2011年 次点

概要

名称RED STONE DS 〜赤き意思に導かれし者たち〜http://ec2.images-amazon.com/images/I/61D%2BF81xdDL._SL500_AA280_.jpg [外部リンク]
ジャンルマルチシナリオRPG
対応機種ニンテンドーDS
発売元ゲームオン
開発元L&K Logic Korea
発売日2011年5月26日
価格5,040円(税込)
対象年齢CERO:B (12才以上対象)

元はPCでサービスされているMMORPGであるが、本作はWi-fiやワイヤレス通信には対応しておらず不可で、完全に一人プレイ用。

アクションならともかく、クリックゲーが通信プレイ無しでは遊べる要素がぐっと少なくなる為、発売前からファンには危惧されていた。一応マルチシナリオやオリジナルシステムなどの追加要素はある。

初回生産版限定特典として、PC版で使用できるレアな武器や経験値取得量アップ系のアイテムが手に入る。

要点

選評

MMOである同PCタイトルの移植作。

パッケージ絵の美麗さとは反面、ゲーム画面のドット絵と動きと音楽とSEとが何世代か前のゲームを連想させ、さらにオンラインゲームの移植作なのにも関わらず通信プレイ不可で一人用だが、このゲームの真価はそれだけではない。
決して油断してはならない。

[アクション]
いわゆるハック&スラッシュのアクションタイプで見下ろし視点。クリックゲーとも呼ばれる。

さていきなりだが、本作ではスキル攻撃(通常攻撃もスキル扱い)のたびに1秒程度のディレイ(技を使ってから次の行動が可能になるまでの遅延)が入る。
"攻撃速度○%上昇"で少しは緩和されると思いきや、この効果が意味をなさないスキルも存在する。
色々検証した感じでは、ダメージが出現している間は動けないというクs…仕様のようだ。
つまり多段であればあるほどディレイが伸びる。属性ダメージを付与した場合、ダメージ表示が2倍量になるがその分も伸びる。
この仕様により、投擲系のスキルを撃った後に倒しきれなかった敵からは、反撃を受ける事を覚悟した方がいい。
ネットゲームのラグを再現しているのだとしたら中々意欲的なシステムであると言える。

ちなみに後に解説する、トリックキックとワールランニングのバグではディレイが存在しない為、
意図的に入れているのであろう事が推測される。

また遠距離攻撃には、
攻撃モーションは出ているがダメージが表示されず敵にダメージを与えないという、エア攻撃的な仕様も存在する。
もしかしたら座標同期ズレの再現にも見事成功しているのかも知れない。

このコンシューマとしては斬新的な2つのシステムが実装されている上に、
向く方向によって左手と右手が入れ替わったり、
移動中のキャラクター上に敵が沸いた場合は移動できなくなったり、
撃つたびに画面がカクつくスキルが存在したり、
挙げ句の果てには撃っただけでDS本体ごとフリーズするスキルが使えてしまうのは、
もはや筆舌に尽くしがたい感情をプレイヤーに与えるだろう。

[戦闘システム]
このゲームは自動タゲで、その敵の居る方向を向くと敵に赤丸が付き、その敵に攻撃出来るようになる。
これも曲者で、同じ方向に敵が居た場合は狙った相手にスキルを撃てず、流れに任せた戦闘になってしまう。

また、PTのうち一人をアクティブなNPCとして連れて歩けるのだが、
プレイヤーから見えない距離の相手に突っ込んでいったり、壁に引っかかったりしてなかなか戦闘に参加してくれない。
そのまま放置すると、MAPに仲間が表示されない為に迷子になってしまい、勝手に死ぬのでむしろこちらが合わせる形になる。
"補助優先"にしてもあまり補助してくれず、"敵を無視しろ"と言っても攻撃されると応戦してしまうようだ。
これは人が忠実に言う事を聞いてくれる訳がない、という現実を教えてくれているのかも知れない。

裏技として、メニュー画面を出すと敵の配置がリセットされ、状態異常も何故か治る。
敵に気づかれていなければメニューは開けるので、敵が固まってる時、もしくは状態異常にかかった際に有効。
しかし油断してはならない。メニュー画面を抜けたら周りが敵だらけだった、という事も逆にありえるのである。

独特なショートカットシステムも紹介しよう。
ABXYボタンにそれぞれ対応したショートカットスロットが4枠×4に見えるが、実際はスロット枠は4つ目が汎用アクションで固定されている為、実質3枠である。しかも何故かスキルのみ4枠、アイテムのみ4枠といったスロット分け。
これによりLRで頻繁にスロットを切り替える必要があり非常に操作性が悪いし、Bボタンにショートカットとアイテム使用キャンセルが同時に割り振られており、操作ミスが多発する。
さらに何故かアイテムは持っている順番で強制的にショートカットに入る。
                [デフォルト]
ItemSlot2  ItemSlot1   SkillSlot1   SkillSlot2
□□□× ⇔ □□□× ⇔ □□□× ⇔ □□□×

[スキル関連のバグ]
ゲームのスパイスにしては多過ぎるほどのバグが存在する。一部を紹介する。

スキル"死んだ振り"に効果のあるパッシブスキルに"トリックキック"というスキルがある。
敵のタゲも外れる事から、恐らく本来は緊急回避+カウンターという使い方なのだろう。
しかし敵の攻撃の最中に死んだ振りが使えてしまう為、凄まじいトリックキックの連打が可能になっている。
ノーディレイで跳ね起きを繰り返し、敵の頭上にダメージ値のタワーを築いていく様はかなりシュールである。
※この時"刃油(攻撃力+50%)"を使っておくと効果が切れなくなる。ただ何故か状態異常も回復しなくなる。

ワールランニングという頭上で槍を振り回すスキルが広範囲化(ほぼ全体)している。しかもディレイが何故かとても少ない。
エフェクトが全く無いにも関わらず、敵と全く関係ない方向に移動してるだけでダメージが高速で入る。これもシュールである。
また、ワールランニングはスキルツリー(スキル強化の派生。木の枝のように派生先が伸びて行くのでツリー)表示も間違っている。
突き、Rスティンガー、Jテンペスト系列から矢印が伸びてるが、実際はそこと全く関係のないスピンアライジングが必要。
図で説明すると、黒四角のスキルを取る条件にA系列が全く関係無く、C系列のスキルが必要となっている。
A □→□→□→↓→□
           ↓
B □→↓→□→■→□
     ↓
C   □→(略)

Sスニーキングの効果時間が無制限。
いわゆるハイディングスキルなのだが、敵に近づこうが攻撃しようが盗もうが完全無敵になる。
ボスにも有効。

ブレッシングをかけた状態で、天使にチェンジ(このゲームは対の職業にいつでも変身可能)すると、
PT全員のHPが8〜9倍(?)まで跳ね上がり、光属性の付与が異常な値になるらしく全ての攻撃に500〜2000のとんでもないダメージが乗る。
Sスニーキングバグではダメージが通らない、一部ボスに対しての最終兵器。

プリンセスからリトルにチェンジし、メニューを開くと、運が30%程度上昇する。連続使用可で永続。
この操作は普通にやってしまう為、「やけにプリンセスの運が高いな」と思ったらコレが原因である。
再振り巻物との併用を繰り返すと…。

ウルフマンのRクラッシュを使うとDSごとフリーズする。※NPCも同様

バグついでに紹介すると、
消費アイテム"ドラゴンの心臓"もCP(スキル使用に必要なゲージ)が常にMAXになってしまうバグがあったり、
アイテムを捨てる画面で使ったアイテムは、その画面のまま"帰還の巻物"で街に帰還すると減らなかったり、
細かいバグはまだまだ存在する。

[戦闘バランス]
最序盤にユニーク装備(店で買えない装備。通常、敵が落とす確率もかなり低い。)20%ドロップ(確かに体感でその程度)スキルの付いた装備が手に入ってしまう可能性があったり、
一体から盗めるアイテムの数が無限(?)だったり、
レアハンターに優しい仕様。どんどん捨てよう。
ただ、ぶっちゃけヘタなユニーク装備より、武器も防具も初期装備を鍛えて使った方が強い。お金を払うだけで失敗も無い。

また、
ザッピングシステムにより全16人の様々なキャラクターのレベルを1から上げなければならないのと、
ほとんどのボス戦が道中の雑魚だったりするのはまぁ良いとして、
終盤のボスはバグ使用が前提であるかのような強さで、やり込み尽くす位にLv上げをしないと勝負にすらならない。
個人差はあるだろうが、通常到達するであろうLvから数時間Lv上げをし、HP装備をしたキャラでも瞬殺される。
※8時間、HP1500程度
正規の方法でも20時間、30時間レベル上げをすれば勝てるかもしれないという感想。
ただボス戦は殺る殺られるに関わらず、すぐに勝負が付いてしまうパワーインフレな世界である。

[ADVパート]
キャラの発言(意見)を選択肢で選び、プレイヤーが物語を誘導していくタイプ。
ここでフラグを解放しツリー形式の面を解放していく。
地の文が無く視点がころころ変わる為、誰が誰に対して発言する選択肢を選んでいるのか分かりにくい上、選択肢の内容も情報が少なすぎて何を意図したものか分からないものが多く、結局手当たり次第に選ぶ事になりがち。
ちなみに間違うと、よくて無限ループ、運が悪いとその話の初めからやり直し、最悪バグで進行不可となる。
現在確認されている進行不能バグは、全6章のうち1,3,6章で存在する。

また、全体的にストーリーに対して演出がちぐはぐ。一部例を挙げる。
イベントで街が襲撃(住民も倒れたりしている)→
何故かその直後、街の画面になり悠長に買い物ができる(平和なBGM)→
外に出ると普通のMAP→暗転後、犬2匹が敵として出現(弱い)→倒すと解決し、以降その街ではヒーロー扱い
ある場所が壊滅状態になるというイベントがあるのだが、ただ背景が灰色なだけ。
ファンタジー世界なのに唐突にスピーカー登場。
複数人の乱戦を、立ち絵のスライドだけで表現。
メインストーリーで穴を掘ったらクリア後隠しダンジョンのラスボスが出てくる。ちなみに逃げる事は出来るが、結局倒さないと永遠に先に進めない。

エンディングが話の区切りごとに存在するが、辿り着くまでの条件(バグ回避も含む)が難解な為に一周目で全てを見る事は難しい。
そんな方の為に周回プレイ要素がある…のだが、なんと全てのエンディングを見ていない場合は二週目開始時にフリーズする、というトラップが存在する。
周回をする目的がフリーズ回避条件になっているとは本末転倒である。
ちなみに一周目で全てのエンディングを見る方法は存在するが、時系列を無視した進め方なので話が意味不明になる。
(知らない仲間と普通にPT組んでたり)

[メニュー関連]
セーブ画面にロードが無いのと、メニュー画面から戻るたびに暗転+ロードが入るというジャブをまず食らう。
またクエストという項目があるが、これが本シナリオである。つまりサブクエストなどない。

ショップで所持数が見れない上、装備条件を満たしたキャラがいるかを確認する術が無い。
レベルもステータスも見れない為に装備を買う前にメニュー画面を開き、覚えて来なければならない。
(ちなみに装備画面でも全てのステータスが表示される訳ではないので注意が必要)
さらにメインの二人以外は、PTで入れ替えてからでないと装備変更出来ない+ステータスもレベルも見れないという素敵仕様。
さらにさらに、装備で上がっているステータス(力+20等)では能力の必要条件を補えない仕様なのが、難解さを助長している。
例)
ハイハット(必要条件:力40)を装備したい場合、
素の力が30+装備の能力で10、合計40だった場合、装備出来ない。(理由も表示されない)
※武器の場合は何故か装備出来てしまうが、攻撃スキルが使えなくなる。
ショップで物を買うor敵がドロップする〜装備するまでが、まさに一苦労である。

ALL、消耗品、武器、防具というタブは存在するが倉庫整理が出来ない。
手持ちも20枠(?)しかないので自分の好きな順番に並べる事は不可能である。
さらに倉庫の最大数も表示されず、なんと今倉庫に入っているアイテムの数は自分で数えなければならない。
しかも、倉庫枠80個(?)に対して

□□□□□
□□□□□

このように10個しか表示されないので、同じ種別の物を大量に保存している場合はかなり見辛い。
(ちなみに、どう見ても2倍は表示出来そうな隙間がある)
上記の仕様により、倉庫といっても物を詰めすぎないようにしよう、という無駄にリアルなプレイングを要求される。

[総評]
短調な音楽、チープで数の少ないSE、もっさりカクカクアクション、全てが見事に調和して驚異的な爽快感の無さを生み出している。
シナリオ面でも思わず失笑してしまう打ち切りEDや演出のチープさが目に付くが、「使いやすい部分がない」と言ってしまいたいほどの最悪なインターフェイスにはとても敵わない。これはやり込むほど苦痛になってくる。
そしてトドメのバグである。

さて少し愚痴っぽくなってしまったが、デバッグに16人ほど使ったおかげかテキストにミスは少ないし、まだ見ぬバグも多いであろう事からデバッガー育成ツールとしては非常に優秀であると言える。
パッケージ絵だけ見て満足してしまうのは勿体無いので、買ってしまった場合は誰かに薦めてみる事を是非オススメする一作である。
以上