら、
ボールが当たるたび回転する「矢印ブロック」6つを既定の方向に揃えるという、単純計算で1/4096の確率を引き当てるまで、延々とリトライを繰り返さねばならない。
…このゲームの趣旨はどうやら「ブロック崩し」ではなく「パドル崩し」だったようだ。

なおこのゲームは、苦しい道程を乗り越えれば萌えの楽園に辿り着けるなどという安易な妄想さえ許してはくれない。
まず、抱き合わせられた大友向けイラストは既出の物の寄せ集めで、そればかりかテキストすら一切存在しない。
ゲーム内で貰える各キャラクターのカスタムテーマも、より汎用性の高いものがPSストアにて1つ50円と絶妙な価格で、しかも本ソフトと同時にひっそり配信開始。
このように負のサポート体制のみ厚く迅速で、「ブロック崩させない」「パドル崩し」から逃れ「キャラゲー」としての価値を見出し生きる道は、周到に絶たれている。
購入してしまったプレーヤーには、ただもがき苦しみ死ぬ運命しか残されていないのだ。
…もはや笑うしかない。

一通り述べた理不尽さの一方で、本編以外のシステムの快適さやバグの無さに関しては近年KOTY稀に見る良好さを見せている。
しかしこの作り込みこそが、逆に理不尽全てが見逃しやミスではない「公認の仕様」であるという観測の裏打ちとなり、このゲームの救いのなさをより一層際立たせ、
また怖い物見たさで手を出した被害者を蟻地獄に引きずり込む一つの要因になっている、と言ってしまっても過言ではないだろう。
このような、公式サイトの謳い文句通りに非情にハードなゲーム性は多くの支持を集め、KOTYスレでは「覇王鬼帝」や「鬼帝」など素敵な愛称で呼び親しまれる事となった。


続いて届いた選評は、昨年の王者システムソフト・アルファーが放つ爆弾『現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜』。
発売自体は鬼帝よりも半年近く早いにも関わらず、バグによりシナリオが無限ループしクリア不能なため選評が遅れたという曰く付きの作品の実体は、
現代どころか云十年前で時が止まったかのような代物だった。
実際にプレイしてみると、ユニットを全く動かさなくてもクリアが可能なステージが存在する一方で、
上記無限ループバグを回避しクリアするために戦闘開始直後に即降伏する「土下座外交」が事実上必要不可欠など、
SLGの根幹を成す「戦略」がメタ的に要求されることにより、本作が軍事バランスよりもゲームとして崩壊していることが実感できる。
上記バグのみでもノミネートに足る逸材であるが、それだけでなく進行を妨げるバグを数多く搭載し、
インターフェースも劣悪で敵の思考時間がやたら長いと隙はなく、前年王者の貫禄を遺憾なく見せ付けた。


そのシステムソフト・アルファーの追撃『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』の選評が、間髪入れずKOTYスレへと届く。
この二度目のパーフェクトな爆撃は前回のそれを越える勢いの突き抜けっぷりであり、さしものKOTYスレ住人も俄かに沸き立った。
もはやお馴染みとなった泥沼のような操作性、説明も碌にない不親切なインターフェース、CPUの1勢力数分という長考は当たり前。
デバッグもまともに出来ないとあれば実機テストなどされるはずもなく、何をするにもロードが挟まる。
端的に言えば「ただプレイする」だけでストレスが募る仕様となっており、これだけでも嘆息に値する。
しかしご存知の通り、SSα波を浴びるにあたって「ただプレイしたら」などありえない仮定であり、全き杞憂である。

では当然のように存在するバグ達を、簡単にだが紹介していこう。
まずはステージをクリアしたらフリーズ。他にも敵ターンが終わったらフリーズ。部隊の戦闘が終わったらフリーズ。
果てはただボタンを押しっぱなしにしたらフリーズ。つまり、ありとあらゆる場面でフリーズする危険性がある。
また、この作品にはマイ部隊というプレイヤーオリジナル部隊を編成する機能があるのだが、
部隊が損耗したままクリアーすると現在値が最大値に上書きされたり、別の時には自国内で敵となってみたり、
そのままセーブすると取り返しが付かなかったりと、ひたすらバグの温床となっており運用するだけでトラブル続きである。
他にも自国生産設備に無名ユニットが発生してスペースを圧迫し、ましてやその無名ユニットに触れようものならPSP本体を巻き込み電源が落ちてしまう。
とにかく些細な物から進行に関わる物、心臓に悪い物までバグのオンパレードで、「ただプレイする」ことすらままならない。
そんなパーフェクトなクソが、三度同社から排泄され産声を上げたのだ。

再びKOTYの覇者となるべくシステムソフト・アルファーが送り込んで来た両大戦略は、自身のみならずプレーヤーまでパーフェクトに崩壊せしめ、
「冗談の通じないクソ」というスタイルで携帯クソゲー界の雄としての自社の座を確固たるものにした。


年末の魔物は今年もやってくる、悲しみを売り付けて儲けるために。
クリスマスも迫った12月下旬、ファミ通クロスレビューにて18点という低得点を叩き出した『どんだけスポーツ101』の選評が届いた。
海外ゲームのローカライズ版であるこの作品、テニスからカニ釣りまで101種類のスポーツを網羅したとんでもゲーム、とのことだ。
コンセプトを聞いただけで脱力してしまうが、言ってしまえば単なるミニゲームの寄せ集めである。
問題は101種類の何れも携帯アプリゲームの出来損ないレベルで、その全てが例外なく面白みに欠けるという事であった。
もちろん出来損ないであるため、スポーツの本来のルールをブン投げたり物理法則を無視してみたりなどは平然と行われ、
無理に数を押し込んだ弊害か、はたまたそれ以前の問題か、ゲーム性の欠如は当然として事実上の重複さえ目立つ。
さらには種目を選ぶインターフェースが壊滅的、ゲームルールの説明まで投げやりと来れば、全てを通り越し再び脱力させられる。
ただただつまらないだけのミニクソゲー。それがこんだけ揃ったことで、遂には大きなクソの塊となり聳え立った。


しかしその巨大なクソと同日に、それすら翳むほどの突き抜ける臭気を纏った二匹目の年末の魔物が、この世に生れ落ちていた。
女性向け着せ替えSNSの大手である「プーペガール」のDS化第二弾となる、着せ替えゲーム『プーペガールDS2』である。
前作は名前すら挙がらなかったが、今作では一気にノミネート作として名を連ね、携帯KOTY2010の大トリを飾る運びとなった。
SNSをゲーム化とは言っても、これはただ可愛い服の着せ換えで自己主張ができれば一定の評価が得られる普通の「着せ替えゲーム」としてであり、その順当な2作目…
そうなるはずだったのだが、いざ蓋を開けてみると2種類存在するバージョンの差別化不備から始まり、ROMカートリッジにも関わらずロードが頻発しもっさり感全開。
さらにはSSαにも匹敵する潤沢なバグを引っ提げ、年端も行かぬ子供から大きな女の子まで全ての購入者を纏めて無間地獄に蹴落とす、
魔物は魔物でも大魔王さながらの凶悪バグゲーへと、それは深化を遂げていた。

順を追って説明していくと、まずゲームの一種の特典とも言うべき、本家プーペガールでアイテムを入手できるパスコード。
各バージョンで異なるはずだったこれが、実はDS本体依存の共通コードであることが発覚し、両バージョン大人買いしたヘビーユーザーから最初に悲鳴が上がった。
また本作の肝である着せ替え部分は、インターフェースが不親切であるばかりでなく頻繁に画質が乱れ、
場合によっては拡大するだけでフリーズを起こすなど、不吉な気配を漂わせる。
プレイを進めると徐々にバグが頭角を顕し、ゲーム内通貨である「リボン」の主な収入源の一つであるはずのファッションショーが一度で途絶えたり、
細かいものではゲーム内時間がすっ飛ばされたり停止したり、時にはゲーム内の友達に約束をすっぽかされ進行不能に陥ることすらある。
それら多数のバグや困難を乗り越えた先に、22時間プレイのご褒美が大きな「リボンのマイナス収入」に設定されているという、極めつけの時限爆弾がある。
これで運悪く手持ちリボンが負数となってしまうと事実上の「詰み」となり、新たな服飾品を入手するなどの殆どの行動は禁じられ、
手持ちのアイテムを着せ替えすることで得るスズメの涙ほどの収入で、莫大な借金を返していかなければならなくなる。
メーカー側も重大な負数バグなどには一応の反応を見せ、機を見て公開する予定だったであろうリボンを大量に貰えるパスワードを一挙公開した。
だが、そのパスワードが環境によっては「入力済み」となってしまうという新たな不具合が露呈するなど、サポートは悉くお粗末なものと終わっている。

結局後に残されたのは、救われないクソゲーの被害者と、対応含め大きく評判を落とした開発元アルヴィオン、
そのとばっちりを喰らった本家プーペガールと、あとは不幸な生まれのこのゲーム自身のみ。
この中に真に得をしたものは一人もおらず、このゲームが阿鼻叫喚の地獄を作り出す一際凶悪なクソであったことに、もはや疑う余地もないだろう。


以上5本の作品、『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』、『現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜』、
『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』、『どんだけスポーツ101』、『プーペガールDS2』らがクソゲー頂上決戦へ出場する代表選手に選ばれた。
最後まで名前が挙がりつつ、惜しくも選考から漏れた『ゲームブックDS アクエリアンエイジ Perpetual Period』、
『天下一★戦国LOVERS DS』の両者らも、子細は省くがこの年に生まれなければ大賞を狙えたかもしれない力を持っていた。
ここで大賞を決定する前に、彼らを含む全七候補に惜しみない賛辞と罵声を送りたいと思う。

さて本年はどの作品も、それぞれが違うベクトルに突き抜けているため丙丁付け難く、大賞選出は非常に混迷を極めた。
中でも、
一切のバグなしに存在価値全てをクラッシュたらしめることに成功した『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』、
数多のバグと救いようのないUIでプレーヤーを打ち破り君臨した『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』、
2つあるバージョンに避け難いバグと粗末な対応を以ってこの世の地獄を顕現させた『プーペガールDS2』、
これらスリートップは最後の最後、それすら超えて延長戦の中でも互角と言える戦いを繰り広げた。
果たして、度重なる議論の末に大賞へ選ばれたのは『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』である。

ブロック崩しは、ビデオゲーム黎明期から既に確立されている有数の歴史を持つ定番ジャンルと言え、今やフリーゲームとしてすら飽和状態である。
高度な設計やプログラムを要求せず、更には制作のノウハウも蓄積されているため、ただ調整さえ間違わなければそれなりの形になるという、
まさに王道の「安牌」ジャンルである。
その「安牌」を、バグの一つもなしに「究極のテクニック」と「至高の幸運」を同時に要求する凶悪無比なクソゲーへと転落させた点が、
まず他作品よりも頭一つ抜けていると判断された。
それと合わせて評価され大賞に選ばれる決め手となったのは、この作品が持つどうしようもない「無価値、負価値性」だ。
「ブロック崩しのような何か」、「メタ戦略ゲーム」、「着せ替えゲームもどき」とでも言うべき、一見全て無価値どころか浪費する時間の分だけ負価値な各候補だが、
『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』は、実在兵器による「燃え」やマップエディタ&兵器エディタを用いた箱庭ゲームに、
『プーペガールDS2』は、「本家SNS用アイテム」のオマケや僅かな手持ちアイテム内での着せ替えツールとして、
様々な事象を諦めることにより、それぞれ僅かながら存在価値を見出すことができる。
しかし『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』については、先述のように「ブロック崩し」として、そして「キャラゲー」としてすら、
ブロックの代わりとばかりに破壊しつくされており、他を暗黒星雲と例えるなら、さながら光すら飲み込むブラックホールのような有様である。
またこれだけの惨状を呈していながら、他の候補と違い見るものに後味の悪さどころかある種の爽やかな笑いすら提供できる、という点も無視できない。
こうして、僅差の中の延長戦にてまさかのハットトリックを決めた『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』が年間MVP…もとい、大賞へと選定された。

振り返ってみれば、実力伯仲でハイレベルであった本年のクソゲーオブザイヤー。
ゲーム市場の主流が携帯ゲーム機に移ったと言われるようになって久しいが、それを象徴するような百火繚乱の様相を呈した。
最後に、長く続くブロック崩しゲームの歴史に「ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!」というひときわ突き抜けた金字糞を打ち立てたドラスへ、
この言葉を贈ってクソゲーオブイヤー2010を締め括りたい。

"Hello!KOTY!"

★ 2010年総評合成案3(ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!)

合成宣言1号 ◆/b0/O7.WTE

クソゲーオブザイヤー(KOTY)……。
それは、不幸にもこの世に生まれてしまったクソゲーの頂点を決める悪夢の祭典である。
2009年、新鋭フリューの「三銃士」と、修羅の国からの黒船『戦極姫』によって蹂躙された携帯ゲーム機版KOTYスレであったが、
2010年もまた、荒野に芽吹く強靭な作物のように、彩り豊かなクソゲーが跳梁跋扈することと相成った。
今ここに、史上稀に見る熱戦となった2010年携帯ゲーム機版KOTYのあらましを著すこととする。

まず先鋒が名乗りを上げたのは2月。
ブロッコリーの『ゲームブックDS アクエリアンエイジ Perpetual Period』(「アクエリ」)である。
「アクエリアンエイジ」は息の長い美少女系トレーディングカードゲームだが、メディアミックスの迷走にも定評があり、
本作においても「ゲームブックを名乗りながら実際は単なるADV」という、『頭脳戦艦ガル』も顔負けのジャンル詐称をかましている。
内容面に関しても、ヒロイン6人中3人の声と文章が最後までズレているなど、本当にテストプレイを行ったのか疑わせる崩壊ぶりであったが、
最終的にCGモードを閲覧するだけでセーブ&ロードができなくなるバグが発覚し、疑惑は確信へと変わった。
後日談だが、唯一の存在意義であった初回限定特典が一般販売されることになり、購入者の心にもピリオドが打たれてしまったという。

それに続いて突如、戦時中さながらの空襲警報がスレに鳴り響くことになる。
前年王者システムソフトアルファー(SSα)による『大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜』(「大戦略PSP」)の襲来である。
本作は前年の『戦極姫』同様、もともとPCゲームとして出ていたシリーズをPSPに移植したものだが、
悲しいことに崩壊のレベルまでもが全く同様であった。
説明不足で意味不明なUIや、敵AIの思考時間の異常な長さは、もはや「SSαではよくあること」だが、
よもやカーソルを動かすだけでロードの嵐、キーレスポンスにすらラグが発生する事態になるとは誰が予想できたであろうか。
このように「ただプレイする」だけでストレスが募る本作であるが、ありとあらゆるタイミングで発生。
プレイヤーが自由に編成できる「マイ部隊」という機能は、いざ使ってみるとなぜか敵側に配置されていたり、
自国生産設備に突然名無しのユニットが現れ、うっかり選択すると問答無用でPSPの電源が落ちるなど、数多のバグの温床となっている。
あのSSαが「PERFECT」という名を与えただけのことはあり、上半期最後にして最大の爆撃によりスレは臨戦態勢に入ることとなった。

この『大戦略PSP』に触発される形で、3月に発見されていた不発弾にようやく解体班が着手する運びとなった。
同じくSSαから発売された、『現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜』(「大戦略DS」)。
「メインシナリオが無限ループする」というバグが原因でスレ住人が一人もクリアできず、選評が遅れたという曰く付きの作品である。
このバグを防ぐには開戦後即降伏を繰り返すという「土下座外交」を余儀なくされるが、素のシナリオも惨憺たるものであり、
隙あらば全面戦争に突入し、味方軍の圧倒的な戦力差ゆえ何も操作しなくても勝利可能という始末。
それに加えてもはや暗号解読の域に達したUIや、DSに移植したことで深刻化した敵AIの長考も、プレイヤーの苛つきに拍車をかける。
「一触即発」なのはどう考えても購入者の心理状態であり、
「軍事バランス」以前にゲームそのものが完全に崩壊していたのは言うまでもあるまい。

2010年も終盤に差し掛かった10月。
前年の「修羅の国」の瘴気に誘われたのか、今回は「乙女の国」からの刺客が現れた。
ロケットカンパニーによる女性向け恋愛AVG『天下一★戦国LOVERS DS』(「戦国」)である。
本作は女性向け恋愛AVG(乙女ゲー)に歴史要素を足した、同名の携帯アプリのDS移植版である。
シナリオは乙女ゲーの中でもひときわ異彩を放っており、三択で「夜伽」「夜伽」「夜伽」とだけ書かれた豪快な選択肢や、
「主人公を家臣に抱かせた後、いきなり略奪愛に走る主君と、それにあっさり応じる主人公」という超展開は物議を醸すこととなった。
だが、特筆すべきは、かの国の過酷なゲーム業界事情を雄弁に物語る驚愕の販売戦略であろう。
なんと本作には攻略キャラ9人の内わずか2人分しか完全なシナリオが収録されておらず、
残りに関しては携帯アプリ版で一つずつ最初の章から有料ダウンロードしなければ読むことができないのである。
そのたくましすぎる商魂は「5000円の有料体験版」、「続きは携帯で!」などといったキャッチコピーで賞賛された。

そうこうしているうちに、スレに12月が訪れる。
「年末には魔物が潜む」と言うが、今年も現れるのだろうか……
そんな不安を抱く住人たちの前に現れたのが、スターフィッシュ・エスディの『どんだけスポーツ101』(「どんだけ」)である。
本作は「スポーツゲームが101種類楽しめる」という触れ込みであったが、
低得点ほど信頼と実績があると評判の「ファミ通クロスレビュー」で5・6・4・3の合計18点を叩きだし、発売前から刺激臭を発していた。
いざ蓋を開けてみると、やはり詰まっていたのはスポーツではなくクソ的な何かであり、
槍を水平に飛ばして競う「槍投げ」や、飛び込む前に出てきたマークを覚える謎の競技と化した「アクロバットダイビング」など、
各スポーツのルールだけでなく地球上の物理法則すら感じさせない異常な仕上がりになっていた。
本作を制覇した勇者による「102種目めの『どんだけスポーツ101壁投げ』は神ゲーだった」という総括が全てを物語っていると言えよう。

だが、真の恐怖はここからであった。
「年末の魔物」は『どんだけ』ではなく、同じ日に生まれた全く別の作品だったのである。
その正体はアルヴィオン発売の『プーペガール DS2』(「プーペ」)。
2色のバージョンに分けて販売された本作は、アバターを「着せかえ」して楽しむ同名の女性向けSNSをゲーム化したものである。
だが、各色によって違うはずの「特典アイテム」がソフトではなくDS本体のみに依存していることが発売直後に発覚。
そのことを詰め寄られたメーカー側は「DS本体を2台以上用意しろ(要約)」と釈明し、出だしからきな臭い空気が流れていた。
肝である着せかえ部分についても、画面が乱れてグロ画像と化したり、拡大機能を使うだけで暗転フリーズする有様であり、
「ファッションショー」に出ても報酬がもらえない、一度出ると二度とお呼びがかからないなどといった不具合報告が噴出。
極めつけに購入者を阿鼻叫喚の渦に陥れたのが、発動率100%の「時限爆弾」である。
その爆弾とは、ゲーム開始から22時間経過後のサプライズイベントとして設定されている「ボーナス」であり、
プレイヤーに対して突然、ゲーム内通貨である「リボン」が何故か「マイナス」15536個プレゼントされるのである。
この際に足りない分のリボンは強制徴収されるが、所持リボンがマイナスになるとバグで外に出ることができなくなり、
自分の部屋で写真を撮ることで稼げる雀の涙ほどの収入でマイナス分を返済し尽くすまでほとんど何も行動できない。
これらに対する購入者の怒号は凄まじいものがあり、当初無視を決め込んでいたメーカー側も一応の対応を見せたが、
「22時間」バグの対処として公開されたコードについては、「入力済みとしかでない」といった報告が多発。
前述の特典アイテムについても最初に出した声明を撤回し、取れなかった方を無償で配布するコードを公開したが、
今度は購入者以外も特典を普通に入手できるという前代未聞の珍事を巻き起こし、火に油を注いでしまった。
本スレ有志のタレコミによって本作がネットニュースに取り上げられたことからも、購入者の怒りの程を察することができるだろう。

さて、実はまだ一本だけ、ここまでに紹介していない夏の作品がある。
携帯機KOTYには「年末の魔物」と並び称されるものがある。
その名も「夏の怪物」……人々が長期休暇に沸き立つ時期、その幸福をかすめ取るべく暗躍するおぞましい悪夢である。
そして、今年もそんな運命のもとに産み落とされた一本のゲームが、「年末の魔物」を迎え討つべく既に君臨していたのであった。

2010年ワールドカップ南アフリカ大会に列島が熱狂に包まれる中、ひっそりと発売されたゲーム……
それがドラスによるPSP専用ソフト『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』(「鬼帝」)だ。
本作は「ハローキティといっしょ!」というメディアミックス企画の一貫として発売された「ブロック崩し」のゲームであり、
著名な萌系イラストレーター陣が描く10人の「キティラー(キティ好きの女の子)」達が所狭しとパッケージに描かれている。
しかしながら、その内容は、「まさかHELLOではなくHELL(地獄)だったとは」と評されるほど凄絶なものであった。
まずボールに関してだが、「ブロックに斜めにぶつかった後、垂直に落ちてくる」、「バーの端に当たると下方向に落ちる」など、
三十年以上親しまれてきたブロック崩しの常識を覆す予測不能な挙動がプレイヤーを苦しめる。
また、自機であるバーの移動が異常に遅く、思い通りに動かせないため、ボールの反射を「見てから」では間に合わない。
本作独自の変態挙動を第六感で予知できるようにならなければ攻略のスタートラインに立つこともできないのである。
だが、どれだけ練習してもプレイヤーの腕だけではどうにもならない局面が多発するのがこのゲームの特徴である。
ステージ構成を見ても「ボールを加速して反射するブロック」や「復活するブロック」などの罠が自機の真上に設置してあり、
各ルートでネタ切れを起こす後半では、大量に発射される防御不能の砲弾がプレイヤーの命を狙い撃つのが基本となる。
ここまで来ると、プレイヤーは「HELL」の真実に気付くことになるだろう。
一般的に「難ゲー」と呼ばれるものは、技量や知識に裏打ちされた達成感を提供するものであり、必ずしもクソゲーとは呼べない。
だが、本作の異常な難度の本質は、製作者がゲームを面白くするために知恵を絞った結果のものではなく、
往々にして「プレイヤーを死なせること」だけを主眼にした、剥き出しの悪意と手抜きによる《無理難題》であるのだ。
例えば、「一気に壊した時の爽快感がヤミツキに!」と謳うルートの面が
「3回ぶつけないと壊せないブロックをガン並べしただけ」の嫌がらせのような構成であったり、
別ルートでは、不規則に動き回り不規則に球を反射するボスに「ボールを『50回』当てろ」という要求をされたりといった具合だ。
そして、そんな理不尽に耐えてきたプレイヤーを最後に待ち構えているのは、さらなる理不尽でしかない「運ゲー」である。
悪名高いそのステージは、砲撃の雨を避けながら「当てるたびに90度回転する6つの矢印ブロック」を指定の方向に揃えるというものであり、
それまで培ってきた超人的な操作感覚に加えて、気の遠くなるリトライ回数で幸運を掴むことでしかクリアできない。
予測困難な挙動もあり、揃えた矢印を自ら崩してしまう苦行が終わりなく続くその様は「セルフ賽の河原」と称された。
あまりの邪智暴虐ぶりから、誰ともなく本作を「ハローキティ」ならぬ「覇王鬼帝」と呼ぶようになったのもごく自然のことであろう。

さて、以上7つのノミネート作品を紹介し終えたところで、大賞を発表しよう。
まず初めに候補は3つに絞られたと言えるだろう。
前年覇者SSαの申し子『大戦略PSP』、年末の魔物『プーペ』、それに夏の怪物『鬼帝』である。
いずれも例年であれば圧倒的な力で勝利を手にしたであろう超大作が激突し、三つ巴の大決戦となった。
3月まで決着が付かず、爆発寸前まで過熱したこのレッドゾーンの死闘を制し、見事大賞に輝いた作品……
それは──『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』である。

本作を勝者たらしめたのは、「クソゲーとしての完成度」である。
クソゲーなのに完成度が高いとはこれ如何に、と思われるかも知れないが、
一見相反するこの二つの性質は、ある特異な状況においては両立しうる。
それは「製作者が仕様通りに完成させたゲームがクソゲーであった時」である。
思い起こせば2010年は、製作者ですらプレイしていないのではないかと思わせるバグゲーが量産された。
中でも『大戦略PSP』は、あまりのバグの数によって早々にキャンペーンのクリアは不可能と断言されており、
『プーペ』はと言えば、本スレにも「遊べないからゲームの話題をしようがない」と書き込まれる状態であった。
だが、『鬼帝』の場合、これといったバグが存在せず、決められた仕様の範囲では完成していると評価せざるを得ない。
他二作とは逆に、製作陣が「ゲームの内容を把握した上で敢えて今のように作った」という疑いが強いのである。
また、クソゲーというものは元来、制作期間や予算の不足による不本意な結果
どんなクソゲーにおいても基本的に、製作者が当初盛り込もうとした魅力程度には見出されるものである。
例えば、『大戦略PSP』の場合、実在の兵器が登場したり、マップ編集機能など戦略SLGの基本部分は押さえており、
移植元の「大戦略」シリーズの面白さを部分的に体感することができると言えるだろう。
『プーペ』もまた、前述のようにアイテムのデザイン自体は評価の対象となっており、
さらに言えば特典コードとは別に、本家SNSで使えるコードもゲーム中で取得できる。
一方、『鬼帝』に関してはそうした肯定的に評価できる点を見つけることは困難である。
本作を飾っている萌えキャラ勢は一見このゲームならではの魅力であるように思えるが、
その実、豪華イラストレーター達のいたいけなファンを釣り上げるための「疑似餌」でしかない。
「超絶難度」、「製作者の悪意」、「運ゲー」という地獄の三段構えのゲーム内容については前述した通りだが、
それを超えたプレイヤーを待っている「ご褒美」は、全てが既に各種媒体で使い回されているイラストであり、
とどめとばかりに高画質版がPlaystation Networkで50円で全て購入することができる。
これではクリアした瞬間にそれが壮大な徒労であったと宣告されるようなものであろう。
このように、本作はプレイヤーに無理難題を押し付け、理不尽に耐えてクリアしたプレイヤーさえも最後に脱力させてしまう。
さて、このようなゲームを我々はどこかで見たことがあるはずではなかろうか。
80年代を代表するクソゲーとして知られるあの伝説の怪作……そう、『たけしの挑戦状』である。
思えば『鬼帝』は、クリアしても虚無と絶望しか得られないことが早い段階で報告されていたのにも関わらず、
クソゲーハンター達を惹きつける「負の吸引力」を持っており、多くの猛者を拷問の渦へと誘いこむことに成功した。
それもひとえに本作が一種の製作者からの「挑戦状」だからこそ、彼らの冒険心をくすぐったのであろう。
むろん、クソゲーとして吸引力があったからと言ってゲーム自体が楽しいわけでは一片もなく、
本作のようにクリア達成者から異口同音に「クソゲー」と罵倒された作品はそう多くあるまい。
『鬼帝』は、四半世紀の時を経て現代に転生したクソゲー愛好家たちへの「挑戦状」であったのである。

2010年も様々なクソゲーが産み落とされた年であった。
『アクエリ』、『大戦略PSP』、『大戦略DS』、『戦国』、『どんだけ』、そして『プーペ』に『鬼帝』……
奇しくも、盛況で知られる2008年据置機KOTYと同じ7作のノミネートに恵まれた年となったが、審議の混迷ぶりはそれ以上のものとなった。
これらの個性豊かな作品の中でも特に、『大戦略PSP』は前年を制したSSαバグゲーの神髄を見せつけるものであり、
また、『プーペ』を巡る顛末は、DSの普及によって増えた女性ゲーマーの怒りと悲しみがクソゲー界に鳴り響く象徴的な事件となった。
そして、『鬼帝』は未来永劫続く「ブロック崩し」のゲーム史に燦然と輝く「クソの記念碑」としていつまでも語り継がれてゆくことであろう。

最後に、『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!』をリリースした「ドラス」と、
不幸にも本作に巻き込まれてしまった人気イラストレーターの方々に向けて、
次の言葉を贈ることで2010年携帯機版KOTY総評の結びとする。

「H E L L O ! K O T Y !!」