2010年総評案1(ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!)

昨年は今年の据え置き機クソゲートレンドを先取りしたかのごとく薄いゲームが乱立する中、
PCゲーム界からのバグだらけ凶悪作品、「戦極姫」が据え置き携帯ともに大賞に輝いた。
今年はいったい、どんなジャンルのクソゲーが出てくるのだろうか・・・。
そんな期待混じりの不安は、3月の初めあたりから不安が現実となっていく。


3月11日、1本目は思わぬところからやってきた。
DS「RPGツクールDS」である。
このゲームは誰でも手軽に自分オリジナルのRPGを作れる、というのが人気のシリーズである。
実にコンシューマー機では6年ぶりの登場となった。
しかしその6年の間、何があったのだろうか、帰ってきたツクールは散々な出来となっていた。

まず仕様。
魔法に属性という概念が存在しなかったり、敵に状態異常に対しての耐性を作れなかったり、
更には魔法攻撃力、防御力すらない。効く、効かないも当然使えない。
ステータスが上下するイベント、アイテムも作れない。
この段階でRPGの基礎中の基礎が失われているような気もするが、問題は容量にもある。
6年前に発売されたGBA版の実質半分の容量しか使えない。
ダウンロードプレイ用のRPGを作るなら、町1個、ダンジョン1個で容量は枯渇する。
こんな時代にスーファミレベルにも満たない容量のゲームを作らされるハメとなる。
素材のクオリティは非常に高いのだが、全く生かせない容量では、それも意味を成さない。

バグも多い。
とにかく数あり、説明しづらいものもあるので詳しくは割愛するが、中には再現性100%のものや危険なものまである。

これでは思い通りのRPGが作れない、期待はずれかつタイトルに反するクソゲーであった。

そこから3ヶ月後の6月24日、昨年の覇者、システムソフト・アルファーがまたしてもクソゲーを放り込んでくる。
PSP「大戦略PERFECT〜戦場の覇者〜」である。
このゲーム、キーレスポンスが悪い、敵の思考が長い、グラフィックが重い、システムが全体的に不親切など、
この段階でパーフェクトにクソな要素しか存在していないわけだが、バグの多さもパーフェクトであった。

マイ部隊というオリジナル部隊を編成して使用できるのだが、敵として出てきたり、ほぼ使えない状態となっている。
また、あらゆるタイミングでフリーズするため、キャンペーンはほぼクリア不可能となってしまっている。
極めつけは、謎の名無し部隊が出現し、それを調べるとPSP自体の電源が落ちてしまう、恐怖のバグ。
まさに(特に最後のものは)パーフェクトなバグの山と言ってもいいだろう。

このゲームを機に、もうひとつの大戦略が日の目を浴びる。
2月25日発売のDS「現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜」である。
発売当初も話題となっていたが、7月以降になりもう一度話題となった。
名のとおり一触即発・ゲームバランス崩壊のバグだらけで、相変わらず操作性やシステムも最悪である。
当然のごとく相手の思考時間はPSP以上である。

フリーズやバグも当然のように完備しており、ストレスしかたまらないゲーム仕様だ。

更に、ルート分岐判定が分岐後にもう一度行われるため、無限ループに突入してしまい、クリアできなくなってしまう。
このエンドレスエイト状態を抜け出すには、降伏(通称土下座外交)を行い友好度を調節することが必要不可欠なものになってしまっている。
そこまで現代を再現する必要があったのだろうか。

この2本は、システムソフトアルファーが何ら改善されてないことを知らしめる2本であった。
なお、昨年KOTY大賞戦極姫の続編戦極姫2PSP版は、バグが殆ど治っており、足掛け3年でようやく遊べる普通のゲームになったことを追記しておく。


このあたりで選評が届き、注目を浴びたのがもう一つの2月25日発売DS「ゲームブックDS アクエリアンエイジ Perpetual Period」。
こちらはトレーディングカードが元になっており、これがゲーム化されたものだ。
もともとゲームブック自体前2作が非常に不評だったのだが、3作目となる今作はそれ以上に酷い出来となっていた。

そもそもこのゲーム、もはやゲームブックではない。文章を読み進めていく、ノベルゲーのようなものだ。
しかもそのノベルゲー部分のシステムですら10年前のレベルと評される始末。
バグも酷く、いないはずのキャラの立ち絵が表示されたり、立ち絵同士干渉して表示がおかしくなったりする。
ヒロイン6人中3人には、声と文章の同期が取れていない、いわゆる音ズレが発生する。
しかも最後まで直らない。

最終的にプロモーションカードのオマケ扱いされる始末だったが、そのカードも一般販売されることになり、
完全におまけですら無くなってしまった作品であった。


7月15日。
携帯機KOTYは夏にもクソゲーの登場が多いが、今年はとてつもないものがやってくることとなる。
PSP「ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!!」である。
いわゆるブロック崩しでバグもなく、ロードも速くシステム面は完ぺきだ。
ただこのゲームのクソな点、それは「理不尽さ」に凝縮されていた。

まずボールの挙動がおかしい。
パドルの端に当たると下に跳ね返っていくボール、ブロックに斜めにぶつかると真下に下りてくるボール。
またパドル移動によるボールの方向調整は困難を極める。
これらの点は絶妙なパドルの遅さと相まって、非道なまでに理不尽さを醸し出している。

そしてこのゲーム、ステージがとにかく理不尽なのだ。
前半はまだ普通のブロック崩し。後半は気が狂ったブロック崩し(なのかどうかも甚だ疑問だが)になっている。
ブロック崩しなのに砲台(破壊不能なブロックに守られてる)から大量の弾が降ってきたり、動きまわるターゲット(球を撃つ)に50発ボールを当てたり、
暗闇の中砲台(破壊不能なブロックに守られてる)から弾が降ってきたり。
極めつけは当たると方向が変わる矢印ブロック6つをすべて一定の方向に揃える、というもの。
砲台(破壊不能なブロックに守られてる)も完備されており、先述の挙動と相まって理不尽さは極限値に。
「完全に運ゲー」と言われることもあるが、運だけではない。
最高のテクニックと完璧なまでの運、これが揃わないとクリア出来ないのだ。
果てには有用アイテムが出るまでリセットというブロック崩しに似つかわしくない乱数調整まがいのことをさせられることも。
なお、当然アイテムにはマイナスアイテムも含まれており、取ってしまうとほぼ1ミス確定である。
ちなみに先述の矢印ブロックを揃えるステージではアイテムは一切出現しない。

この地獄を抜けたものに対するご褒美、すなわちスタッフロールなど存在しない。
イラストも全部発表済みのものであるので、楽しみもない。キャラゲーとしての価値は一切無いと言ってもいい。

ここに来て、まさかの「超難易度理不尽ゲー」が名乗りをあげた今年のKOTY。
ここからスレは一時的に休戦状態にはいる。

3ヶ月たち10月になり、にわかに話題となったのは10月7日発売、DS「天下一★戦国LOVERS DS」である。
こちらは携帯ゲームからの移植であるが、なんと5040円のフルプライスでありながらDS版は携帯版の体験版であったのだ。

話がラストまで収録されているのは9人中2人のみ。他は携帯で一から納金しなければならない。
恋愛ADVなのに、ロードという概念が存在しない、スキップが遅い、オートセーブというADVのシステムを覆しかねないシステム。
シナリオも微妙であり、いつ主人公を好きになったかが殆ど語られなかったり、寝取られたり、ボイスが少なかったり。

まさに続きはWebでならぬ続きは携帯版で、であり、それなのに5040円というフルプライス価格はもはや薄いを通り越し悪質であった。

12月。
今年は据え置き機に年末の魔物は襲来しなかった。
しかし、携帯機には年末の魔物がさも当然のごとく今年も襲来してきたのである。

12月16日に2本のゲームが発売された。
まずはDS「どんだけスポーツ101」である。
これはDSで101種類のスポーツが楽しめるという、なんだかテーマだけでにわかに地雷臭を漂わせる作品であった。
ファミ通レビューも18点、しかもレビュアーの一人が3点をつけた。

まず101種類のスポーツだが、どマイナーな種目も多数ある。そりゃあ101種目もあるのだから当然といえば当然だが。
しかしそのマイナースポーツの数々に説明が殆ど無い。説明になっていない説明もある。
操作方法も被りが多数生じており、やりごたえもない。
ルールや物理法則無視まである始末だ。そもそもの競技内容が違うものまである。

101個ものスポーツ、全てがつまらないゲームであり、0を101個合わせても所詮は0であることを証明してくれた。

もうひとつはDS「プーペガールDS2」である。
こちらは昨年1作目が発売されたが、こちらはただの作業ゲーであった。
しかし今作は作業にバグを引っさげて登場してきたのである。
なお、こちらは2種類のバージョン違いがあり、入手アイテムに違いがあるのだが、両方買っても入手できるのはどちらか一方なのであしからず。

まず地味にロードが長く、画像も頻繁に乱れる。地味に操作性も悪い。
きせかえ画面で顔が潰れてホラーゲームもびっくりのグロ画像になることも。

このゲームはお金=リボンを集めて、服を買ってコーディネートするゲームなのだが、
リボンがもらえるはずのファッションショーに出てもリボンがもらえない。その後は開催すらされない。
このせいで後半は上昇し続ける物価に対して収入が見合わず、ひもじい生活を強いられることになる。


極めつけはプレイ22時間後に起こる。
ある日突然、リボンが減っているのだ。減るリボン数は15536リボン。
マイナスになるとゲームが進行不可能になってしまう。
再現性100%、まさに恐怖のバグである。
解決策として公式からリボンがもらえるコードが配布されているが、使えないという報告もある。


このゲームは発売時期と相まって、何も悪くないお子様や女の子を巻き込んだ。


今年はノミネート8作品という、昨年よりも多い大波乱となった携帯機KOTY。
しかも「バグ」「高難度」「糞仕様」「理不尽」「薄い」といった、様々なジャンルのクソゲーが登場した。

それでは今年の大賞を発表しよう。
大賞は、「ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!!」である。
受賞理由としては、高難易度かつ理不尽という、悪意しか感じないステージ構成の1点に凝縮される。
他高難易度ゲームと違い、バランスがなっておらず、理不尽さによる高難易度であることも大きい。
この一点のみでクソゲーの頂点に君臨する、それほどまでに理不尽なのだ。
他にも2本の大戦略、プーペガールDS2による四つ巴の戦いが繰り広げられたが、
どれもベクトルが違う最大限のクソという中、バグもないのに難易度という1点のみでプレイヤーの意欲を完全に削ぎ落とす姿勢が評価された。
無論、次点7本も最高峰のクソゲーであることは言うまでもない。

今年は、夏の魔物と年末の魔物両方が襲来した年となった。
来年こそは、魔物及びクソゲーが登場しないことを祈りたい。
また、2月にはニンテンドー3DSが発売される。
こちらから、新機軸のクソゲーが登場しないことをこれもまた祈りたい。

最後に、発売元のドラスに、言葉を添えて、今年のKOTYを締めくくることとする。

「ブロックの前に、プレイヤーのハートをクラッシュさせて、どうするんですか?」

2010年総評案2(プーペガールDS2)

2009年に訪れたエロゲーからの黒船「戦極姫(システムソフト・アルファー)」によって
持たされた混乱も冷めやまぬ2010年はまさに幕末の様相を呈していた。

まず、2009年大賞決定の直後現れたのは「現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜
(システムソフト・アルファー)」である。

またSSαかと、突っ込みが入りまくった本作だが、UI及びシステムが不親切極まりなく検証は困難を極めた。
揚陸艦から港以外の陸地に部隊を揚陸させる方法が分かるまで、数カ月もの時間を要したという事実一つとっても、どれだけ不親切か分かるだろう。
そのほか、同じマスに入っている部隊は必ず一番上の部隊のみ表示されるため、カーソルを合わせないと下にどんな部隊がいるのか分からない。
マップ上で見ることができる簡易ユニットデータでは、武装の射程・弾数・タイプしか分からずどれに何が効くか丸暗記するしかない。
そのタイプすら「全E」等意味不明なものが多く、軍事関係に詳しい人間でも意味が分からず首をひねるありさまだった。
また、空母から艦載機を出撃させるには港に止まっていなければならなかったり、ソートした後に選択するとソート前にそこにあった部隊が選択されたり、特定条件の補充でフリーズしたりする。
そうでなくてもAIが遅すぎスタート直後は1陣営1分前後かかり、最大5陣営5分かかる。

加えて「崩壊しているのは、軍事バランスではなくて、作った奴の精神だ」と言いたくなるシステムは、シナリオまで浸食していた。
シナリオ中のいくつかに分岐チェックがあるが、その分岐条件を満たすと、分岐シナリオに突入する。
問題なのは、分岐シナリオ開始後にも分岐チェックがあり、ちゃんとシナリオをこなしていると再びチェックで分岐シナリオの頭に戻り、延々同じシナリオを繰り返させられるのだ。
それを回避するには、分岐後にすべてのフラグを回避するために友好度を下げるしかない。
つまりそれは戦闘開始した直後に降伏して負けまくることである。
「土下座外交」と呼ばれたこの戦略でしかクリアできない。戦略シミュレーションをやって
いるのに戦ったらクリアできないなんてバカな話があるだろうか。

このほか、一部の勢力はほうっておいても勝てる。
ゲームとしての根本から成立していないとしか言いようがない。

そして間髪入れず6月に「大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜(システムソフト・アルファー)」が投入される。
もう、いい加減にしてくれという叫びも届かず、再びSSαの大戦略である。

カーソルの移動にすらローディングが入り、小窓で確認するのも億劫という、情報の多いシミュレーションゲームでは致命的なUI。いつでもどこでも起こるフリーズ。
1勢力数分という思考時間の遅さ完備というSSα仕様をパーフェクトに進化させた作品だ。
戦闘機などの大きなカテゴライズで一緒ならアイコンも一緒という仕様は敵味方入り混じると状況判断すら困難になる。
また、大量のバグも完備。
特に本作の特徴である好きなユニットを集めてを編成し、オリジナル部隊として各マップを転戦して鍛えていける「マイ部隊」は、自軍として設置したはずなのに敵として出てくる時がある。
もしそれが首都で、マイ部隊が占領可能だったら、戦闘フェイズはもう終了しているので次の瞬間に首都が陥落してしまい負けてしまうこともあり得る。
突然現れる謎の部隊は敵化したマイ部隊だけではない。味方の生産施設に名無しの部隊が配置されることもある。
これもトラップで、何だろうと確認した瞬間にゲームが落ちる地雷部隊なのだ。選択したら落ちるので、攻撃して排除することもできず指をくわえてみているしかない。

また、クリア時一部隊内の残ユニット数が次のユニット上限になるというバグも存在する。
つまり、最初最大ユニット数が10の部隊が残ユニット数1の状態でクリアすると、次のマップの最大ユニット数は1になってしまうというバグがあり、敵首都目前で回復タイムに入るというよくわからない戦略を要求される。

回復して、首都を落としても安心はできない。
ステージクリア時に持ち越せる部隊は100部隊までなのだ。しかも、ソート機能などというものは搭載されていないうえ、一度選ぶとキャンセルできない。間違った部隊を選択したら最後、苦労して育てた精鋭部隊を捨てなければならないわけだ。
基本的に高難易度だが、マップモードでは兵器カスタムでゲームバランス無視の超兵器を生産でき、キャンペーンモードではプレイヤー変更という機能を使うと敵側と味方側入れ変えてプレイできる。
もはや敵と戦ってるのか仕様と戦っているのか己と戦っているのか分からなくなる怪作である。

以上の二つは、シミュレーションというカテゴリと説明不足もあり、実際の兵器を知ってないと分からないところなどバグか仕様か分からないところも多く現時点でも問題を洗い出せたとは言えない。
また、SSαにクソゲー界は席巻されるのか。
そんな流れに反発するように、7月にシンプル方向に特化したゲームが発売される。
「ハローキティといっしょ! ブロッククラッシュ123!!(ドラス)」だ。

ハローキティと聞いて女児向けかと思いきや、大きなお友達向きなイラストレーターにキティラーを描かせたという、どちらかといえばオタク向けな作品で、ゲームジャンルとしてはブロック崩しに分類される。

このゲームにはバグらしいバグは現時点では見つかっていない。
一部、バーやブロック、そして敵に当たった球がとんでもない角度で落ちてくることがあるが、角に当たった時の挙動としては許せないわけではない。

しかし、それらが許せなくなるほど難易度が高いとしたらどうだろう。
バーの移動速度が遅く慣性がついているために、これらのイレギュラーに対処できないのだ。
そして、悪意に満ちた面構成。前半はそうでもないが、後半は作者の悪意が見えてくる。ひたすら小さなブロックが敷き詰められていたり、硬いブロックをバーの目の前に並んでいるなんて当たり前。
砲弾が飛び交う中、動き回る敵に50発当てろとか、砲弾の間隔が自機のサイズより狭い面、一度当たると回転するブロック6個を指定された向きに揃える面、暗闇の中で弾幕をよけながらブロック崩し(もちろん敵弾は暗闇の中では光らない)等の鬼畜ステージが待っている。
この鬼畜さゆえに、スレ内では「覇王鬼帝」や「HELL o' 鬼帝」等と呼ばれ、AAが作られた今では携帯KOTYスレのマスコットの座を手に入れている。

しかし、クリアできないわけではない。
このゲームではアイテムがよく出てくる。そのアイテムの出方次第では難易度がぐっと下がるときがある。
たとえば貫通弾や1upがうまく出まくってくれれば、だいぶ楽になる。
それでも、「ここでわざと死んで、球の位置を調整する」などというテクニックを多用しなければならないあたり、鬼畜としか言えないが、それでもクリアできる。
逆にマイナスアイテムも多く、それらに当たってしまえば移動がさらに遅くなったり、バーが信じられないほど短くなりワンミスがほぼ確定する。
早い話、運ゲーである。
先ほどの回転するブロックを並べる面など、リセットを繰り返してある程度揃えなくてはクリアできない。
普通は「運の要素があってもテクニックがあればクリアできるようになっている」のがゲームのはずだが、これは「運とテクニックの両方がないとクリアできないようになっている」のである。

理不尽な難易度。それがこのハローキティといっしょであり、そういう意味では昔ファミコンでよくあった従来の意味でのクソゲーに近いかもしれない。
しかし、このハローキティといっしょにはもう一つ罠がある。
苦労してクリアしてもあまりうれしくないのである。
大きなお友達向けなのだからクリアしたらムフフな絵が拝めると思うかもしれない。しかし、このゲームで使用されている絵はすべて既出であり、ホームページで公開されている(もちろんムフフではない)。
エンディングはおろかスタッフロールすらない。そして、PSP用のテーマもPSNストアにて各50円で売られている。
このゲームをやって得られるものは何もないといっても過言ではないのだ。

また前記の大戦略とは違い、手軽にクソゲーを楽しめるということもあって一部で妙な流行があったことも特筆すべきだろう。
そうしてプレイした誰もがクソゲーと確認しているのに、なぜか他人に薦め、薦められたほうも何故か購入していく様は、一種のカルト宗教のようであり、まさに帝王の名にふさわしいとしか言いようがない。

そして、8月に入るとスレにひと時の平和が訪れる。
もちろんスレ内では何人もの人間がハローキティの魔力に吸い込まれていったり、大戦略DSで揚陸艦の使い方がやっと判明したりというトピックがなかったわけではないが、新しいKOTY級のクソゲーが現れることはなく、有力視されていた前回二冠王覇者「戦極姫2〜百華、戦乱辰風の如く〜(システムソフト・アルファ)」も「バグとかあるけどSSαにしてはまとも」という評価で選評が上がることはなかった。
そして、12月も半分が過ぎ、もうノミネートはないだろうと思い始めたころ、やはり魔物は現れた。
「どんだけスポーツ101(スターフィッシュ・エスディ)」と「プーペガールDS2(アルヴィオン)」である。

まず、タイトルからして嫌な予感しかしない「どんだけスポーツ101」だが、一言で言うと
一本の低予算ゲームを101倍に薄めたミニゲーム集である。
何故こんなに入れなければならなかったのか疑問に残る。
まず、起動直後。スポーツ選択画面では左右にスライドさせて選ぶのだが、3つまでしか表示できない。
この時点でクソゲーをつかまされたと分かるシステムも珍しい。

そしてゲーム内容はすべて微妙でどうしてそうなったのか分からないものばかり。
難易度調整がおかしいものが多く、「操作性が悪いのに相手が弱くて勝てた」という間違った方向でゲームバランスがとられていて、やりがいとか面白さとは無縁の存在になっている。

更に、ゲームも対象のスポーツを理解しているのか謎なものも多く、敵も味方もいない孤独な「カーリング」や、トスだけで成立する「バレーボール」。コースのひび割れを避ける「スケルトン」などミニゲームに落とし込むにしてももう少しやりようがあっただろうと思うものばかりである。
中には、サーブをクロスに打たなくてもいい「テニス」等、ルールを知っていると逆に戸惑うものまであり、ユーザーは現実世界とのかい離に悩むことになる。
またGoogle先生に聞かないと存在するかどうかも分からない超マイナースポーツも多く、そんなものまで超ルールを適用されると元のスポーツがどんなものかも分からなくなる。

101個もゲームがあるので「次こそは遊べるゲームかもしれない」とついやってしまうが、そのすべては裏切られる。
アカギという麻雀漫画で「焼かれながらも人は、そこに希望があればついてくる」というセリフがあるが、このゲームはまさにそれで、プレイした人間は次もたぶんダメだろうと思いながらも、「もしかしたら」という希望で身を焼き続けた。

もちろん、101種のゲームをクリアしたところで、このゲームに希望なんてない。


大トリとなったプーペガールは、ゲームジャンルとしては女の子から大人の女性まで幅広く遊べる着せ替えゲームで、可愛い服さえ着せることができて、その衣装で自己主張できれば一定の評価が得られるはずのジャンルである。

しかし、このゲームはデバックをしたとかしていないかというより、まだプログラミング中だったのではないかと思わせる出来で、着替え画面で拡大するとフリーズ、拡大しなくてもポリゴンが崩れたり、付けたはずのアクセサリーが付かなかったりする。
UIが不親切で着せ替えるのも一苦労。さらにレシピ保存機能を兼ねたスナップショットは最新30個までしか保存されず、収入のためにスナップショットを撮るとレシピが消えてしまい、友人に見せるには再びこの不親切なUIと格闘することになる。
それだけならまだしも、ROMカートリッジにもかかわらずロードが多発する。

一定期間ごとに開催されるはずのファッションショーが一度きりで以後開催されなかったり、報酬が0リボン(リボンというのは、このゲームでの仮想通貨)になってしまったりする。

このファッションショー問題は後日仕様だったことがメーカーからメールで告知されるが、仕様だとすると意図的に行ったということであるが、その意図は全く分からない。
序盤に一度しか行われない報酬0のファッションショーに何の意味があるというのだろうか。
また同時に沢山の人からファッションショー開催のお知らせが来る意味も分からない。

ともかく、この報酬0からも分かるように、この作品の報酬は全体にわたって非常に少ない。
スナップショットで一回25リボン(一日5回)。一週間に一度のコンテストに優勝できれば200リボン。着替えた状態で街を歩いてステキと言ってもらえると一回5リボン(週末清算)。
これで、後半1つ5000リボンもするアイテムを購入していかなければならない。
早い話、千人近い人にステキと言ってもらえないと、後半はアイテム一つ買えないのだ。
いくらみんなにステキと言って欲しいオシャレ好きでも、これには耐えられず、本スレでは「ステキ集めの苦行」と呼ばれ、修行僧が托鉢の行でもやっているかのような扱いになった。

こんな酷い収支バランスだが、さらに追い打ちがかかる。
なんと22時間プレイ報酬で、何を間違ったのか-15536リボンもらえるのだ。
その時がくると、まるで小学生が「マイナス一個あーげた」と言うような勢いで15536リボンも消費してしまうのだ。
その結果、所有リボン数がマイナスになった状態で外に出るとフリーズする。
これはプレイ報酬なので100%発生するだけでなく、画面にも「-15536リボン」と表示されているので22時間プレイしなくても分かる。
明らかにデバッグしていない。
このバグは只でさえ資金難気味の、このゲームを更に酷いものにする。

メーカーはバグの対策として「おとしだま」等の明らかに後日公開してユーザーサービスするつもりだったコードを大量に公開して金銭難対策を行ったが、問題の根本はリボンの収支バランスが崩壊していることであり、それらの問題の解決できない以上、リボン不足は解消されるわけがなく、焼け石に水としか言いようがない。
また、コード認識部分にも問題があるらしく、コードを受け付けないという報告も多数されている。

この金銭難に対応するには、プレイヤーはひたすら自分のスナップショットを撮り、ステキを集めてわずかなリボンを稼ぎ続けるしかないのだが、スナップショットは着替えなくてもいいし、大量のステキを集めなくてはならないため、着替えを楽しむ余裕などなく、ひたすら同じ服の写真を撮り、着替えフラグのためアクセサリー一つ付け替えて街を歩きまくるという、もはやお着替えソフトでもなんでもない別の何かと化してしまっている。

その他、確実に発生するわけではないが、家か出る事が出来なくなるバグも報告されていて、気づかずにセーブした場合、データを初期化してやり直すしかないという地雷すら完備している。
もちろん、集めたアイテムもリボンもステキも全部パーだ。
諸行無常にもほどがある。

以上が本年の流れである。
本年は例年以上にハイレベルで、バグゲー、高難易度ゲー、超うす味ゲーと幅広く、選考は難しかった。
正直、どれが大賞をとっても皆が納得するであろうほど、ひどいものが揃っている。
非常に難しい選考を重ねた結果、見事2010年のクソゲーオブザイヤーに輝いた作品は、「プーペガールDS2」である。

このゲームが選ばれた最大の理由は、ゲームをつまらなくする問題の数々である。

お着替えが目的のソフトがお着替えで多くの問題を抱えている。いつバグるかわからないので、着替えを楽しむことができないし、着替える意味もない。
ひたすらスナップショットをとって、アクセサリー一つ取り替えて街を歩けばいい。
これでファッションを楽しめというのはかなりの無茶振りだ。

報酬と支出のバランスが最初から崩れているうえに、数々の問題は収支バランスを悪い方向にしか傾けない。
その為、着替えを楽しめないばかりでなく、それを延々続けさせられる。
つまり、ゲームバランスが非常に悪いのだ。

同じようにゲームバランスが悪いものにキティが存在するが、両者には決定的な違いがある。
それは、キティは「運とテクニックの両方が無いとクリアできない」であり、プーぺガールは「着替えすら無視して、ひたすら作業を続けなければいけない」ということである。
両者ともプレイヤーのプレイ回数を増やし、薄いゲーム内容を間延びさせる効果があるが、キティは完全な運ゲーではなく、テクニックも必要だ。
つまり、ゲームを進めれば賞賛されるのだ。キティに突撃する人間が多いのはまさにこれで、クソゲーをクリアしたという賞賛が期待できる点でワクワク感があり、手軽さも手伝って、そこに突撃したと分析出来る。
対して、プーぺガールは誰でも出来る作業であり、賞賛されたとしても暇人であることを称えられるにすぎない。
本当は、友達に見せて、その服装センスの良さを讃えてもらうということを期待できたのだが、
過去スナップショットは問答無用消去というその仕様からそれも難しい。
そういう点で「どちらがより楽しめないか」という点で見るとプーぺガールが一歩先を行っていると 評価された。

同じようにどんだけスポーツも「次のゲームは楽しいかも」というワクワク感があり、 そのことごとく裏切られるにせよ、プレイ中に希望を持てるが、ショップでどんなアイテムがあるかが見えているプーぺガールにはそれがなく、着替える暇も惜しんで延々資金稼ぎに明け暮れなければならない。
どちらもゲーム後につまらないと思うなら、ゲーム中にワクワク感がなかった方を選ぶのは 仕方ないと言える。

両大戦略も酷い。無限ループや育てたマイ部隊が敵になるなど、心を折ってくるバグが襲う。しかし、大量のバグを作ったSSαも「画面を開いただけで、どうミスしたのか分かる」バグを 放置するようなことはやらなかった。
プーペガールより大量のデータを使うにも関わらず、である。
また、大戦略はボリュームが大きく、それゆえ攻略が大変なのだが、土下座外交やプレイヤー変更、 超兵器という具合に抜け道があり、それらがいいか悪いかは別にして救済措置になっている。
だが、プーペガールにはそのような救済措置はなく、ひたすらプレイ時間を伸ばすためだけが目的の低賃金体制が続く。
本来過度な救済措置はゲームの面白さを減少させるのだが、クソゲーの場合はクソさを減少させる 方向へと働く。
やはり、同じ程度のクソならば救済措置がないほうが酷いと考えるのが妥当だと判断した。

以上が選定理由である。

もちろん、今年のノミネート作はどれも大賞を推したくなるような出来栄えで、正直、他の候補作を切るのは断腸の思いだった。
しかし、この5つの中で唯一このゲームだけ、ゲームとしての体裁が破たんし楽しめる根本の部分が壊れていることが、他のゲームに対し一歩リードさせる結果となった。

振り返ってみれば、2010年は激動の一年だった。
新年の時点で前年の覇者SSαが発売ラッシュを仕掛けてくることが予定表に組み込まれていて、 例年だったら「去年ほどのクソゲーは生まれないのではないか」という不安から始まるKOTYが年初から「今年もSSαに取られるのか」という危惧で始まるという異常事態からスタートした。

しかし、ふたを開けてみれば実際にSSαから強力なソフトが複数出たものの、ハローキティ、どんだけスポーツ、そしてプーペガールという勝るとも劣らない強力なソフトたちが駆け付け、互角以上の戦いを見せてくれた。
これらを見ると、世の中にクソゲーの種は尽きることがないのだと胸が熱くなるのを感じる。

最後に、今回受賞したプーペガールDS2に次の言葉を送り、締めくくりたい。
「残念。PoupeegirlはPoopgirlになってしまった」

2010年総評案3(ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!)

以下の文章はどう扱おうと自由です。
ただし、ここへの上書きはご遠慮下さい。

2010年ワールドカップ南アフリカ大会で日本代表チームの奮闘により、列島が熱狂に包まれた。
だが光あるところに闇もまたある。クソゲーのチャンピオンを決定する戦いが、ひっそりと世間の片隅で行われていた。
携帯ゲーム板クソゲーオブザイヤー2010の開幕である。

それでは早速、厳しい選考を勝ち残ってきた代表達を紹介しよう。
まず選評が届き候補に名乗り出たのは、ドラスが販売した「ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!」である。
一見女児向けのゲームかと勘違いしてしまいそうだが、
キティちゃんを愛する超キティラーと呼ばれる女性キャラクターを人気イラストレーター達に描いてもらう、
「ハローキティといっしょ!」という企画の一環で、
どちらかと言えば大きいお友達向けのブロック崩しゲームである。
萌え絵を見てもらうだけで良かったはずだったこのゲーム、予想外にぶっ飛んでいた。

ボールがブロックに斜めに当たったのに垂直に落下してくる、
パドルの端でボールを拾ったはずなのに下へ落っこちてミスになる、
という従来のブロック崩しとは一線を画する斬新な仕様である。
ボールの挙動が不安定で予測しづらいのに加え、パドルの移動速度が微妙に遅く難易度がやたらと高い。

ステージ構成もかなり力が入っていて、
常人では反応できない速度でボールを跳ね返す反射ブロックが配置される、
その反射ブロックがパドルの真上に配置される、
弾幕を張る砲台ブロックが存在して最早シューティングゲーム、
ボールとパドル周辺以外が暗闇で隠される、
もちろん敵弾も隠される、
という風に多種多様な仕掛けでプレイヤーを殺す気満々である。
最難関ステージに至っては「乱数調整をしてようやく一筋の光が見えてくる」と報告されるほどの鬼畜難易度で、
どうやらこのキティさん手加減というものを全く知らないらしい。
ちなみに、大きいお友達が求めるメインのイラストは全て既出な上に、
PSストアにて1枚50円でダウンロードも可能であると付記しておく。

続いて選評が届いたのは、昨年の王者システムソフト・アルファーが放つ
「現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊」である。
発売自体はハローキティよりも半年近く早かったのだが、
バグによりシナリオが無限ループしてクリア不能となり
選評が遅れたという曰く付きの作品であった。
上級プレイヤーがなんとか突破方法を発見してこうしてノミネートに漕ぎ着けた。
これだけでも充分な要素であるが、インターフェースの劣悪さやバグの多さも酷い。
敵側思考時間も最大5分と、セガサターン時代を彷彿させる。
ユニットを全く動かさなくともクリアが可能なステージも存在し、
崩壊しているのは軍事バランスではなく、ゲームそのものだったのではないかと声を大にして言いたい。

そして、システムソフト・アルファーの連撃「大戦略PERFECT 〜戦場の覇者」が名乗りをあげる。
インターフェースや敵思考時間はDS版と同じく劣悪。
そしてこちらもバグが多い。突然発生するフリーズは当たり前。
マイ部隊というプレイヤーオリジナル部隊が敵として登場したり、
脈絡も無く自国生産施設に謎の部隊が出現したり、
それを確認しようとするとPSPの電源が落ちたり、
とにかく進行に関わるバグが盛り沢山である。
再びKOTYの覇者になるべく、パーフェクトなクソゲーを送り込んで来たということなのだろうか。

クソゲーオブザイヤーでは年末に魔物が潜む。
使い古された言い回しではあるが、今年もやはり魔物が我々を待ち構えていた。それも2匹も。
1匹目はファミ通クロスレビューにて5・6・4・3計18点という素晴らしい低得点を見事に叩き出した、
スターフィッシュ・エスディ販売の「どんだけスポーツ101」である。

海外ゲームのローカライズ版であるこの作品、
世界のスポーツ101種類を1本のソフトに集めたゲームだ。
101種類もあるという事で、メジャーなものから、Google先生に聞かないと分からないマイナースポーツ、
これがスポーツなのかと小一時間問い詰めたくなるようなものまで幅広く網羅している。
問題は101種類どれもが携帯アプリゲームの出来損ないレベルで、
どれもが果てしなく面白くないという事であった。
その上、スポーツのルール無視や物理法則の無視も割と平然と行われる。
種目を選ぶインターフェースも悪く、ゲームルールの説明も割といい加減でさらにイライラは増幅される。
とにかくつまらない、それが101個も揃ってまさに数の暴力。
小さいクソをどんだけ積み重ねても、結局は大きいクソの塊にしかならないという好例であろう。

もう1匹の魔物はアルヴィオンが開発販売の「プーペガールDS2」であった。
女性向けファッション着せ替えSNS「プーペガール」のDS版の第二弾。
前作はスレで名前すら出なかったが、今回は残念ながらこうしてノミネート作として名を連ねた。

ゲーム内通貨のリボンを貰えるはずのファッションショーに出場しても全く貰えない、
一定期間ごとに開催されるはずのファッションショーが1回しか行われない、
22時間プレイしたご褒美が何故かリボン-15536、
それでリボンのトータルがマイナスになってしまったら事実上進行不能。
ゲームそのものを破綻させかねないバグが山積みである。
流石にメーカー側も上記22時間バグには機敏に対応。リボンを大量に貰えるパスワードを公開した。
しかし一部ユーザーは入力エラーとなりリボンを獲得しきれなかったという、何ともお粗末な顛末を披露してくれた。

以上5本のソフトがクソゲー頂上決戦を戦う代表選手に選ばれた。
どの作品もそれぞれが違うベクトルに突出していて丙丁付け難く、大賞選出は非常に困難を極めた。
度重なる議論の末に大賞へ選ばれたのは、「ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!」である。
選ばれた根拠は、色々な要素の積み重ねではなく理不尽な難易度の一点突破ということであった。
他の候補作と比較してみるとハローキティはシステム周りの出来が良く、ほとんどバグが見当たらない。
ゲームとしての基本部分は丁寧に作り込まれていながらも、高難度と理不尽を履き違えてしまった、たったそれだけでクソゲーに転落した功績が大きく評価された。

振り返ってみれば、実力伯仲でハイレベルであった本年のクソゲーオブザイヤー。
狂った難易度の「ハローキティ」、相も変わらずSSαクオリティ炸裂の「両大戦略」、
小さいクソをこれでもかと詰め込んだ「どんだけスポーツ」、テストプレイをしたのかも疑わしい「プーペ」、
ゲーム市場の主流が携帯ゲーム機に移ったと言われるようになって久しいが、それを象徴するような百花繚乱の様相を呈した。

最後に「ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!」を世に送り出したドラスへこの言葉を贈って、クソゲーオブイヤー2010を締め括りたい。

Hello!KOTY!

2010年総評案4(プーペガールDS2)

今となっては考えづらいことだが、2010年のクソゲーは不作となるのではないかと
予測されていた時期があった。まずはそう思え。
だが結果はどうであったか。驚愕すべき死屍累々たる地獄絵図を見よ。
詳細は選評に譲るとしてここでは大まかな流れのみを記述することとしたい。

昨年のW受賞の衝撃も未だ覚めぬ2月25日、思えばこの時点で波乱の一端が既に始まっていたのだった。
その昨年の覇者たるSSαは早くも第二の刺客を放っていたのだ
(1月21日に発売された先の刺客「真・戦国天下統一〜群雄たちの争乱〜」は駄作どまりであり、
ここではとりあげない)。
DS「現代大戦略DS〜一触即発・軍事バランス崩壊〜」(システムソフト・アルファー)である。
なるほど適切なサブタイトルであると言わねばならぬ。番狂わせの余地はもはやなく、プレイヤーの
介在すら必要とせず決着が着くまでにこの世界における軍事バランスは崩壊しきっているのだから。
だが崩壊していたのはそれだけではなかった。
何が、と仔細にリストアップする必要があるだろうか?たった一言で済む。すなわち”全て”と。
とはいえ、そのブラックホールがごとき闇の深さははいかばかりか。報告の断片は届けども、
この深淵を覗いた生還者の具体的な証言が得られるのはしばらく後のこととなり、結果として
久しくなかった平穏の予感がスレを覆うのである。
むろんそのような甘い幻想はいずれ無残に打ち殺されることとなるのではあるが。

同日には、同じくDSの
「ゲームブックDS アクエリアンエイジ Perpetual Period」(ブロッコリー)もまた姿を現していた。
往年の人気TCGシリーズに材をとった(とは、実のところ正確な表現とは言いがたい。
理由は後述の通り)メディアミックス作品であるがやはりというか連綿と連なる
黒歴史に新たな頁を記す結果に終わった。
ゲームブックを標榜しつつ中身はノベルゲーム、その大きな構成要素であるところの
立ち絵、声をバグが彩る。タイトルを冠したメインテーマからしてクラシック曲の引用と
きては力の入れようが知れるというものだ。
とはいえ、購入者の関心は主に同梱カードに向けられており、”ゲーム”それ自体は
付属品に過ぎないのである。むしろゲームとしてというより、かの邪神モッコスの系譜に
連なるものとして解釈されるべきなのかもしれぬ。当初通常版が存在せず、のちにひっ
そりと発売と言う点では異なるのだが(すなわち、”存在しないほうが喜ばれる”と
いうわけだ。この「招かれざる有料付属ゲーム」というキーワードをどうか心に留め
おいていただきたい。理由はすぐにわかる)
さて、本作もまた見出されるまでしばらくの時間を要することとなった。

そんな水面下の嵐とは裏腹な空気の中、3月11日にはDS「RPGツクールDS」(エンターブレイン)が発売される。
インターフェイス面こそ良好なものの、主要なクソゲーの構成要素――仕様時点での
問題、多数のバグ、プロモーション詐欺――を一通り備え、さらにジャンル特有の要素
すなわち容量についても大いなる問題を孕んだ逸材であった。
本作には通常モードであるところのFULLモードと、ソフトを持っていない相手への
配信を想定したDPモードとの二つのモードが存在する。
当然ながら後者においてはソフトにプリセットされた画像や音楽の使用量にも
制限がかかる。しかしそこで終わらないのが本作である。
なんとなれば、複数の画像素材がセットとして扱われており必要のない素材の容量を
強制的に使わされるのである。作成領域の燃費も前作比4倍となっており、潤沢とは
言いがたい容量資源を節約する気もなければさせる気すらないことが伺える。
内部ではそれぞれ別個に計算されている、素材使用量と作成データ量がなぜか合算されて
表示されており、表示から正確な空き容量が把握できないことも付け加えておく。
さて、類似作品の少ない(つまり代替品がないことをも意味する)ジャンルということも
あって本作は、平和を満喫していたスレに大きな議論を巻き起こした。
はたしてこれはゲームなのか?ツールではないのか?
とはいえ今なおパズルゲームにステージエディット機能が搭載されることは珍しくない。
またツクールシリーズ以外にも古くは「デザエモン」、近年なら「メイドイン俺」等
作成ツール主体のゲームはいくつも発売されている。
”創る”楽しみは確かにゲームたりえ、またその需要も決して小さくないとの判断の元
本作をここに取り上げる次第である。

6月24にはSSαが新たな刺客を繰り出した。
PSP「大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜(システムソフト・アルファー)」である。
彼らの目指す戦場がどこか、言わねばわからぬスレ民がいようか?総じて劣悪な
システム周りに鬼ロード・思考時間、バグは当然の如く完備。売りとされた新要素は
仕様とバグの両面で使い物にならないとくる。
さらには現実とも違えばゲーム的な嘘としてもおかしい各兵器の仕様。
歴戦の勇士たちでさえ一部操作法の解明に数ヶ月を要したというから相当なものだ。
もちろん別売り説明書など出るわけもないし、仮に出たからと言って少しも奥深くない
本作にとってそれがどうしたというのだ。
加えて異常なまでの読み込み回数がドライブの寿命を容赦なく削り、強制終了バグがハードに止めを刺す。
覇王に先んじて覇者を名乗ったのは冗談でもなんでもないと知らしめる恐怖の一本と呼ばねばならかった。


そして来るべき地獄の使者がやって来る。これを機に平穏な時代は一気に終焉を告げたのだった。


7月15日、今年も恐怖の帝王が降臨されたと思え。すなわち覇王鬼帝、地獄王鬼帝の異名をとる
PSP「ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!!」(ドラス)陛下……いや、ここは時流に乗って閣下とお呼びしよう。
ハローキティとあるからには女児向けかと思われる向きもあるだろう(その直感もまた、
心に留めておくことをお勧めする)。だがここで題材となっているのはキティそのものではなく、
キティファンである”大きなお友達”の女性――キティラーであることをお断りしておく。
人気イラストレーターたちの手になる美少女キャラを擁する企画「ハローキティといっしょ!」の
第一作として放たれたかの君は、だが明らかにゲームを超越したネオ生命体であらせられたのだった。
ブロック崩しという、古典的なゲームでありながら基本的な挙動がまず異様な振る舞いをお見せであった。
不可解なボールの反射と亀の歩みよりも遅いパドルの化学反応に不快指数は最初からクライマックス、
普通に遊べる前半はまだしも終盤に至って、丸い地球の住人のロースペックで対処できる領域を
逸脱した超難度ステージの数々がプレイヤーを待ち受ける。諸氏の中にステージエディット機能の
あるゲームで自分の作ったステージを友人に遊ばせた経験がおありの方はいるだろうか。
どんなステージを作ったか覚えておいでか?閣下が提示されたのはまさにそれなのだ。
ゲームはハード。よくも言ったものだ。よもや「ぼくのかんがえたむずかしいすてーじ」に
まともな解法があるとは読者諸氏もお思いではないだろう。高確率で発生する詰みシチュエーションの前に
頼るものは運のほかなく、また無間地獄を楽しめと言わんばかりにリトライ等のシステム周りばかりは快適であった。
ようやくクリアした末に下賜されるご褒美CGはといえば、既に公開済みのものが各キャラに一枚づつ。
さらには同じものが一枚50円の良心価格でPSP用の壁紙として販売されている。
ご褒美単体のほうが安いものを褒美と呼べるのか?その深遠なる根源的問いかけがスレ民の心に突き刺さった。
だが狂気とは時に人を強くひきつけるもの。多くのスレ民が憑かれたように
何の見返りもないことを十分に知りながら自ら閣下に膝を折ったことを付記しておく。

そしてかの有名な予言においても、大王が前兆に過ぎなかったことを思い出していただきたい。
11年を経た2010年のクソゲー界においても、火星の王子は容赦なく牙をむくのである。

鬼帝閣下の話題に沸くスレに、新たなクソゲーの報がもたらされたのは10月7日。

DS「天下一★戦国LOVERS DS」(ロケットカンパニー)である。
携帯電話用恋愛ゲームの「忠実な」移植――とはいうものの9人の攻略キャラのうち最終シナリオまで
収録されているのが二人だけということもあり、事実上の体験版である。
ちなみに価格は5,040円(税込)、7,140円(税込)の限定版も存在する。
シナリオが完全でないのなら、では何が忠実なのか?いうまでもなくシステム周りである。
携帯ゲーム本編へ誘導する意図がある都合、変に快適にするわけにはいかなかったのであろうことは推察できるが、
わざわざDSで携帯電話並みのインターフェイスを体験する苦痛はいかばかりか。
完全オートセーブの選択肢ありノベルゲーというだけでもその凶悪さはご理解いただけるだろう。
だがシステムの劣悪さ、シナリオの出来がよくないのはかえって評価点といえるかもしれない。
プレイ済みの部分をも二重課金されながら、本編をやってみようという気になることはまずないだろうから。


12月16日……運命の日と言わねばならぬ。
恐怖の帝王の存在が予言した年末の魔物がとうとうやってきたのだ。それも二体。

まずDS「どんだけスポーツ101」(スターフィッシュ・エスディ)。
改変の必要すらなく蔑称として機能するタイトルもどうかと思うが、実に的確なのだから仕方ない。
具体的な内容について言及する必要はあるまい。想像を少しも外れるものではないその内容は、
塵も積もればとはよくも言ったもの、101本のクソゲーで苦痛も百倍いやそれ以上の新たな無間地獄の
誕生であったとだけ述べるに留める。
なにより恐ろしいのは、本作が既発売海外作品のローカライズであるということである。
いったい発売元は何を思ってクソゲーであるとわかっている(わからないはずがあろうか?)これを輸入したのだ?
売れると思ったのか?そもこの売る気のないタイトルは何なのだ?
よもや洋ゲー信者にかのスタージョンの法則の一端を突きつけるためというわけではあるまい。
永遠に解けない謎がまたひとつ地球に生まれた。

そしてDS「プーペガールDS2」(アルヴィオン)である。
同名のアバター着せ替え機能を売りにしたSNSのDS版第二弾である。
昨年同時期に発売された前作はせいぜいが駄作どまりであったが、今年もやってきたそれは
遥かに進化を遂げていた。そう思え。無論、負の方向に。
さて本作は着せ替えゲームである。貯めたお金で衣装を購入し、コーディネイトに応じて
入ってくるお金でさらに高価くて可愛いお洋服を買う。そうして物欲とおしゃれ欲を満足させるゲームである。
実際序盤は何をしてもお金がもらえる。着替えたといっては25,初めて○○をしたといっては500といった具合に。
だが地獄はここから始まる。そうした初物特典が尽きてくるのと連動するように服のお値段は
急激なインフレを始める。さらには主要な収入源となるはずであったファッションショーが
バグで機能しないため収入は激減の一途をたどる。
これで着せ替えにコストがかかる、といった仕様になっていたらどうなっていたことか。
よもやこうした事態を想定していたわけではあるまいが、原作の仕様に合わせたことに
救われた形である。とはいえ、雀の涙のごとき収入がどれほどの救いになるのか疑問ではあるが。
さて、こんな文章を読んでいる諸氏であれば、オーバーフローバグはもちろんご存知であろう。
狂った強さを誇る隠しボスを回復してやると一撃死するようになったり残機数を増やしすぎると
一ミスで即ゲームオーバーになる現象が有名なアレだ。
多くの場合プレイヤーに有利に働いたり条件がレアだったりと、古くから裏技の供給源として
親しまれてきたかのバグがここへ来てとうとう牙を剥いた。
本作においては、プレイ時間依存のボーナスにおいてそのバグが発生したのである。
ただでさえ金欠状態の中大幅な”搾取”(メーカー側の表記による)によって資金は一気にマイナスになり、
それがトリガーとなってフリーズが発生する。
事態収拾のためにメーカーサイドが取った方法は「順次公開予定だったボーナスコードの一斉開示」だった。
マイナス分を打ち消すだけの収入があればとりあえずフリーズを回避できるのである。
前もって仕込んでおいた隠し要素に偶然救われた形となった。
――が、プレイヤーによってはコードをひとつ使った時点で他のすべても入力済みとなってしまうバグが発生。
これら、せっかく神様が用意してくれたチャンスをことごとく自ら粉砕する漢らしさは特筆すべきであろう。
さて、ここでこれまでのクソゲーたちを思い出していただきたい。
前作までの実績から疑問符をつけざるを得ない大戦略二作にアクエリアンエイジ、
題材の時点で期待を喚起しない鬼帝閣下にどんだけスポーツ戦国LOVERS。
ツクールDSは当初こそ期待されていたものの発売が近づくにつれて不穏な噂が流れ出し、
早めのフラゲッターの報告で購入予定者が次々と予約を取り消し、難を逃れた。
そう、数多くの悪鬼たちの中で、本作のみが”見えない地雷”であったのだ。
さらには、原作が男子禁制を謳っていることからもわかるとおり、本作のメインターゲットは女性層である。
クリスマスという時期もあって本作は今年のクソゲー最大とも言える被害を出したと思え。
あの鬼帝閣下でさえ差し控えた女児層へのテロがとうとう行われたのだ。
成長した彼女たちがゲームの狂アンチペアレントとならないことを切に祈るものである。
さて、もはやこれ以上の内容への言及は割愛する(これだけ長々と述べてなお氷山の一角に過ぎないのだ)。
ただ概要だけを述べるなら、本体であるともいえる初回特典にすらもはや仕様レヴェルの初歩的なバグがあり、
本編はといえばただ作業的な着せ替え以外にはすることがなく(新しい着せ替えを試すためにも
延々とそれが必要なのだから救えない)、果ては着せ替えアバターそのものがバグる始末。
これまで紹介した七本を飾ってきたクソ要素すべてが合体七英雄さながらに
ここに詰め込まれていると言っても過言ではない。
戦慄せよ、かくて穢らしくもおぞましきクソゲーフーガがここに完成をみたのだ。

さて、多方面にわたるクソ要素の揃った年であった。
ある者はバランス・インターフェイス共に完全な崩壊を見せつけ、
ある者はファンアイテムでありながらファンの心をも完膚なきまでに打ち砕き、
またある者は「ぼくのかんがえた(ry」を商品として売りつけるという暴挙に出た。
クソゲーにとってボリュームはもはや苦行の量でしかなく、あるいは不完全版商法であったり、
バグを回避すると楽しみどころが残らない代物さえも。
”例年なら文句なく大賞”とはここ数年毎年のようにどこかで見るフレーズではあるが
まさに今年こそは、どれひとつをとっても大賞に相応しくない候補作は存在しないとさえ言える。
まさしくクソの百花繚乱。ここまでくると各々のクソさを比較することすら無意味に思われるほどである。
この惨状を前に、本稿ではクソさに一定の指標を定め評価することをもはや放棄した。せざるを得なかった。
繰り返す。多方面にわたるクソ要素の揃った年であったのである。そのどれもがことごとく、
評価という次元を超越した怪物であったのだと思え。地球平らかなりし時代であればいざしらず、
丸い地球の住人に過ぎない我らに判定を下せとはいかにも荷が重すぎる。別の基準に頼るほかあるまい。
そこで、この嵐のようにクソ要素が乱立した2010年のクソゲーシーンを象徴する一本として
その集大成だというかのように数限りなく、また多様な方面におけるクソ要素が詰め込まれており、
さらにはまさかの奇跡にすら自ら唾する暴挙に出た「プーペガールDS2」に大賞を贈ることとしたい。
最後にプーペ――”人形”にちなんだ一首を添えて2010年のクソゲーオブザイヤーを締め括ることとしよう。

『蝋人形砕けてのちも薔薇色の踊りやむこと知らない踵』


参考:総評案1の大賞差し替え案(大戦略PERFECT 〜戦場の覇者〜)

2010年総評案小ネタ?参照